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気候変動による小島嶼国への影響
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気候変動による小島嶼国への影響(きこうへんどうによるしょうとうしょこくへのえいきょう)は、海面上昇をはじめ、豪雨の増加・熱帯性低気圧・高潮など多様であり[1]:2045 、それによる被害はこれら国々の人々や文化のみならず生態系や自然環境にも及んでいる。小島嶼国の多くは気候変動によって特に高いリスクにさらされており、気候変動による課題に対して国際的な注目を強く求めてきた[2]。カリブ海諸国・太平洋諸国など多くの小島嶼国がすでに気候変動の大きな影響を被っている[3]。


中でも特に平均海抜の低い環礁国家モルディブ・キリバス・ツバル・マーシャル諸島では極めて深刻で国そのものの存亡がかかっており、この4か国の高官代表は2019年4月フィジーで開催された太平洋共同体(SPC)主催の科学と気候変動に関する学習セッションで会合し、環礁国が気候不正義を被っている認識と経験を共有し[4]必要な行動について議論した[5]。
小島嶼国の多くは居住する人々の健康・生計や居住可能な土地を損なう気候災害を経験している。それらの島々を離れざるを得ない圧力さえ生じても、そのための資源もまた不足していることが多い。多くの小島嶼開発途上国(SIDS)は地球温暖化への責任はごくわずかであるにもかかわらず、気候変動への脆弱性が極めて高い(気候不正義)。そのため一部のSIDSは、気候変動緩和に関する国際協力を外交の重要な柱として位置づけている。
この記事で「小島嶼国」は一般に小島嶼開発途上国(SIDS)を指し、イギリスや日本のような、地理学・地政学的に島国ではあってもSIDSに比べ広大な国土や強固な経済的基盤を有する国々は含まない。ただしシンガポールは例外で、遠隔地でもなく経済基盤が強固な先進国であるにもかかわらず、国連経済社会局は2024年現在SIDSの一国として数えている。
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小島嶼国の気候変動における共通点
小島嶼開発途上国(SIDS)は、国際連合(UN)加盟国38か国と、非加盟国または準加盟国20か国から成り、カリブ海、太平洋、そして大西洋・インド洋・地中海・南シナ海(AIMS)の3地域に位置し、約6,500万人の人々が暮らしている。これらの国々は多様であるがシンガポールを除き以下の点が共通している[2]。
- 資源基盤が狭い
 - 地理的孤立性が高い
 - 自然環境に依存する経済が支配的である
 - 産業活動が限られている
 - 経済的規模が限られている
 
SIDSの共通した特徴は陸地の多くが海洋沿岸部で、人口・インフラ・資産の大部分がその沿岸部に集中している点であり、海面上昇・高潮・熱帯低気圧・海洋熱波・海洋酸性化などの脅威に特にさらされている[2]。
長年にわたりSIDSは、気候変動に特に脆弱な地域として認識されており、しばしば「気候変動の最前線」「気候変動ホットスポット」「(気候変動に対する)炭鉱のカナリア」などと述べられている[2]。すでに2001年気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、小島嶼国が気候変動により深刻な経済的・社会的影響を受けることを警告していた[6]。
SIDSの二酸化炭素換算温室効果ガス年間総排出量(2017年時点)は292.1~29,096.2トンと幅があるが[7]、合計しても世界全体の1%未満とごくわずかである[8][3]。
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小島嶼国に及ぶ影響
要約
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地球上の他地域同様SIDSでもすでに気温・降水両方の極端現象が頻度・強度ともに増加しており、この傾向は今後も続くと予測されている[2]。
海面上昇
海面上昇は限られた居住地が侵食され、既存の文化が脅かされ、低地の島国にとって特に深刻な脅威である[11][12]。シュテファン・ラームストルフは、「気温上昇を2度に抑えたとしても、一部の島国や沿岸都市は水没するだろう」と述べている[13]。
