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新型宇宙ステーション補給機

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新型宇宙ステーション補給機(しんがたうちゅうステーションほきゅうき)HTV-Xは、国際宇宙ステーション(ISS)へ機材・食料・水などの物資を届ける目的の日本無人宇宙補給機。開発は宇宙航空研究開発機構(JAXA)で、与圧モジュールと機体システム全体の取りまとめを三菱重工が、サービスモジュールを三菱電機が担当した[1][2]。初号機開発費は351億円[3][4][注釈 1]

概要 所属, 宇宙ステーション ...

HTV-X1号機は2025年10月21日に種子島宇宙センターからH3ロケット7号機で打ち上げる予定である[5]

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計画

2020年まで運用された宇宙ステーション補給機(HTV、こうのとり)の後継機として開発され、計画開始当初は2021年度に1号機を打ち上げISSへの補給業務を担当する計画であった[6]。しかし、打ち上げロケットであるH3ロケットの開発スケジュールの遅延に伴い、HTV-X1号機の打ち上げ計画は2023年度末以降となり[7]、H3ロケット1号機の打ち上げ失敗によって2025年度に延期された[8]

ISSへは、ISSの運用延長期間を含めて2029年度までに5回の補給ミッションを想定している[9]

概要

H3ロケットに搭載されて、従来のHTV同様に種子島宇宙センターから打ち上げられ、高度約400キロメートル上空の軌道上を周回する国際宇宙ステーション(ISS)へ食糧や衣類、各種実験装置などの補給物資を送り届けるのがメインミッションである。ただし従来のHTVが補給完了・ISS離脱後数日で大気圏に突入し廃棄処分とされていたのに対し、HTV-XではISS離脱後も一定期間軌道上にとどまり、その他のミッションを行えるようになる[10]

メカニズムの面では、従来の電気/推進モジュールが「サービスモジュール」として統合され、スラスタもサービスモジュールに集約される[11]。なおHTVに搭載されていたメインエンジンは廃止され、120Nの姿勢制御スラスタ×24基のみで飛行を行う形になる[11]

PCBM(ドッキング機構)や与圧部の気圧センサーなどは、シエラ・ネヴァダ・コーポレーションが開発している[12]

ロケット

打ち上げにはH3ロケットの24W形態が使用される[13]。衛星分離部(PAF)は直径4.4m[13]のHTV-Xの専用設計[14]。フェアリングはHTV-Xのために開発したワイドフェアリング(スイスビヨンド・グラビティ英語版社製[9])で、与圧部のレイトアクセスのためのドアが準備されている[14]

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主な特長

従来型のHTVと比較した、HTV-Xの特長は以下の通り。

輸送内容の向上

従来のHTVでは与圧部・非与圧部を合わせて約4トンの物資を輸送できたのに対し、搭載量を5.82トンまで増加。またカーゴ容積も従来比で約60%増となる。さらにカーゴ内に搭載する実験ラック等へ給電を行うことも可能になる[10]。構成としては与圧部の搭載箇所を拡大する一方で、暴露カーゴをサービスモジュールの先端部に取り付ける形に変更するなどの変更が行われる[10]。ISSへの滞在期間も、従来の最大60日間から最大6ヶ月間に延長される。

軌道上運用能力の強化

前述したとおり、HTV-XではISSからの離脱後も最長1年半の間軌道上にとどまり、各種実証実験のためのプラットフォームとして利用することが想定されている[10]。具体的には「小型衛星の放出」「ISSから離れた環境での与圧実験」「自動ドッキングの技術検証」などが計画されており、そのため推薬タンクの容量増、太陽電池パネルのパドル化・大型化などが行われる[10]

月探査補給機への発展

アメリカや日本などが将来的に計画している、月軌道プラットフォームゲートウェイ(Gateway)への物資・燃料補給機としてHTV-Xを利用することも検討されている[10]。Gatewayでは補給機について完全無人での自動ドッキング能力が要求されることになっているため、当面は従来どおりのロボットアームによるドッキングを利用しつつも、将来的に自動ドッキングへの移行を進めるべく、HTV-Xを用いた実証実験を行う予定[10]。なお月への補給を行う際は、現状ロケットの打ち上げ能力不足により一度に打ち上げを行うことができないため、サービスモジュールと与圧モジュールを別々に打ち上げた上で軌道上でドッキングを行う形が検討されている[11]

諸元

  • 全長:8.0m(遮熱壁を含む)[1]
  • 全幅:18.2m(太陽電池パドル展開時)
  • 直径:4.4m
  • 打ち上げ時質量:16.0トン(貨物量:5.85トン)
    • サービスモジュール(SM)(搭載構造を含む):3.8トン
    • 推薬・加圧ガス:2.4トン
    • 与圧モジュール(PM)(搭載構造を含む):3.8トン
      • 与圧モジュール貨物搭載能力:4.1トン[2]
    • 与圧カーゴ:4トン
    • 曝露カーゴ・技術実証ミッション:2トン
      • 曝露カーゴ貨物搭載能力:1.75トン[2]
  • 目標軌道(ISS軌道)
    • 高度:300km - 500km
    • 軌道傾斜角:約51.6度
  • ミッション時間
    • ISS滞在可能期間:最長6ヶ月
    • ISS離脱後運用期間:最長1.5年
  • 発生電力:3,000W(周回平均)
  • レイトアクセス能力:24時間前
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無人補給機のモジュール構成の比較

運用フェーズ

  • 初期軌道投入フェーズ(Initial checkout Phase)[15]
  • ランデブーフェーズ(Rendezvous Phase)
    • ロケット分離後の位相調整・高度調整
    • AI点(フェーズの到達点)の保持[15]
  • 近傍運用フェーズ(Proximity Ops Phase)
    • ISSへの最終接近
    • ISS下方の規定点(距離約10m)で相対停止し、ロボットアーム(SSRMS)により捕獲される
    • Node2のNadirポート(地球面のポート)に結合される[15]
  • 係留フェーズ
    • クルーにより補給物資のISSへの搬入、および不用品のHTV-Xへの搬入
    • ISSのロボットアームによる曝露カーゴの取り外し[15]
  • 近傍運用フェーズ(ISS離脱)(Departure Ops Phase)
    • HTV-Xの航法系を動作させた状態でリリース
    • リリース後、クルーコマンドによりHTV-X制御開始[15]
  • 技術実証ミッションフェーズ(On-Orbit demonstration Phase)
    • 曝露カーゴに搭載した超小型人工衛星の放出や、搭載した実証モジュールの運用が最長1.5年間実施される[15]
  • 再突入位相調整フェーズ(Reentry Prep Phase)
  • 再突入フェーズ(Reentry Phase)
    • 2回のマヌーバで近地点高度を下げ、3回目のマヌーバで再突入する[15]
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開発史

  • 2017年平成29年)
    • 10月 - プロジェクト移行[2]
    • 12月6日 - 宇宙開発利用部会で了承され、開発フェーズへ移行[2]
  • 2018年10月 - 詳細設計フェーズ移行[2]

打ち上げ計画

脚注

外部リンク

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