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ヤズィーディー文字

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ヤズィーディー文字(ヤズィーディーもじ、英語: Yezidi)は、クルド語クルマンジー方言の表記にかつて用いられていた文字体系。また、その文字体系を収録しているUnicodeブロックの一つ。

概要 ヤズィーディー文字, 範囲 ...

解説

要約
視点

13世紀14世紀、或いは17世紀18世紀ごろに作られた[1]、主にヤジディ教徒によって、中東クルディスタンクルド人によって話される、インド・ヨーロッパ語族インド・イラン語派イラン語群に属するクルド語のうち、トルコなどで話されるクルマンジー方言(北クルド語)の表記のために用いられていた、ヤズィーディー文字を収録している。なお、現在のクルマンジー方言は通常はラテン文字が使用されており、クルド語の他の方言(ソラニー方言(中央クルド語)、南クルド語など)ではアラビア文字が用いられている。

2013年ジョージアのヤジディ教徒の精神評議会がこの文字を復活させ、ジョージアでは現在もトビリシのヤジディ寺院の聖職者によって宗教用途で使用されている[1][2]。東洋学者で専門家のケリム・アモエフ(Kêrîm Amoêv)とディミトリ・ピルバリ(Dimitri Pirbari)の2人が、ヤジディ文字を現代化し、現代ヤジディ言語の音声特徴に適合させた[1]。2013年にアモエフとピルバリにより『ヤジディ文字(Yezidi script)』という本が出版され、各文字とその音声値が詳細に説明されている[1]

イラクでも2009年にこの文字を復活させようとする試みがなされ、ヤジディ文字―アラビア文字の辞書も出版されたが、ヤジディ教徒が暮らす複雑な政治的・社会的状況のためこの構想はその後発展していない[1]

ヤジディ文字は、アナスターゼ・マリー(Anastase Marie; 1911)によって初めて出版された『マシュハフ・ラシュ(Maṣḥaf Raš)』と『クテビー・ジャルウェ(Ktébī Jalweh)』という2つの写本に用いられた。これらの写本は、加工されたガゼル革で作られた薄い羊皮紙に書かれている。『クテビー・ジャルウェ』のページには16行の、『マシュハフ・ラシュ』には11行のテキストが書かれており、『クテビー・ジャルウェ』にはヤジディ教の主天使タウセ・メレクの独白が、『マシュハフ・ラシュ』には伝統的なヤジディ教の見解を超えた宇宙論が記述されている。これらの写本の執筆時期や著者は不明で、12世紀から13世紀に遡る可能性が高い(Marie 1911; Omarkhali 2012)。それ以前には、同じ題名のアラビア文字で書かれた写本が存在していた。後になって、これらの写本のヤズィーディー文字で書かれた原本が発見されたが、その内容が歪曲されていたため、ヤジディ教徒の聖職者はヤズィーディー文字を認めてはいるものの、これらの写本の内容をヤジディ信仰の源泉とは考えていない[1]

ヤズィーディー文字は音素文字のうち子音と母音とに独立した文字が割り当てられているアルファベットに分類される。アラビア文字ヘブライ文字などと同様に右から左への横書き(右横書き)であり、単語毎に分かち書きをする。

約物にはピリオド(.)、コロン(:)、U+060C ، ARABIC COMMAU+061B ؛ ARABIC SEMICOLON及び U+061F ؟ ARABIC QUESTION MARKが用いられる[1]。数字は、古いテキストではアラビア・インド数字(U+0660―U+0669)が用いられていたが、現在は欧文用の算用数字が好まれている[1]

符号位置の順序はおおむねジョージアのヤジディ教徒コミュニティで用いられる、ペルシャ文字の順序に基づいたヤズィーディー文字の順序に従っている[1]

Unicodeのバージョン13.0において初めて追加された。

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収録文字

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小分類

このブロックの小分類は「字母」(Letters)、「結合記号」(Combining marks)、「約物」(Punctuation)、「ダイアクリティカルマーク付きの歴史的な字母」(Historical letters with diacritics)の4つとなっている[6]

字母(Letters

この小分類にはヤズィーディー文字のうち、基本的な字母が収録されている。

結合記号(Combining marks

この小分類にはヤズィーディー文字のうち、補助的な発音を表すための文字幅を持たない結合記号ダイアクリティカルマーク)が収録されている。

約物(Punctuation

この小分類にはヤズィーディー文字で用いられる句読点などの約物類が収録されている。

ダイアクリティカルマーク付きの歴史的な字母(Historical letters with diacritics

この小分類にはヤズィーディー文字のうち、現在は使われていない、ダイアクリティカルマークが合成された字母が収録されている。

任意の合字

歴史的にはいくつかの字母同士が連続すると特殊な合字を形成することがあった。ただし、現在の正書法ではこれらは任意の合字となっており、必ずしもフォントに実装しなければならないわけではない[1]

任意の合字
ラテン翻字 符号シーケンス 合字
lt U+10EA0 U+10E95 𐺠𐺕
lc U+10EA0 U+10E86 𐺠𐺆
lq U+10EA0 U+10E9C 𐺠𐺜
lv U+10EA0 U+10E9A 𐺠𐺚
lk U+10EA0 U+10E9D 𐺠𐺝
ly U+10EA0 U+10EA8 𐺠𐺨
uu U+10EA3 U+10EA3 𐺣𐺣[7]

文字コード

ヤズィーディー文字(Yezidi)[1]
Official Unicode Consortium code chart (PDF)
 0123456789ABCDEF
U+10E8x 𐺀 𐺁 𐺂 𐺃 𐺄 𐺅 𐺆 𐺇 𐺈 𐺉 𐺊 𐺋 𐺌 𐺍 𐺎 𐺏
U+10E9x 𐺐 𐺑 𐺒 𐺓 𐺔 𐺕 𐺖 𐺗 𐺘 𐺙 𐺚 𐺛 𐺜 𐺝 𐺞 𐺟
U+10EAx 𐺠 𐺡 𐺢 𐺣 𐺤 𐺥 𐺦 𐺧 𐺨 𐺩 𐺫 𐺬 𐺭
U+10EBx 𐺰 𐺱
注釈
1.^バージョン16.0時点

履歴

以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。

さらに見る バージョン, コードポイント ...

出典

関連項目

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