偏微分方程式の数値解法
偏微分方程式を数値的に解く技術の総称 ウィキペディアから
偏微分方程式の数値解法 (へんびぶんほうていしきのすうちかいほう、英: Numerical methods for PDEs) は、数値解析において偏微分方程式を数値的に解く技術の総称である[1][2]。
背景
要約
視点
数値解法の必要性
これまで様々な自然現象 (物理現象など) を記述するために多くの偏微分方程式が作られ、多くの数学者たちがその解法を探求してきたが、ソリトン方程式に対する広田の方法[3]やen:inverse scattering transform[4] などを除いて、偏微分方程式を手計算だけで厳密に解く技術はほとんどないに等しい。そのため多くの研究者たちが偏微分方程式を数値的に解く技術について研究をしてきた[1][2]。
差分法とその問題点
→詳細は「差分法」を参照
偏微分方程式を数値的に解く技術の中で最も初歩的なものは差分法である。これは微分を差分で近似して解くというものである[1][2]。
この方法で精度良く解けるということは少なからずあるが、万能な解法ではない。例えば
などは非線形性によって差分法では精度の良い計算ができず、数値実験結果だけを見ていると間違った結論 (幻影解) にたどり着く危険がある。そのため、有限要素法・有限体積法などのように差分法以外の方法が追求されると同時に[1][2]、よりよい差分化を模索する動きが始まった。
差分法の進化
ここで言う「よりよい差分化」とは、元の方程式が持つ何らかの性質を保存した差分化のことである。着目する性質によって流派が異なる。
可積分差分スキーム
→詳細は「可積分アルゴリズム」を参照
広田良吾[A 1][A 2][A 3][A 4][A 5]やAblowitzたち[4][A 6][A 7][A 8][A 9]は可積分性 (英: Integrability, 可積分系で最も重要視される性質) を保存する差分化スキームを開発した。これは今日では可積分差分スキームとして知られており、差分法などの標準的手法と比べて精度がよくなることもわかっている[A 10][A 11][A 12][A 13]。差分間隔を自動で調整する可積分差分スキームも開発されている[A 14]。
構造保存型数値解法
一方で、多くの偏微分方程式は物理現象に由来しているので、保存則・散逸則など何らかの物理的性質を保存した差分化も考えられる。このような差分解法は構造保存型数値解法 (英: Structure Preserving Numerical Methods) と総称される[A 15][A 16]。代表的なものとして、
汎用解法
可積分差分スキーム・構造保存型数値解法は高精度な解法だが、与えられた方程式の性質に依存するため、汎用性が低いという弱点がある。そのため現代でも、可積分差分スキーム・構造保存型数値解法の研究と並行して、高精度で汎用性のある差分法が研究されている。例えば、
- Shortley-Weller 近似[1][A 28][A 29][A 30]
- Swarztrauber-Sweet 近似[1][A 31][A 32][A 33]
- Ascher-Mattheij-Russell 差分公式[A 34][A 35]
等がある。
解の存在検証
ここまで高精度に解く技術について説明したが、それと並行して「計算機で解の存在を検証する」という研究もおこなわれている[8][9][10][11][B 1]。このような研究が必要となるのは、近似解が求まったとしてもそれが幻影解である危険性があるからである。実際、すでに幻影解は報告されている[8][B 2][B 3]。解の存在検証に関する研究は活発に行われており[8][9][10][11][B 4][B 5][B 6][B 7]、2012年度日本数学会秋季賞や2011年度日本応用数理学会論文賞[B 8]を受賞している。
固有値評価
解の一意存在性検証など、偏微分方程式に関連する多くの問題は微分作用素の固有値評価と密接に関係している[8]。そのため、偏微分方程式の近似解法・誤差評価の研究と並行して、固有値問題の近似解法[A 36][A 37][A 38][A 39][A 40][A 41]・誤差評価[B 4][B 9]について様々な研究がなされている。
関連する関数解析学の概念
関連ライブラリ・ソフトウェア
有限要素法
- FreeFem++[A 46][A 47][A 48][A 49]
- en:FEniCS Project[A 50][A 51][12][13]
- FEniCS - GitHub
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これまで解の存在検証・計算機援用証明が行われた方程式
主な研究者
日本
海外
- イズライル・ゲルファント (差分解法を開発[1])
- ピーター・ラックス (ラックス・フリードリヒ法、ラックス・ウェンドロフ法で知られる)
- ジョン・フォン・ノイマン (ノイマン・ディリクレ法、ノイマン・ノイマン法で知られる)
- ペーター・ドイフルハード (論文・著書を多数執筆[14])
出典
参考文献
外部リンク
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