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NGT48山口真帆暴行被害事件

新潟市で発生した暴行事件 ウィキペディアから

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NGT48山口真帆暴行被害事件(エヌジーティーフォーティーエイトやまぐちまほぼうこうひがいじけん)は、2018年平成30年)12月8日に、新潟県新潟市で発生した暴行事件。

概要 場所, 日付 ...

当時アイドルグループNGT48に所属し、チームG副キャプテンを務めていた山口真帆が、NGTの男性ファン2人に、自宅マンションの玄関先で顔をつかまれるなどの被害を受けたとされる。当初、事件は公にならなかったが、山口がSNSで被害を告発し、国内外のマスメディアで大きく報じられ、話題となった。NGT48を運営する株式会社AKS[注釈 1]の事前事後の対応や、アイドルファンの関係が議論の的となった。

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概要

要約
視点

事件の経緯

第三者委員会の調査報告書[1]によると、2018年12月8日夜、当時アイドルグループ・NGT48に所属していた山口真帆が、NGT48劇場での公演を終え、送迎のマイクロバスに乗り、他のメンバーと共に帰路についた。20時40分頃、新潟市内にある自宅マンション[注釈 2]に到着し、居住するフロアの共用廊下に誰もいないことを確認してから[注釈 3]、部屋に入ってドアを閉めようとしたところで事件が発生した[2]。山口の供述によれば、NGTの男性ファン乙が、玄関のドアを手で押さえ、ドアをこじ開けてきた。乙は、玄関の中に入り、山口の顔をつかんで押し倒そうとした。山口は必死で乙を部屋から押し出そうとした。もう少しで乙を部屋から押し出し、ドアを閉められそうになった時、山口の向かいの部屋から甲が出てきた(第三者委員会が認定した事実によれば、事件当時、甲は山口の向かいの部屋を賃借していた。また甲は、事件以前からマンション内で他のメンバーに会うなどしていた[3][注釈 4])。甲は乙を横によけて、山口の顔をつかみ、押し倒そうとしてきた。山口は、しばらく声を出すことができなかったが、1分後、共用廊下に向かって「助けて」と叫ぶと、甲は山口の口を押さえた。その時、エレベーターが停まる音がして、甲と乙がその音に気づき、甲の勢いが止まった。そこで山口は、甲を共用廊下に押し出し、自らも廊下に出た。首からかけていた携帯電話警察に電話しようとしたが、甲に阻止された。過呼吸になりながら泣き叫んだ山口に対し、甲が「ごめん、ごめん」と謝って慰めようとした。甲は、山口に対して「メンバーにも相談して、メンバーに提案されて、やったことだから」「こうすればまほほん(山口のニックネーム)と話せるよ、と提案された」と言い、そのメンバーとしてA、B、Cの3人の名前を挙げた。山口は、助けを求めて同じフロアに居住するメンバーEの部屋の前に行き、ドアを叩いたが反応がなかったため、山口と同じマンションに居住していたメンバーDに電話をした[注釈 5]。Dは、事件当時他のメンバーの自宅マンションにおり、現場に5分で行ける距離だったため、Dが現場に合流した。山口は、本件に関わったメンバーを聞き出すため、甲、乙、丙(甲、乙の仲間。既に現場に合流していた)、メンバーDと共に、近くの公園へ移動した。以上が、山口の供述した事実関係である[4]。第三者委員会が認定した事実関係によれば、その後、NGTのマネージャー3名が公園に到着し、今回の事件の関与者等について、主に山口と甲との間でやり取りがなされた。その後、警察が到着し[注釈 6]、翌9日に甲と乙が暴行容疑で逮捕され、新潟地方検察庁に送致された[6]。二人は20日間拘留された後、12月28日に不起訴処分となり、釈放された[7][8]。山口に対する性的暴行はなく、山口に怪我はなかった[7]

事件に至る動機

甲、乙は、警察の調べに対し「山口さんと話がしたかった。大ごとになるとは思わなかった」と動機を供述している[9]。第三者委員会が入手した録音データにおいて、甲は「山口さんとちょっと話したいみたいな、僕たちの間でなって」「襲うつもりとかそういうつもりじゃなくて」「そんな押し入ろうとかは全然」などと発言しており、山口と話がしたかったため声をかけたにすぎず、家に押し入ったり、襲うなどの意図はなかったとしている[注釈 7]。事件の経緯について、甲は「ただちょっと廊下で声かけれればいいとおもったんだけど」「それでかなり驚かせちゃって。ぼくも焦ってけっこうその揉め合いみたいになっちゃって」「お互いパニックになってたからちょっと押し合いみたいな感じになっただけ」などと供述しており、山口と押し合いになった事実は認めている[10][注釈 8]

暴行の有無を巡る食い違い

報告書において、山口は自身が受けたとされる暴行について「顔をつかまれ、押し倒されそうになった」「顔をつかみ、押し倒そうとしてきた」「目と鼻のあたり、親指と人差し指で山口の両こめかみを押さえるような形で、顔面をつかんだ」と供述している。山口は報告書に引用されている録音データの中で「私のこと顔つかんで、顔押し倒してさ入ろうとしたじゃん」と発言したのに対し、甲は「そこまではしてない」と発言しているが、第三者委員会はこの発言を、顔をつかんだ点を明確に否定しているものではないと評価した。委員会は、山口が当初から一貫して被疑者らに顔面をつかまれたと述べていること、あえてこの点について虚偽の供述をする必要性がなく、被疑者らを陥れる目的であれば、より強度の暴行態様を供述することも可能だったことなどから、被疑者らが共謀の上、山口に対して、顔面をつかむ暴行を行った事実が認められると判断している[11]

また、捜査を担当した新潟警察署刑事第一課警察官の言動から、態様はともかく、暴行の事実は認定されているものと思われる、との見解も示しており[12]、第三者委員会による事実認定はいずれも山口の主張や関係者の発言に対する評価という形で行われている。

甲および乙は、警察の調べに対し、当初から暴行の容疑を否認しており[9]、後日、ツイキャスの配信で、山口との間で示談はなかったと明かしたうえで、取り調べでは手をスキャンされたりして調べられたが[注釈 9]、警察からは何も伝えられず、弁護士から不起訴になったとだけ知らされたと述べている[13]

東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は、不起訴処分となった背景について、暴行罪は親告罪ではないため、被害届を取り下げても事案が重大なら起訴されるはずだとして、事件そのものは軽微などと検察が総合的に判断したのではないかとの見解を述べている[14]

その後AKSが提起した民事訴訟においても「顔をつかんでいない」と主張しており[15][16]、暴行の事実についても争う姿勢を見せていた[17]。訴訟は、AKSと被疑者らによる裁判外での話し合いの末、和解が成立したが、和解成立時に被疑者らがAKS側に提出した謝罪文においても「少なくとも山口氏の自宅玄関ドアを山口氏と引っ張り合う等の行為」に及んだことのみを認め、最後まで暴行を認めることはなかった[17][18][19]

甲、乙、丙の人物像

警察によると、被疑者の甲と乙は当時ともに25歳で、一方は無職、他方は大学生であった[9]東スポの記事によれば、男性のうちの一人(甲)はもともと山口の熱狂的なファン(いわゆる「太客」)で[20]握手会では毎回数十万円分の握手券を手にしており[13]、80万円も使い山口と2時間以上話したこともあったという。「新潟の街で偶然山口と顔を合わせた際、言葉を交わす姿を他のファンに目撃されていたが、別メンバーに“推し変”したことで、山口との関係が悪化したようだ」という地元のNGTファンからの指摘もある[21]

文春は、事件直後の録音データを公開する際「新潟県警が事件と関係ないと判断したメンバーの実名などはカットしている」として、登場人物として2018年12月8日にA、Bから暴行を受け翌年5月に卒業した山口のほかに、太野彩香西潟茉莉奈などの実名を明かし以下のように報じている。

