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奄美語
琉球語の方言 ウィキペディアから
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奄美語(あまみご)または奄美方言(あまみほうげん)は、鹿児島県の奄美群島で話される言語(方言)である[2][3][4][5][6]。琉球諸語(琉球語、琉球方言)の一つ。
2009年2月にユネスコにより消滅危機言語の「危険」 (definitely endangered) と分類された[7][8]。1970年代以降は奄美語と日本語が融合したトンフツゴ(唐芋普通語)が広がり、現代では奄美語は衰退が進んでいる[9]。
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下位区分
母音の特徴から、北奄美(奄美大島、徳之島、喜界島北部)と、南奄美(喜界島南部、沖永良部島、与論島)に分ける研究もある[13][3]。(狩俣 2000)などは、南奄美と沖縄北部の類似性に着目して沖永良部与論沖縄北部諸方言を一つの区画と見るが[14]、Pellard(2015)はこの類似は歴史的な系統関係の反映ではないとする[5]。
各島間の方言差が大きいため、奄美語の標準語的な地位にある奄美大島北部の名瀬方言でも、沖永良部島や与論島ではほとんど通じない[2]。名瀬出身の田畑千秋が1970年代に調査した際には、自身の名瀬方言が喜界島では通じるが与論島では通じないことがあったという[9]。
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音韻
奄美大島・徳之島では、/i, ï(または/ɪ/), u, e, ɘ, o, a/ の7母音体系、またはこのうち /ɘ/ を欠いた6母音体系を持つ[注釈 1]。日本語本土方言の /o/ が /u/ になって元々の /u/ と統合している。また日本語の /e/ は中舌母音 /ï/ になって、/i/ との区別を保っている。/ɘ/ は連母音の融合により成立した音だが、個人により、地域により /e/ に変化しており、特に喜界島北部でこの傾向が進んで6母音となっている(以下、/i/ と区別するために中舌母音 /ï/ は赤字で示す。)。沖永良部島北端の国頭地区方言も、日本語の /e/ に対応する /ɪ/ を持つ[16]。
喜界島南部や沖永良部島大部分、与論島では、沖縄語と同じく日本語のeはiに合流しており、/i, u, e, o, a/ の5母音体系となっている。
奄美語では母音・半母音の前で声門破裂音 /ʔ/ の有無が弁別される。また、奄美大島を中心に、無声の破裂音と破擦音に、有気音と無気喉頭化音との区別がある。多くの場合、日本語のイ段・ウ段の子音が変化して喉頭化し、ア段・エ段・オ段の子音との区別が保たれている。ただし与論島では有気音と無気喉頭化音の対立は認められない。
奄美大島・徳之島では日本語のカ・ケ・コに対応する拍が有気音の /k/、キ・クに対応する拍が無気喉頭化音の /kʔ/ となっている[17]。一方、奄美大島北端の佐仁[18]および喜界島、沖永良部島、与論島では、語頭のカ・ケ・コに対応する拍の子音は /h/ に変化している[17]。一方語中では、カ・ケ・コの子音は、奄美語全体で /h/ または /x/(無声軟口蓋摩擦音)に変化するか脱落する傾向にある。例えば大和村思勝で [taxasa](高い)、[dɘxɘ](竹)、与路島で [taːsa](高い)、[dɘː](竹)など[19]。
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文法
要約
視点
動詞
奄美語での動詞の終止形には、-ri系と-mu系の2つの形が併用されており、両者には微妙な意味の違いがある。「書く」を例にとると、-ri系はkakjuri、kakjui、kakjurなど、「書きをり」に由来する形をとる。一方の-mu系はkakjum、kakjunなど、「書きをりむ」(または「書きをむ」、「書きをるもの」か)に由来する形をとる。ただし沖永良部島方言では-mu系しかない[21]。
「~しよう」という意味を表す志向形は、「泣く」を例にとると、与論島ではnakaNのような形を用い、他の方言ではnako(o)やnaka(a)のような形を用いる[22]。-oの由来は未然形に助動詞「む」の付いた形とみられるが、-aも同様に「む」に由来するという説と、未然形単独形に由来するという説がある[21]。
次に奄美大島の瀬戸内町古仁屋と徳之島の井之川、沖永良部島の知名町田皆方言の「書く」の全活用形を示す[23]。
形容詞
奄美語の形容詞は、奄美大島の佐仁方言を除き、古い語幹に「さあり」の付いた形から派生してできている。奄美語では、動詞と同じように形容詞の終止形にも2種類の形があり、一つは-ri系、もう一つは-mu系である。「高い」を例にとると、-ri系の終止形は、瀬戸内町古仁屋でtahasar、徳之島の井之川でtaːhari、与論島でtakasaiである。-mu系の終止形は、古仁屋でtahasam、井之川でtaːhan、与論島でtakasaNとなっている[24][25]。
一方、奄美大島北部の佐仁方言の形容詞は、[ʔoːkaɴ](青い)、[kʔurakaɴ](暗い)のように、語幹にカリの付いた形から派生している[26]。
次に、奄美大島の瀬戸内町古仁屋方言と、徳之島の井之川方言、沖永良部島の田皆方言の「高い」と「珍しい」の活用を示す[27]。
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文例
瀬戸内町古仁屋方言の文例[28]。
- ʔura ja katʃi m wan na kaka m(君は書いても私は書かない)
- wa ga kak gadiː ʔarrja koː mta(私が書くまで彼は来なかった)
- tahasan mun na kwëːkirja m(高いものは買えない)
関連項目
脚注
参考文献
外部リンク
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