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生殖器官の特殊化が進んで、胚珠が心皮にくるまれて子房の中に収まった種子植物 ウィキペディアから
被子植物(ひししょくぶつ、学名:Angiospermae、Magnoliophyta、Angiosperm)とは、植物の分類の主要な1グループ名[注 1]。種子植物(顕花植物)のうち、一般に花と呼ばれる生殖器官の特殊化が進んで、胚珠が心皮にくるまれて子房の中に収まったものをいう。裸子植物と対をなす分類群である。「被子植物門」、「被子植物類」。
被子植物 Angiospermae(新エングラー) Magnoliophyta(クロンキスト) Angiosperm(APG体系) | |||||||||||||||
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モクレン類 | |||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||
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下位分類群 | |||||||||||||||
(新エングラー体系の場合) (APG体系では異なる) |
種子植物のうち、一般に花と呼ばれる生殖器官の特殊化が進んで、胚珠が心皮にくるまれて子房の中に収まったものをいう。そのため被子植物と呼ばれる。心皮が発育して果実となる。
もう一つの分類群は裸子植物と言われ、これは胚珠が子房にくるまれておらずむき出しになっており、果実も作らない。被子植物は、裸子植物的祖先から、胚珠を保護するために大胞子葉がそれを包み込み、雌蕊となって密閉したものと見られる。これによって花粉が直接胚珠に触れることが不可能となり、花粉は雌蕊の柱頭に着き、ここから胚珠まで花粉管をのばす形になった。
Leebens-Mack et al.(2019)に基づく分子系統樹[1]
陸上植物 |
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Embryophytes |
被子植物 |
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APG IVによる被子植物の系統の詳細(2016)[3] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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18世紀、スウェーデンの植物学者カール・リンネが『自然の体系』(Systema Naturae、1735年)において植物を24の網に分類し、「24網分類」と呼ばれる体系を構築した。この分類方法は花の特徴、特に雌ずいと雄ずいの数に基づいており、未知の植物の所属を容易に決めることができたが、数だけで決めるのはあまりにも人為的だと批判された[7]。
19世紀に入り、現在の被子植物の分類体系の基盤となる体系が構築された。エングラーとプランテル、ベンサムとフッカーの体系が代表的である。エングラーとプランテルは花の進化方向や心皮の補生・合生を考慮し、花被の有無よりも雌雄の花の有無に注目した。また、これらの体系は新エングラー体系として1964年に採用された。一方、ベンサムとフッカーは花被を持つモクレン科などの被子植物を最も原始的と考え、子房を重視した[7]。
1981年にクロンキキストは、豊富な形態形質の情報にもとづき被子植物全体を網羅するような分類体であるクロンキスト体系(1981年、Arthur Cronquist)を構築した。この分類体系は、ベンサムとフッカーの体系と同様にモクレン型の花が原始的であるという仮説に基づいている。また、比較的固定されており、形態学的な特徴に基づく従来の分類を維持していた[7]。
1980年代以降、葉緑体DNAなどを用いた分子系統学的解析の研究が進み、これまでより詳しい被子植物の系統関係が明らかになった。これにより、従来の分類と分子系統樹の間に不一致が見られるようになった。これに対応して、Angiosperm Phylogeny Group(APG)による新体系の構築が行われた。1998年にAPG分類体系の初版を発表したがこの初版では分子系統学の研究成果を取り入れ、単系統群に基づいて目や科の名称が与えられた。これにより、多くの科や目が従来の分類とは異なる形で再構築され、実際に分類体系として用いるのは不便であった。その後、新たな知見を加味し、特に既存の分類との整合性に重点を置いたAPGの改訂版であるAPG IIが2016年に公表されたが、APG IIでは一部の科の範囲に使用者の裁量を残すなど、まだ完全な形には至っていなかった。2009年には、APG IIの欠点を修正したAPG IIIが発表さた[7]。
従来の分類では、被子植物は大きく双子葉植物(綱)(モクレン綱)と単子葉植物(綱)(ユリ綱)の二つに分類される(新エングラー体系での分類。()内はクロンキスト体系)。これは種子から芽が出てはじめに出てくる葉(子葉)の数からつけられた名称だが、それ以外にも大きく異なる点が存在している。
1990年代以降、ゲノム解析の発展と共に登場したAPG植物分類体系の考えによれば、被子植物の進化の初期に、原始的双子葉植物群が分岐し、次いで単子葉植物が分岐した。残りが単系統群の真性双子葉植物(Eudicots)を形成している。したがって、単子葉植物はまとまった一群と見なせるが、双子葉植物はまとまった一群ではない(側系統群)と思われる。
代表的な被子植物を種が多い順に挙げると以下のようになる。
重複受精(ちょうふくじゅせい、double fertilization)とは、被子植物の特徴的な受精形式で、受粉した花粉から伸長した花粉管内で生じた2個の精細胞(精核)が、卵細胞と中央細胞(2個の極核を含む)のそれぞれと受精する現象をさす。精細胞と卵細胞の受精を生殖受精、精細胞と中央細胞の受精を栄養受精と呼ぶ。受精後、受精卵(核相は2nである)は胚に、中央細胞(2個の極核と1個の精核が受精するため核相は3nである)は胚乳に成長し、胚珠から生じた種皮に包まれて種子となる。
一般的には最初の被子植物は、1億4000万年前(ジュラ紀)に裸子植物から分化したとされているが、もっと昔の三畳紀に分化したとする説もある。(サンミゲリアは外見が被子植物に似ているが、真の被子植物かどうか定かでない。またシダ種子植物のカイトニアは心皮が胚珠を包む傾向があり、これらが被子植物の起源ともいわれる。)現在確認されている最も古い被子植物の化石は、ジュラ紀から白亜紀に入る頃のアルカエフルクトゥスとされており、これは水中生活に適応して特殊化したともいわれるが、まだ花がコンパクトにまとまらず1つの枝のように見える。被子植物は、白亜紀以降、繁栄の時代を迎えた。
被子植物の系統樹における、(各枝に現存種が残っているような)最初の分岐は、主系列からのアンボレラ目の分岐である。続いて、スイレン目、アウストロベイレヤ目、カネラ目、コショウ目、モクレン目、クスノキ目などが分岐した。アンボレラ目からクスノキ目は、単溝花粉型植物群である。この後、主系列は、単子葉植物群を派生させる。単子葉植物群もまた単溝花粉型植物群である。その後、単溝花粉型植物群の主系列から、三溝花粉型植物群が派生する。この三溝花粉型は、近年の分類学上で、真正双子葉類と呼ばれる一大分類群である。
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