  • A(大学生) 第三者委員会報告書では「甲」と表記。山口のファンと言われている。暴行事件の少し前からは西潟のファンとも言われていた。吉成氏の発言では、事件前から山口と繋がりがあったとされている(吉成が甲と接触した際に「今回の事件は、事件じゃないのです。僕は、もともと繋がっていたのは山口さんです」と聞かされたと、文春が事件直後の録音データを公開する前、新潮に公開された[22]3ヵ月後の2019年8月17日の保護者会で説明している[23][24]。男性らは民事裁判に一度も出廷していないが[17][25]、準備書面で山口との私的交流について詳細な証言をしている[26])。
  • B(無職) 第三者委員会報告書では「乙」と表記。山口の帰宅時、Aが借りている部屋(かつて太野彩香が借りていた部屋)から飛び出し、山口に最初に声をかけた。太野のファンだと言われている。逮捕後、不起訴に。事件発生当時、A、Bは太野が当時住んでいた部屋から出てきた。第三者委員会報告書によると2018年夏に既に部屋を引っ越している。
  • C(当時24・大学生) 第三者委員会報告書では「丙」と表記。D子から帰宅時間を聞き、A、Bに伝えた。西潟のファンだったと言われ、文春は「Cが西潟のファンであることはファンの間では有名な話だった」としている。

事件発生前のNGTのイベントではA、B、Cが親しげな様子で西潟のレーンに並んでいたという[27][28]

文春において公開された事件直後の録音データでは、男性が警官に他のメンバー達と会うなどするために山口らの住むマンションに出入りしていたことなどを明かしている[5]

他のメンバーの関与の有無

報告書によれば、山口は、後日捜査機関から聞いた話として、山口より前にマイクロバスを降りたメンバーAが、丙から「まほほん、あの車両に乗ってる?」と声をかけられ「乗ってるよ」と答え、さらに「メンバーEも乗ってる?」と聞かれ「乗ってないよ」と答えたと供述している[29]。また山口は、同じく捜査機関から聞いた話として、甲、乙は、丙からの連絡をもとに、山口がEと一緒ではなく一人で帰宅することを確認したうえで[注釈 10]、山口が自宅マンションに到着する時刻を計算し、部屋から共用廊下の様子を確認しながら、山口の帰宅を待ったという事実を供述しており、第三者委員会はこの事実を認定している[30]。これについてメンバーAは、第三者委員会の事情聴取に対し、そのように答えたことを認めている。Aは、マイクロバスから降り、駅に向かっていた際に、以前から握手会等で面識のあった丙から突然声をかけられたと供述した。第三者委員会が入手した録音データによれば、甲も「今日A出てたから。それで聞いて」と発言しており、Aから山口の帰宅時間を聞いたことを供述している[10]。なおAは、上述の回答以上の関与を否定しており、第三者委員会も、Aの供述を超えて、Aと甲、乙との間で、何らかの共謀があったことを示す供述はなかったとしている。第三者委員会は、Aが丙の声がけに答えてしまったことについては「対応として不適切であったものの、握手会などで顔見知りであった丙から、マイクロバスを降りた際に、突然声をかけられたため、咄嗟に答えてしまったのが実情と考えられる」とした[31]。またAは、握手会において「まとめ出し」をした丙と長時間にわたって会話したことがあり、丙と会話すること自体に抵抗感が薄くなっていたことも一因として指摘されている[32]前述の高井康行弁護士は、もし男性が暴行することをメンバーが事前に知っていれば幇助罪が成立しうるとしたが、知らなければ自宅を教えたりしても共犯にはならないと述べている[14]

既に述べたように、甲は、山口の自宅マンション共用廊下で「メンバーにも相談して、メンバーに提案されて、やったことだから」「こうすればまほほんと話せるよ、と提案された」と言い、そのメンバーとしてA、B、Cの名前を挙げたと山口は供述しており[33][注釈 11]、山口は、Aが帰宅時間を教え、Bが自宅の場所を教え、Cが部屋に行けとそそのかしたと主張している。上述のように、Aがマイクロバスに山口が乗っていることを伝えてしまったのは、A本人も認めており、第三者委員会は、それ以上の関与はなかったと認識している[31]

メンバーBの関与の有無について、第三者委員会が入手した録音データによれば、甲は、山口の部屋番号を知っていたことについて「相当前にBか誰かに聞いたな」「握手会とかだから」「それはもう1年前とか」「最初どうやって知ったんだろう」などと発言している。また、甲は直接Bとは連絡を取っていないものの「Bは知っているかもしれないけど」「B知ってんのかな」などと、Bが事件について何らかの事情を知っている可能性を示唆する発言を行った。この点について、メンバ-Bは、第三者委員会の事情聴取に対して関与を否定しており、捜査機関による捜査においても関与は認められなかったと第三者委員会は推認している[31]。なお、Bは事件の現場となったマンションに居住していたが、事件の数ヶ月前に退去している[29]

メンバーCの関与の有無について、山口は、平成30年10月7日に行われた握手会で、甲から「Cがお前の家に行けってめっちゃ言ってくるんだけど」などと言われたことや、新潟警察署の警察官から、甲が現場となったマンションの他に、新潟市内に3つのマンションを借りており、そのうちの一つがCが居住するマンションであると聞いたこと等を指摘し、Cの事件への関与を主張した。一方、録音データによると、甲は「Cは関係ない」「Cは関わってない」「Cちゃんは間違いなく今日知らないし」と明確に否定している。また、丙も「このことをCとかに言ったりは全くしていない」とCの関与を否定している。C自身も、第三者委員会の事情聴取に対し、Bと同様に、事件への関与を否定しており、捜査機関による捜査においても関与は認められなかったと第三者委員会は推認している[34]

その他のメンバーの関与について、録音データによると、山口の「つながって、かかわってるメンバー全員いって。もうだれだれ言って、もういっかい」との発言に対し、甲は複数のメンバーの名前を挙げた。どのメンバ-の名前が挙がったのか、報告書では明らかにされていないが、後の民事訴訟の訴状において、8人のメンバーの名前が挙がっていたことが判明している[35]。甲は、山口の部屋番号を知っていたことについて「あとメンバーFか」「Fは相当昔のことだから。俺もなんて言ったかわかんないけど」と発言しているが、Fを含むその他のメンバーも、第三者委員会の事情聴取に対し関与を否定している[36]

第三者委員会は、甲が山口の部屋を特定した経緯について、甲が別の部屋を賃借し[注釈 12]、マンションに自由に出入りしていたことを挙げ、山口の帰宅を待って後をつける、郵便受けを覗いて郵便物の宛名を確認する、山口が郵便受けから郵便物を取り出すところを見るなど、メンバーの関与がなくても様々な方法で特定することが可能だったとした。なお、第三者委員会は、甲、乙、丙に対し調査への協力を求める文書を送付したが、返答がなかったため[注釈 13]、事情聴取は行われていない[37]

伊藤和子弁護士は「まず、第一の疑問は第三者委員会が会見をしないこと、これは極めて異例」「仮に刑事事件で共謀していないとしても、広い意味での関与についてしっかり調査すべきではなかったのか。特に、メンバーが犯人につながる者に山口さんの安全にかかわる個人情報を提供したという事実は重視されるべきでしょう。」「こうした証拠(報告書が示した関与と録音データ)が出ているのに、なぜ関与がない、と言い切ってしまったのか、甚だ疑問」と呈している[38]

ファンとの「つながり」

第三者委員会の報告書では、今回の事件について、被疑者らが山口の居住するマンションを部屋番号まで特定し、山口がひとりで帰宅する時刻をメンバーから聞き出したことを事件の原因としており、ファンとメンバーとの私的領域における接触(いわゆる「つながり」)を生んだ背景についても言及している[39]

まず、メンバーの自宅が特定されてしまった要因として、新潟という活動拠点が特殊であり、メンバーの住居が特定されやすい環境にあったこと、送迎のマイクロバスの移動経路や乗降ポイントが特定されやすく、送迎時の危険への配慮が不十分であったこと、メンバーの自宅が特定されているかそのおそれがあっても運営が積極的に対処しなかったことなどが挙げられている(詳しくは後述[40]

また、NGT運営は、事件当時、新潟市内の複数のマンションにメンバーをまとめて住まわせていたと述べており[41]、事件現場のマンションには、山口のほかにメンバーDとEが居住していたが[29]、一つのマンションが特定されると複数のメンバーの自宅が知られてしまうことも問題と考えられる。第三者委員会は、新潟という拠点の特性上、NGT劇場への利便性などから、メンバーの居住するエリアが事実上、一定範囲に限られていたことを指摘している[42]

