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硬口蓋鼻音
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硬口蓋鼻音(こうこうがい びおん、英語: Palatal nasal)とは子音の類型の一つ。前舌と硬口蓋で閉鎖を作り、口蓋帆を下げて呼気を鼻へも通すことによって生じる音。国際音声字母で [ɲ] と記述される[1]。この文字 ⟨ɲ⟩ は、右側の縦画の下部から右向きに伸びる鉤をもつそり舌鼻音の記号 ⟨ɳ⟩ や、右側の縦画の下部から左向きに伸びる鉤をもつ軟口蓋鼻音の記号 ⟨ŋ⟩ に視覚的に類似している。
IPA におけるこの記号は、鼻音性を表す ⟨n⟩ と口蓋化を示す ⟨j⟩ に由来する[2]。スペイン語およびその正書法の影響を受けた言語では、この音は ⟨ñ⟩ の文字によって表され、「エニェ(eñe)」([ˈeɲe]) と呼ばれる。フランス語およびイタリア語の正書法では、⟨gn⟩ の二重字がこの音を示す。オクシタン語では ⟨nh⟩ の二重字が用いられ、これは同じくポルトガル語の二重字 ⟨nh⟩(エネ=アガ、ene-agá、「en-aitch」の意)の起源となった。この綴字は、ベトナム語などポルトガル語の正書法の影響を受けた諸言語にも採用されている[3][4]。カタルーニャ語、ハンガリー語、アラゴン語、スワヒリ語やディンカ語など多くのアフリカ諸語では、⟨ny⟩ の二重字が用いられる。アルバニア語およびセルボ・クロアチア語では、⟨nj⟩ の二重字が使用され、また、かつてユーゴスラヴィアに属していたキリル文字使用言語では、公式アルファベットの一部としてキリル文字合字 ⟨Њњ⟩ が用いられる場合がある。チェコ語およびスロヴァキア語では /ɲ/ は文字 ⟨ň⟩ によって表されるのに対し、カシューブ語およびポーランド語では ⟨ń⟩ が用いられる。ラトビア語およびリヴォニア語では ⟨ņ⟩ が使用され、ベンガル語では文字 ⟨ঞ⟩ によって表される。
⟨ɲ⟩ として転写される音は、実際にはしばしば有声歯茎硬口蓋鼻音である。この音を表す専用の記号は国際音声記号に存在しないため、⟨ɲ⟩ が使用される理由の一つとなっている。より精密な表記が求められる場合、⟨n̠ʲ⟩ として転写されることもある。国際音声記号以外の文字としては、U+0235 の「ȵ」(LATIN SMALL LETTER N WITH CURL)があり、これは ⟨n⟩ に歯茎硬口蓋摩擦音 ⟨ɕ, ʑ⟩ の記号に見られる鉤を加えたものであり、特に中国語学の分野において用いられている。
歯茎硬口蓋鼻音は一般に口蓋鼻音として記述されるが、ある言語が真の口蓋鼻音をもつかどうかはしばしば明確でない。例えば、ポルトガル語のように口蓋鼻音をもつとされる多くの言語は、実際には歯茎硬口蓋鼻音をもっていると考えられる(この点については議論がある)。ここに挙げられた諸言語のうちいくつかについても、このことが当てはまる可能性が高い。アイルランド語の一部方言や、マラヤーラム語の非標準方言の一部においては、歯茎硬口蓋鼻音と口蓋鼻音が対立すると報告されている[5][6]。口蓋鼻音は、口蓋閉鎖音 [c, ɟ] よりも一般的に多く見られる[7]。
日本語の「に」および「にゃ」「にゅ」「にょ」の頭子音に表れることがある。ただし、日本語の「に」等は口蓋化した歯茎鼻音の [nʲi] や、歯茎硬口蓋鼻音の [ɲ̟i] が一般的である。これらの子音を表記するのに [ɲ] の記号が使われることがあるが、国際音声記号と同じ使い方ではない。
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特徴
言語例
要約
視点
歯茎硬口蓋または硬口蓋
後部硬口蓋音
いくつかの言語には、後部硬口蓋鼻音(または前軟口蓋音、前寄り軟口蓋音などとも呼ばれる)が存在する。
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出典
参照文献
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