海面は約2万年前の最終氷期の終わり以来上昇を続けている[14]。1901~2018年の間に平均海面は15~25センチメートル上昇し、1970年代以降は年平均2.3ミリメートルの上昇率でこれは少なくとも過去3,000年間で最も速い上昇である[15]:1216 。直近2013~2022年の10年間では上昇率はさらに4.6ミリメートル/年に加速し[16]、人為的気候変動が主原因である[17]:5,8。その海面上昇内訳は 1993~2018年の間では氷床・氷河の融解が44%を占め、残り42%は海水の熱膨張によるものである[18]:1576。
海面上昇は地球の気温変化に数十年遅れて反応するため、すでに起きた温暖化により2050年まで上昇の加速が続くと予測されている[19]が、温室効果ガス 排出量を大幅に削減できた場合、2050~2100年にかけて海面上昇を鈍化できる可能性がある。
2100年までに2021年時点から30センチメートルから1.0メートルの海面上昇が予測されている。高排出シナリオでは50センチメートルから最大1.9メートルに達する可能性がある。[20][17][15](p1302) 長期的には、気温上昇が産業革命前比1.5℃にとどまる場合でも、今後2000年間で海面上昇は2~3メートルに達し、気温上昇5℃では19~22メートルに及ぶ[17]:21。
海面上昇による沿岸洪水の危険性増大は非常に大きく、ある研究は50センチメートル以下の海面上昇シナリオでも、洪水リスクは10倍から1000倍に達するとした(ただしこれは大陸沿岸部と島嶼沿岸部の両方を含む米国領土における数字であり、島嶼沿岸部だけの数字ではない)[21]。
食糧保障
気候変動は多くの太平洋諸島で食料安全保障のリスクである[22]。海面上昇につれ島国は沿岸耕作地の劣化や塩害を被る。その限られた土壌が塩分を帯びると、パンノキのような自給作物の栽培が極めて困難になり、マーシャル諸島やキリバスのような国々の食糧事情に深刻な影響を及ぼす[23]。
さらに海水温上昇や海洋酸性化により、マングローブなどの地域沿岸生態系も脅かされ、多くの魚類や海洋生物が死滅するか生息域や行動を変え、地元漁業にも影響が及ぶ[24]。
経済損失
SIDSは気候変動軽減のための財政的・人的資本が多くの場合限られており、深刻な嵐などの災害に対処するため国際援助に依存している国も多い。世界全体では気候変動によって2030年までの年間平均GDP損失は0.5%と予測されているが、太平洋のSIDSでは0.75~6.5%が見込まれ、カリブ海のSIDSでは2025年まででも年間平均損失5%、地域的緩和策がなければ2100年までに20%まで拡大するとされている[2]。
多くの島国にとって観光業は特に脅かされており、ハリケーンや干ばつといった極端気象の増加により深刻な影響を被る恐れがある[24]。
公衆衛生
気候変動は、小島嶼の生態系に悪影響を及ぼす形で公衆衛生にも影響を及ぼす。海面・気温・湿度の変化により、蚊の大発生を介しマラリアやジカ熱など蚊が媒介する感染症が蔓延する可能性がある。海面上昇・洪水・干ばつなどは農地を使用不能にのみならず、飲料水供給源も汚染しうる[25]。
その他の影響
小島嶼におけるその他の影響として[26]
- 海岸侵食やサンゴ白化といった沿岸環境の悪化。これは漁業資源としてのみならず観光地としての価値も低下する。
 - ただでさえ限られている淡水資源がさらに減少し、特にカリブ海や太平洋の小島嶼では、今世紀半ばまでに降雨量が少ない時期に水需要を満たせなくなる可能性がある。
 - 中緯度・高緯度の島々では、気温上昇に伴って外来種の侵入が増加する。
 
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小島嶼国での適応策
要約
視点
→詳細は「en:Climate change adaptation」を参照
政府は、防災・洪水管理・早期警戒システム・統合的水資源管理などの分野で、グレーインフラ(人工構造物)とグリーンインフラ(自然を活用した解決策)を組み合わせて活用するという複雑な課題に直面している[27]。
気候移住
→詳細は「en:Climate migration」を参照
海面上昇の脅威にさらされている島々の適応策の一つとして、気候移住が報道などで取り上げられている。これらの描写はしばしば誇張的または問題があるものの、移住が現実となる可能性は高く、地域的な適応策と組み合わせて活用されうる[3]。
