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『隠蔽捜査』(いんぺいそうさ)は、今野敏著の警察小説シリーズ。2005年から新潮社より刊行されている。既刊長編10作、短編集3作。
単行本、文庫本はすべて新潮社より刊行されている。
収録作品 | 初出 |
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指揮 | 『小説新潮』2009年5月号 |
初陣 | 『小説新潮』2009年11月号 |
休暇 | 『小説新潮』2006年6月号 |
懲戒 | 『小説新潮』2007年10月号 |
病欠 | 『小説新潮』2008年1月号 |
冤罪 | 『小説新潮』2008年5月号 |
試練 | 『小説新潮』2008年7月号 |
静観 | 『小説新潮』2010年5月号 |
収録作品 | 初出 |
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漏洩 | 『小説新潮』2011年7月号 |
訓練 | 『小説新潮』2012年1月号 |
人事 | 『小説新潮』2013年7月号 |
自覚 | 『小説新潮』2013年10月号 |
実地 | 『小説新潮』2014年1月号 |
検挙 | 『小説新潮』2014年4月号 |
送検 | 『小説新潮』2014年6月号 |
収録作品 | 初出 |
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空席 | 『小説新潮』2019年9月号 |
内助 | 『惑―まどう― アンソロジー』2017年7月 |
荷物 | 『小説新潮』2018年7月号 |
選択 | 『小説新潮』2020年2月号 |
専門官 | 『小説新潮』2020年7月号 |
参事官 | 『小説新潮』2020年9月号 |
審議官 | 『小説新潮』2022年1月号 |
非違 | 『小説新潮』2022年2月号 |
信号 | 書き下ろし |
警察庁長官官房総務課長の竜崎伸也警視長は独特の信念とキャリアとしての矜持を持つ警察庁の官僚。ある時、暴力団員の殺人事件が発生。10年前の少年犯罪が関わっていたことを知った竜崎はその対応の遅さに怒り、同じくキャリア官僚で小学校からの同級生である警視庁刑事部長で本事案の捜査本部長を務めている伊丹俊太郎警視長や刑事局に詰め寄るが、暴力団の抗争が原因だからそんなに慌てることはないと聞く耳を持たない。しかし次々と起こる殺人事件に方針を変更、捜査のやり直しの過程で警察官が殺人に関わっているのではないかという疑念を抱く。そんな中、息子の邦彦が薬物を使用していることを知る。
大森署(テレビ朝日版・大森中央署、TBS版・大森北署)に署長[注 1]として飛ばされた竜崎。そこでも独自の持論を展開していた。それらを見ていた大森署の刑事や副署長たちは、少々戸惑いを覚えながらも竜崎とうまくやっていた。そんな折、区長と区議との会議に出かけようとしていた矢先に強盗犯逃走の緊急配備の連絡が入る。すぐさま署に戻り、副署長以下所轄幹部を署長室に詰めさせ「ミニ指揮本部」を設置する竜崎。結局のところ、機動捜査隊によって確保されるも、捜査途中で報告のあった開店前の小料理屋での怒鳴り声について結果報告を確認させるとその小料理屋で拳銃発砲事件が発生。警視庁は立て篭もり事件と認定し、大森署に指揮本部を設置。指揮本部長に刑事部長の伊丹が着任する。署長の竜崎は「船頭が増える」と現場に赴く。現場の小料理屋付近では捜査一課特殊班が、現場程近くの民家を間借し、前線本部を設置していた。署長の竜崎は大森署は特殊班の指揮下に入る旨を伝え、伊丹部長からも「お前が前線本部長をやってくれるのはありがたい」と言われたため、前線本部長に就く。前線本部を立ち上げ犯人との交渉を模索するSITと立て篭もり事件では強襲し早期解決と唱えるSATの扱いで混乱する状況が続いたが、犯人が交渉に応じないことから最終的に前線本部長として竜崎からSATへの突入及び発砲許可という、人質の確保・犯人の射殺で解決する。しかし犯人が所持していた拳銃に実弾が込められていなかったことを知り、無抵抗の犯人を射殺したのではないかと困惑する。
