Ispace
日本の東京都港区にある航空宇宙企業 ウィキペディアから
ispace(アイスペース)は、日本の宇宙ベンチャー企業。月面へのペイロード輸送サービス等を提供する[3]。
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種類 | 株式会社 |
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機関設計 | 監査役会設置会社[1] |
市場情報 | |
本社所在地 |
日本 〒105-0014 東京都港区芝2-7-17 住友芝公園ビル10F |
設立 | 2010年9月10日 |
業種 | サービス業 |
法人番号 | 3030003001527 |
事業内容 | 航空宇宙産業 |
代表者 | 代表取締役 袴田武史 |
資本金 | 1000万円 |
純利益 | ▲16億1466万4000円(2020年03月31日時点)[2] |
総資産 | 70億6487万8000円(2020年03月31日時点)[2] |
主要株主 |
袴田武史(19.12%) 株式会社INCJ(9.75%) インキュベイトファンド3号投資事業有限責任組合(9.55%) 小沼美和(7.82%) 株式会社日本政策投資銀行(5.57%) IF Growth Opportunity FundⅠ, L.P.(3.40%) 中村貴裕(3.19%) 株式会社TBSホールディングス(2.79%) IF SPV1号投資事業組合(1.87%) 株式会社SMBC信託銀行(1.87%) 吉田和哉(1.59%) ICJ1号ファンド投資事業有限責任組合(1.59%) 株式会社日ノ樹(1.43%) 清水建設株式会社(1.39%) 株式会社電通グループ(1.39%) コニカミノルタ株式会社(1.39%) スズキ株式会社(1.39%) スパークス・グループ株式会社(1.39%) |
関係する人物 |
袴田武史(創業者) 吉田和哉(初代CTO・主要株主) 中田華寿子(取締役) |
外部リンク |
ispace-inc |
これまでのミッションでは、2018年までGoogle Lunar X Prizeに参加し月面走行ローバーHAKUTOを開発。2023年に自社の月着陸船RESILIENCEにより民間初の月面着陸(ミッション1)を目指したが失敗。2025年6月に再び月着陸(ミッション2)を目指している。
歴史
要約
視点
ispace設立前
ispaceの前身、ホワイトレーベルスペース・ジャパンの誕生に至った契機として、2007年にピーター・ディアマンディスが月面での賞金レースGoogle Lunar X Prize (GLXP) を発表したことが挙げられる。2010年12月31日にGLXPの参加登録が締め切られた時点ではレースに日本を拠点とするチームは参加していなかったものの、東北大学教授の吉田和哉の宇宙ロボット研究室がオランダを拠点とするチーム「ホワイトレーベルスペース」に加わっていた。メディア業界で活動していたスティーブ・アレンが代表を務めるこのチームは[4]、開発拠点が欧州と日本に分かれており、欧州側が月着陸機、日本側が月面車 (ローバー) の開発を行うこととなっていた。
ispace設立以降
- 2013年
- 2015年
- 2016年10月、親会社であるアメリカ法人のispace technologies, inc.を解散し、日本法人を本社とする。日本法人の子会社としてispace technologies U.S., inc.を米デラウェア州に設立[3]。
- 2017年
- 3月、日本法人の子会社としてispace EUROPE S.A.をルクセンブルク市に設立。ルクセンブルク政府と月資源開発に関する覚書を締結[3][7]。それまで月面車の開発に注力していたが、袴田と当時の最高執行責任者中村貴裕はインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹から今後はGLXP終了後を見据えてispaceが自ら月着陸機を開発することを提案された[8]。
- 12月13日、ispaceは独自の月着陸機「シリーズ1」を開発することを発表。2019年末頃のミッション1でまず月周回を行い、2020年末頃にミッション2で月着陸と月面車による月探査を行うとしていた。同時にispaceは当時国内のスタートアップ企業では最高額となる101.5億円のシリーズA資金調達を実施。またこの時同社のムーンバレー構想が公表された。
- 2018年
- 3月、GLXPは終了し、同月31日HAKUTOチームは挑戦を終了することを発表した。
- 9月26日にispaceは最初の月探査プログラムを「HAKUTO-R」と命名することを発表。同時に米国のスペースX社と2回分の打ち上げ契約を締結したことも明らかになった。
