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アメリカの長距離旅客列車の運営組織 ウィキペディアから
全米鉄道旅客公社(ぜんべいてつどうりょかくこうしゃ、アメリカ英語: National Railroad Passenger Corporation)、通称アムトラック(Amtrak)は、アメリカ合衆国で1971年に発足した、全米を結んでいる[注 1]鉄道旅客輸送を運営する公共企業体。連邦政府出資の株式会社という形態をとっている。通称のアムトラックはAmerica と Track(線路、軌道などの意)の二つの語から合成されたものである。
2016年現在の運転路線図 (連絡バス路線・長期運休区間を含まない) | |
種類 | 公社 (GOC) |
---|---|
略称 | アムトラック (Amtrak) |
本社所在地 |
アメリカ合衆国 ワシントンD.C. |
設立 | 1971年5月1日 |
業種 | 陸運業(相当) |
事業内容 | 旅客鉄道 |
従業員数 | 1万9000 |
主要株主 | アメリカ合衆国連邦政府 |
外部リンク | https://www.amtrak.com |
第二次世界大戦後、航空や自動車輸送の台頭により、アメリカの鉄道旅客輸送量は減少の一途をたどっていたが、その傾向は1960年代に加速し、この時期、多くの鉄道会社が旅客営業の廃止に踏み切り、残存するわずかな旅客列車についてもその存続が危ぶまれた。アメリカには国有鉄道が存在した時代がなかった[注 2]が、旅客鉄道を維持するために連邦政府が介入することになった。こうして、各地域の鉄道会社の旅客輸送部門を統合した全国一元的な組織としてアムトラックが設立された。
アムトラックが線路を所有している区間は北東回廊など運行区間のごく一部のみであり、その他の地区では大手貨物鉄道会社(一級鉄道)の線路を借りてアムトラックが旅客列車を運行している。日本の第二種鉄道事業者の形態に近く、JR旅客会社とJR貨物(日本貨物鉄道)の立場を逆転した形になっている。
また、ロサンゼルス近郊地域の通勤輸送を担うメトロリンクなど、都市圏の旅客列車の一部の運行委託も請け負っている。
アムトラックの発足直後に起こったオイルショックは、石油類高騰に伴う自動車や航空機の燃料コストの増大から、コスト面で安価となる鉄道輸送にとって有利に働いた時期もあったが、1980年代の航空規制緩和法等による航空産業の規制緩和を契機に、アメリカ南西部を中心にサウスウエスト航空が勢力を伸ばしたほか、世界規模での格安航空会社の成功とビジネスモデルの確立により、中・長距離都市間連絡路線を中心に鉄道の利用客を奪われる形となった。利用が低迷したため鉄道運行技術も世界的に見ても決して高いとはいえず、こうした事情もあり、経営状態は最近に至るまでも厳しいもので、連邦政府や運行地域の一部の州からの財政援助に頼ってきたのが現状である。
2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件以降、アメリカでは多くの旅客が民間航空機による移動を避けてアムトラックなどの航空機以外の移動手段を選択したため、一時的な業績回復がみられたものの、2000年頃からは重大な鉄道事故を頻繁に起こしている。
さらに、北東回廊以外の地区では各貨物鉄道会社の貨物列車、次いで高額な使用料を払う別会社の貨物列車が優先的に線路を使用しているため、アムトラックの旅客列車が数時間の遅延で運行されることも珍しくない。
アムトラックはそれぞれの列車に名前を付けている。北東回廊線や一部の短距離都市間列車を除いて、1日1本から週3本程度の運行である。 一部の都市には、最寄駅から連絡バス(en:Amtrak Thruway Motorcoach)を運行している(例:駅のあるオークランドあるいはエメリービルから、駅の存在しない主要都市サンフランシスコへ連絡バスが運行されている)。
列車名 | 英文列車名 | 始発駅 - 主な経由地 - 終着駅 | 頻度・概要 |
---|---|---|---|
アセラ・エクスプレス | Acela Express | ボストン - ニューヨーク - ワシントンD.C. | 毎日運行(高速列車)。 |
アディロンダック | Adirondack | カナダ・モントリオール - ニューヨーク | 毎日運行(国際列車)。 |
アムトラック・カスケーズ | Amtrak Cascades | カナダ・バンクーバー - シアトル - ユージーン | 毎日数便運行[注 3]。 |
オート・トレイン[注 4] | Auto Train | ロートン - サンフォード[注 5] | 毎日運行。 |
ブルー・ウォーター | Blue Water | シカゴ - ポートヒューロン | 毎日1往復。ミシガン・サービスの一路線。 |
カリフォルニア・ゼファー | California Zephyr | シカゴ - デンバー - ソルトレイクシティ - エメリービル | 毎日運行。 |
