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裁判所記録廃棄問題

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裁判所記録廃棄問題(さいばんしょきろくはいきもんだい)とは、複数の重要な憲法判断が示された民事事件と重大な少年事件の記録が、各地の裁判所で廃棄されていたことが発覚した問題[1]

概要

裁判所が定める記録の保存規程(事件記録等保存規程)と調査記録規程(少年調査記録規程)において「史料又は参考資料となるべきものは、保存期間の満了後も保存(特別保存)しなければならない」と定められている[2]

2022年(令和4年)10月、1997年(平成9年)に発生した神戸連続児童殺傷事件の記録について、神戸家庭裁判所は保存期間満了後に特別保存にせず、2011年(平成23年)にすべての記録を廃棄していたことが報道機関の取材により発覚した[1][2][注釈 1]。最高裁判所は重大少年事件を含む事件記録が各地の家庭裁判所で破棄されている可能性があるとして、有識者委員会を立ち上げ事件記録の捜査を行った[1][2]。結果、全国の家庭裁判所で社会の耳目を集めた少年事件が複数廃棄されていることが発覚し、捜査の中で、特別保存されていた民事事件の記録も廃棄されていることが発覚した[2]。最高裁は少年事件や民事裁判およそ100件を対象に調査を行い2023年5月25日、最高裁は報告書を発表、記者会見を行った[1]

調査結果として、『検討されたもの』『検討すらされないもの』『特別保存されていたもの』『特別保存された後に廃棄されていたもの』合わせて少年事件53件、民事裁判35件(内訳は下記記載)が破棄されていたことがわかった[1][2]

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経緯

裁判所が定める記録の保存規程「事件記録等保存規程」(昭和39年最高裁判所規程第8号)と調査記録規程「少年調査記録規程」(昭和29年最高裁判所規程第5号)において「史料又は参考資料となるべきものは、保存期間の満了後も保存しなければならない」と定められている(この規定による保存を「2項特別保存」という)[2]

神戸連続児童殺傷事件について、神戸家庭裁判所は保存期間満了後に2項特別保存にせず、記録を廃棄していた[2][1]。報道機関の取材を通じ最高裁もこれを知ることとなり、これを発端に調査を行い、少年事件の記録や特別保存されていた民事事件が複数廃棄されていたことが明らかになった[2]。刑事事件を除く134件の事件記録について保存状況を調査した際、116件の事件記録について2項特別保存をされずに廃棄されていることが確認されており、全国的に適用が適切にされていない状況が明らかになった[3]

2019年平成31年)2月に東京地方裁判所で記録廃棄が明らかになった際、最高裁は保存期間が満了した全記録について破棄の保留をするよう各裁判所に事務連絡を出している。上記の調査を行った上で東京地裁が策定した2項特別保存の運用要領(東京地裁の運用要領)を全国に提供し運営要領を適切に行われるよう問題意識を喚起した[4]

神戸連続児童殺傷事件を含む多くの破棄された少年事件は運用要領の策定以前の事柄であるものの、重く受け止め適切な保存と運用が必要であると判断をした[4]

2022年(令和4年)10月25日、再び保存期間満了の少年事件を含む全記録について有識者委員会の意見を聴取しつつ調査・検討を勧めていくとした[4]

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結果

2023年5月25日、最高裁は報告書を発表、記者会見を行った[1]。裁判所の報告書より、下記の記録が廃棄されていることが明らかになった。[2][5]

  • 2項特別保存される可能性が高かったにもかかわらず、判断がされなかった事案(類型Ⅰ少年事件4件)
  • 対象記録を廃棄対象であることを意識した上で検討されなかった事案(類型Ⅱ少年事件7件)
  • 対象記録が保存されている意識もなく廃棄対象であることも認識されなかった案型(類型Ⅲ少年事件39件、民事事件35件 )
  • 要領策定後に廃棄された事案(類型Ⅳ 3件)
  • 特別保存された後破棄された事案(7件)

原因の一端

  • 民事事件の判決原本の永久保存とされていた1992年(平成4年)頃は保存期間50年を超えた判決原本が全国で2200fmの厚さに及んだ。紙質の劣化などがあり、永久保存の廃止について強い要望があった。1992年1月より保存規定の改定により判決原本の保存期間は50年となり保存期間が経過した原本は順次廃棄されるようになった[6]。刑事事件においては1992年2月7日付けの運用通達により事件記録を2項特別保存にする場合その旨を最高裁に報告する制度が新設された。プリンター等の普及により紙が分厚くなったことも影響し、記録庫の狭隘化が深刻となった。円滑な事務処理のための解決策として1999年(平成11年)に保存期間の見直しが行われた。民事訴訟事件の事件記録については保存期間が10年から5年に短縮され、2019年2月に至るまで大きな改定がされることはなく、2項特別保存の件数も低迷な状況が続いていた[7]
  • 調査の結果、2019年(令和2年)2月、運用要領策定以前は2項特別保存に係る事務処理の要領を策定していた庁は2割にとどまり、特別保存の判断の明確化がされていない状況だった[8]
  • 要領改定後においても2項特別保存すべきか裁量を残す事例が存在していた事[9]
  • 繁忙によるヒューマンエラー、不十分な引き継ぎによる誤った廃棄[10]
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対象記録

要約
視点

裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書(本体)より一部引用

少年事件(廃棄事案)

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少年事件(特別保存された事案)

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民事事件等(廃棄事案)

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民事事件等(特別保存された事案)

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民事事件等(特別保存後破棄)

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対象記録外に発覚している廃棄事案

上記の事件記録以外にも、名古屋家裁が2022年(令和4年)10月に調査したところ、大高緑地アベック殺人事件(1988年)、木曽川・長良川連続リンチ殺人事件(1994年)、西尾ストーカー殺人事件(1999年)、名古屋中学生5000万円恐喝事件(2000年)などといった重大少年事件の記録が廃棄されていたことが判明している[19]

脚注

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関連項目

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外部リンク

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