環礁コミュニティ住民の調査では、彼らの文化的アイデンティティが土地と強く結びついていることが示された[28]。人権活動家たちは、環礁国家が完全に失われる可能性、すなわち国家主権や自決権・文化・先住的生活様式の喪失は、金銭的に補償できるものではないと主張し[29][30] 、これらの問題に関する国際的議論の焦点を「コミュニティ全体の移転」から「人々が自らの土地に留まり続けられるようにする戦略」へと移すべきだとしている[29][28]。
気候レジリエントな経済
多くのSIDSは、カリブ共同体(CARICOM)が策定した開発実施計画に沿って、低炭素で気候レジリエントな経済への移行の必要性を認識している。SIDSはしばしば輸入化石燃料に大きく依存しGDPの大きな割合を費やしている。再生可能エネルギー技術は化石燃料よりも低コストでエネルギーを供給でき、SIDSをより持続可能にしうる。バルバドスは太陽熱温水器(SWH)の導入に成功し、気候・開発知識ネットワーク(CDKN)の2012年の報告によれば、同国はすでに5万台以上のSWHを設置しており、1970年代初め以来最大1億3700万ドルの節約をもたらしたとし、これは日照量の豊富な他のSIDSでも容易に再現可能であるとしている[31]。
国際協力


いくつかの小島嶼国政府は、気候変動の緩和と適応に関する国際的な野心を高めるための政治的主張を、外交政策と国際同盟の柱としている[2]。
小島嶼国連合(AOSIS)は、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)で強力な交渉グループであり、人為的気候変動への寄与がごくわずかであるにもかかわらず、その影響に最も脆弱な国々であることを強調してきた[2]。この連合の43か国は地球温暖化を1.5°Cに抑える立場をとり、2015年国連気候変動会議でこれを提唱し、その年のパリ協定の目標設定に影響を与えた[32][33]。マーシャル諸島のトニー・デブルーム首相は、この会議で「高い野心連合(High Ambition Coalition)」の結成に中心的役割を果たした[34]。太平洋諸島フォーラムの会合でもこの問題が議論されている[35]。
モルディブとツバルは国際舞台で特に顕著な役割を果たしてきた。2002年ツバルは、気候変動への責任と京都議定書を批准しないかどで、米国とオーストラリアを国際司法裁判所に提訴するとした[36]。モルディブとツバル両国の政府は、環境擁護ネットワーク・非政府組織・メディアと協力して、自国が直面する気候変動の脅威への注目を集めてきた。2009年国連気候変動会議では、イアン・フライがツバルを代表して、交渉の停止と包括的かつ法的拘束力のある合意を求める取り組みを主導した[36]。
2022年3月時点で、アジア開発銀行はSIDSの気候変動・交通・エネルギー・保健関連プロジェクトに対して36億2000万ドルの支援を約束している[37]。
小島嶼各国・地域ごとの状況
要約
視点
カリブ海島国
→詳細は「en:Climate change in the Caribbean」を参照
カリブ海で予想される主な気候変動影響は海面上昇・ハリケーンの強大化・乾季の長期化・雨季の短縮であり[38]、経済・環境・人口に変化をもたらすと予測されている[39][40][41]。産業革命前より気温が2°C上昇すると、バハマでは極端なハリケーン降雨の発生確率が4~5倍、キューバとドミニカ共和国では3倍に増加する可能性がある[42]。海面上昇は標高3メートル未満の沿岸地域に影響すると予想され、ラテンアメリカおよびカリブ海地域では、この高さ以下に居住する2900万~3200万人が影響を被りうる。なかでもバハマは国土の少なくとも80%が標高10メートル未満で最も深刻である[43][44]。
東ティモール
東ティモール(ティモール=レステ)では、海面上昇により首都ディリを含む沿岸地域が脅威のもとにある[45]。同国は非常に脆弱であるとされており、今後サイクロン・洪水・熱波・干ばつの悪化が予測されている。人口の大部分が地域農業に依存しているため、これらの変化は国内産業にも影響を及ぼすと考えられている[46]。

モルディブ
→詳細は「en:Climate change in the Maldives」を参照
インド洋に浮かぶ低地の島々と環礁からなるモルディブは、海面上昇によって国の存続そのものが深刻な危機にある。2050年までに国土の80%が居住不能になる可能性があり[47]、2100年までの海面上昇は10〜100センチメートルと予測され国全体が水没する可能性がある[48]。
