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空母打撃群 (イギリス海軍)
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本稿では、イギリス海軍における空母打撃群(イギリスかいぐんにおけるくうぼだげきぐん)について述べる。艦隊は、イギリス空母打撃群(英語: UK Carrier Strike Group、略称:UKCSG)とも呼ばれ、2006年から国防戦略見直しによるハリアーGR.9が全機退役する2011年まで、インヴィンシブル級航空母艦を中心として編成されたもの、2015年からクイーン・エリザベス級航空母艦の就役に先立って編成されたものが存在する[1]。
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概要
任務
空母打撃群は、イギリスの権益を保護するための空母が可能とする戦力投射(英語: Carrier Enabled Power Projection、略称:CEPP)を主な任務とする。クイーン・エリザベス級航空母艦2隻のうち1隻と、護衛の水上艦艇および潜水艦で構成され[2]、2015年戦略防衛安全保障見直しでは1個空母打撃群のみを編成する計画であったが[3] 、2023年以降は2個空母打撃群が編成され、1個は即応態勢、もう1個は非即応態勢となり、必要に応じて統合運用できるようになっている[4]。
編成
空母打撃群の構成は運用計画中の要件によって異なり[5]、標準構成はクイーン・エリザベス級航空母艦1隻、45型駆逐艦および23型フリゲート各1隻、補給艦、アスチュート級原子力潜水艦となっている[6]。なお、護衛艦には将来的に26型フリゲートと31型フリゲートが追加される予定である[7]。艦隊に随伴する補給艦は、補助艦隊所属のフォート・ヴィクトリア級補給艦またはタイド型給油艦が担う[8]。
また、空母打撃群を支援するため、バーレーンやオマーンなどに統合支援基地などの支援施設を多数設置している[9]。
クイーン・エリザベス級航空母艦の艦載機は、標準編成ではF-35B戦闘機36機、マーリンHM.2 クロウズネスト早期警戒ヘリコプター3機、マーリンHM.2哨戒ヘリコプター9機の計48機で、F-35B戦闘機は最大40機搭載可能である[10]。また、F-35B戦闘機24機とヘリコプター14機の計38機搭載した場合、作戦一日あたり延べ72機の出撃が可能となっている[10]。なお、沿岸機動パッケージの場合、チヌークおよびマーリン輸送ヘリコプターに加え、アパッチAH.1およびワイルドキャットAH.1攻撃ヘリコプターを搭載する場合がある[11]。
イギリス海軍では、艦載ヘリコプターの一部を2030年までに無人航空機に置き換え、攻撃、空中給油、電子戦、空中早期警戒任務の付与を目指している[12]。
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運用史
要約
視点
2006年 - 2011年

イギリス海軍においては、2006年にインヴィンシブル級航空母艦2隻(HMS イラストリアス、HMS アーク・ロイヤル)のいずれかを中心とした空母打撃群を編成し[1][13]、初代司令官にはアラン・リチャーズ海軍代将が就任した[1]。
2010年にアメリカ東海岸沖で実施されたアウリガ演習ではアーク・ロイヤル空母打撃群が展開し、アメリカ海軍との共同での演習の中でその能力を実証した。アウリガ演習参加時のアーク・ロイヤル空母打撃群は、艦載機はハリアーGR.9攻撃機、マーリンHM.1哨戒ヘリコプター、シーキング ASaC.7早期警戒ヘリコプターで構成され[14]、護衛艦はミサイル駆逐艦「リヴァプール」(HMS Liverpool, D92)、フリゲート「サザランド」(HMS Sutherland, F81)、フランス海軍の原子力潜水艦「ペルル」(Perle, S 606)、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦「バリー」(USS Barry, DDG-52)、補給艦はイギリス海軍補助艦隊の「フォート・ジョージ」(RFA Fort George, A388)で構成された[15]。
2010年の国防戦略見直しで空母アーク・ロイヤルの退役とともにハリアーGR.9攻撃機の全機退役が発表され、空母打撃群は2011年に解散し[1]、空母イラストリアスはハリアーGR.9退役後、ヘリコプター空母として運用されたが2014年に退役した[16]。
2015年 -