大森署では、警察の広報活動の一環でもある「アイドルの1日署長」のイベントが行われており、署内もどこか浮ついていた。アメリカ合衆国大統領の来日も近づいており署長の竜崎も困ったものだと思っていた。そして、大統領の来日日程も決まり、それに向けて警察庁をはじめ警視庁では警備計画の策定が始まる。その最中、竜崎の元に「第2方面警備本部本部長」を命ずる命令書が、警視庁本部より発せられた。本来なら、第2方面本部長が着任するはずだと思い、警視庁総務部や警備部長に掛け合うも、警察庁警備局の発令であるとしてやむなく着任することになった。警備本部は竜崎と警察庁との調整で大森署に設置。副本部長として、第2方面本部長の長谷川警視正が着任。その秘書官として、第2方面本部管理官の野間崎警視が来署した。そして、竜崎の秘書官として、かつて警察庁で広報室長時代に研修として一時期指導した、女性キャリアの畠山が現れた。再会した彼女に心騒ぐものを感じた竜崎ではあったが、その最中、合衆国大統領を標的とした「テロ計画」があるという情報が流れた。
本編の主人公竜崎の幼馴染で警視庁刑事部長伊丹俊太郎を主人公としたシリーズ初の短編番外集。 福島県警で3年間刑事部長を務めていたキャリアの伊丹に内示が出た。それは、警視庁刑事部長への内示だった。久しぶりに本庁で長官官房総務課広報室長に就いていた竜崎に連絡を取った。やはり竜崎にも新たな内示が出ておりそれは長官官房総務課長への昇進だった。「やはりこいつにはかなわないのか…」と、感じながらも異動の準備に入る伊丹だった。その矢先に殺人事件が発生。帳場が立ち、捜査本部長として、そして最後まで福島県警刑事部長として指揮を取ろうとしたが、引継ぎのため福島入りした後任のキャリアが不安を抱かせる人間だった。
竜崎が署長を務める大森署を含めた第2方面本部で3件の事件が発生した。内2件は、大森署管内でのひき逃げ事件。もう1件は放火事件。別の管内(東大井)の事件は、殺人事件だった。放火事件では、刑事課のベテラン戸高が、過去の事情から放火事件に専念。更にひき逃げ事件では、過失ではなく故意の可能性が高まり、殺人事件として大森署に捜査本部が設置された。竜崎も副本部長、警視庁本部から柿本交通部長が捜査本部長として、土門交通捜査課長が捜査主任として着任する。殺人事件として帳場が立ったため、刑事部捜査一課からも人員が派遣され、伊丹刑事部長も所管のため来署した。犠牲者は元外務省キャリア。更に東大井の被害者は現役キャリアで、ともに外務省の人間だった。更に、生安課課長が麻薬捜査で厚生省の麻薬取締部とトラブルがあったと報告。更には、竜崎の娘美紀が、交際相手の三村忠典が海外赴任先で連絡が取れなくなったから調べてほしいと、相談してきた。わずか数日でこれだけの難問が発生するも竜崎は、いつものように原則通りに、業務を進めようとしていた。
竜崎に刑事部長の伊丹から相談が持ちかけられる。それは、かつて竜崎と伊丹の3期後輩であり、今では議員秘書を務める元警察官僚・田切勇作からの依頼で、羽田空港から足取りが途絶えた衆議院議員・牛丸真造の内密での捜索依頼だった。伊丹にすれば自ら動くと内密にできなくなるため、竜崎に頼み込んできた格好だった。竜崎も当初は難色を示すものの伊丹に押し切られる形ではあったが、講堂を押さえた上で「内密での指揮本部態勢」を敷き、警備・刑事・交通各課長を詰めさせ「捜査」に乗り出す。その矢先、大森署管内の大森南5丁目から牛丸事務所の車が発見され、車内からは牛丸の運転手を務めていた平井進の他殺体が見つかった。議員の所在も確認できず、殺人及び議員誘拐事件として認定し、「内密での指揮本部態勢」から「正式な指揮本部」に移行された。伊丹も指揮本部長に、竜崎は副本部長として指揮を執った。だが、議員の足取り、犯人の逃走ルートが200人体制のローラー捜査をかけても不明だったが、竜崎の閃きでボートを使ったことが判明し、神奈川方面に逃走したことが分かる。