キャピトル・コリドー | Capitol Corridor | オーバーン - サンノゼ | 毎日数便運行[注 6]。 |
キャピトル・リミテッド | Capitol Limited | ワシントンD.C. - シカゴ | 毎日運行。 |
カーディナル | Cardinal | ニューヨーク - シンシナティ - シカゴ | 週に3日運行。 |
カール・サンドバーグ | Carl Sandburg | シカゴ - クインシー | 毎日運行。イリノイ・サービスの一路線[注 7]。 |
カロリニアン | Carolinian | ニューヨーク - シャーロット | 毎日運行。 |
シティ・オブ・ニューオーリンズ | City of New Orleans | シカゴ - メンフィス - ニューオーリンズ | 毎日運行。 |
コースト・スターライト | Coast Starlight | シアトル - ロサンゼルス | 毎日運行。 |
クレセント | Crescent | ニューヨーク - ワシントンD.C. - アトランタ - ニューオーリンズ | 毎日運行。 |
ダウンイースター | Downeaster | ポートランド - ボストン | 毎日数便運行。 |
エンパイア・ビルダー | Empire Builder | シカゴ - スポケーン - ポートランド/シアトル[注 8] | 毎日運行。 |
エンパイア・サービス | Empire Service | ニューヨーク - ナイアガラフォールズ | 毎日数便運行。 |
イーサン・アレン・エクスプレス | Ethan Allen Express | ラットランド - ニューヨーク | 毎日運行。 |
ハートランド・フライヤー | Heartland Flyer | オクラホマシティ - フォートワース | 毎日運行。 |
ハイアワサ・サービス | Hiawatha Service | ミルウォーキー - シカゴ | 毎日数便運行。 |
フージアー・ステート | Hoosier State | インディアナポリス - シカゴ | 毎日運行[注 9]。 |
イリニ・サルーキ | Illini and Saluki | シカゴ - カーボンデール | 毎日運行。イリノイ・サービスの一路線。
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イリノイ・サービス[注 10] | Illinois Service | シカゴ - クインシー/カーボンデール/セントルイス | 毎日運行。 |
イリノイ・ゼファー | Illinois Zephyr | シカゴ - クインシー | 毎日運行。イリノイ・サービスの一路線。 |
キーストーン・サービス | Keystone Service | ニューヨーク - ハリスバーグ | 毎日十数便運行。 |
レイクショア・リミテッド | Lake Shore Limited | ニューヨーク/ボストン[注 11] - オールバニ - トレド - シカゴ | 毎日運行。 |
リンカーン・サービス | Lincoln Service | シカゴ - セントルイス | 毎日数便。イリノイ・サービスの一路線。 |
メープルリーフ | Maple Leaf | トロント - ナイアガラフォールズ - ニューヨーク | 毎日運行(国際列車)。 |
ミシガン・サービス[注 12] | Michigan Services | シカゴ - ポートヒューロン/グランドラピッズ/ポンティアック | 毎日運行。 |
ミズーリ・リバー・ランナー | Missouri River Runner | カンザスシティ - セントルイス | 毎日運行。 |
ノースイースト・リージョナル | Northeast Regional | ボストン/スプリングフィールド - ニューポートニューズ | 毎日運行。「アセラ・エクスプレス」とほぼ同じ区間を走り、停車駅が多い。 |
パシフィック・サーフライナー[注 13] | Pacific Surfliner | サンルイスオビスポ - サンタバーバラ - ロサンゼルス - サンディエゴ | 毎日数便[注 14]。 |
パルメット | Palmetto | ニューヨーク - サバンナ | 毎日運行。 |
ペンシルベニアン | Pennsylvanian | ニューヨーク - ピッツバーグ | 毎日運行。 |
ペレ・マルケット | Pere Marquette | シカゴ - グランドラピッズ | 毎日1往復。ミシガン・サービスの一路線。 |
ピードモント | Piedmont | ローリー - シャーロット | 毎日運行。 |
サン・ホアキン | San Joaquin | ベーカーズフィールド - オークランド/サクラメント | 毎日12便運行 |
シルバー・メティオ | Silver Meteor | ニューヨーク - ワシントンD.C. - チャールストン - オーランド - マイアミ | 毎日運行。シルバー・サービスの一路線。 |
