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気候変動による鳥類への影響
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気候変動による鳥類への影響(きこうへんどうによるちょうるいへのえいきょう、英:effects of climate change on birds)では気候変動による鳥類の生態や生息域などの変化、絶滅可能性などについて述べる[7]。気候変動で変化する世界に応じて数十年にわたり種の生活史の変化を追跡する[8]、異なる進化的圧力の役割を評定する[9]、博物館標本と現生の鳥類を比較して外見や体の構造の変化を追跡する[10]などの研究がなされてきた。なかでも気候変動による鳥類種分布域の変化予測は、気候変動による絶滅リスクを最小限に抑えるために必要な動物保全活動を行う上で極めて重要である[11]。
気候変動による大きな影響を既に被っていることが知られている鳥類の一部。 最上段から下にむかいそれぞれ左から右に:フエコチドリen: piping plover[1]、ヒゲペンギンen:chinstrap penguin[2]、カシアイスカen:Cassia Crossbill[3]、ニシオジロクロオウムen:Carnaby's Black Cockatoo[4]、オグロシギen:Black-tailed godwit[5]、エチオピアガラスen:Ethiopian Bush-crow[6]、アオガラen:blue tit、ユキスズメen:White-winged snowfinch。
いっぽう気候変動緩和策も鳥類にさまざまな影響を及ぼす。しかし一例として、(持続可能エネルギー源の)風力発電の環境影響でさえも、気候変動そのものと比べれば鳥類に及ぼす被害はまだ小さいとされている[12]。
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鳥類体躯への影響

気候変動はすでに一部の鳥類の外見に変化をもたらしている。アオガラは青と黄色の鮮やかな鳥だが、地中海では2005年から2019年の間にその色調が顕著に鈍くなっている。その変化は換羽時の気温と相関しており、温暖化によって野鳥の色は目立たなくなる可能性があることを示唆しているが、これが温暖化に処する上で有利かは不明である[14][15]。
シカゴでの研究では、鳥類の下脚骨の長さ(体の大きさの指標)が平均2.4%短縮し、翼が1.3%長くなったことが示された。アマゾン中部地域では、鳥類の体重(体の大きさの指標)が10年ごとに最大2%減少し、翼の長さが10年ごとに最大1%増加しており、気温や降水量の変化と関連している。これらの形態学的傾向はベルクマンの法則に従う進化的変化の可能性がある[16][17][18][19] 。
高山地域は気候変動による影響を特に受け[20]、そこに生息する種はさらに高地へと逃れる余地がほとんどない。ユーラシア高山地域ではユキスズメ属が過去100年間で小型化し、かつ色が暗くなった。より雪の少なく温暖な棲息環境に対する適応と一致する[21]。
ある論文は脳の小さい種は大きい種よりも体の縮小が顕著で捕食されやすくなり、脳の大きな種は気候変動によく対処しうると主張した[22]。
1800年代の博物館標本と現在の同種の幼鳥を比較した研究では、現代の鳥はより早い段階で幼鳥羽から成鳥羽への換羽を完了しており、雌は雄より早いことが分かった[23]。つまりそれだけ早く成長するようになったことを意味する。
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鳥類季節行動への影響
要約
視点


