水素化リチウム

水素化リチウム（すいそかリチウム、lithium hydride）とは、組成式LiHで表されるリチウムと水素から成る無機化合物である。

水素化リチウム
リチウムカチオン, Li+   水素アニオン, H−
__H−  __Li+ 水素化リチウムの構造
識別情報
CAS登録番号	7580-67-8
3D model (JSmol)	Interactive image
ChemSpider	56460
ECHA InfoCard	100.028.623
PubChem CID	62714
RTECS number	OJ6300000
UNII	68KF447EX3
CompTox Dashboard (EPA)	DTXSID80893078
InChI InChI=1S/Li.Hssss  Key: SIAPCJWMELPYOE-UHFFFAOYSA-N  InChI=1/Li.H/q+1;-1 Key: SRTHRWZAMDZJOS-UHFFFAOYAZ
SMILES [H-].[Li+]
特性
化学式	HLi
モル質量	7.95 g mol−1
外観	無色または灰色の固体[1]
密度	0.78 g/cm3[1]
融点	688.7℃ [1]
沸点	900～1000℃ (分解[2])
水への溶解度	水と反応する
溶解度	ジメチルホルムアミドにやや溶ける アンモニア、ジエチルエーテル、エタノールと反応する
磁化率	−4.6·10−6 cm3/mol
屈折率 (nD)	1.9847[3]:43
構造
結晶構造	fcc (NaClタイプ)
格子定数	a = 0.40834 nm[3]:56
双極子モーメント	6.0 D[3]:35
熱化学
標準生成熱 ΔfHo	−90.65 kJ/mol
標準モルエントロピー So	170.8 J/(mol·K)
標準定圧モル比熱, Cpo	3.51 J/(g·K)
危険性
労働安全衛生 (OHS/OSH):
主な危険性	極めて強い刺激性、強毒性、強い腐食性
GHS表示:
絵表示
重要な用語	Danger
危険性報告	H260, H301, H314
予防報告	P223, P231+P232, P260, P264, P270, P280, P301+P316, P301+P330+P331, P302+P335+P334, P302+P361+P354, P304+P340, P305+P354+P338, P316, P321, P330, P363, P370+P378, P402+P404, P405, P501
NFPA 704（ファイア・ダイアモンド）	3 2 2 W
発火点	200 °C (392 °F; 473 K)
致死量または濃度 (LD, LC)
半数致死量 LD50	77.5 mg/kg (経口, ラット)[4]
半数致死濃度 LC50	22 mg/m3 (ラット, 4時間)[5]
NIOSH（米国の健康曝露限度）:
PEL	TWA 0.025 mg/m3[6]
REL	TWA 0.025 mg/m3[6]
IDLH	0.5 mg/m3[6]
安全データシート (SDS)	ICSC 0813
関連する物質
その他の 陽イオン	水素化ナトリウム 水素化カリウム 水素化ルビジウム 水素化セシウム
関連物質	水素化ホウ素リチウム 水素化アルミニウムリチウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

概要

水素雰囲気下で金属リチウムを赤熱することによって得られる無色の立方晶系イオン結晶でLi⁺とH^-からなる塩化ナトリウム型構造をとり、Li−H間距離は2.04Åである。融点は680℃で、720℃で分解する。市販品は白から灰色の固体であるが、純粋なものは青灰色である。アルカリ金属の水素化物中で最も安定で、乾燥空気中では常温で分解しないが、光に当たると分解して黒くなる。空気中の水分とも反応する。

水と激しく反応して水酸化リチウムと水素を生ずる。

${\displaystyle {\ce {LiH\ + H2O -> LiOH\ + H2}}}$

あるいは強酸化剤と反応しても水素を発生する。

ジエチルエーテルにわずかに溶けるので、有機化学で還元剤に用いられる。

塩化アルミニウムと反応させ水素化アルミニウムリチウム LiAlH₄ の製造原料とする。

取扱いには注意が必要である。湿った空気中で粉末を扱うのは危険が伴う。また、腐食性があり、皮膚などに付着したときは流水で洗い流す必要がある。

重水素化リチウム（化学式:LiD、特に重水素化リチウム6）は核融合兵器の主原料の一つである^[7]。

関連項目

• リチウム
• 水素化アルミニウムリチウム
• 重水素