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新仁義なき戦い 組長最後の日
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『新仁義なき戦い 組長最後の日』(しんじんぎなきたたかい くみちょうさいごのひ)は、1976年(昭和51年)4月24日に公開された東映映画[1][2][3][4]。「仁義なき戦いシリーズ」の番外編「新仁義なき戦いシリーズ」第三弾で[2]、シリーズ8作目にして最終作[2][5]。前作とは関係のないオリジナル脚本に基づく単独ストーリー[4]。実録映画ではない[5][6]、完全なフィクション[6][5]。
北九州vs.関西の西日本を二分するヤクザ戦争を描く[5][7]。シリーズ屈指の残酷度を誇り[6]、テーマはやくざ社会に対する絶望[6]。
深作欣二・菅原文太のコンビが一番作りたかった作品といわれる。菅原が日本最大の暴力団組長に果敢に挑む。仁義なき戦いシリーズでは主人公が組長に利用され翻弄される役割であったが、菅原文太の真骨頂をこの最終作で見ることができる。
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キャスト
七人会[注 1]
岩木組[注 2]
河原組(尼崎市)
坂本組[注 3]
米元組(大阪)
その他
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スタッフ
製作
要約
視点
企画・脚本
脚本の高田宏治が1974年の『山口組外伝 九州進攻作戦』の取材で九州に行った時に、当地で聞きかじった話をベースにホンを書いた[9]。幼い兄妹が炭鉱町に生まれ、爆破事故が起き、両親とも生き埋めになる、人間の生存が絶望視されると、火災を消すために水が入れられ、それは両親の死を意味するが、兄は成長しやくざになり、警官から奪ったピストルで人ごろしを重ねる。この話を元に高田は『北九州電撃作戦・チャカ』という脚本を書いていた[9]、しかし映画化はならず、炭鉱町の兄妹の話は野崎修一(菅原文太)とその妹・麻美(松原智恵子)のプロットに引き継がれた[9][10]。高田は「笠原和夫さんの『仁義』に対して自分の色が出せるかどうか、この作品が正念場だと思っていた。だから、組織の中で苦悩する主人公ではなく、巨大組織に一匹狼の菅原文太を主人公に据え、大組長の命を殺る(とる)という実録やくざ映画のタブーにあえて挑んだ」と述べている[6]。
本作の異色の部分は、主人公・野崎を演じる菅原が属する岩木組(岩木海事)は、まじめな正業を柱とするヤクザで、普段は普通に水運業の仕事をしている点[5]。野崎(菅原)とその妹・麻美(松原)は岩木組組長(多々良純)に拾われて育ててもらった恩義があり、父親代わりの岩木組組長が殺されたことから、敵を討つためやくざとして決起し、周りは関西の大組織と親睦を図ろうとするが、これを承服せず、ラストまで執拗に坂本英光(小沢栄太郎)坂本組組長を付け狙う[1][5]。
岡田茂東映社長が、1975年8月27日の記者会見で1976年新春作品として「新仁義なき戦いシリーズ」第三弾として製作を告知し[11]、このとき発表した本作のタイトルは『新仁義なき戦い・組長刺客十三人』であった[11]。刺客は十三人も出ないが、組長は十三人以上出るため、やくざ映画を観慣れていない人には誰が誰だか分からないかもしれない。脚本の高田は前作『組長の首』がヒットしたから「東映はだいたいこの辺でもっと儲けたいなと思う時は平気で"最後"ってつけるんですよ(笑)」と述べている[10]。
監督
深作欣二監督は「今度こそ本当に最後の最後だから、やってくれと頼まれた」と述べている[3]。また「話の大枠は山口組の九州進攻作戦で、 小沢栄太郎が親分をやっている大阪の大組織が北九州に攻めていって抗争になるけど、結局、北九州勢が妥協しちゃうんで、文太の組織が跳ね上がる」と大筋を簡潔に述べている[3]。また「女を活かしたホンはやはり高田宏治ならでは」と評価している[3]。
キャスティング
岩木組の若衆候補・野崎(菅原)と妹・麻美(松原)、その夫・中道努(和田浩治)の3人を中心に話が進む[6][12]。松原と和田はかつての日活の青春スターで[6]、東映のヤクザ映画に舞台を移してドロドロのヤクザ社会で辛酸を舐めるという設定[5][6]。実録路線やプログラムピクチュアの行き詰りを感じさせるキャスティング[12]。さらに松原と菅原は近親相姦的関係[6][9]。夫に「あんたよりお兄ちゃんが好き!」と言うシーンや、夫が事故死した後、麻美(松原)が兄(菅原)の蒲団に潜り込む[9]。脚本の高田も「実録やくざ映画にこれほど深く女の物語を書き込んだのは初めて。この時の松原の美しさは壮絶」と評価する[6]。イケイケの武闘派・米元組組長を演じるのは藤岡琢也で[12]、当時はサンヨー食品の「サッポロ一番みそラーメン」のCMで温和な笑顔をお茶の間に振りまいていたが、本作では九州の組織との友好の席で、若い妾が殺されたことを電話で聞いて逆上し、ブチ切れる危ない人を演じた[6][12]。シリーズ2回目の登板となるかつての子供たちのヒーロー・桜木健一は『仁義なき戦い 完結篇』より悲惨な殺され方をする[12]。ピラニア軍団では強面岩尾正隆が幹部クラスで出演[13]。司裕介はダンプのハンドルを握り、坂元組を襲撃[13]。成瀬正は『プレイガール』の深田ミミこと、衣笠恵子の浮気相手を務める[13]。小林稔侍は最後近くに警官としてワンシーン出演している[13]。
