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佐藤史生

日本の漫画家 ウィキペディアから

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佐藤 史生(さとう しお、1950年12月6日[注釈 1] - 2010年4月4日[3])は、日本漫画家[6]。女性[6]。本名は佐藤ちよ子[3]24年組あるいはポスト24年組[7] のひとり。理知的な作風が特徴で、寡作でありながら根強い人気を誇る[7][8]。代表作に『夢みる惑星』『ワン・ゼロ』など[9]

魔術や神話を先端科学と巧みにミックスする独自の作品世界を持つ。長編『夢みる惑星』は、はるかな昔に火星から移住してきた人々が築いた超古代文明の終焉の物語である[10](p30)。もうひとつの長編作品『ワン・ゼロ』では、意志を持ちネットワークに侵入する電子頭脳と魔神たち(大乗仏教の神々とインド古代神および古神道の神々との戦い)を描く[11](p72)。「ネペンティス」「心臓のない巨人」など、巨大な交易船で宇宙を旅しながら何世代も生き続ける隔離された人々が登場する「複合船」のシリーズは、文化人類学あるいは民俗学的なコード(ハレとケケガレマレビトなど)を埋め込んだサイエンス・フィクション (SF) といえる[12]。『やどり木』では、辺境星に入植した人類が現地の植物を摂取することで脳の構造を変化させ、その惑星の生命が構築する壮大なネットワークに取り込まれていく[11]

SF以外の、近現代を舞台とする作品の場合、呪術的な設定を持つもの(『ワン・ゼロ』の原型である「夢喰い」や、徳永メイ原案による「精霊王」など)もあるが[11]、そういう設定抜きのコメディ(「スフィンクスより愛をこめて」や「ミッドナイトフィーバー」など)やサスペンス(「青い犬」など)も描いている。さらに、『死せる王女のための孔雀舞』『この貧しき地上に』のように、出生の秘密に起因する若者の葛藤を描いたシリアスな心理劇もまた、佐藤の重要な作品群にふくまれる[7][9]

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来歴・人物

要約
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宮城県登米郡(現登米市)出身[2]宮城県佐沼高等学校在学時に石森章太郎『少年のためのマンガ家入門』(1965年)を読み、作品を描き始める[13]。卒業後に上京して印刷会社で1年半ほど働く[13][注釈 1] が、1971年に萩尾望都に手紙を出したことがきっかけで、萩尾や竹宮惠子アシスタントを務めることになる[1]。当時坂田靖子が主宰する同人誌にはじめて登場した際は、「Do. Sato」(ド・サト)名義であった[14]。1976年に「星の丘より」を『別冊少女コミック』(小学館)に投稿して新人賞受賞[2]。翌1977年、おなじく『別冊少女コミック』に「恋は味なもの!?」を掲載してデビューした[6]。「砂糖・塩」の語呂合わせである「佐藤史生」をペンネームとするが、これは竹宮が口にした「ソルティ・シュガー」という言葉を、佐藤が思い出して使ったものという[15]

デビューした1977年から1989年までの13年間は執筆活動を活発におこなっており、毎年3本以上の作品を発表していた[注釈 2]。しかしその後執筆ペースが落ち、1990年から1999年の10年間には9本の作品しか発表していない。2000年に『魔術師さがし』の4話(番外編ふくむ)を執筆したが、これが佐藤の最後の作品となった[注釈 3]

2001年に乳がんが発見され、摘出手術を受ける[2]。この年『プチフラワー』で始まった「20世紀名作招待席」の第1回(2001年7月号)を、初期(1978年)のSF短編「金星樹」が飾る。同誌ウェブサイトには作者インタビューが掲載された[15]

2009年にがん転移が確認され、再入院[2]。同年12月19日から翌2010年2月14日まで出身地の宮城県登米市にある石ノ森章太郎ふるさと記念館で開催された特別企画展『佐藤史生展』ではカラー原画などが展示された[18][19] が、佐藤はこの企画展を見ることはできなかった[20]。2010年4月4日、脳腫瘍により、入院先のホスピスで死去[3][4]。訃報は友人である坂田靖子がホームページで2010年4月6日に告知した[21]59歳没[注釈 1]

