シャープ亀山工場
ウィキペディアから
ウィキペディアから
シャープ亀山工場(シャープかめやまこうじょう)は、三重県亀山市にある電機メーカーシャープの工場。JR亀山駅の西、5kmに位置する。
シャープ亀山工場 | |
立地 | 2002年(平成14年)4月17日 |
敷地面積 | 330,400m2 |
所在地 | 〒519-0198 |
三重県亀山市白木町幸川464 | |
外部リンク | シャープディスプレイテクノロジー 亀山工場 |
第1工場 | |
稼動開始 | 2004年(平成16年)1月8日 |
延床面積 | 241,200m2 |
主な建物 | LCD工場1棟(鉄筋5階建、第6世代) テレビ組立工場1棟(鉄筋5階建) 物流倉庫1棟 |
第2工場 | |
稼動開始 | 2006年(平成18年)8月 |
延床面積 | 279,100m2 |
主な建物 | LCD工場1棟 (鉄筋3階建(一部7階建)、第8世代) |
2004年から2012年にかけて展開された「世界の亀山」ブランドの液晶テレビの生産で知られたが、2012年以降はスマートフォン用のIGZOディスプレイが主力となっている。
同じ敷地内に第1工場と第2工場が存在する。ちなみに、中空の渡り廊下でつながっているが、第1工場に設置されたApple社のオフィスにつながる通路があるため、シャープ社員の立ち入りが一部区間で禁止されている。第1工場は2011年からiPhone専用の液晶パネル工場となっており(2021年に白山工場に集約)、2010年代前半には「iPhone」という一つの製品の売れ行きに依存した不安定な経営によってシャープの経営悪化の原因の一つとなったが、2010年代後半には車載パネルやカメラモジュールなど幅広い製品を製造するようになり、経営も安定した。
IT不況下の2002年2月に、三重県の企業誘致政策により、135億円(三重県90億円+亀山市45億円)の補助金とともに誘致された。その後の景気回復のシンボルとして、また、世界初となる最新鋭の液晶テレビの一貫生産工場として話題を集め、テレビなどでのCMでも大々的に紹介された工場である。亀山工場ができるまでは、同じく三重県にある多気町の三重工場が液晶の主力工場であった。
2004年より、シャープは亀山工場で生産されたテレビを「世界の亀山」ブランドで大々的に売り出し、大いに売れた。当時液晶テレビは大型化が難しく、プラズマテレビと競合していたが(有機ELパネルはまだ存在せず)、液晶側の技術革新により徐々に優位に立った。当時は液晶と言えばシャープの時代であり、地デジ化の買い替え需要もあり安泰と思われた。
亀山工場への集中投資を行ったシャープだが、2008年にリーマン・ショックが襲い、さらに東アジア企業の猛追を受け業績が悪化[1]。
2009年に大阪府堺市堺区において亀山工場の3.8倍の面積のシャープでは最大規模の堺工場が稼動を開始し、液晶テレビの主力工場は亀山工場より堺工場に移った。加えて世界的な景気後退に伴い、亀山第1工場は2009年初頭より操業を停止。生産施設をすべて中国企業に売却し、建屋のみが残った状態となった。莫大な補助金を投入した工場が、わずか6年で操業停止して設備を売却と言う事態に、シャープは県から補助金約6億4000万円の返還を求められた。
2007年にアップルがiPhoneを発売し、スマホ時代が到来した。スマホ用小型液晶ディスプレイの技術競争が盛んになる一方で、シャープのテレビ用大型液晶ディスプレイは競争力を失い、第2工場も2012年に一時的に操業を休止し、堺工場とともに鴻海グループに売却する話が出るなど苦しい状態が続いた。亀山工場の操業とともに地方交付税の不交付団体となった亀山市は、操業不振で再び地方交付税の交付団体に転落した。