撮影
冒頭は兵庫県尼崎市パートだが、当地でロケが行われたかは分からない。10分頃、玄龍会の幹部会の前に「北九州市・小倉」とテロップが出て小倉辺りが映り、その後野崎(菅原)が港湾労働をする場面で「北九州市・若松」とテロップが出て若戸大橋をバックに菅原が映るため、実際に俳優参加のロケが当地で行われている。地元警察署は若戸大橋近くにある設定で菅原らも映る。九州での俳優参加のロケは菅原の出るこの2シーンだけかもしれない。阿蘇温泉設定で七人会の会合のシーンがあるが、当地で撮影されたのかは分からない。この後、電柱に『ジョーズ』と『あの空に太陽が』のポスターが貼られたシーンがある。30分過ぎに関門橋を上空から捉えたショットがあり、関門大橋としてテロップが出る。
ダンプを使ってのカーアクションは、好評だった前作からの連続[3]。関西での撮影は、坂元組本部は『仁義なき戦い 完結篇』で登場する天政会本部と同じ京都五条大橋西詰の建物が使われている。通天閣近くで寒川松蔵(地井武男)が車内で刺されるシーンも撮影されている[12]。エンディング近くに伊丹空港のロビーでドンパチシーンと出発ターミナルで大規模なアクションシーンの撮影が行われている[12]。山根貞男は「あんな終わり方はやくざ映画で見たことない(笑)。末期的な情景ともいっていい」などと評している[3]。オーラスに菅原の手がアップになり左手小指の先がない。上手く撮れている。
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音楽
「新仁義なき戦いシリーズ」の中では唯一、全編に津島利章の「仁義なき戦いのテーマ」が使用されている[5]。これとは別に野崎(菅原)と義弟・中道努(和田)が飲むキャバレー の有線で八代亜紀の「しのび恋」が、中道が自宅で野崎からの電話を取るシーンで五木ひろしのカバーらしき「くちなしの花」が、中道が死んだ後、野崎と妹が話すシーンでレゲエがかかる。曲名は分からない。野崎(菅原)が伊丹空港で坂本組組長(小沢栄太郎)を襲撃して入院するシーンの後、麻美(松原)が加田伸吉(尾藤イサオ)と寝るシーンでディスコ風の洋楽が流れる。
予告編のBGMに「新仁義なき戦い」、「新仁義なき戦い 組長の首」、「現代任侠史」、「仁義なき戦い 広島死闘篇」の一部が使われている。
作品の評価
深作監督は「"柳の下にはドジョウが何匹もいる"というのは東映のお家芸というか(笑)。初めは五匹で、さらに三匹(笑)。これは辛かったなあ」[3]、「柳の下にドジョウが二匹というけれど、こう続くと無理にでも五匹も六匹も取ってこいといわれている感じで…僕自身飽きっぽい性格なので、終わりの頃は正直苦痛でした」[14]などと述べている。
脚本の高田宏治は試写のとき、深作から「高田さん、今度は上手く行かなかった。ごめん」と頭を下げられたと述べている[6][10]。高田自身は試写を観て「いい出来」と思い、周囲の評判も良かったという。深作に謝る意味が分からなかったから、その後、深作と飲んだ時に、それを尋ねると深作は「やくざ社会の人間が組織暴力の首領に歯向かっていく。これは実際のやくざはやらないし、実録映画では扱ってはいけないテーマだった。今回、あえてそれに挑戦したが、中途半端になった」などと言ったという[6]。
植地毅は「前五作が好きな方がたには酷評されることが多い『新仁義』の中では、随所に終始拭いがたい印象を与えるシーンが『仁義なき戦い 広島死闘篇』並みに盛り込まれている本作は、通称〈実録コンビ〉が放った最後の爆弾作品と私は思う…ラストは『仁義』シリーズ最後にして最大の虚無感を与えてくれる」などと評している[7]。
松田政男は「かくも満身創痍の登場人物群が作品内を百鬼夜行したことが、これまでの『仁義なき戦い』にあったであろうか…〈最後の日〉の苦悶にのたうつ東映京都現場の断末魔のドキュメントそのものである」などと評している[15]。
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ソフトリリース履歴
同時上映
- キンキンのルンペン大将
- 主演:愛川欽也/監督:石井輝男/脚本:石井輝男・山崎巌
脚注
参考文献
外部リンク
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