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イギリス、アメリカの映画作品 ウィキペディアから
『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(原題:Once Upon a Time in... Hollywood)は、2019年のアメリカ合衆国、イギリスのスリラー映画。
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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド | |
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Once Upon a Time in... Hollywood | |
監督 | クエンティン・タランティーノ |
脚本 | クエンティン・タランティーノ |
製作 |
デヴィッド・ハイマン シャノン・マッキントッシュ クエンティン・タランティーノ |
製作総指揮 |
ジョージア・カカンデス ユ・ドン ジェフリー・チャン |
ナレーター | カート・ラッセル |
出演者 |
レオナルド・ディカプリオ ブラッド・ピット マーゴット・ロビー エミール・ハーシュ ティモシー・オリファント ジュリア・バターズ デイモン・ヘリマン マーガレット・クアリー オースティン・バトラー ダコタ・ファニング マヤ・ホーク ブルース・ダーン アル・パチーノ カート・ラッセル ルーク・ペリー |
撮影 | ロバート・リチャードソン |
編集 | フレッド・ラスキン |
製作会社 |
ヘイデイ・フィルムズ ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
配給 |
コロンビア ピクチャーズ ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
公開 |
2019年7月26日 2019年8月30日 |
上映時間 | 161分[1] |
製作国 |
アメリカ合衆国 イギリス |
言語 | 英語 |
製作費 | $90,000,000[2] |
興行収入 |
$377,617,598[2] $142,502,728[2] 11.8億円(2020年1月時点)[3] |
1969年にハリウッド女優シャロン・テートがチャールズ・マンソン率いるカルト集団「マンソン・ファミリー」に殺害された事件を背景に[4]、ハリウッド映画界を描いた作品。クエンティン・タランティーノの監督第9作目であり、レオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピットの初共演作品[5]。
かつて西部劇を中心にテレビスターとして名を馳せていた俳優リック・ダルトンは、カウンターカルチャーの影響で変容しつつあるハリウッドの中で時代の流れに取り残され、今やドラマの悪役や単発企画へのゲスト出演に甘んじていた。リックの親友で専属スタントマンのクリフ・ブースもリックと同様に時代の流れの煽りを食い、また過去に自身が起こした出演者とのトラブルもあってリックの世話係を務める毎日を送っていた。そんな中、シエロ・ドライブ(シエロ通り)にあるリック邸の隣にまさに時代の寵児となりつつあった映画監督ロマン・ポランスキーとその妻で売り出し中の若手女優シャロン・テートが引っ越してきていた。
1969年2月8日、リックは西部劇愛好家で映画プロデューサーのマーヴィン・シュワーズからイタリアの西部劇映画への出演を勧められる。ハリウッドスターとしてのプライドから誘いを固辞するリックは、ハリウッド俳優としての限界を改めて突きつけられたとクリフに泣きつき、自身とは正反対に多くの友人に囲まれながら華やかで幸福な前途洋々の生活を送るポランスキー、シャロン夫妻を苦々しく見つめるのであった。
1969年2月9日、リックはクリフの運転で撮影現場へ向かう。リックから撮影中に家のアンテナを修理しておくように依頼されたクリフは屋根の上から、ポランスキー邸に向かう一台の車を目撃する。やがて車から降りた男に対して、ポランスキー邸に出入りしているシャロンの元恋人で友人のジェイ・シブリングが声をかけると、男は「“テリー”を探している」と言う。ジェイが「ここは1か月前からポランスキーの家だ」と返すと男は去っていった。
若手俳優ジェームズ・ステイシー主演のテレビ西部劇『対決ランサー牧場』に悪役として起用されていたリックだったが、監督から髪型のチェンジや、付け髭などを要求され、「テレビ映画の演技ではなく、映画の演技を見せろ」と言われて困惑する。さらに、前夜の深酒の影響から何度も台詞を飛ばしてしまう。トレーラーハウスで気合いを入れ直したリックは、悪役としての見せ場であるシーンの撮影でスターならではの怪演を見せつけるのだった。
その頃、シャロンは休日を1人で過ごしていた。ショッピングの帰り道、自身が出演した映画『サイレンサー/破壊部隊』が上映されている映画館の前を通りがかり、自分の名がクレジットされたポスターを眺めて気を良くしたシャロンは、受付係に「この映画の出演者なの」と声をかける。怪訝な顔をされながらも何とか入場を許され、自身の演技に対する客のリアクションを見て満足気な表情を浮かべるシャロンだった。