没後

遺された原稿類は友人が保管していた[22] が、その後京都国際マンガミュージアムに寄贈された[20]

2012年から2016年にかけ、復刊ドットコムから〈佐藤史生コレクション〉として『死せる王女のための孔雀舞』『金星樹』『この貧しき地上に』『竜の夢その他の夢』『春を夢見し』『やどり木』『夢みる惑星 愛蔵版』(全4巻)『ワン・ゼロ 愛蔵版』(全4巻)『打天楽』刊行。

2024年6月、河出書房新社から『傑作短編集 夢喰い』、作家論『総特集 佐藤史生 少女マンガが夢見た未来』刊行。同年6月28日から10月20日まで、明治大学米沢嘉博記念図書館において「佐藤史生原画展: 決して眠らない魚のみる夢」が開催された[23]

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作品リスト

要約
視点

原則として単行本の刊行順であるが、タイトルを共有する単行本(副題の有無は区別しない)がほかに後日出ている場合は、直下にならべて掲載した(→で示す)。おなじ作品が複数の単行本に収録されている場合、初出時掲載雑誌等の情報は初収録単行本のところにのみ表示。『夢みる惑星』『竜の夢その他の夢』『ワン・ゼロ』については、それぞれの記事を参照。

  • 金星樹-SF短編集-』(1979年、奇想天外社、奇想天外コミックス)全国書誌番号:23853383
    • 花咲く星ぼしの群れ(『別冊少女コミック』1978年8月増刊号)
    • 金星樹(『別冊少女コミック』1978年4月増刊号)
    • 一角獣の森で(『別冊少女コミック』1978年6月増刊号)
    • レギオン(『別冊少女コミック』1978年10月増刊号)
    • 星の丘より(『別冊少女コミック』1977年5月増刊号)
  • →『金星樹-SF短編集-』(1992年、新潮社、新潮コミック)ISBN 4-10-603032-2
    • 〔上記5作品再録〕
    • 青い犬〔初出は下記参照〕
  • →『金星樹』(2012年、復刊ドットコム、佐藤史生コレクション)ISBN 4-8354-4847-2
    • 〔上記6作品再録〕
  • 美女と野獣(『ペーパームーン/少女漫画・千一夜』1980年11月) → 夢みる惑星#竜の夢その他の夢 参照
  • 春を夢見し』(1980年、新書館、ペーパームーンコミックス)全国書誌番号:23853397
    • ミッドナイトフィーバー(『別冊少女コミック』1979年4月増刊号)
    • 透明くらぶ(『別冊少女コミック』1979年6月増刊号)
    • 恋は味なもの!?(『別冊少女コミック』1977年2月号)※デビュー作
    • スフィンクスより愛をこめて(『別冊少女コミック』1977年5月号)
    • 春を夢見し(『別冊少女コミック』1978年4月号)
    • ふりかえるケンタウロス(『別冊少女コミック』1979年8月増刊号)
  • →『春を夢見し』(2013年、復刊ドットコム、佐藤史生コレクション)ISBN 4-8354-4996-7
    • 〔上記6作品再録〕
  • 夢みる惑星(『プチフラワー』1980年春の号 - 1984年5月号) → 夢みる惑星#既刊一覧 参照
  • 死せる王女のための孔雀舞七生子シリーズ-』(1983年、新書館、ペーパームーンコミックス)全国書誌番号:23853393
    • 雨男(『グレープフルーツ』第1号、1981年7月25日)
    • 死せる王女のための孔雀舞(『グレープフルーツ』第2号、1981年11月25日)
    • さらばマドンナの微笑(『グレープフルーツ』第4号、1982年5月25日)
    • 我はその名も知らざりき(『グレープフルーツ』第7号、1982年12月25日)
    • 夢喰い(『ニュー・ファンタジー・コミックの世界』サンリオ、1982年10月25日)※ワン・ゼロの原型
  • →『死せる王女のための孔雀舞』(2012年、復刊ドットコム、佐藤史生コレクション)ISBN 4-8354-4825-1
    • 〔上記5作品再録〕
    • 一角獣にほほえみを(同人誌『ピグマリオン』掲載、1976年)※デビュー前発表作品
    • マは魔法のマ(同人誌『ピグマリオン』掲載、1977年)
  • 雨の竜(『グレープフルーツ』第15号、1984年4月25日) → 夢みる惑星#既刊一覧 参照
  • 阿呆船』(1984年、新書館、ペーパームーンコミックス)ISBN 4-403-61051-X
    • 阿呆船(『別冊奇想天外No.9 SFマンガ大全集Part4』1980年1月)
    • 馬祀祭(『グレープフルーツ』第3号、1982年2月25日)
    • 天界の城(『S-Fマガジン』1983年10月号~12月号)
    • 天使の繭(『ペーパームーン/少女漫画・真夏の夜の夢』1979年7月)
    • 青い犬(『別冊少女コミック』1977年11月増刊号)
  • ワン・ゼロ(『プチフラワー』1984年10月号 - 1986年8月号) → ワン・ゼロ#既刊一覧 参照
  • この貧しき地上に』(1985年、新書館、ペーパームーンコミックス)ISBN 4-403-61067-6