気候変動はすでに多くの鳥類種で「時期の不一致」を引き起こしている。すなわちその種の年間サイクルの一部のタイミングが他の要素と一致しなくなり、その進化的適応を損なってしまう。たとえばエネルギーコストが高い繁殖や渡りは、通常は季節的な食物(昆虫など)が最も豊富な短期間のみそれを可能とする。しかし気候変動により鳥類が食物とする生物の多くが、鳥類の年間サイクルとは異なる程度・速度で適応している[26]。
マダラヒタキのような一般的な種は、気候変動により繁殖期と好む幼虫(芋虫/毛虫)の孵化時期との間に不一致が生じても、飛翔性成虫やクモなど代替餌を雛に与えて補い、体重の減少はあるものの繁殖の大きな失敗から逃れている[27]。しかしこのような不一致は、北極圏では気候変動の進行は速いため北極圏で繁殖するシギ・チドリ類にとっては致死的であり[25]、2016年にはアラスカで9000羽近くのツノメドリ類やシギ・チドリ類が飢餓で大量死した[28]。
長距離渡り鳥ではこの不一致による被害が特に大きく、渡りの距離が長いほど繁殖環境の変化を感知し春の採餌や繁殖のタイミングを調整するのが困難になる。気候変動への感受性が高い種ほど個体群減少が大きく[9]、もしある渡り鳥の食物昆虫がその鳥の繁殖地で孵化する時期が、温暖化によって渡りのタイミングよりも早まると、その鳥は食糧確保の機会を逃し[29]、春の活動開始時期を早めない限り個体数は減少、危機的状況に直面する[24]。
これに対応し、過去50年間に鳥類行動に変化が観察されており、例えば春の渡りの期間が長くなるといった現象がある。渡りに出発させる要因が鳥の種ごとに異なるため渡りのパターンの変化も異なり得るが、多くの場合気温と渡りタイミングの変動との間には相関が認められ、一般的には最も渡りの早い個体は以前よりも早く渡りを開始し、最も遅い個体は従来と同じかそれ以降に渡る傾向がある[7][30]。アメリカムシクイ類は顕著な例であり、19種2,826,588羽の60年間のデータ分析によると、早春の気温が1度上がるごとに渡りが0.65日早まっている[8]。
このような変化が進化的な適応変化(すなわち遺伝型の変化)か、それとも「表現型可塑性」(遺伝型は変化しないが行動様式などその生物の表現型が変化する)かは、以下に述べる議論により、特に気候変動に対しては重要かつ難題である。多くの個体が行動表現型を変えたとしても遺伝型が変わらなければ一世代限りであり、必ずしも次世代に繁殖成功率を高める行動変化を引き継ぐことにつながるとは限らない。しかし遺伝型変化により複数世代にわたって気候変動の影響に毎年全個体が同じように適応できるようになったとしても、最終的なその種の繁殖上の継続にはつながらないかもしれない。なぜなら人為的気候変動は速度一定でないため最適な行動変化が毎年できるとは限らないからである[31]。
産卵日を早め春の渡りの時期を前倒しした種の中には、イギリスで繁殖する一部のスズメ目のように個体群の増加傾向を示すものもあるが、これは間接的な証拠にとどまる[9]。これまでのところアジサシは数少ない例外の一つであり、27年間で9.3日の前倒しが観察されその要因に遺伝的要素があることが確認されている[32]。

シジュウカラは表現型変化の追従における複雑さを示す好例である。2006年、その繁殖期と主要な餌である芋虫/毛虫の発生ピークとの間に10日以上の不一致が生じ、個体数が減少した[33]。芋虫/毛虫が大量に得られる繁殖期初期に育てられた雛ほど栄養状態が良く進化的な推進力となるはずである[34]。いっぽう芋虫/毛虫の数は気候だけでなく、ナラの木のような一次生産者の状態にも大きく依存しており、それがシジュウカラにとっていつ産卵するのが最適かを決定する重要な要因となっている[35]。
しかし春後期の気温上昇や芋虫/毛虫のピークが2006年以降あまり変化していないにもかかわらず、シジュウカラの行動は2021年までの調査期間中さらに前倒しされ続けていた。すなわち行動表現型の不一致は以前より大幅に減少し適応はそれまでのところ成功している。とはいえ将来的な温暖化によって不一致は再び増大する可能性が高い。パリ協定が遵守され気温上昇が1.5℃または2℃なら、不一致は2050年頃に最大となりその後再び減少すると予測される。しかしRCP4.5およびRCP8.5といったより深刻な気候変動シナリオではそれぞれ、世紀末までに達する不一致が平均で再び10日および(今まで例のない)15日となりうる[36]。
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鳥類への極端気象被害