次に、被疑者らが山口の帰宅時刻を聞き出せた要因として、握手会での会話を問題視しており、握手会においてメンバーと会話できる時間は握手券1枚あたり数秒であるが、握手券の「まとめ出し」によって、メンバーと長時間会話できる機会が発生することが挙げられている。事件以前の握手会では、メンバーに私的領域での接触を求めるような話題が明確に禁止されておらず、ごく一部のファンが、特定のメンバーと特定のファンが私的領域で接触していることを握手の相手に伝え、自らも相手とつながろうとする行為が行われていたという。実際に、甲、乙に情報を伝えた丙は、メンバーと「まとめ出し」で会話をしており、長時間の会話によってメンバーは丙と会話すること自体に抵抗感が薄くなっていたために、メンバーの情報を丙に伝えてしまった可能性が指摘されている[43]

第三者委員会は「まとめ出し」に限った対応として、メンバーのそばにマネージャー等を配置し、私的領域に関する事項が話題となった場合、すぐに制止できる体制をとるべきと提言している。また、私的領域での接触を求めたり実際に接触したファンは、出入り禁止等の処分を下し、NGTのイベント全般に参加できなくなるような制度を整え、運用していくべきとしている[44]

さらに報告書では、既に述べたものも含め、ファンとの「つながり」について「『噂』レベルではなく、具体的な事実」として、

  1. 丙と思われる男性から話しかけられ、何の抵抗もなく会話をしているメンバーがいること、しかも、その内容が他の複数のメンバーの現時点での行動に関するものであること
  2. 丙と複数回個別に会っていたメンバーがいること
  3. 甲が、山口氏の部屋の番号を知った経緯について、相当前に何人かのメンバーに聞いたと述べていること(録音データより[注釈 14]。)
  4. 甲が、本件事件が発生することを知っていたかもしれないとして特定のメンバーの名前を挙げていること(録音データより[注釈 14]
  5. 甲が、以前より、当該マンション内で、他のメンバーと会うなどしていたことから、その延長線上で、山口氏が公演終了後に帰ってきた際に、外で話すより当該マンション内で声をかけたほうがいいと考えて当該マンション内で山口氏に声をかけたと述べていること(録音データより[注釈 14]
  6. 甲が山口氏と話すために山口氏の家に行くことについて相談していたメンバーがいるような発言をしていること(録音データより[注釈 14]
  7. 本件事件後に、数名のメンバーがファンとの「つながり」があったとして自ら申告していること[注釈 15]

という7つの項目を挙げている。

また、メンバーからの事情聴取の結果として、確たる証拠のない噂なども含め、12名のメンバーの名前が挙がったことが明らかにされた(第三者委員会は、記名、無記名の者が特定できる資料は、AKSを含め本委員会以外には一切開示しない」としており[48]、氏名は公表されていない)[49]

AKSは、3月21日に発表した声明文において、名前の挙がった12名のメンバーについては、私的領域におけるファンとのつながりを含め、一切の「風紀の乱れ」を不問にすることを明言した(この点についてのNGT運営の説明及び山口の反論については後述。)[50]。この判断について、5月27日、AKSの早川麻依子は「◯◯がつながっていると人から聞いた。◯◯っぽい子が男の人といるのを見た。◯◯はつながっていると思う。◯◯が人目を避けるように歩いていた。という曖昧な話ばかり。処分しようにも全く証拠がありません」と説明した[51]。つながりを申告してきたメンバーについても、DMを2回返信してしまったが私的に会った事はなかった、取材先の飲食店の方が偶然ファンで、クレープをサービスしてくれて、来店のお礼のDMについ返信をしてしまった、などといった程度の内容だったとしている[52]第三者委員会設置の際、早川は「私どもが調査すると先入観が入ってしまう。第三者委員会にすべてをゆだねる」と述べていたが、[53][要説明]早川は上記の説明を「第三者委員会の報告後にメンバーから聞いた話」としており、「第三者委員会にすべてをゆだねる」という自身の発言に矛盾する行動をとったわけではない[52]

また、第三者委員会会見の際、記者が「遠因としてファンとつながっていることが遠くの原因にはなっているとは思うんですけれども」と記者自身の見解を前置きした上で「被害者に、山口さんに対するほかのメンバーが謝りたいとか申し訳なかったとか、私たちがこんないけないことをしてこういうふうに招いてしまったとか、謝罪の意思とか謝罪したいっていう報告とかはきているのでしょうか。」と質問したのに対し、 松村取締役は「それはございます」と回答している[54]。但し、その後NGTメンバーから山口に対して謝罪の意思を示したり、謝罪を行ったという事実は確認されていない。

民事裁判の訴状において、事件直後、男性が山口やスタッフを前に「ほかのメンバーさんとかとまあ、ぶっちゃけいったら、会ったりとかしてて、一緒に遊んだりとか、ちょっとご飯食べたりとか」「いままで関わってきたメンバーさんとかと、まあちょっと、どういうふうに(山口さんと)会ったら、いいかなって話してて」と話し、男性2人が以前から食事や遊んだりするなど交流を持っていた一部メンバーに「山口さんと話したい」と相談したと話していたことや、他のメンバー8人ほどと私的な交流があると話していたことが新たに分かった[35][55]。訴状にある「一部メンバーとは以前から一緒に食事や遊んだりするなど交流を持っていた」ことについては、運営側は処分するほどの程度ではなかったと判断したと説明、「つながりはゼロではなかった」と弁解している[56]

男性は、週刊文春が公開した事件直後の録音データにおいて、警官に「そもそもあそこ(NGT48寮のマンション)に複数、彼女(山口)のグループの人たちがいて、その子達と友好的に会ったりご飯食べたり」など、他のメンバー達と会うなどするために、山口らの住むマンションに自分達の部屋を借りて、自分の持っている鍵を使ってマンションに出入りしていたことを明かしている[5]。準備書面では一緒に食事をしたり部屋で面会するなどはなかったものの、山口とも廊下などで会って衣装やアクセサリーなどのプレゼントを贈っていたと証言をしている[26]

また陳述書では、山口からDMに返信を貰えなくなったので、関係修復の話し合いのために自宅前で待っていて事件になったと述べており[26]、「(メンバーから)こうやれと言われたわけではない」と共謀を否定していたことが新たに分かった[55]

同じ録音データにおいて、男性2人が山口やスタッフに他のメンバー8人ほどと私的なつながりがあると話していたが[55]、陳述書では山口とつながっていることをAKSのスタッフの前で話してしまえば、山口がNGTのルールを破ったとして不利益な処分を受けてしまうことから、とっさについた嘘だったと弁明している[21]

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事件発生後の経緯

要約
視点

山口による告発

この事件は、当初マスメディアによって報道されることはなく、当時の運営会社である株式会社AKSは事件を公表しなかったため、暴行被害が公になることはなかったが[注釈 16]、2019年1月8日から翌9日朝にかけて、山口がリアルタイム動画配信サービスSHOWROOMで涙ながらに暴行被害を告発した。「私とまた同じ目に遭う人がいるのに、1カ月待っても、何も対処してくれなくて」「真面目にやってる子達が、私と同じ怖い目にするのは、もう耐えられない」「今回私は助かったから良かったけど、殺されてたらどうするんだろうって思う」と話した[8]。また自身のTwitter(現在はX)でも「私は先月公演終わり帰宅時に男2人に襲われました。あるメンバーに公演の帰宅時間を教えられ、またあるメンバーに家、部屋を教えられ、またあるメンバーは私の家に行けと犯人をそそめかしていました(原文ママ・そそのかすの意と思われる)」と投稿し、さらにこの件へのNGTメンバーの関与を告発していた(該当ツイートはすでに削除されている)[8][58][59]

AKSは後の会見において、事件を公表しなかった理由について「メンバー保護と、オープンになった時に二次的、三次的被害が及ぶのではないかと私の方で考えた。結果的にああいうことになって大変申し訳ない」と説明し、運営側から事案を公表する予定はなかったことを明らかにした[60]