国家適応計画(NAP)[49]や国別自主貢献(NDC)[50]を通じた適応計画の立案・資金調達と、沿岸防護(護岸・防波堤/シーウォール)・埋め立て・陸地拡張が進められている。国際機関はこれらを支持すると同時に、サンゴ礁や生態系への影響・持続可能性・費用(数十億ドル規模との試算)を懸念しており、また政策文書や研究は、海洋生態系(サンゴ礁・マングローブ等)の保全とハード対策の組合せが重要であると指摘している[51][52][53][54]。
モルディブ環境省は、同国が気候変動により厳しい決断を迫られていることを強調し「気候変動に対処する取り組みは資金を奪っている。これをより適切に管理するため、政府は移住予定の島々全体をゾーニングしている。すべての場所を保護する余裕はないからだ」と述べた[5]。
一方で国外移住(恒久的な移住)については長年にわたり議論が続いている。過去には観光収入による国民移住準備基金や国民が海外の土地を取得するための仕組みが検討された経緯もあるが[55]、2025年時点では大規模な国民移転は計画されておらず、適応と島の保全・再生による「居住可能性の維持」が優先されている[56]。
フィジー
→詳細は「en:Climate change in Fiji」を参照
フィジーでも海面上昇・海岸侵食・極端な気象現象や気温上昇により、地域社会は移住を余儀なくされ、国のGDPの主要な構成要素である観光業・農業・水産業など国家経済が影響を被り、貧困と食料不安が深刻化することが予想されている[57]。人権測定イニシアティブ(HRMI)は、気候危機がフィジーにおける人権状況を中程度に悪化させた(6点中4.6)としている[58]。
フィジーは京都議定書およびパリ協定の締約国であり2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロを達成することを目指している[59]。
キリバス
→詳細は「en:Environmental issues in Kiribati」を参照
キリバスはほとんどの陸地が海抜2メートル未満であり、沿岸浸水・地下淡水の塩害・農地の塩害・住居被害が既に出ている。海面上昇によって常時土地を失っており、国家存続が危機に瀕している[60]。多くの島がその縮小によって既にまたは今後居住不能になると見込まれている。1999年にはテブア・タラワ島とアバヌエア島が水没した[61]。国民の大半は残されたわずかな島々に集中し、半数以上がタラワに居住している。このことが狭い地域での深刻な過密という別の問題を引き起こしている[62]。
政府は2003年に「キリバス適応プログラム(KAP)」を開始し、この問題への脆弱性を軽減しようとした[63]。2008年には海水が淡水供給を侵食し始め、アノテ・トン大統領(当時)は全国民移住を開始するための国際支援を要請した[64]。
2025年の国勢・災害データ報告では「世帯の約4分の1が災害の影響を受け、住宅損壊や農作物被害、健康被害が報告されている」とされている。加えて、世界銀行や国際機関は最悪シナリオでは2050~2070年ごろまでに著しい影響が顕在化し得ると警告しており、沿岸保全や海岸堤防など大規模な適応の必要性と高額な費用が見積もられている[65][66][67]。
移住に関しては、キリバスは「Migration with Dignity(尊厳ある移動)」の思想を長年掲げ、技能・労働を軸に海外移住の機会を作る政策を進めてきた。過去にはフィジーでの土地購入などの検討・実績もある。国の労働移動政策や国連の枠組みを通じて「働く権利を基盤にした移動経路」の整備を目指しているが、実際に国民を移住させられる法的・経済的手段や、年少者・高齢者・非技能層を含む全住民の移動を保障する制度はまだ整っておらず、移住は現時点では部分的・選別的なものにとどまるとされている[68][69][70]。
マーシャル諸島
マーシャル諸島でも既に高潮や高潮位による浸水・沿岸侵食・地下淡水の塩水化が頻発しており、住宅や道路・病院などの社会基盤が脅かされている。特に環礁および首都マジュロは危機にあり、海面が1メートル上昇する程度でも首都マジュロの建物の約40%が恒常的に浸水しうるとされている[71][72][73]。この危機は失業率上昇や高地・国外への移住を引き起こしており[74]、人権測定イニシアティブは、気候危機がマーシャル諸島の人権状況を大きく悪化させた(6点中5.0)としている[75]。
政治指導者たちは気候変動を外交上の主要課題と位置づけ、マジュロ宣言などの取り組みを進めている。対策としては国内での適応を最大化する方針のもと、防潮堤など沿岸保全工事・淡水供給の保全と多様化・気候適応に向けたインフラ強化が進められているが、巨額の資金が必要であり完全な防御は難しいとされている[76][77][78]。