気温上昇や降水パターンの変化に加えて、気候変動は極端気象の頻度も増加させ、それが種に深刻な被害をもたらすことがある。オーストラリア南西部のニシオジロクロオウムはその一例であり、2009年10月から2010年3月の間に発生した深刻な熱波と雹嵐のたった2回の極端気象で大幅に個体数を減らした[4]。南欧地中海域では、ヒメチョウゲンボウは極端な干ばつの月にはより多くの雛を失っている[37]。
気候変動は世界の多くの地域で山火事のリスクと深刻さを増大させる[38][39]。2019–20年オーストラリア山火事の後、ニューサウスウェールズ州沿岸のエミューの亜集団は高リスクに陥った[40]。2020年アメリカ西部山火事では、カシアイスカの2つの棲息拠点のうち1つが火災に飲み込まれた[3]。鳥はたとえ山火事から飛んで逃げられても、煙によって大きな被害を被り、渡り鳥の場合渡りの最中に煙に捕らわれうる。鳥類は空気を大量に呼吸することから大気汚染に非常に脆弱であり[41]煙は壊滅的被害を及ぼす。2020年には数十万羽~最大100万羽の鳥が少なくとも米国5州とメキシコ4州で死亡しその多くが渡り鳥であった[42]。この前例のない大惨事の主犯は山火事の煙と有毒ガスと判明した[43][44]。
シギ・チドリ類の生息地はしばしば海面上昇で破壊され、長期的な浸食の進行・突発的な高潮・その他の極端現象によってさらに悪化する。今世紀後半には米国東海岸の海面が上昇し、大型ハリケーンが発生すれば、すでに準絶滅危惧種のフエコチドリの現在の生息地の95%が浸水しうる上、内陸側への避難もその地域の沿岸開発により妨げられる[1]。メキシコ湾沿岸の個体群も危険にさらされており、2100年までに漸進的な浸水だけで16%の生息地喪失が見込まれ、さらにここでも沿岸開発や極端気象によるリスクが加わる[45]。
鳥類の分布域への影響

気候変動は多くの鳥類の営巣環境を生息不可能にする。ノルウェー北部のイエスズメの若鳥は気温上昇に対応して、従来よりも親の巣から遠くへ移動する[47]。クロムクドリモドキはかつて北米東部のどこにでもいる普通種であったが、気候変動による個体数減少と分布域縮小により絶滅危惧種となってしまった[48]。砂浜に巣を作るアメリカコアジサシやフエコチドリの沿岸個体群はすでに砂温度上昇に直面し時には過熱し[49]、また砂漠の鳥類はかつてない高温の日に脱水で死ぬこともある[50][51]。
分布域の変化は多くの種で高緯度方向に進行しており[7]、例えばアジアのオグロシギの2亜種は北極方向へ分布移動し、従来の高適性地域はすべて失われ全体の生息域は現在の16%程度に縮小するという壊滅的予測が報告されている[5]。
山岳地帯の鳥類は温暖化に伴いより標高の高い地域にも移動しうるが、標高が高い面積は限られており分布域の縮小・喪失となる。インドでは1091種のうち66–73%が気候変動に対応して標高あるいは緯度の高い地域へ分布移動し、約60%の分布域は縮小すると予測されている[52]。
気候変動はさらに降水の変化によっても鳥類の分布域に影響する。例えば一部の高山気候における降雨増加は、水循環に対する気候変動の影響予測と一致している。これはクサチヒメドリやハマヒバリなどの高山生息群に害を及ぼし、これらの鳥は雨が降らない場合と比べ2日以上連続して雨に見舞われると、日ごとの巣の死亡率が高くなる[53]。
オーストラリア北東クイーンズランド州高地の固有種ハイガシラコマドリは、高地でのみ可能な涼しい気温を必要とする。しかしこの地域では高度が上がると降水量が増えるため、温暖化を避けるためさらに高地へ分布移動すると今度は過剰降水の被害を被ることになり、この種を気候変動に対して特に脆弱にしている[54]。
2080年までに南米の草原で、カンポカマドドリは高温化シナリオで77–92%、中間シナリオで68–74%の分布域を失うとされ、この種の保護区がないことから特に懸念されている[55]。
ムナジロガラスの分布域は北アフリカから南アフリカへ移動している。気候変動により南アフリカで森林の発達を促し営巣のための木が増えたことに加え、南部で送電線などの電力インフラが営巣や止まり木の場所を追加的に提供し、この種の全体的な普及度を高めた可能性がある[56]。
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気候変動緩和対策による鳥類への影響
森林を間引く森林管理は鳥類の生息地を増やす副次的効果を持つ。再生可能バイオマスのための特定の作付戦略も、従来の農業慣行と比較して種の多様性を高める可能性がある[7]。このように気候変動の緩和策は鳥類に利益をもたらしうるが、以下に述べるような悪影響が伴うこともある。
風力発電所は鳥類に危険でありオジロワシやオオハクチョウのような種が頻繁に衝突して死んでいる。これはこれらの鳥の前方視力が弱いためと考えられており、風力タービンを鳥にとってより目立つようにするか、より適切な場所に設置することで減らしうる[7]。
米国では風力タービンとの衝突による鳥類の死亡が少なくとも300種で報告されており、2019年のまとめでは57%が小型スズメ目である[57]。少し以前の2013-14年の推定で年間140,000~679,000羽となっている[58][59][60]が、米国の風力タービン数はこれらの推定値が発表されて以来2020年まででも35%以上増加している[61][62]。
2022年のある研究は、インドのカルナータカ州において、1基あたりの年間死亡数(鳥類とコウモリを含む)は0.26羽であるとしている[63]。また、渡り鳥の「東アジア・オーストラリア経路」に沿った沿岸に建設された風力発電所では運転開始から1年後、鳥類群集がそれらに対し経路を調整した様子であった[64]。
一般的に古い風力発電所は設置時に鳥類への影響を考慮しなかったため、新しいガイドラインが策定された後に設置された風力発電所よりも鳥類死亡率が高い[65]。しかし古い風力発電所でさえも、2009年時点の見積もりで1GWh発電あたり鳥の死亡数0.4羽未満と推定されており、化石燃料発電所の1GWhあたり5羽以上と比べればまだ小さい[12]。
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鳥類種絶滅確率
要約
視点