後に発表された第三者委員会の報告書では、かかる必要性は、山口氏に対する暴行があった以上、被疑者らに対する刑事処分が如何になろうともその影響を受けるものではないとした上で、[要説明]事件からの1か月、山口がこのような発信をするまでAKSが山口を含むNGTメンバーの安全を確保するための対応をとらなかった理由として、AKSの取締役会に対して事件が深刻な事案であることが正確に報告されておらず、対応をNGT48運営部、特に今村悦朗前支配人に委ねてしまっていたからであるとの見方を示している[61]

山口の告発に対しては、「勇気ある行動」とたたえる意見が多数を占める一方、「山口さんのせいで(グループが)壊れた感じがする」「混乱を拡大している」などと山口を批判したり、誹謗中傷する投稿もみられた[62][63]

マスメディアの報道

2019年1月10日、山口による告発を受けて、NHKが主要メディアとして初めて事件を報道した[注釈 17]。他社もこれに追随し、報道番組ワイドショーで連日に渡り報道されるようになった[64]

AKSの声明(2019年1月10日)

2019年1月10日、AKSは「山口真帆に関わる一連の騒動についてのご報告[65]」という文章を公式サイト上に公開した。2人の男による山口の暴行被害を認め、「そのほかに、実行犯ではありませんが、この事件に関与していたファンの男1名も確認されました」と報告した[8]。その声明においては、他のNGTメンバーから山口の住所や帰宅時間などの個人情報が漏れたかについての山口の告発に言及しており「メンバーの関連性においては、メンバーの1名が男から道で声をかけられ、山口真帆の自宅は知らないものの、推測できるような帰宅時間を伝えてしまったことを確認しました」と男に山口の帰宅時間を伝えたメンバーがいたことのみ認めた。ただし、その「男」が事件の関係者であるかどうかは定かではない。なお山口は、NGTのメンバーが男に自宅に押しかけるようそそのかしたとも告発していたが、その点についての言及はなかった。また山口は男が「メンバーが住んでいた向かいの部屋から男が出てきた」と主張したが、[66]後にNGTの早川支配人(当時)は、メンバーは昨年(事件の前年)7月に不動産屋立ち会いの元で退去し、鍵も全て不動産屋に返却していると述べ、メンバーの退去後にウィークリーマンションの会社が向かいの部屋を借り上げていたと警察が言っていたと、聞いたと述べている[67]。またAKSは「今後はこのようなことがないよう、全グループメンバーへの防犯ベルの支給、各自宅への巡回等の対策を徹底する」とし、再発防止のための手段を講じることを表明した。また、AKSは声明においてファンの男性3人の公演、握手会、イベント等への参加を禁止したほか、声明とは別のページで同月11日、14日に予定していた劇場公演を中止することも発表した[59]

山口真帆による謝罪

2019年1月10日、山口はNGT48劇場で開催された同グループ3周年記念公演に出演した。事件について「この度は、たくさんお騒がせしてしまって、誠に申し訳ありません」と声を詰まらせながら謝罪する一幕があった。このことがネット上で報じられ、運営の責任者(例えば、支配人の今村悦朗)よりも先に被害者である山口が謝罪したことに疑問の声が殺到した。

2018年春までNGT48のキャプテンを務めていた北原里英は、10日深夜、「あなたは謝るべきではありません!謝らないで。悪いことしてないです。本当に!頭を下げるのは間違ってます!」とツイートし、被害者であるはずの山口が謝罪することとなった事態を憂慮した。また、当時HKT48のメンバーだった指原莉乃は、「ここまで大きな事件を彼女に謝らせる運営だとは思いたくないし、でも本人発信だとしてもこうなってしまったことを謝らなきゃ!と思って自分を責めているんじゃないかと心配です。そこで謝らなくていいんだよ!と言えるスタッフがいなかったこともどうかと思います」と運営が山口の謝罪を止めようとしなかったことを批判した[68]

ニューズウィークは、海外ネットユーザーの声を挙げながら、なぜ犯罪の被害者が謝罪に追い込まれたのかという点に疑問を呈し、そのような謝罪が無意味かつ非常識な「日本の゙謝罪文化」の好例であるとした[69]。2019年10月、山口はTwitterでこの件に言及し「会社に謝らされ」たものだったと述べている[70]

この件につきAKSは「本人が1曲出演するということもあり、結果的にああいう形になってしまったのは、本当に私の考えが非常に浅はかだった。至らなかった。結果的に本人の口から、被害者が謝罪となってしまったことは深く深く反省している」と述べている[60]

2人のメンバーが関与を否定

2019年1月13日未明、NGT48メンバーの西潟茉莉奈と太野彩香がTwitterを更新し、警察の事情聴取を受けたことを明かすとともに、事件への関与を否定した。西潟は「発信が遅くなってしまいごめんなさい。まず、私は今回の事件に関与していません」「話を聞きたいと言われ、新潟警察に行きました。警察の方に携帯を預け、お話をしました」「発信が遅れたことにより、ご心配をおかけし、お騒がせして申し訳ありませんでした」と謝罪した。太野も「連日報道されております事件に私は、関与しておりません」「事件後何が何だかわからないまま、名前があがり、何も説明を受けないまま警察に行き、ありのままを答えました」とつづり「私と、私の家族、親戚までも身の危険を疑わせる言葉も目にし、今もまだ生きてる心地がしません」と誹謗中傷を受けていることを示唆する投稿を行った[71]

人事異動

2019年1月14日未明、AKSは代表取締役吉成夏子と運営責任者兼取締役松村匠の連名で声明を発表し、支配人の今村悦朗を異動させ、早川麻依子[注釈 18]を新支配人、岡田剛を新副支配人とする人事を発表した[72][注釈 19]

AKSの記者会見(2019年1月14日)

同日、AKSは初めて記者会見を開き、一連の問題を陳謝した[注釈 20]。公表が遅れた理由については「警察の捜査状況を鑑みていたというのが、一番の理由。昨日、警察の方から公表できる情報が出ましたので、このような場を設けさせていただきました」と説明した[60][73]。AKSは第三者委員会を設置する予定があることを明かし、事件の詳細は第三者委員会で調査することとし、「警察の捜査内容に関わることなのでコメントは差し控えさせていただきたい」との理由で、事件の詳細に言及することはなかった[60]。事件への他のメンバーの関与については、メンバーの行動が刑事事件として立件されていないことを挙げ、「当社としては、メンバーの中に違法な行為をした者はいない、と考えております」との認識を示した[60]。もっとも「違法ではないものの、メンバーとして不適切な言動」の有無は第三者委員会の真相究明を待つとした[60]

「寮」からの退去

2019年1月16日、NGT48の新潟県外出身メンバーらが、寮として使用していたマンションから退去することが、17日、スポーツ報知により報じられた。事件の影響で、玄関先までファンが訪れる事例があったほか、ファンが同じマンション内に部屋を借りているという報道も一部みられたことが背景にあるとされている。NGTの関係者によると、事態を重く見た運営側が、近く寮を引き払い、別のマンションに変えるという[74]

また、16日に新潟県の花角英世知事が、定例記者会見の中で事件に言及し「早く事実関係が明らかになり、正常な状態に戻ってほしい」とコメントした。新潟県は、9月に開幕する国民文化祭と全国障害者芸術・文化祭のスペシャルサポーターにNGTを起用していたが、県の広報広聴課は「事実関係を見極め、今後の方針を決めたい。事態の推移を見守りたい」とした[74](同年6月5日、知事はスペシャルサポーターについて、NGT48と契約しないことを明言した[75])。

リクアワ欠席

NGT48は、1月18日、19日にAKB48グループによる合同イベント『AKB48グループ リクエストアワー セットリストベスト100 2019』(通称:リクアワ)に参加したが、山口は欠席した。リクアワで、騒動に言及されることはなかった[76]。山口はその後も公の場でのグループ活動に参加することはなく、Xでの「いいね」を除いて発信のない状況が続いた。

第三者委員会の設置

2019年2月1日、AKSは第三者委員会を設置した。第三者委員会は「事件に関連する事実関係の調査及び原因の究明(直接的な原因のみならず、背景となる要因等を含む)」を目的とし、委員長(弁護士の岩崎晃)と2名の委員(いずれも弁護士)を選任した。人選については「日本弁護士連合会による『第三者委員会ガイドライン』に沿って選定しており、各委員は当社との利害関係を有しておらず、本委員会の独立性を阻害する要因はありません」と説明した。調査期間は「1カ月半を目途」とした[77]