大森署署長竜崎を補佐する所轄幹部達を中心とした短編集。官僚として優秀ながらも、原理原則を押し通す上司竜崎署長を補佐する副署長の貝沼警視のもとに、大森署が扱った事案で誤認逮捕の可能性があると東日新聞にスクープされたと情報があがってきた。竜崎の期待に応えられているうちはいいものの、その信頼を裏切ることを恐怖した貝沼は隠蔽を考えるが、竜崎が隠蔽を嫌うことは大森署内では周知の事実。送検48時間のタイムリミットが近づくなか、貝沼は対応に苦慮する。
大森署署長を務める竜崎はいつもの朝を迎えた。いつもと同じ時間に起床し、目覚めのコーヒーを飲み、新聞を読む。そして時間が来れば迎えの公用車で大森署に登庁する。儀式を繰り返すかのような日々だが、その日はいつもと違い妻・冴子から娘の美紀の交際について相談があるといわれるが、帰宅後に話を聞くと告げて登庁する。署長室に入ると斎藤警務課長からストーカー対策チーム編成について確認される。警察庁からの各都道府県警察本部を通じての通達で従来のストーカー相談窓口では対応不十分であるとして各警察署内に新設し、日夜発生するストーカー相談について機能的に対応していくというものだった。その編成に着手していなかった事から、生活安全課・刑事課・地域課の各課長にチーム編成のため人員をリストアップするように命じる。一息ついたその直後、大森署管内で略取・誘拐事案が発生した。しかも、その被害者は、大森署のストーカー相談窓口でストーカー相談に来ていたというものだった。早速竜崎は、結成したストーカー対策チームを投入する。
大森署署長を務める竜崎が大森署へ登庁すると、署員たちがいつもより少ないのを不審に思うと斉藤警務課長から私鉄の遅延が生じており、出勤に障害が出ていると報告され、更にとある銀行のメインシステムにも障害が発生していると報告があがる。同期の伊丹刑事部長に警視庁本部から捜査員を派遣しているか確認すると、私鉄・銀行共に派遣していないという。伊丹や本部は事件視していない様だが、確認の為捜査員を派遣すべきと判断した竜崎は大森署員を銀行の本店及び私鉄の本社へ急行させる。当然のことながら大森署を所管する第2方面本部長や警視庁本部の生安部長から抗議が来るもの捜査の必要性を説き、大森署員に捜査を続行させる。そして大森署管内で殺人事件が発生する。更に前作の終わりから持ち上がっていた竜崎の「人事異動」の話が「本格化」していることが、伊丹から告げられる。殺人事件の為に捜査本部が立ち上がり、竜崎も副本部長として指揮を執る。その最中、遂に警察庁より人事異動の通達がされる。異動先はかつて竜崎が事件解決の為に赴いた「神奈川県警」。拝命職務は「刑事部長」。かつて犯人護送の為に県警本部長と揉めたことが頭によぎるが、事件解決の為に、大森署への愛着に戸惑いながらも指揮にあたる竜崎。刑事部長として着任するまでに事件解決できるか。大森署長として最後の事件。
警視庁大森署で署長として数々の難事件を解決した竜崎は、神奈川県警刑事部長に栄転が決定。貝沼副署長ら大森署の面々は着任していく竜崎を見送った。後任の署長は女性キャリアで、北海道警総務課長から異動してくるが、到着が遅れ、明日にならないと赴任しない。そんな「空白の一日」を、事件は待ってくれない。品川署管内で同一犯の仕業とみられるひったくりが連続して発生。方面本部からの要請で、大森署も緊急配備への出動を命じられる。ほぼ総動員で犯人の逃走経路に網を張るのだ。ところが、ほどなくして、今度は大森署管内でタクシー強盗事件が起きた。2件同時の「緊配」は不可能だ。署長不在の中、貝沼は苦渋の決断を迫られる。
神奈川県警刑事部長編
大森署長の任が解かれ、神奈川県警刑事部長の職を拝命した竜崎。任を解かれた日も県警本部に着任報告するぎりぎりまで残務にあたっていた。書類の決裁しながら様々な来客を迎え、腹心・貝沼副署長から「そろそろ時間です」と告げられ、「後は後任に任せよう」と呟き、大森署を出る。そこには、制服姿の署員等が見送りのために整列をしており、あの、戸高巡査部長ですら制服に身を包み整列をしていた。セレモニーなど必要ないと斎藤警務課長に言っておいたのだが、この状態を見て「仕事はどうした。持ち場に戻れ」と命ずるも、貝沼から「らしいですね」とかえされる。彼らの心づくしに感傷しながら公用車に乗り大森署を去る。