2012年の推定によれば、温暖化1℃ごとに100種から500種の陸鳥が絶滅する。2100年までに3.5℃の気温上昇が起こった場合600種から900種の陸鳥が絶滅すると推定されており、そのうち89%が熱帯地域で起こるとされている[67]。2013年の研究では、気候変動に対して非常に脆弱でありかつIUCNレッドリストに掲載されている鳥類が608種~851種(6~9%)に上ると推定された。またこの研究発表当時は脅威にさらされていないものの、将来的に気候変動によって脅威に晒される可能性のある鳥類は1,715種~4,039種(17~41%)とされた[68]。
2023年の論文は、最悪温暖化シナリオSSP5-8.5では2100年までに51.8%の鳥類が少なくとも一部の生息地を失い、乾燥の増加だけによって生息地の半分以上を失うのは5.3%、すべてを失うのは1.3%と見込まれている。これらはSSP2–4.5ではそれぞれ38.7%、2%、1%、SSP1–2.6では22.8%、0.7%、0.5%に抑えられる[69]。
アフリカ

2018年の研究によれば温暖化4.5℃で、マダガスカルでは60%、南アフリカの西ケープ州フィンボス地域では種の3分の1、ミオンボ森林では両生類の約90%と鳥類の約86%が失われると見積もられている[70]。
2019年の推定では、南アフリカのカラハリ砂漠に固有の複数の鳥類種(Southern Pied Babbler、Southern Yellow-billed Hornbill、Southern Fiscal)が、この地域では絶滅するか東端部に分布縮小するとされた。気温が繁殖に必要な体重とエネルギーを維持できなくなるほどに高くなると予測されるためである[71]。Southern Yellow-billed Hornbill(ミナミキハシサイチョウ)の繁殖は、2022年までにこの砂漠の最南部(最も暑い地域)では既に崩壊しており、これらの地域個体群は2027年までに絶滅すると予測されている[72][73]。
2021年の推定によると、エチオピアの鳥類種であるWhite-tailed SwallowおよびEthiopian Bushcrowは、それぞれ2070年までに生息域の68~84%、および90%以上を失うとされている。これらの種は既に地理的分布域が僅少で、限定的な気候変動でも、種存続が可能な個体数を維持できず野生絶滅すると予想されている[74]。
北米