第三者委員会による調査報告書公表

2019年3月21日、NGT48は、第三者委員会による調査報告書全文をNGT48公式ウェブサイト上に公表した(詳細は後述)。2019年3月18日付で作成され、全34ページからなる報告書が画像(JPEGファイル)形式で公表された[1]

第三者委員会は、委員会設置の目的を、事件の「事実関係、会社関係者等の関与の有無および程度、直接ないし間接の発生原因等の調査」及び調査を実施する上で「さらなる調査が必要と認めた一切の事項について調査を実行すること」としており、調査は、原則として日本弁護士連合会が定めた「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」に準拠して行われた[78]

AKSの声明(2019年3月21日)

NGT48運営は、報告書の公表と同時に、声明文を発表した。第三者委員会による報告書において、今回の事件に関する事実関係の認定がなされ、その中で、事件そのものにNGT48のメンバーが関与した事実はなかったとの判断と、運営上の不備が指摘されたことに触れ、不備を改善することに全力で取り組みたいとした。また、二度とこのような事件が起きないように、暴行を行ったとされる人物に民事上の法的措置を検討するとし、その後民事訴訟が提起された(後述)。今回の事件とは直接関係ないとしながらも、私的領域におけるメンバーとファンとのつながりは不適切との認識を示し、今回は不問にするとしながらも、今後は厳正な処分を検討することを明かした。改めて、メンバーの安全のため、防犯体制の強化等の対策や組織運営の強化、メンバー、スタッフへの教育を徹底し、NGT48をもう一度応援していただけるよう、健全な運営に取り組むことを明言した[1]

AKSの記者会見(2019年3月22日)

2019年3月22日午後、AKSは第三者委員会による調査報告書公表を受け、新潟市内で説明会を開催した[注釈 21]。この会見に対して山口はTwitterで5度にわたりリアルタイムで以下のように反論の投稿を行い、山口と第三者委員会との溝が浮き彫りとなった[80]

  1. 只今、記者会見を行っている松村匠取締役は第三者委員会が行われる前に「繋がっているメンバーを全員解雇する」と私に約束しました。その為の第三者委員会だと、私も今までずっと耐えてきました。コミュニケーションも何も、このことに関して聞くと連絡が返ってきません。
  2. 私は松村匠取締役に1月10日の謝罪を要求されました。 私が謝罪を拒んだら、「山口が謝らないのであれば、同じチームのメンバーに生誕祭の手紙のように代読という形で山口の謝罪のコメントを読ませて謝らせる」と言われました。 他のメンバーにそんなことさせられないから、私は謝りました。
  3. 記者会見に出席している3人は、 事件が起きてから、保護者説明会、スポンサー、メディア、県と市に、 私や警察に事実関係を確認もせずに、 私の思い込みのように虚偽の説明をしていました。 なんで事件が起きてからも会社の方に傷つけられないといけないんでしょうか。
  4. 報告書に記載もないのに繋がりには挨拶も含まれるというのは勝手な解釈です。 他のファンには公表できないような、特定のファンとの私的交流を繋がりと言うのはメンバーのみならずファンの皆さんも認識していると思います。 証拠がないと仰っていますが、犯人グループとの交際を認めたメンバーもいます
  5. なんで嘘ばかりつくんでしょうか。 本当に悲しい。 松村匠取締役が当初言うように考えた文章です。 他のメンバーに謝らせることはできないから、謝るしかなかったけど、 スッキリも誤解もしていないし、どうしてもこの言葉は使いたくないと違う文章を考えて何度も交渉しました。

ツイートを確認した記者が、その場でAKSに説明を求めるという異例の展開もあり、しどろもどろの会見でAKSは失笑を買うなどした[81][82][83]。また、記者からも事件直後の録音(データ)で、山口やスタッフに事件に関わりのあるメンバーを被疑者が挙げているということに関しては認定されているのにも関わらず、メンバーの関与がないとした根拠の判断がどこにあるのか、客観性を保つための第三者委員会の報告書の説明を委託したAKSが行うということが客観性に欠ける行為なのではないかとなどと指摘された[84][85]。AKS は「不問ということです」と答え、再度の調査は行わないことを明言した[86]

運営、第三者委員会やNGT48への追及・批判

2019年3月、AKSによる第三者委員会報告書説明会見で泥沼化し[87]、被害に遭った山口などは2019年5月卒業、NHK新潟がAKS経営陣に「私的領域でのファンとの接触防止策」「会社の運営体制の見直し」「トラブルの調査や処分は十分か」「経営トップの認識」について書面回答を求めたところ、「総合的な判断で回答はできない」とし[88]、劇場公演を再開する際にも2019年3月以降、記者会見など公の場での説明していないことなどを指摘している[89]

民事裁判の訴状において、男性2人が以前から食事や遊んだりするなど交流を持っていた一部メンバーに「山口さんと話したい」と相談したと話していたことや、他のメンバー8人ほどと私的な交流があると話していたことが新たに分かっている[55]財経新聞は、事件直後の録音データで駆けつけたマネージャーらしき男性が、警察に対して被害者である山口の発言を抑えていたことなどともに、告発をもみ消そうとし、それができないとなると矮小化し、一切の説明責任から逃げた組織がどうなるのかと批判している[90]。2019年9月同録音データではスタッフが男性から「こういうの(マンションで他のメンバーと密会すること)って」などに対して「その辺はどうでもいいんだ」と遮る様子なども報じられている[5]

以前の第三者委員会報告会見では、運営側と犯行グループ、一部ファンとのつながりに関してネット上で真偽が全然分からない情報が出回っていたことに対して、記者から本来であればその辺についても調査してしかるべきだったのではないかと指摘されており、報告書の中に運営側がメンバーのつながりを認知していたのに対応できなかったと記載されていたことに対しては、松村はスタッフ側が一部のファンを優遇していた事実はないと思っていると回答していた[91]

財経新聞は、2020年4月、AKSが山口不在の民事裁判で山口への暴行について譲歩して男性らと和解、NGT48のマネジメントをいわば放棄し、新たな運営としてFloraという会社が設立されたが、事件発覚後取りざたされた数々の問題について、グループとしてあるいは運営としてほとんど総括することなく、説明も謝罪もないまま新曲キャンペーンを始めたことに対して、世間から「新生」と銘打てるほど中身が変わっていないのではないかという疑惑を持たれ、歓迎ムードとは程遠い状況になっていると指摘している[92][93]

また、新潟市は暴行事件が“地域性”のせいにされたことについて「報告書の中で活動拠点の特殊性ということで、「都市部が狭い」「交通機関が発達していない」「ファンの絶対数が多くない」といった言及がありましたが、運営会社の管理体制の問題がすり替えられて、新潟の地域性が原因として取り上げられた点は非常に残念です。」と取材において答えている[94]

AKSによる民事訴訟

2019年4月26日、AKSは山口に対する暴行容疑で逮捕された男性ファン2人を相手取り、「事件によりNGT48の芸能活動が休止した」として、3000万円(被害額およそ1億円のうち)の損害賠償を求めて新潟地方裁判所に提訴。7月10日には第1回口頭弁論で開かれた[95]

陳述書によると、山口の太客であった被疑者の一人は、事件の3年前の握手会で直接プレゼントを贈りたいと伝えて(高額なプレゼントを贈る場合は本来運営を通すルールがある)山口本人からマンションの住所と部屋番号を教えてもらい、衣服やアクセサリー等のプレゼントを郵送するようになり、2018年4月に同じマンションの別の階に部屋を借りてからはSNSで連絡を取りながらマンションの共用スペースなどでプレゼントを手渡していたが、山口がDMに返信をくれなくなったため、事件当日はそのことを問いただしに行っただけで暴行は無かったと争う構えを見せていた。ほかにも向かいの部屋は事件の5日前の12月3日に契約したと述べているほか[21][26]、つながりの証拠として被告らが言う山口の携帯番号を提示している[96]

このため、報道陣からはNGT側の弁護士に対して裁判の争点は山口と被告とのつながりになるのではないかという質問も出ていたが[97]、AKS側は山口の証人申請を検討したものの、「本人の立場やプライバシーの問題、負担」などを考慮したうえで断念し[98]、2020年4月8日に被告側と和解した。