    • この貧しき地上に(『グレープフルーツ』第5号、1982年8月25日)
    • 青猿記(『グレープフルーツ』第12号~第13号、1983年10月25日 - 12月25日)
    • 一陽来復(『グレープフルーツ』第19号、1984年12月25日)
    • おまえのやさしい手で(『グレープフルーツ』第9号 - 第10号、1983年4月25日 - 6月25日)
  • →『この貧しき地上に』(2012年、復刊ドットコム、佐藤史生コレクション)ISBN 4-8354-4903-7
    • 〔上記4作品再録〕
    • 緑柱庭園〔初出は下記参照〕
  • 打天楽』(1987年、小学館PFビッグコミックスISBN 4-09-178691-X
    • 打天楽(『プチフラワー』1987年4月号 - 5月号)※ワン・ゼロ後日譚
    • ムーン・チャイルド-月の子-(『プチフラワー』1986年12月号)
    • 楕円軌道ラプソディ(『プチフラワー』1987年9月号)
  • →『打天楽-ワン・ゼロ番外編-』(2001年、小学館、小学館文庫)ISBN 4-09-191117-X
    • 〔上記3作品再録〕
    • 夢喰い
    • チェンジリング〔初出は下記参照〕
    • ネペンティス〔初出は下記参照〕
  • →『打天楽-ワン・ゼロ番外編-』(2016年、復刊ドットコム、佐藤史生コレクション)ISBN 4-8354-5292-5
    • 打天楽
    • ムーン・チャイルド-月の子-
    • 楕円軌道ラプソディ
    • 天使の繭
  • 羅陵王』(1988年、白泉社、JETS COMICSISBN 4-592-13120-7
    • 羅陵王(『LaLa』1985年12月号)
    • A(アレフ)(原案:徳永メイ「マーテル・ノストラ」[24])(『グレープフルーツ』第23号、1985年8月25日)
    • タオピ(原案:徳永メイ)(『プチフラワー』1987年11月号)
    • 緑柱庭園(佐藤史生 (編) アンソロジー単行本『吉祥花人』白泉社、1987年8月31日)
  • やどり木』(1988年、新書館、ペーパームーンコミックス)ISBN 4-403-61149-4
    • やどり木(『グレープフルーツ』第34号 - 第37号、1987年6月25日 - 12月25日)
    • まさかのときのハーレクイン・ロマンス(『グレープフルーツ』第31号、1986年12月25日)
    • バナナ・トリップに最良の日(『ASUKA』1985年9月号)
  • →『やどり木』(2014年、復刊ドットコム、佐藤史生コレクション)ISBN 4-8354-4999-1
    • 〔上記3作品再録〕
  • チェンジリング』(1989年、小学館、PFコミックス)ISBN 4-09-178692-8
    • チェンジリング(『プチフラワー』1989年3月号)
    • ネペンティス(『プチフラワー』1989年5月号)
    • 塵の天使(『プチフラワー』1989年1月号)
    • オフィーリア探し(原案:徳永メイ)(『プチフラワー』1989年7月号)
    • タイマー(『グレープフルーツ』第27号、1986年4月25日)
  • 精霊王』(1989年、小学館、PFビッグコミックスISBN 4-09-178693-6
    • 精霊王(原案:徳永メイ)(『プチフラワー』1988年8月号 - 10月号)
    • アシラム(原案:徳永メイ)(単行本描き下し)
    • ハヌマンを探して(『グレープフルーツ』第6号、1982年10月25日)
  • →『精霊王-徳永メイ原案作品集-』(2001年、小学館、小学館文庫ISBN 4-09-191118-8
    • 精霊王
    • アシラム
    • オフィーリア探し
    • A (アレフ)
    • タオピ
  • 竜の姫君増山のりえ (編)『アリス・ブックⅠ』新潮社、1991年9月25日) → 夢みる惑星#既刊一覧 参照
  • 鬼追うもの』(1995年、小学館、PFコミックス)ISBN 4-09-172211-3
    • 鬼追うもの(『プチフラワー』1994年7月号)
    • 神遣い(『プチフラワー』1995年1月号、3月号、5月号)
  • 心臓のない巨人』(1999年、小学館、PFコミックス)ISBN 4-09-172212-1
    • 心臓のない巨人(『プチフラワー』1998年11月号、1999年1月号)
    • バビロンまで何マイル(『プチフラワー』1997年1月号、3月号)
  • 魔術師さがし』(2000年、小学館、PFコミックス)ISBN 4-09-172213-X
    • 魔術師さがし(『プチフラワー』2000年1月号、3月号、5月号)
    • 魔術師さがし/番外編 ~暗喩、換喩または擬人的表現(単行本描き下し)
    • まるたの女(『プチフラワー』1988年7月号)
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関連人物