シルバー・サービス[注 15] | Silver Service | ニューヨーク - マイアミ | 毎日運行。 |
シルバー・スター | Silver Star | ニューヨーク - ワシントンD.C. - コロンビア - オーランド - タンパ - マイアミ | 毎日運行。シルバー・サービスの一路線。 |
サウスウェスト・チーフ | Southwest Chief | シカゴ - カンザスシティ - アルバカーキ - フラッグスタッフ - ロサンゼルス | 毎日運行。 |
サンセット・リミテッド | Sunset Limited | (オーランド[注 16] - )ニューオーリンズ - ヒューストン - サンアントニオ - エルパソ (テキサス州) - ロサンゼルス | 週に3日運行。 |
テキサス・イーグル | Texas Eagle | シカゴ - リトルロック - ダラス - サンアントニオ( - ロサンゼルス) | 毎日運行[注 17]。 |
バーモンター | Vermonter | セントオールバンズ - ワシントンD.C. | 毎日運行。 |
ウォルヴァリン | Wolverine | シカゴ - デトロイト - ポンティアック | 毎日3往復運行。ミシガン・サービスの一路線。 |
アムトラックが自社保有する区間は以下の通りである。
多くの列車は原則として機関車が客車を牽引する形で運転される。東海岸の高速列車「アセラ・エクスプレス」、西海岸北部のタルゴ列車「アムトラック・カスケーズ」などごく一部の列車は固定編成を組んでいるが、多くの客車は1両単位での増減が可能で、利用状況に応じて増車・減車が行われることもある。 電化区間は東海岸の北東回廊のボストン - ニューヨーク - ワシントンD.C.間、キーストーン回廊のフィラデルフィア - ハリスバーグ間とごくわずかであり、ほとんどの路線はディーゼル機関車牽引の客車列車として運転される。 一部の短距離・中距離列車では電車から制御車に改造した車両や機関車からディーゼルエンジンを取り外し制御車化改造したノン・パワード・コントロール・ユニット(Non-powered Control Unit, 略:NPCU)と呼ばれる車両、あるいは新造の制御車によるプッシュプル運転が行われている。
いずれも全車引退済み。
基本的には、指定席で予約を入れる必要があるが、一部列車には自由席もある。
なお、窓口で乗車券を購入する際には、防犯対策のためパスポートなどの身分証明書の提示が必要である。公式ウェブサイトでの予約も受け付けており、航空券と同様に発着駅の3文字のコードと、QRコードのついた「eチケット」が電子メールで発行される。AAA等の割引もあり、日本のJAF会員も割引の恩恵が受けられる。
編成は路線によりさまざまであるが、座席車(コーチ)に加え、数両にカフェ合造車(コーチカフェ)や荷物合造車(バゲージコーチ)などが連結されている列車も多い。列車によってはビジネスクラス車も連結される。
全区間の所要時間が15時間を越える14の列車には、寝台車(スリーパー)および食堂車(ダイナー)が連結されている。この場合は食堂車の隣にラウンジ車が連結されていることが多い。特殊な例としてはオートトレイン用の車運車(オートラック)がある。なお、いずれの列車も座席車が必ず連結されており、寝台車のみで構成された列車は存在しない。
路線により通勤列車、近隣の都市間の移動用、観光用の長距離列車と性格が異なるため、利用客も様々である。
寝台車の旅客と座席車の旅客では待遇にかなりの差がある。例えば、寝台車のシャワーを座席車の旅客が使うことはできず、寝台車の旅客がソフトドリンク飲み放題であるのに対し、座席車の旅客はすべて有料である。また、座席車の旅客には枕のみ無料で提供されてきたが、2013年8月より空気枕やブランケット等をパックした「パッセンジャー・コンフォート・キット」を車内売店で8ドル、あるいは通信販売によって送料含め15ドルで供給する形に改められた[20]。
北東回廊線はアムトラックのドル箱路線であるが、都市間バス(グレイハウンド、トレイルウェイズ、中華系資本会社など複数あり)や国内航空(シャトル便)との競合が激しく、ビジネス客の獲得に力を入れている。カリフォルニアの3路線(キャピトル・コリドー、サン・ホアキン、パシフィック・サーフライナー)も幅広い客層で一定の乗客数を確保している。2008年8月現在は無人駅への自動列車案内システムの導入や、カリフォルニア州でBART、カルトレインといった地域交通機関との連携も積極的に進めている。
2013年2月17日時点で駅数は529[21]。年間乗降客数1位の駅はニューヨークのペンシルベニア駅(881万4,975人/年、2万4,150人/日)で、2位以下は1万人/日以下である。
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