被告側は、事件当時、山口の承諾を得ずに自宅を訪問し、ドアの引っ張り合いをしたこと、事件直後に山口らから問い詰められた際、他のメンバーから山口の部屋番号を聞いたり、そそのかされて部屋に行ったなどと事実に反する発言をし、そうした録音テープが流出して誤解を招く結果になったこと、NGT48の他のメンバーは本件に一切関与していなかったということ、本件事件に関して帰宅時間を推測できるような発言をしたメンバーに対し、自宅に行くということを告げずにバスに乗っているか聞いただけで、当該メンバーは事件について何も知らなかったということの4点を認めたうえで、運営に支障をきたしたことを原告側に謝罪している[99]

AKSは、報告書説明会見において報告書に山口の言ったことがちゃんと書かれてないことを明かしていたが[86]、訴状を書くに際しても山口と話しをせず[100]、山口に意見を求めることなく裁判外で被告側と和解の交渉をしている[17]。NGT側の弁護士は被告側の山口についての主張の「証拠を出してくださいと言っていたが、出てこなかった」と述べている[101]

事件直後の被疑者と山口との会話データの流出

2019年5月17日付のデイリー新潮に事件当日の“録音データ”に関する内部文書が公開された。暴行事件の直後から被疑者が山口に謝罪を繰り返し、その場で話し合いが持たれることになり、山口と被疑者らが近くの公園に移動して以降の会話内容が録音されたものである[22]

引用されている文言など第三者委員会の検証結果を裏付けるもので、この報道以降マスコミの事件に対する追及はなくなっている。[要出典]

吉成夏子社長によるメンバー保護者説明会での説明

2019年8月17日にAKSがNGT48メンバーの保護者に向けて説明会を実施しており、その中で吉成夏子より以下のことが報告されている。

  • 山口が卒業公演の時に言っていた会社からパワハラを受けたということは事実無根
  • 山口の事件が不起訴になった点に納得がいっていない
  • “他メンバーと犯人が繋がっているという証拠を持っている”という山口に証拠を提出してほしいと頼んだが最後まで出してもらえなかった
  • 被疑者の男性が元々は繋がっていたのは山口であると言っている
  • 事実をはっきりさせ、濡れ衣を着せられている元メンバーの名誉を晴らしたいために犯人グループと民事裁判を行っている[102]
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山口のNGT48卒業

要約
視点

卒業発表

2019年4月21日、劇場公演で山口真帆は「ちょっと待ってください。私、山口真帆はNGT48を卒業します」と涙ながらに話し、NGT48からの卒業を発表した[103][104]。 卒業発表にあたり、短いスピーチをしており「私はアイドル、そしてこのグループが大好きでした。だからこそ、このグループに変わってほしかったし、自分がつらかったからこそ、大切な仲間たちに同じ思いをしてほしくないと、すべてを捨てる覚悟で取った行動でした」と、告発に踏み切った覚悟を話した。社長に「不起訴になったことで事件じゃない」「会社を攻撃する加害者」といわれ「ただメンバーを守りたい、真面目に活動したい、健全なアイドル活動ができる場所であってほしかっただけで、何をしても不問なこのグループに、もうここには私がアイドルをできる居場所はなくなってしまいました」「今の私にNGT48のためにできることは、卒業しかありません」と卒業という決断がやむにやまれぬものであったことを明かした[103]。山口は、ファンをはじめ今まで支えてくれた人たちへの謝罪と感謝を口にするとともに「私がこれからできることは、今の苦しい姿ではなくて、笑顔で幸せな姿を見せて、皆さんに元気を与えることだと思います」と今後の芸能活動への決意表明を行い、「残り1ケ月もありませんが、最後まで一人の人として、NGT48として、みなさんに今度は笑顔でまたお会いできたらうれしいなと思っています。あと少しの間ですが、どうぞよろしくお願いいたします。」との言葉でスピーチを結んだ[103]

同日、菅原りこ長谷川玲奈が卒業することが発表され、山口と同じ5月18日の卒業公演が最後の活動となることが告知された。山口は二人と村雲颯香に対して「私がこうして世間に発信してからも、寄り添ってくれた」と感謝の意を示した[103]

山口は、チームGにとって初めての劇場公演となる「逆上がり」公演の初日に、チームGの副キャプテンに就任しており、卒業を発表した4月21日の公演は、同公演の千秋楽であった[105][106]

最後の握手会

上述の劇場公演で言及された通り、パシフィコ横浜で5月5日、6日に行われた握手会が、山口にとって最後の握手会となった[106]

卒業公演

2019年5月18日、山口の卒業公演が開催された。通常、メンバーの卒業公演は16人前後のメンバーで構成されるチーム別劇場公演に卒業セレモニーを追加する形で行われるが、山口の卒業公演は1日限りの特別公演として実施され、総合プロデューサーの秋元康が書き下ろした新曲のタイトルから「太陽は何度でも」公演と銘打たれた[107]。出演メンバーは同日をもって卒業する山口真帆、菅原りこ、長谷川玲奈の3人であり、異例づくめの劇場公演となった[107]。セットリストはこの日のために組まれたオリジナルのものであり、スポニチは「王道アイドルソングがズラリと並んだセットリスト」と報じた[108]。また、サプライズゲストとして同期の1期生から日下部愛菜、小熊倫実、角ゆりあ、後輩の2期生から高沢朋花、ドラフト3期生から高橋七実が招き入れられた。スポニチは、この人選を「山口がファンとのつながりを疑っていない“山口真帆選抜”」「まほほん(山口のニックネーム)派」と表現した[108][109]。本編最後の曲は、サプライズゲストと共に8人での欅坂46の「黒い羊」で、スポニチはこの選曲を「1曲だけ異質」と表現し、その狙いについて、歌詞に登場する「黒い羊」は追い出されるようにして卒業する山口のことであり、「『黒い羊』がいなくなれば、また『白い羊』だけでやり直せる」という意味で「山口が抱える思いをそのまま表現したように聞こえる詞」「運営側へ向けた究極の皮肉」であると説明した[109]。最後の曲はAKB48グループの卒業曲「桜の花びらたち」で、桜吹雪が舞い落ちる中、涙ながらに歌い、アイドルとしてのパフォーマンスを終えた[108]。最後のあいさつで運営を批判することはなく、ファンへ感謝するとともに「これからの夢に向かって力強く歩んでいきたい。またみなさんとお会いできるように頑張ります」と決意を表明し、3年半のアイドル人生にピリオドを打った[109]

卒業後の芸能活動

山口は、卒業後の2019年5月25日、芸能事務所・研音に所属し、舞台やテレビドラマ、映画に出演したり、ソロ写真集を発売するなどした。それと同時に、今回の事件に関するものを含め、SNSへの過去の投稿を全て削除した[110]。山口は、2023年9月末をもって研音を退所し、現在はフリーランスとして芸能活動を行っている。

事件の余波

要約
視点

NGTメンバーに対する誹謗中傷

山口の告発後、ネット上では真偽不明の情報が飛び交い、複数のメンバーが事件への関与を疑われるようになり、根拠のない事実と異なる情報が次々にネット上に書き込まれ、多数の誹謗中傷や脅迫を受ける事態となった[111]

太野彩香は「私と、私の家族、親戚までも身の危険を疑われる言葉も目にし、今もまだ生きてる心地がしません」とツイッターに投稿しており、中井りかも、「憶測であれこれ言われて、みんな傷ついています。証拠もないままに、ネットで餌食されています」と強く反発していた[112]

メンバーの荻野由佳は、2022年12月のインタビューで、そうした誹謗中傷がインタビュー当時も続いていたことを明かしている[111]

2020年7月には、イメージダウンを目的にメンバー5人を名指しして「覚醒剤使用のため、思考回路と人間の心が破壊されている」とツイッターに投稿した東京都の男性(当時50歳、職業不詳)が名誉毀損の疑いで逮捕されている[113]