徳永メイ(とくなが めい)
漫画家、漫画原作者。佐藤史生のアシスタントをしていた1980年代半ばに、「A(アレフ)」「タオピ」「精霊王」「アシラム」「オフィーリア探し」の5作品の原案を提供している[1][24]

増山法恵(ますやま のりえ)
漫画原作者、小説家、評論家。増山のりえとも書く。竹宮惠子・萩尾望都の近所に住んでいた1971年に、萩尾宛の佐藤からのファンレターを読み、遊びに来るよう招待した[25]。増山は佐藤と意気投合し、生涯にわたり親交を結んだ[1]。1991年、増山が編集した漫画短編集『アリスブック』に、佐藤は新作「竜の姫君」を寄稿している[26]。石ノ森章太郎ふるさと記念館での『佐藤史生展』(2009-2010年)に際しては、佐藤の漫画・イラスト原稿等を預かり、保管していたという[20]。2021年没。

注釈

  1. 生年月日は萩尾望都 (2021)[1] および穴沢ほか編 (2024)[2] による。1952年12月6日生とする説もあり、復刊ドットコム〈佐藤史生コレクション〉のカバー等で採用されている。後者の説では、高校卒業は1971年3月で、その年のうちに萩尾や竹宮恵子ほかの漫画家(の卵)たちと親交を結んだことになる。また、2010年4月4日に死去した際は満57歳であった計算になるから、当時の報道による「59歳」[3][4] という表現と一致しない(数え年による情報がそのまま流れた可能性はある[5])。
  2. 穴沢ほか編 (2024)[2] 巻末の「佐藤史生 作品リスト」(200-203頁、作成:図書の家)による。1982年には、佐藤は『プチフラワー』誌の『夢みる惑星』連載を抱え、さらに『グレープフルーツ』誌にも『七生子シリーズ』「馬祀祭」「この貧しき地上に」などをほぼ毎号載せていた。この状況を佐藤は「悪夢」と評し、「ナチュラルな状態だと、年二本くらいが才に見合った本数」とする[16]
  3. 2001年以降も、既刊作品を再録したアンソロジー等が出版されている[17]。佐藤は『プチフラワー』2001年7月号が再録した「金星樹」について、「トーンなど効果を加えました」と語っており[15]、これが確認できる最後の仕事である。
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出典

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