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パスパ文字 (Unicodeのブロック)
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パスパ文字(パスパもじ、英語: Phags-pa)は、Unicodeの132個目のブロック。
解説
13世紀の元朝モンゴル(モンゴル系民族による中国の征服王朝)において、モンゴル語、中国語、ウイグル語、チベット語、サンスクリット[1]などの当時の領土で話されていた諸言語を表記するために用いられたパスパ文字を収録している。なお、現在のモンゴル及び中華人民共和国では使われていない。
パスパ文字はチベット文字から派生した文字体系であり、チベット文字がブラーフミー文字から派生した文字であるためパスパ文字もいわゆるブラーフミー系文字の一つだが、チベット文字とは異なり音素文字のうち子音と母音とに独立した文字が割り当てられているためアルファベットに分類される。書字方向はモンゴル文字と同様に、左から右へと行を送る縦書き(左縦書き)であり、単語毎に分かち書きをする。
モンゴル文字やアラビア文字などと同様に文字同士が接続すると繋がって書かれ、文字の語内での位置が語頭・語中・語末・独立のいずれかによって字形が変化する。なお、文字の語内位置による字形変化を説明する場合はゼロ幅接合子(U+200D; ZWJ)を用いることで、その字形を表現することができる。例えば字母e(U+A860 ꡠ)の語中形はꡠU+200D U+A860 U+200D
の形で表すことができる[2]。
パスパ文字は伝統的には縦書き専用の文字であるが、コンピュータ上での表示においては横書きで表示しなければならない場面が多いため、文字を左に90°傾けた形でラテン文字などと同様に左から右に文字を綴り上から下に行を送る左横書きとしてレンダーされるようになっている。Unicode公式の文字表においてもバージョン16.0現在は左横書きされる場合の字形で掲載されている。
符号位置の順序はおおむね伝統的なパスパ文字の順序に従っている。
Unicodeのバージョン5.0において初めて追加された。
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収録文字
要約
視点
「ラテン文字転写」の列は各パスパ文字に対応するチベット文字の、ラテン文字への翻字方式の一つであるワイリー方式(及び一部はブラーフミー系文字のラテン文字への翻字方式の一つであるISO 15919)に従う。
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小分類
要約
視点
このブロックの小分類は「子音字」(Consonants)、「字母A」(Letter A)、「母音字」(Vowels)、「下接子音字」(Subjoined consonants)、「サンスクリット用の子音字の追加」(Consonant additions for Sanskrit)、「中国語用の子音字の異体字形」(Alternate consonant forms for Chinese)、「チベット語用の子音字の追加」(Consonant addition for Tibetan)、「チャンドラビンドゥ」(Candrabindu)、「チベット語用のヘッドマーク」(Head marks for Tibetan)、「チベット語用の約物」(Punctuation for Tibetan)の10個となっている[1]。本ブロックでは、Unicodeのバージョン更新時の文字追加が隙間を埋める形で行われた影響で、同一の小分類に属する文字が飛び飛びの符号位置に割り当てられていることがある。また、収録文字が1文字しかない小分類については小分類名が単数形で表現されているが、本記事では単数形か複数形かによる小分類名の表記ゆれについては別の小分類として扱わず、同一の小分類として扱うこととする。
子音字(Consonants)
この小分類にはパスパ文字のうち、基本的な子音字が収録されている。
字母A(Letter A)
この小分類にはパスパ文字のうち、母音[a]を表す字母1文字のみが収録されている。
U+A85D ꡝ PHAGS-PA LETTER Aは他の母音字とは異なり、元となったチベット文字ཨ(U+0F68)が母音記号ではなく子音字であったため、由来の違いから小分類を分けられている。