山口に対する批判・疑念

犯人男性が裁判の陳述書の中で、マンションの共用スペースで直接プレゼントを渡すなど山口とつながりがあったことや、山口からメンバーとの確執について聞かされたと証言していたことなどが判明して以降、事件直後に山口が警察に通報せずにメンバーを呼び、公園でこの男性らと話をしていたことや、事件が明るみに出たときに「メンバーが事件に関与している」と主張していたことなど、山口の一連の行動の遠因が見えてくるとして、一部のマスコミなどから山口の対応に対して疑問を呈する声もあがるようになった[96]

また前述の録音音声の中で、山口が犯人グループとつながっていると考えていた西潟茉莉奈と太野彩香について“本当にクズ”と発言したり、「その関わっているメンバーの子も、ほんとに辞めさせるから、私」と言いながら、犯人たちが否定しているにもかかわらず、執拗に西潟と太野との“つながり”を問いただすなど、2人のメンバーを辞めさせることで頭がいっぱいという様子がうかがえたため、当時事件を取材した関係者の間から「山口は敵対するメンバーを追い出したいだけ」という声も多く聞かれたと週刊誌記者が証言をしている[114]

当時のNGTメンバーも必ずしも山口に対して同情的な立場を取っていたわけではなく、2019年5月には加藤美南が、インスタグラムにテレビで放送された元メンバー山口の卒業公演のニュースを映して「せっかくネイルしてるのにチャンネル変えてほしい」と書き込んで、ネットを炎上させた[115][116]。NGT48は2019年5月21日、公式ホームページでNGTメンバーのSNS停止と加藤が研究生に降格することを発表した。AKSは「このたび、加藤美南のSNSで不適切な投稿がございました。皆様には大変不愉快な思いをさせてしまいましたことを深くおわび申し上げます。つきましては、不適切な投稿をした加藤美南を本日付で研究生降格処分と致します。メンバーへのSNSの指導が徹底できるまで、本日午後11時からNGT48全メンバーのSNSの運用をいったん停止させて頂きます」と発表している[117]

前出の荻野由佳は「たしかに、NGTに注目が集まっている時期に、自分の不用意な言動がみなさんの臆測をかき立ててしまいました。それについては自分に落ち度があり、反省しています。ただ、私個人の考えで、被害を受けたメンバー(山口)に寄り添えなかったのは本当です。騒動を収めるために取り繕う、という選択もできましたが、私はそれを選びませんでした。今でもその気持ちは変わっていません」と、事件を振り返っている[118]

NGTメンバーによる告発やいじめ発言

山口らの卒業公演に参加した高橋七実も、自身が2020年に脱退したきっかけがいじめによるものだったと、2022年11月にブログで告発している。当時は脱退の理由について「私からお話できるのは『運営、メンバーとの方向性の違い』これだけです。」とのみ公表していた。高橋によると、2019年4月のメンバー内の話し合いがきっかけでメンバーとの関係が悪化し、のちに週刊誌にグループの内情が書かれた記事が出た際に情報を売った犯人だと疑われたという[119][120]。2019年4月、文春において、山口ら他2名を除いてのミーティングで「『事件には関係ないけど』という前置きをした上で、ファンと繋がっていたベテランメンバーが挙手していました」などの告発がNGTメンバーによってなされ、結局正規メンバー5名が名乗り出た、山口の帰宅時間を教えた研究生メンバーなどの名前も挙がったと記事にしている[121]

スポンサーとの契約終了・撤退

一連の騒動を受け、スポンサーの一正蒲鉾が、2019年1月14日からCMの放映を中止し、公式サイトから動画を削除した。新潟商工会議所も同15日、公式サイトにアップしていたNGT出演の「新潟開港150周年記念スペシャルムービー」を非公開とした[122]。また、JR東日本新潟支社は3月末の期限をもって、CM契約を終了した。その理由については、「元々3月いっぱいで終了する契約だった。騒動を受けて終了するということではない」と説明した[123]。またNGTは、同年9月に開幕する国民文化祭と全国障害者芸術・文化祭のスペシャルサポーターに起用が予定されていたが、新潟県知事の花角英世は、同年6月5日の定例記者会見で「県民から歓迎される状態になったとは思えない」と述べ、保留としていたNGTとの契約を更新しないことを明らかにした[75]

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第三者委員会の調査報告書

要約
視点

第三者委員会による報告書は「会社関係者の関与の有無、程度、直接、間接の発生原因の調査」を目的としており[78]、株式会社AKSの組織体制、調査時点での問題点と再発防止策にも言及している。

調査方法

調査は、以下の手法によって行われた[124]

AKSが所持する資料の精査
委員会はAKSにより提出された「会社組織、NGTメンバー等に関する資料」「本件事件に関する資料」「その他メンバーとファンとの接触状況に関する資料」などを精査した。
書面による調査
委員会は、NGTメンバー全42名のうち38名[注釈 22]に対し、本件事件及びその背景事情等に関する認識の有無等を、書面により調査した。調査は、AKS関係者が一切同席していない場所において、概ね30分程度の時間を設定して行われた。調査は、記名か無記名かを対象者が選択する形で行われ、24名が記名、14名が無記名であった。委員会は「いずれにおいても、対象者は真摯に回答を記載していた」としている。
なお、委員会は、回答が記載された書面及び対象者が特定できる資料を、AKSを含め委員会以外には将来にわたって一切開示しないこととし、その旨対象者に告知して調査が行われた。
面談による事情聴取
委員会は、NGTメンバー42名、AKS役職者24名、メンバー及びAKS役職者以外の14名の合計80名に対し、事情聴取を実施した。事情聴取は、委員ないし補助者の2名一組で行われた[注釈 23]。供述はあくまで任意で求めることとされ、供述内容を裏付ける資料等がある場合は、提出を求めた。
その他の調査
このほか、インターネット上の掲示板、SNS、まとめサイト、各メディアの報道記事等を可能な限り調査したほか、事件の現場やNGT48劇場、メンバーの移動経路や降車ポイントを現地調査し、実際の握手会を視察した。また、委員会は事件の被疑者である甲、乙および関与が疑われる丙に調査への協力を求め書面を送付したが、最終的に3人からの連絡はなく、調査が実現することはなかった。

AKSの組織体制とY&N Brothersとの関係

2006年1月20日に設立された株式会社AKSは、取締役会の下、10部2室の体制となっており、AKB48、HKT48、NGT48の運営並びに海外の姉妹グループ事業を統括している[注釈 24]。AKSは、2016年7月11日付で、株式会社Y&N Brothersと業務委託契約を締結しており、AKB48グループの活動のクリエイティブなプロデュース部分[注釈 25]の業務を委託している。その余の部分、すなわちAKSの組織上の行為、グループの運営、メンバーの管理、劇場の管理等については、すべてAKSが業務を遂行することと定められている[125]

NGT48の運営

NGT48は、AKSのNGT48運営部によって運営されており[注釈 26]、運営部は、部長のNGT48劇場支配人のほか、マネジメントグループ[注釈 27]、NGT48劇場グループの2つのグループに分かれている。その職務の中核は、NGT48劇場での公演の開催及びこれに対するメンバーの参加を確保するマネジメントである。それ以外にも、メンバ-が参加するイベントは多岐にわたっており[注釈 28]、それらのイベントの開催においても、運営部は一定の役割を担っている。マネージャーは、各メンバーごとに担当が割り当てられており、上記のようなイベント開催時には、メンバーに帯同している[126]

支配人
支配人の権限について、AKSでは職務権限表が存在し、国内出張の承認、1件3万円未満の一般経費の支出などの権限が認められているが、人事や経営自体に関する権限は、配分されていない。また、職務権限表以外の部分について、事件当時支配人だった今村氏(以下、前支配人)に分掌されるべき職務、権限については、具体的に定められておらず、誰の指揮、監督下で職務を行うのか、明らかにされていなかった[127]。そのため、メンバーに関して発生した事象について、メンバーから直接相談されることもあり、誰に相談すればいいかわからないまま判断せざるを得ない状況が多く生じており、メンバーやマネージャーからは、独断専行と評価される場面もあった[128]
マネージャー
マネージャーについても、職務や権限を定める規程は存在せず、どのような職務を行うべき立場にあるか具体的に定められていなかった。NGT48のメンバーはAKSとの間で、専属契約を締結し、メンバーはマネジメント業務をAKSに委託しているが、AKSがマネジメント業務を行うに際して、誰の指揮、命令に基づき、どのような職務を行うのかは定められていなかった[129]