政府はまた、国民が事前に教育・就労機会を確保して海外移住し生活再建する政策も推進しているが、受け入れ国の制度・移民枠・社会保障の整備が不可欠であり国際的な法的保護の欠如や受入側の制約が課題になっている[79][80]。
ソロモン諸島
ソロモン諸島では1947年から2014年の間に、海面上昇により6つの島が消失し、さらに6つの島が20〜62%縮小した。これら島々のうち最も人口が多かったヌアタンブ島では25世帯が暮らしていたが、2011年までに11軒の家が海に流された[81]。
気候危機がソロモン諸島地域社会での紛争・将来の社会経済的見通しの悪化・食料不安の増大を引き起こしているとされ[82]、人権測定イニシアティブ[83]は、気候危機がソロモン諸島の人権状況を大きく悪化させた(6点中5.0)としている[82]。
ツバル
→詳細は「en:Climate change in Tuvalu」を参照

ツバルはポリネシアの小島嶼国であり、ハワイとオーストラリアのほぼ中間に位置している。9つの小島から成り、うち5つはサンゴ礁の環礁で、残り4つは海底から隆起した土地である。すべての島が低地であり平均標高1.8メートルで[84]、4.5メートルを超える地点は存在しない[85]。
フナフティにおける2008年9月までの15年半の海面データの分析では海面上昇率は年間5.9ミリメートルであり、その期間中にフナフティ地域の海面は約9.1センチメートル上昇したことが確認された[86]。2023年時点で過去30年では海面は約15センチメートル上昇しており、これは世界平均より速い[87]。
高潮時・高潮・嵐などによる沿岸浸水、塩害、食糧作物への被害、水供給の不安定性が日常的な問題となっている[88]。Tuvalu Coastal Adaptation Projectは進行中の沿岸防護や国土の耐性強化のプロジェクトであり[84]、また2100年以降も 住み続けられる土地の確保を目指す土地区画整備プロジェクトも進行している[89]。
ツバルは国際連合で気候変動対策の強化を訴えるとともに、移住計画の検討も進めている[90]。2023年11月ツバルとオーストラリアはファレピリ連合(Falepili Union)という二国間外交関係を締結、2024年から発効し、ツバル国民のオーストラリアへの気候移住ルートを提供することとなった[91][92]。2025年時点で、この条約には毎年280名のツバル国民が抽選でオーストラリアへの永住ビザを取得できる制度が設けられ[93]、開始から数千人(国の人口のおよそ30〜40%に相当)が応募した[94][95]。ツバル政府は、移住は最終手段(”保険”)として位置づけ、国内での適応・国土の維持を優先するという立場を明らかにしている[94]。
サントメ・プリンシペ
1950年から2010年の間、サントメ・プリンシペでは気候変動の影響で年間平均気温が1.5℃上昇した[96]。同国はその影響に対して非常に脆弱であり、さらなる高気温・降水量増加が予測されている[97]。海面上昇と塩水の侵入は主要な問題となり農業にも深刻な影響を及ぼす[98]。政府は2022年、国連環境計画(UNEP)の支援を受けて気候適応策を実施するための「国家適応計画(NAP)」の策定を開始した[99]。
セーシェル
セーシェルでは、1999年の干ばつや1998年の大規模サンゴ礁白化現象など、降水量・気温・海面水温における気候変動の影響が既に2000年代初頭までに顕れていた。水資源管理は極めて深刻な影響を被ると考えられている[6]。
パラオ
2008年パラオは国連安全保障理事会に対し、気候変動による海面上昇からの保護を検討するよう要請した[100]。パラオ大統領(当時)トミー・レメンゲサウは次のように述べている[101]。
パラオは気候変動によって少なくとも3分の1のサンゴ礁を失った。干ばつと異常潮位で農業生産のほとんども失われた。理論的・科学的な損失ではない。私たちの資源と生計の損失である……島国にとって、時間は尽きかけているのではなくすでに尽きている。そして私たちの歩む道は、あなた方自身および地球の未来を映す窓であるかもしれない。
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関連項目
引用
外部リンク
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