大森署を去った足で、神奈川県警本部に向かう竜崎。本部に到着し、そのまま県警本部長に着任挨拶の為本部長室のある階にあがるが、刑事部長に着任予定の竜崎が連絡もなく総務課にあらわれるもので課員や総務課長がもたつくがなんとか佐藤本部長に着任報告することができた。佐藤からも「部長は偉いんだ。出迎えなきゃいけないしな。」と言われ、警視庁にも勝るとも劣らない「形式ぶり」に辟易する竜崎。だが、その佐藤から驚きの言葉が聞かされる。なんと竜崎を刑事部長に引っ張ったのは前任の本部長との事だ。かつて竜崎が前線副本部長として絡んだあの誘拐及び殺人事件で被疑者護送で揉めたあの本部長である。だが、その本部長は既に離任しており佐藤が後任本部長として着任したとのことだ。前任者も佐藤も懸案事項はただ一つ。神奈川県警の「不祥事」が多いことだ。建前・本音が当たり前にもかかわらず竜崎は総てが原理原則の一辺倒。そんな竜崎が神奈川県警を「変える」ことができる一歩ではないかと言われる竜崎。自分の仕事をするだけと返すが、そんな返しも本部長相手に普通はできないと言われる始末。
本部長への着任報告を終え、参事官・刑事総務課長の挨拶そして、誘拐及び殺人事件で前線本部長を務めた本郷警視長との再会と刑事部長の「引継ぎ」を受け、現在進行している捜査本部に顔出しすると、そこには板橋捜査一課長がいた。再会と着任の挨拶などで「着任日」を終える竜崎。
刑事部長の職務を開始し、当然ながら大森署長よりも多い決裁書類に辟易しているなか、同期である警視庁の伊丹刑事部長から連絡が来る。それは、警視庁と神奈川県警の管轄境で発生した「殺人事件」の連絡だった。
神奈川県警察本部・刑事部長の竜崎伸也は、刑事部捜査一課長・板橋武と参事官の阿久津重人から、横須賀のヴェルニー公園で男性の遺体が発見されたという報告を受ける。遺体は刃物で刺されており、他殺と断定され、横須賀署に捜査本部が設置される。板橋たちは、もし米軍絡みの事件であればNCIS(海軍犯罪捜査局)が出てくる可能性があると懸念する。やがて現場から白人男性が逃走したという目撃情報を得たことから、米軍関係者が被疑者という可能性が強まる。竜崎はすぐに本部長案件とするよう指示を出す。
一方で竜崎は、本部長・佐藤実から新しい警務部長として八島圭介という人物が福岡県警察本部から異動してくることを聞かされる。八島は東大法学部卒のキャリア警察官で、竜崎や警視庁刑事部長の伊丹俊太郎とは同期だった。竜崎は阿久津から、八島は警察庁に1位の成績で入庁したと聞かされる。ちなみに竜崎の成績は3位、伊丹は2位だったことも明らかとなる。竜崎は「入庁時の成績が何位だったかは、何の意味もない。入庁してから何をできたか、何をしたかが重要なんだ」と気にも留めなかったが、伊丹が2位だったことがふと気になって電話をかける。伊丹は、八島から自身の入庁時の成績が2位であることを聞かされたと話す。また、八島については「トップで入庁したことを鼻にかけていた。色々とコンプレックスを持っているようだった」と語った上で、「黒い噂が絶えない男だ」と警告する。
そんな中、竜崎に衝撃の一報がもたらされる。ポーランドに留学中の息子・邦彦が現地で逮捕されたというのだ。
そのクオリティの高さから文学賞に恵まれている作品で、第1弾で第27回吉川英治文学新人賞を、続く第2弾『果断』で第21回山本周五郎賞と第61回日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2017年にはシリーズ全体で第2回吉川英治文庫賞を受賞した。
テレビ朝日系「土曜ワイド劇場」で2007年3月10日と2008年10月4日に放送された。全2回。陣内孝則主演。原作は『隠蔽捜査』および『果断 隠蔽捜査2』。
TBS系「月曜ミステリーシアター」枠で2014年1月13日から3月24日まで放送された。全11回。杉本哲太と古田新太のダブル主演。原作は『隠蔽捜査』から『宰領 隠蔽捜査5』。続編がTBS系「月曜名作劇場」で2019年3月11日に放送された。全1回。原作は『去就 隠蔽捜査6』。
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