2015年にイギリス海軍は空母打撃群を再編成し、司令官にはジェリー・キッド海軍代将が就任した[17]。また、クイーン・エリザベス級航空母艦の就役に先立ち、アメリカ海軍やフランス海軍と協力して空母打撃群要員の人材育成に取り組んだ[18][19]。
クイーン・エリザベス級航空母艦ネームシップの「クイーン・エリザベス」(HMS Queen Elizabeth, R08)は2017年に就役し、2020年10月のジョイント・ウォーリア演習で初めて空母打撃群が編成され[20] 、護衛艦として駆逐艦「ダイヤモンド」(HMS Diamond, D34)、フリゲート「ノーザンバーランド」(HMS Northumberland, F238)、「ケント」(アメリカ海軍のミサイル駆逐艦「ザ・サリヴァンズ」(USS The Sullivans, DDG-68)、オランダ海軍のフリゲート「エヴァーツェン」(HNLMS Evertsen, F805)、随伴補給艦としてイギリス海軍補助艦隊の補給艦「フォート・ヴィクトリア」(RFA Fort Victoria, A387)、給油艦「タイドフォース」(RFA Tideforce, A139)で構成された[20]。空母打撃群としては2021年1月に初期作戦能力(英語: initial operating capability、略称:IOC)を獲得した[21]。
第21空母打撃群

空母クイーン・エリザベスがインド太平洋方面への展開のため、2021年5月22日にポーツマス海軍基地を出港[22]。随伴艦として、駆逐艦「ダイヤモンド」(HMS Diamond, D34)、「ディフェンダー」(HMS Defender, D36)、フリゲート「ケント」(HMS Kent, F78)、「リッチモンド」(HMS Richomond, F239)、原子力潜水艦「アートフル」(HMS Artful, S121)、イギリス海軍補助艦隊の補給艦「フォート・ヴィクトリア」(RFA Fort Victoria, A387)、給油艦「タイドスプリング」(RFA Tidespring, A136)が参加し[23]、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦「ザ・サリヴァンズ」(USS The Sullivans, DDG-68)、オランダ海軍のフリゲート「エヴァーツェン」(HNLMS Evertsen, F805)も合流した[23]。空母クイーン・エリザベスの艦載機では、イギリス空軍第617飛行隊のF-35B戦闘機8機、アメリカ海兵隊第211海兵戦闘攻撃飛行隊のF-35B戦闘機10機、イギリス海軍第820海軍飛行隊のマーリンHM.2哨戒ヘリコプターなどが搭載された[24]。
クイーン・エリザベス空母打撃群は5月末に大西洋でのステッドファスト・ディフェンダー演習、6月に地中海でのフランス主導のガリック・ストライク演習、イタリアなどとのファルコン・ストライク21演習に参加後、6月16日に艦載の第617飛行隊のF-35B戦闘機がシリアとイラクで実施されているシェーダー作戦に参加し、対ISILの実戦任務に従事した[22]。
7月6日にスエズ運河を通過して紅海に入ると、7月16日にはインド洋に到達し、7月21日から22日にかけてベンガル湾でインド海軍とのコンカン演習に参加[22]。7月25にはマラッカ海峡に到達して、マレーシア海軍、シンガポール海軍などとの演習を実施し、8月2日にルソン海峡を通過してフィリピン海に入った[22]。8月6日にグアムへ寄港後、太平洋上での大規模広域演習21(LSGE21)に参加、8月26日にアメリカ海軍の原子力空母「カール・ヴィンソン」(USS Carl Vinson, CVN-70)と統合相互運用飛行訓練を実施、9月2日に日英米蘭加共同のパシフィック・クラウン21演習に参加、9月4日に空母クイーン・エリザベスが日本のアメリカ海軍横須賀海軍施設に寄港した[22]。9月8日に横須賀を出港後、12月9日にポーツマス海軍基地へ帰還した。計244日におよんだ航海では、空母クイーン・エリザベスのみで49,000海里、艦隊全体では累計500,000海里を記録、艦載機は累計4,723飛行時間を記録した[25]。
なお、イギリス本土へ向けて航行中の11月16日、地中海で第617飛行隊のF-35B戦闘機1機が墜落事故を起こしている[26]。
第22空母打撃群
クイーン・エリザベス空母打撃群は、ヨーロッパの安全保障維持のためのアキリアン作戦に従事のため北海に展開。艦隊は駆逐艦「ダイヤモンド」(HMS Diamond, D34)、フリゲート「ケント」(HMS Kent, F78)、「リッチモンド」(HMS Richomond, F239)、給油艦「タイドサージ」(RFA Tidesurge, A138)、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦「ポール・イグナティウス」(USS Paul Ignatius, DDG-117)、フランス海軍の駆逐艦「アキテーヌ」(Aquitaine, D 650)で構成された[27]。
第23空母打撃群
2023年9月にクイーン・エリザベス空母打撃群は、ファイア・ドレイク作戦として北ヨーロッパ海域に展開し、北大西洋条約機構(NATO)パートナー国との演習を実施。艦隊は駆逐艦「ダイヤモンド」(HMS Diamond, D34)、フリゲート「ケント」(HMS Kent, F78)、「ポートランド」(HMS Portland, F79)、ノルウェー海軍のフリゲート「オットー・スヴェルトルップ」(KNM Otto Sverdrup, F 312)で構成され、フランス、オランダ、ドイツ、ベルギー、ノルウェーなどの艦艇とともに活動した[28]。
第24空母打撃群