2015年には、ハワイ在来の森林鳥は、RCP8.5または同等の温暖化シナリオの下、鳥マラリアの蔓延によって絶滅の危機に直面しうると予測された。これはRCP4.5シナリオであれば回避可能であるとされた[76]。
2019年サイエンス誌に発表された報告[77]は米国社会を驚愕させた[78]。1970年以降北米のあらゆる鳥類が壊滅的に減少しており、純損失は30億羽近く(1970年の個体数の29%)で森林だけでも10億羽の鳥が失われていたことが明らかになったのである。草原では鳥類個体数は53%減少しさらに7億2000万羽が減少に転じた。最も大きな損失を被っているのは、90%以上(25億羽以上)がスズメ類・ブラックバード類・ムシクイ類・フィンチ類など、どこにでもいる一般的な12科の鳥類である。「我々はありふれた鳥をありふれた存在として残すことすらできていない」と、この研究の責任著者ピート・マーラ氏は述べた[79]。
2020年の研究では、北米本土に生息する604種の鳥類について、気温が1.5℃上昇した場合207種が中程度の絶滅リスク、47種が高リスクとされた。2℃では198種が中リスク、91種が高リスクとなり、3℃になると高リスク種(205種)が中リスク種(140種)を上回る。3℃と1.5℃を比較すると、76%の種で絶滅リスクが低下し38%の種はリスクから逃れられる[80][75][81]。
2023年の研究では、北米のミナミヤナギヒタキは、高温化シナリオでは2100年までに個体数が少なくとも62%、中間シナリオでも36%減少すると予測されている。低温化シナリオでは減少を免れる可能性があるものの、干ばつの影響が特に繁殖期に深刻になれば、低温化シナリオでも個体数の大部分を失う可能性があり、高温化シナリオでは93%あるいは99%以上を失う(=事実上絶滅)と危惧されている[82]。
2025年サイエンス誌に発表された研究は、北米・中米・カリブ海地域における495種の鳥類の生息域における2007~2021年の個体数変動を27平方キロメートル解像度で追跡した。ほぼすべての種において個体数が増加した地域と減少した地域が見られたが、多くの場合最もその種の個体数が多かった地域で顕著な減少が見られた。ほとんどの種は減少しているが個体数が増加した地域もある。すなわちその地域はその種にとって避難場所となり、絶滅を回避し回復を可能とする環境条件を示している可能性がある[83]。
極域
気候変動はペンギンにとって特に脅威である。氷のないところに営巣するジェンツーペンギンは、これまでアクセスできなかった地域にまで分布を広げ、個体数を大きく増やしている[84]が、アデリーペンギン・ヒゲペンギン・コウテイペンギン・キングペンギンの個体数は減少している[85]:2327。ペンギン種が温暖化に対処するには順応・適応・または分布域移動によるが[86]、分布域移動は元の生息地での局所的絶滅を意味する[87]。

2014年に発表されたマゼランペンギン最大のコロニーに関する27年間の研究によれば、気候変動による極端な天候によるヒナの平均年間死亡率は7%であり、ある年では最大50%を占めていた。このコロニーの繁殖ペアは1987年以降24%減少している[88][89]。ヒゲペンギンの個体数もまた、主にナンキョクオキアミの減少により減っている[90]。アデリーペンギンは2060年までに西南極半島沿岸のコロニーが約3分の1(全体の約20%)減少すると見積もられている[91]。
早くも2008年には、南極海の水温が0.26℃上昇するごとにキングペンギンの個体数が9%減少するとの推定がなされていた[92]。最悪の温暖化シナリオでは、キングペンギンは現在の8つの繁殖地のうち少なくとも2つを永久に失い、絶滅を避けるためには種の70%(110万ペア)が分布域移動を余儀なくされる[93][94]。コウテイペンギンも同様のリスクにさらされており、温暖化抑制策がされない場合、2100年までに種の80%が絶滅の危機に瀕すると見積もられているが、された場合この数値は2℃目標で31%、1.5℃目標で19%にまで低下させうる[95]。
2022年、南極の海氷面積は過去最低(当時)となり、コウテイペンギン繁殖に壊滅的な失敗をもたらした。低海氷の地域的な異常値が最も大きかったのは、南極半島西側のベリングスハウゼン海中部および東部地域であった。衛星画像によるコウテイペンギンのコロニーの地域的な繁殖状況調査により、この地域の5つの繁殖地のうち1か所を除くすべてで、2022年の繁殖期の巣立ち期開始前の海氷崩壊後に完全な繁殖失敗となったことが明らかであった[96]。この海氷減少傾向が続けば早ければ今世紀中にコウテイペンギンは絶滅の可能性がある[97]。米国魚類野生生物局は2022年10月、コウテイペンギンを絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律(ESA)に基づく絶滅危惧種に指定した[98]。
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関連項目
引用
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