母音字(Vowels)
この小分類にはパスパ文字のうち、基本的な母音字が収録されている。
下接子音字(Subjoined consonants)
この小分類にはパスパ文字のうち、子音字に後続して子音クラスタを構成する半母音などを表すための文字が収録されている。
これらの文字は中国語、チベット語、サンスクリットで用いられる[1]。
サンスクリット用の子音字の追加(Consonant additions for Sanskrit)
この小分類にはパスパ文字のうち、サンスクリットで用いられる追加の子音字が収録されている。
中国語用の子音字の異体字形(Alternate consonant forms for Chinese)
この小分類にはパスパ文字のうち、中国語で用いられる子音字の異体字形が収録されている。
チベット語用の子音字の追加(Consonant addition for Tibetan)
この小分類にはパスパ文字のうち、チベット語で用いられる追加の子音字が収録されている。
チャンドラビンドゥ(Candrabindu)
この小分類にはパスパ文字のうち、チャンドラビンドゥと呼ばれる、サンスクリットにおいて母音を鼻母音で発音することを表す記号1つのみが収録されている。
チベット語用のヘッドマーク(Head marks for Tibetan)
この小分類にはパスパ文字のうち、チベット語のテキストにおいて、文章の冒頭に書かれる記号類が収録されている。
チベット語用の約物(Punctuation for Tibetan)
反転異体字
パスパ文字のうちいくつかの母音字には、特定の条件下で左右反転(左横書き形式表示では上下反転)した異体字として書かれるものが含まれている。例えば、母音字i(U+A85E ꡞ)は子音字ṭh(U+A86A ꡪ)に後続する場合、字母の軸位置を揃えるために上下反転した形に変形する(ꡪꡞ)。
このような異体字形は基本的にフォント内のGSUB文脈依存処理によって自動で変換されるため文字列上での特別な表現を必要としないが、これらの文字の字形を説明する場合や単に異体字として現れる場合など、通常の条件以外で現れる場合にその字形を異体字セレクタのVS1(U+FE00)を用いて表現することができる[2]。
U+ | A856 | A85C | A85E | A85F | A860 | A868 |
既定の符号位置 | ꡖ/ꡖ/ꡖ/ꡖ | ꡜ/ꡜ/ꡜ/ꡜ | ꡞ/ꡞ/ꡞ/ꡞ | ꡟ/ꡟ/ꡟ/ꡟ | ꡠ/ꡠ/ꡠ/ꡠ | ꡨ/ꡨ/ꡨ/ꡨ |
VS1添加 (反転形式) | ꡖ︀/ꡖ︀/ꡖ︀/ꡖ︀ | ꡜ︀/ꡜ︀/ꡜ︀/ꡜ︀ | ꡞ︀/ꡞ︀/ꡞ︀/ꡞ︀ | ꡟ︀/ꡟ︀/ꡟ︀/ꡟ︀ | ꡠ︀/ꡠ︀/ꡠ︀/ꡠ︀ | ꡨ︀/ꡨ︀/ꡨ︀/ꡨ︀ |
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文字コード
パスパ文字(Phags-pa)[1] Official Unicode Consortium code chart (PDF) | ||||||||||||||||
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | A | B | C | D | E | F | |
U+A84x | ꡀ | ꡁ | ꡂ | ꡃ | ꡄ | ꡅ | ꡆ | ꡇ | ꡈ | ꡉ | ꡊ | ꡋ | ꡌ | ꡍ | ꡎ | ꡏ |
U+A85x | ꡐ | ꡑ | ꡒ | ꡓ | ꡔ | ꡕ | ꡖ | ꡗ | ꡘ | ꡙ | ꡚ | ꡛ | ꡜ | ꡝ | ꡞ | ꡟ |
U+A86x | ꡠ | ꡡ | ꡢ | ꡣ | ꡤ | ꡥ | ꡦ | ꡧ | ꡨ | ꡩ | ꡪ | ꡫ | ꡬ | ꡭ | ꡮ | ꡯ |
U+A87x | ꡰ | ꡱ | ꡲ | ꡳ | ꡴ | ꡵ | ꡶ | ꡷ | ||||||||
注釈
|
履歴
要約
視点
以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。
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脚注
関連項目
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