一方、リック邸のアンテナ修理を終えた後、気ままにドライブしながらリックの迎えまでの時間を潰していたクリフは、ヒッチハイクをするヒッピーの少女プッシーキャットをピックアップする。プッシーは行き先を「スパーン映画牧場」と告げるも、クリフにとって馴染みの撮影所であった牧場について彼女が「仲間と暮らしている」と語ったことに違和感を感じた彼は、牧場主のジョージ・スパーンに挨拶するためという口実で牧場を訪れる。牧場に着くと、車から降り立ったクリフをヒッピーたちが取り囲む。ヒッピーを説得しジョージとの再会を果たしたクリフであったが、ジョージは両目を失明した上記憶も混濁している状態で軟禁されていた。牧場は「チャーリー」という人物を崇拝するヒッピー集団のコミュニティとなっていた。
半年後の1969年8月8日、リックは妻のフランチェスカ・カプッチとクリフと共にロサンゼルスへ向かう飛行機に搭乗していた。『対決ランサー牧場』への出演後、リックはイタリア映画への出演を承諾し、クリフと共におよそ半年間のイタリア生活を過ごしていたのだった。半年の間に出演した4作品はいずれもイタリア国内でヒットし、2人はある程度の成功を収めていた。ロサンゼルスに着いた2人は街のレストランで食事を共にし、深夜(明けて8月9日)、泥酔してタクシーにてリック邸に帰宅した。
ポランスキーとの子を身ごもっていたシャロンは、大きく膨らんだお腹を抱えながらジェイら友人と共に街のレストランで食事を摂り、その後夫の留守を理由に彼らを自宅に招いた。
クリフが愛犬のブランディの散歩に出た後、リックが追加のマルガリータを作ろうとキッチンに立った頃、4人の男女を乗せた一台の車がシエロ・ドライブに現れた。リック邸の前に停車した車のエンジン音に苛立ったリックは4人を恫喝し、その勢いに気圧された4人は足早にその場を後にした。「チャーリー」からの命令により旧テリー・メルチャー邸に住む人物(即ちシャロンら)の殺害を企てていた4人であったが、自分たちを恫喝した人物がリック・ダルトンであることに気づくと、「リック・ダルトンのような殺人を演じた西部劇スターこそが自分たちに殺人を教え込んだ張本人である」「殺しを教えた奴らを殺そう」と標的をリックに変更する。
「マンソン・ファミリー」がリック邸に押し入ると、ちょうど散歩から帰宅したクリフとブランディが彼らを迎えた。ファミリーのリーダー格の男テックスはクリフに銃を向け、奥の部屋で寝入っていたフランチェスカもナイフを突きつけられる。しかし、クリフがブランディに対して合図を出すと、ブランディはテックスの腕に噛みつき、クリフも怯んだファミリーを容赦なく袋叩きにする。1人プールで酒と音楽に浸っていたリックだったが、クリフとブランディから攻撃を受け半狂乱になった女がプールに飛び込んでくる。手にした銃を四方八方に乱射する女に対し、リックは過去の出演作で使用した小道具の火炎放射器を取り出し女を焼いて制圧した。
やがて警察と救急隊が駆けつけ、ファミリーの遺体と負傷したクリフを搬送、リックとフランチェスカは事情聴取を受ける。クリフを見送りその場に佇むリック。騒ぎを聞きつけやってきたジェイがリックに声をかける。シャロンもリックの身を案じ、他の友人と共に自宅へ招き入れるのであった。
使用された主な楽曲は以下のとおり。
2009年頃に俳優でスタントマンのある人物と映画の撮影を共にした際に今作のアイディアが浮かんだ。
当初、タランティーノはクリフ・ブース役にトム・クルーズを候補にしていると報じられたが、最終的に発表されたのはブラッド・ピットであった。
2019年5月21日、第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で上映された[16]。アメリカ合衆国では同年7月26日に公開された[17]。日本では同年8月30日に公開された[18]。
本作は批評家から高い評価を得ている。映画批評家レビュー集積サイトRotten Tomatoesでは、2019年8月31日現在、486件のレビューがあり、批評家支持率は85%、平均点は10点満点で7.81点となっている[19]。Metacriticには、61件のレビューがあり加重平均値は83/100となっている[20]。
第72回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、観客から6分間のスタンディングオベーションを受けた[21] 。主要各賞の受賞はならなかったが、作中でクリフの飼い犬・ブランディを演じたアメリカン・ピット・ブル・テリアのサユリにパルム・ドッグ賞が与えられている[22]。
本作は2019年7月26日に米国公開を迎え、28日までの3日間で興行収入4,035万ドルを記録した。タランティーノ監督作品としては『イングロリアス・バスターズ』(2009年)の3,805万ドルをしのぎ、歴代最高のオープニング興収スタートとなった[23]
日本では8月30日より全国320スクリーンで公開した。土日2日間で動員17万人、興収2億2600万円をあげ、6位となった。これは2016年に公開された前作『ヘイトフル・エイト』の興収比476.6%と大きく上回る成績である[24]。10月2日までに累計興収1,105,600,500円、観客動員数792,386人となり、11億円を突破した。タランティーノ監督作品の日本での興行収入としては、『キル・ビル』に次ぐ2位となった。2019年10月31日までに累計興収11億5000万円を突破したことがわかった。