メンバーの活動と安全確保

報告書では、ファンとの接触を伴うグループ活動が列挙されており[130]、特に以下のケースで安全の確保が問題となりうるとした。

NGT48劇場における公演
NGT48劇場における公演は、舞台と客席との間に段差がほとんどなく、安全確保の観点から特に注意が必要であるが、公演の際、観客に対する禁止事項が定められており、違反者は出入り禁止となることから、規定内容に大きな欠点は見いだせないとした[131]
握手会
握手会はファンとメンバーが至近距離に近づくことから、安全確保上、劇場公演とは異なる配慮が必要とされているが、かつて握手会で発生した傷害事件を教訓として、様々な施策が講じられているとした。一方で、握手会においては、特に握手券の「まとめ出し」により長時間の会話がなされた場合、その内容によっては私的な接触を求められる危険性があること、私的な接触を求める会話が主催者のルール上明確に禁止されていないことが指摘されており、調査時点では、そのような危険に対処しうる形での人員配置はされていなかったという[132]
メンバーの送迎
メンバーは、NGT48劇場と自宅との送迎にマイクロバスを使用するが、乗降車場所の特定が容易であったり、車内は提携先のドライバーのみであり、マネージャーが同乗していないことが報告書では問題視されている[42]
メンバーの住居
NGT48には、新潟県外出身者が多く在籍するが、メンバーの居住するマンションが、事実上一定の範囲に限られ、住居がファンに知られてしまう事例があったが、AKSは、一旦居住先を定めた後は、積極的な対応を行っていなかったことが、報告書では指摘されている[42]

「ごく一部のファン」による迷惑行為

報告書では、劇場公演や握手会に参加し「推し活」を楽しむ「一般的なファン」に対して、多数いるファンの中の一人であることに満足できず、メンバーと私的な「つながり」を持とうとするファンを「ごく一部のファン」と定義し、迷惑行為の態様と、それに対し運営が取るべき対策について言及している[42]

メンバーを送迎するマイクロバスの後をつけたり、メンバーが自宅でSHOWROOMの配信をしている時に近くで奇声をあげるなどして、メンバーの自宅を特定しようとするファンが確認されており、事件の被疑者甲も、現場となったマンションに複数のメンバーが居住していることを特定したうえで、部屋を借りていた[133]

NGT48の運営は、迷惑行為をはたらいたファンに対しては、各種イベントの参加資格を剥奪する「出禁(出入り禁止)」措置をとっているが、握手会の際に握手券のまとめ出しして得られた長時間の会話の機会に私的な「つながり」を持とうとするファンに対して出禁の措置がとられた事例は確認できなかった[134]

ファンとの「つながり」

報告書では、第三者委員会の調査に対し、36名のメンバーから他のメンバーとファンとの「つながり」についての供述があり、12名のメンバーの名前が具体的に挙がったとされている[49]。また報告書では、調査の中で「噂」レベルではない具体的事実として前述の7項目を挙げた[45]。報告書では、そのような「つながり」について、前支配人およびマネージャーは認知していたと思われるとし、1件について調査は行ったが正式な処分はなく、それ以外の事案には、積極的な調査や対応を行った形跡がないとし、その背景に「つながり」を処分する具体的規定がないことを指摘した。AKSがメンバーと締結している専属契約では「不適切な男女交際」と「(グループの)一員としてふさわしくない」行為が契約の解除事由となっているが「ふさわしくない」行為に「つながり」が含まれるか、一義的とはいえないとしている。さらに、解除を含む契約に関する事項は、AKSの代表取締役の権限であり、支配人が単独で判断できるものではないことも指摘されている[49]

新潟という活動拠点の特殊性

さらに報告書では、AKB48グループがこれまで拠点を置いてきた東京大阪名古屋博多に比べ都市部が狭く、公共交通機関が発達していないこともあって、多くのメンバーが一定の狭い範囲に居住せざるを得ない点が指摘されている。AKSはメンバーの送迎にマイクロバスを用意しているが、そのような事情から、移動経路や発着場所の特定が容易であり、メンバーの住居が特定されやすい状況にあるという。委員会の調査では、過半数のメンバーが自宅をファンに知られているか、知られているおそれがあると回答している[135]。また、他の姉妹グループに比べ、ファンの絶対数が少なく、特定少数のファンとの触れ合いが多くなっていたことも、ファンとの「つながり」を容易にする要因となっていた[136]

再発防止のための対策

上記の事情を踏まえ、報告書では、再発防止のため、AKSが取るべき対策が提言されている。

  • メンバーの送迎の際には、目立つ車両の使用を回避する、車両を複数にして分散して移動させる、乗降車場所を頻繁に変更する、待ち伏せなどを回避しうるよう、マネージャーを帯同させることなどが必要である。特に、マネージャーが帯同していれば、降車直後の声がけや待ち伏せは困難であり、今回の事件につながるような事態は回避できた可能性がある[137]
  • メンバーの居住先については、ファンに住居が知られた可能性がある場合には速やかに転居が必要とし、マンションの管理会社や管理人と密に連絡を取り合い、不審者などの危険な要因の有無を継続的に確認することが必要である。今回の事件では、現場となったマンションはマンスリーマンションとして賃貸されていたが、そのこと自体が転居を検討すべき材料だった。寮のような形でメンバーの居住先を1ヶ所に集中させて管理する方法もある[137]
  • 握手会において、特に握手券が「まとめ出し」された場合、会話内容を聞き取れる位置にマネージャー等のスタッフを配置し、場合によっては会話を制止する対応も必要である。そのような体制を円滑に運用するため、どのような発言を制止するかの基準やルールを明確に定める必要がある[32]
  • 迷惑行為をはたらく「ごく一部のファン」への対応策としては、出入り禁止(出禁)が極めて効果的であるところ、NGTにおいては、劇場での禁止行為のみが出禁の対象として明文化されており、劇場外での迷惑行為についての統一的なルールが存在しなかったため、「つながり」を求めたり「つながり」を持ったファンに処分が検討されたことはなかった。出禁処分は、支配人レベルで判断されることが望ましく、どのような場合に支配人が出禁処分を下すか、具体的なルールを作成し、適正に運用していくことが必要である[138]。また、現状では、出禁者リストは劇場においてのみ運用されており、レコード会社が運用する握手会等のイベントではリストが共有されていなかった。今後は、可能な限り各イベント間で情報を共有し、対象者の入場を制限することが必要である[139]
  • メンバーの側においても、「自覚と意識」が明確に備わっていることが必要である。メンバーは全員がNGTのスタッフよりも年下であり、丁寧に説明するなどの教育が必要である。私的な「つながり」に対し、一定の禁止規程を設け、違反者は処分するという対処も検討に値する[140]
  • マネージャー等のスタッフに対しても、メンバーにアイドルとしてあるべき姿を教え導ける良き指導者、相談者としての養成が不可欠である。そのような役割を明確に意識していないマネージャーが見受けられたが、その一因には、マネージャーの権限が明確に定められていないことがあると考えられる。マネージャーはどのような職務を負うのか、誰の指揮、命令に従う必要があるのか、早急に明確化するべきである[141]。また、マネージャーを教育するにあたっては、マネジメントの専門家を招聘し、マネージャーを育成する部署を設置するなどの対応を取ることが望ましい[142]
  • 支配人は、NGT運営部を束ね、組織の長として意思決定を行い、部下のスタッフとメンバーの安全を管理する立場にある。しかしながら、既に述べたように支配人の権限を定める具体的規程が整備されているとは言い難い状況であった。多岐にわたる支配人の業務が適確に遂行されるためには、職務権限、責任の所在、指揮監督系統を明確化する必要がある[128]

終わりに

報告書では、今回のAKSの対応について、今後、同様の被害が他のメンバーに生じないよう、まずは関係者からの事情聴取を早急に実施する必要があったところ、山口が情報発信をするまでそのようなことが行われなかった背景には、AKSの取締役会に事案の深刻性が伝わらず、対応をNGT運営部、特に前支配人にゆだねてしまったことにあると指摘されている。今後そのような事案が発生した場合には、現場のスタッフと支配人、取締役会が緊密に連携し、適時、適切な報告、指示がなされるように体制を構築する必要があると提言している[143]

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脚注

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