- 10月9日、ispaceは米国のチャールズ・スターク・ドレイパー研究所と共同でNASAへ商業月面輸送サービス (CLPS) の公募へ月着陸機「アルテミス7」の提案を行った[9]。アルテミス7はHAKUTO-Rで使われる月着陸機を米国で組み立てたものである[注 1]。ispaceとドレイパー研究所は2026年までの中長期のパートナー契約を結んでいる[10]。11月29日、NASAはCLPSへ参加する資格を有する企業9社のうち一つとしてドレイパー研究所を選定した。
- 2019年8月22日、ispaceはHAKUTO-Rのミッション内容の変更を発表した。月着陸は前倒しで2021年にミッション1で実施、ミッション2は2023年に着陸と月面車による月探査を実施することとした。
- 2020年
- 2021年
- 2022年7月25日、NASAはCLPS初の月の裏側への貨物輸送ミッションをドレイパー研究所に発注した[19]。当初ispaceはこのミッションで使われる着陸機として「シリーズ2」を発表していたが、2023年9月28日に新たなデザインの着陸機「APEX 1.0」を公開した[20]。
開発機体

ローバー
- SORATO
- HAKUTOのGoogle Lunar X Prize参加のための月面ローバーとして開発された。
- 重量4.0kgで、当時最軽量の月面ローバーとされ、4輪駆動、360度視野で静止画や動画を撮影可能[3]。
- 2019年、フライトモデルはスミソニアン航空宇宙博物館に寄贈された[21]。
- TENACIOUS(テネシアス、マイクロローバー)
ランダー(着陸船)
HAKUTO-Rプログラム
ispaceの最初の2回の月探査ミッションはHAKUTO-Rというプログラムを構成している。HAKUTO-Rでは地球から月面への輸送技術の実証などが行われる。「R」にはReboot (再起動) の意味が込められている[24]。
ミッション1
→詳細は「HAKUTO-R ミッション1」を参照
最初に行われるHAKUTO-R ミッション1 (M1) は、アラブ首長国連邦の月面車ラシッドなどを載せ[25]、2022年12月に打ち上げられた[26]。M1は宇宙空間を4カ月半航行して2023年4月26日に月に到着、民間企業として世界初の月面着陸を目指したが、月面への軟着陸に失敗。ランダーとの通信が途絶えた[27]。
次の「HAKUTO-R」の打ち上げを2024年冬頃に行うと発表。ソフトウェアの改良などを行った次回の月着陸船の名称を「再起」や「復活」の意味を込めた「RESILIENCE」としたと発表した。[28]
ミッション2
→詳細は「HAKUTO-R ミッション2」を参照
HAKUTO-R ミッション2 (M2) は2025年1月にFalcon9ロケットで打ち上げられた[29]。このミッションではispace Europeが開発した月面車による月探査が行われる。また月の縦穴の探査も検討されている[24]
2024年1月20日にJAXAのSLIMが、そして同年2月22日にアメリカの民間企業インテュイティブ・マシーンズのNova-Cが月面着陸に成功したことで日本初、そして民間企業による世界初の月面着陸成功の称号は譲ることとなった。HAKUTO-R ミッション1失敗の原因に、「世界初」の功を急ぐブラックな企業体質を指摘する見解もある[30]
2025年6月6日に月面着陸を予定している[31]
月の裏側への着陸
ispaceの三番目のミッションは月の裏側へ着陸を行う。このミッションはドレイパー研究所が主導しており[19]、ispaceは月着陸機の設計を行う。月の裏側では地球と直接通信することができないため、着陸機と一緒に2機の通信衛星が打ち上げられ、これらは月周回軌道へ投入される[32]。2023年9月現在、このミッションは2026年の打ち上げが予定されている[20]。
研究開発
数年以内に月へ送られる見込みの各ミッションの他に、ispaceは将来を見据えたさまざまな技術の研究開発を行っている。
- 昆虫型ロボット
- 不整地での歩行・跳躍のため多脚型の構造した昆虫型ロボット[33]。不定形な表面を把持するための鉤爪型グリッパ (ロボットハンド) を開発。JAXA宇宙探査イノベーションハブの第1回研究提案募集に採択され、東北大学と共同で2016年4月から2017年3月まで研究[34][35]。
- Polar Ice Explorer (PIE)
- 月の極域でのその場資源利用 (ISRU) の実現性を探査するミッションのコンセプト。月面で表面温度の低い地域に着陸し、水素の分布や埋蔵量、土壌の性質などの調査を行うという前提のもと、ミッションの構成や搭載する観測装置、資金調達手法の検討を行った。ispace Europeが研究[37]。
脚注
関連項目
外部リンク
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