第77回ゴールデングローブ賞では、作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、脚本賞、助演男優賞を獲得した。
第92回アカデミー賞では作品賞を含む10部門にノミネートされ、助演男優賞と美術賞を獲得した。助演男優賞のブラッド・ピットは自身初の演技部門でのオスカー獲得となった。
ナショナル・ボード・オブ・レビューやアメリカン・フィルム・インスティチュート、タイムは本作を2019年の映画ベスト10に選出した[25][26]。
本作でのブルース・リーが尊大かつ大言壮語する人物に描かれていることについて、娘のシャノン・リーが「非常に不愉快で、映画館で観客に笑われる父は、まるで過去にハリウッドで人種差別を受けた時の父を思わせる」と不快感を表明した[27]。ブルースの友人であるカリーム・アブドゥル・ジャバーも、タランティーノの描写について「やや人種差別的だ」と指摘している[28]。
これに対して監督のクエンティン・タランティーノは、「事実を歪曲したのではなく、ブルースには実際に尊大なところがあった」「『彼はモハメド・アリを倒せるなんて言ったことがない』と主張する人がいるが、ブルースは実際にそう言っている。彼の妻のリンダ・リーによる最初の伝記[注 3]にもそう書いてある」と反論した[29]。
それに対してブルースの別の伝記を執筆したマシュー・ポリーは、タランティーノの主張は誤りで、ブルースに関する発言はリンダの著書の中で彼女が引用したテレビ評論家の言葉に基づいていると指摘した。さらにポリーはブルースについて、「アリを倒せるかとジョン・サクソンに直接聞かれたとき、ブルースは『僕の手を見て。これは中国人の小さな手だ。対決したら彼は僕を殺してしまうだろう』」との言葉を引用している[29]。
本作のスタント・コーディネーターのロバート・アロンゾ(Robert Alonzo)によれば、ブルースvsクリフのシーンは当初さらに長いもので、ブルースの敗北ももっと決定的に描かれていたという。アロンゾは「私自身アジア系アメリカ人として、ブルースは映画におけるアジア人の在るべき姿のシンボルだと思っている。だから、ブルースが負けるというアクションを作るのは難しかった。現場のみんな”どうします?”って。クリフを演じるブラッド・ピットだって、”ブルース・リーだよ?”って特に反対していた」と述べている。当初考えられていた展開では、2人が打ち合いを続けた後、クリフが「卑劣な技」を繰り出してブルースを倒す。この展開を危惧したアロンゾはタランティーノに、ブルースを弱者にしてしまうのでなく、クリフがブルースと対等に渡り合えるほどの実力の持ち主であると示すことさえできれば良いのではと提案。タランティーノも納得し、戦いの途中で止めを入れて明確な勝者を決めない結末に変更したという[30]。
ブルースがクリフに負けるという展開について、タランティーノはあくまでもクリフが架空のキャラクターであるとし、「それってブルースとドラキュラはどっちが勝つ?っていうのと同じことだよ」と主張している。タランティーノはクリフが第二次世界大戦で大勢を殺した帰還兵であることを強調して、「もしもクリフがブルースと格闘トーナメントで戦ったらブルースに殺されていたかもしれない。でも、もしフィリピンのジャングルで肉弾戦になったらクリフがブルースを殺すかもしれない」と弁明した。この反論を受け、シャノンは「“ブルースはこうだったけど、これはフィクションだから気にしないで”というのはちょっと不誠実でしょう」と批判している[30]。
社会学者のナンシー・ワン・ユエンは、「ブルースを笑いものにする描き方としか思えない。この映画では、彼を力強く感じさせるあらゆる要素が彼を笑いものにする要因となっている」とし、「ブルースのカンフーはジョークとなり、その哲学は骨抜きにされ、クリフはカンフーの際にブルースが発する声をからかう。そしてブルースを傲慢に描き、彼が詐欺師であるかのように感じさせている」と語っている[28]。
マシュー・ポリーは「あらゆる映画製作者は歴史を好きなように描く権利がある」と話しつつ、「残念に思ったのは、タランティーノがスティーブ・マックイーンやシャロン・テート、ジェイ・セブリング[注 4]などにとても敬意を払い同情的であったにもかかわらず、ブルースの描き方はより嘲笑的だったことだ。そしてブルースがこの映画で唯一の白人でない歴史的人物であったことを考えれば、これは問題だったと思う」と述べている[28]。
シャノンは本作におけるブルースの描写を、中国で公開される前に変更するよう中国映画管理局に訴えた。タランティーノが問題シーンの削除を拒否したため、最終的に中国で当初に予定されていた2019年10月25日の映画公開は取りやめられた[31]。
英The Telegraph紙によると、リック・ダルトンのモデルがバート・レイノルズ、彼のスタントを務めていたハル・ニーダムがクリフ・ブースであると記されている[32]。
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