2024年1月、NATOの大規模軍事演習「ステッドファスト・ディフェンダー24」への参加が発表され、空母クイーン・エリザベス参加予定であったが、定期検査で右舷プロペラシャフトの損傷が判明したため取り止めとなり[29]、代わって空母「プリンス・オブ・ウェールズ」(HMS Prince of Wales, R09)が参加することとなった[30]。
プリンス・オブ・ウェールズ空母打撃群は、護衛艦にフリゲート「ポートランド」(HMS Portland, F79)、カナダ海軍のフリゲート「シャーロットタウン」(HMCS Charlottetown, FFH 339)、スペイン海軍のフリゲート「クリストーバル・コロン」(Cristóbal Colón, F-105)、デンマーク海軍のフリゲート「ニルス・ユール」(HDMS Niels Juel, F363)、随伴補給艦としてタイド型給油艦2隻で構成された[31][32]。
イギリス主導で開催されたジョイント・ウォーリア演習では、ノルウェー沖で30隻以上の艦船と潜水艦4隻などと活動を共にし[33]、ノルウェー主導のノルディック・レスポンス演習ではNATOの両用戦艦艇と合流して総勢15隻の艦隊となっている[34]。
第25空母打撃群

イギリス政府は2023年12月、空母打撃群を2025年に太平洋方面へ派遣することを発表[35]。2025年4月22日にハイマスト作戦として、空母プリンス・オブ・ウェールズがポーツマス海軍基地を出港、随伴艦として駆逐艦「ドーントレス」(HMS Dauntless, D33)、フリゲート「リッチモンド」(HMS Richmond, F239)、原子力潜水艦「アスチュート」(HMS Astute, S119)、給油艦「タイドスプリング」(RFA Tidespring, A136)が参加し[36]、外国艦船としてスペイン海軍のフリゲート「メンデス・ヌニェス」(Méndez Núñez, F-104)、カナダ海軍のフリゲート「ヴィル・ド・ケベック」(HMCS Ville de Québec, FFH 332)、ノルウェー海軍のフリゲート「ロアール・アムンセン」(KNM Roald Amundsen, F 311)、給油艦「モード」(HNoMS Maud, A530)が合流した[37][38][39]。インド太平洋地域では、オーストラリア海軍のミサイル駆逐艦「シドニー」(HMAS Sydney, DDG42)、「ブリスベン」(HMAS Brisbane, DDG 41)、ニュージーランド海軍のフリゲート「テ・カハ」(HMNZS Te Kaha, F77)が艦隊に合流している[40][41]。空母プリンス・オブ・ウェールズの艦載機は、イギリス空軍第617飛行隊のF-35B戦闘機10機、イギリス海軍第809海軍飛行隊のF-35B戦闘機8機、第820海軍飛行隊のマーリンHM.2哨戒ヘリコプター4機、マーリンHM.2 クロウズネスト早期警戒ヘリコプター2機、第845海軍飛行隊のマーリンHC.4輸送ヘリコプター3機、第815海軍飛行隊のワイルドキャットHMA.2哨戒ヘリコプター1機のほか、実験・評価部隊の第700X海軍飛行隊のT-150無人航空機9機が搭載された[42]。
4月29日にジブラルタル海峡を抜けて地中海へ入り[43]、5月5日から11日にかけてイオニア海でイタリア海軍空母「カヴール」とのメッド・ストライク演習、NATOのネプチューン・ストライク演習に参加[44][45]、5月24日にスエズ運河を通過して航海に入り、6月9日から10日にかけてアラビア海でインド海軍との共同訓練を実施した[43][46][47][48]。
7月下旬にオーストラリア北部海域での多国間演習のタリスマン・セイバー演習に参加し[49]、8月にはフィリピン海でアメリカ海軍の「ジョージ・ワシントン」(USS George Washington, CVN-73)空母戦闘群、水陸両用戦隊、海上自衛隊のヘリコプター護衛艦「かが」(JS Kaga, DDH-184)との共同訓練を実施、訓練ではイギリス軍のF-35B戦闘機が初めて「かが」に着艦した[50]。
空母「プリンス・オブ・ウェールズ」は8月12日に日本のアメリカ海軍横須賀海軍施設に寄港[51]、整備等の後、日本を9月2日に出港[51] 、10月5日から8日にかけてインド洋でインド海軍とのコンカン25演習に参加した[52]。
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脚注
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