2011年、シャープは第1工場に約1000億円を投資し、iPhone用ディスプレイの専用工場として生まれ変わった[2]。投資額の多くをAppleが実質的に負担したため、第1工場は製造設備自体がアップルの所有物であり(建屋はシャープの所有物)、iPhone用のディスプレイ以外が製造できないなど、事実上のアップルの下請け状態にある。そのため、iPhoneの売れ行きが亀山第1工場の操業度に、ひいてはシャープ全体の業績を左右するほどになっている。第1工場にはアップルのオフィスがあり、シャープ社員ですら立ち入りできない区画がある。iPhoneは販売台数が多いため大きな利益が得られるが、逆にiPhoneの販売台数が少ないとシャープの経営が傾くというデメリットがあり、またアップルはiPhoneの売れ行きに合わせて週単位で細かく生産調整をするため、長期的な生産台数が読めないというデメリットがあった。
第2工場も2012年以降は大型液晶テレビの生産を減らし、スマートフォンや携帯ゲーム機用の中小型液晶ディスプレイが主力となっていた。2012年から2013年にかけてはシャープの経営危機とアップルの苦戦が重なり、第1・第2工場ともに稼働率が低下して非常に苦しい状態が続いたが、2012年には第2工場にて新開発のIGZOディスプレイの生産が開始され、競争力を失ったテレビ用大型液晶から高収益の得られる中小型液晶ディスプレイ工場への移行に成功。当初シャープはIGZOをiPadに回したため他社の需要が伸びず、安価で高品質な製品を開発したにもかかわらずアップルの需要に翻弄されて経営が極めて悪化したが、中国の中小スマホメーカーなど新規顧客の獲得に走り回った結果、2013年後半からはIGZOの人気や任天堂の3DS LL用ディスプレイの人気などで高い稼働率が続き、液晶事業が久しぶりに黒字になるなどシャープの復調を印象付けた。
2012年に堺工場が鴻海グループに入ったため、亀山工場が再び「液晶のシャープ」の主力工場となった。2014年上半期の中国スマホメーカー向けの出荷量は前年同期比4倍、9月には中小型液晶の比率が50%、第2工場の稼働率が100%に達した[3]。2012年頃のシャープの経営危機は、アップルと言う大口顧客・単一製品への依存が招いたという反省から、第2工場ではIGZO以外にも多様な製品の生産を行っており[4]、また2014年7月には第1工場でもアップル以外への供給が行えるようにアップル所有のラインを買収する交渉が開始されたとの報道があった[5]。
しかし2014年9月以降には一転して液晶の競争激化などのため中国スマホメーカー向け中小型液晶の出荷が落ち込み、2年ぶりに稼働率とシャープの経営が悪化。LTPS(低温ポリシリコン)や高精細化などの最先端技術を身に着けつつある中国液晶パネルメーカーの価格攻勢、有機ELに傾注しつつある韓国メーカーの中、もはやIGZOなどシャープの液晶技術はそれほど評価されず、同じ日本のジャパンディスプレイと廉売による市場の奪い合いが起き、特に中国スマホシェア1位のシャオミ社の受注をジャパンディスプレイに取られたことが大きかったとされる[6]。一度は減らしたテレビ向け大型液晶を稼働率維持のために増産せざるを得ない状況となった。
2015年4月、ついに亀山工場の分社化が報じられた。2015年代後半には中国スマホ市場の成熟のために成長率が鈍化し、iPhone単一への依存は抜けだしたもののiPhoneに加えてシャオミなど中国で人気のスマホに結局は依存している状態のシャープの液晶事業と、それに代わる柱が見つけられずに相変わらず液晶事業に依存しているシャープの経営がさらに悪化。シャープは本社ビルの売却に続いて亀山工場を含めたシャープの液晶事業も売却する方針で、堺工場を経営する鴻海、亀山工場の大口顧客であるアップル、液晶事業でライバルのジャパンディスプレイ、ジャパンディスプレイとの合同で日の丸液晶連合を画策する産業革新機構などが交渉を行っていたが[7]、最終的に鴻海がシャープをグループごと買収することとなり、2016年3月に亀山工場を含めたシャープ全体を3888億円で買収した。
2017年のiPhone XよりiPhoneが有機ELに移行し、業界全体としても液晶から有機ELにシフトし始めたが、シャープを含む鴻海グループは有機ELパネルの量産を確立していないため、シャープは2019年以降の量産を目指して有機ELの開発を進める一方で、世界初となる8K液晶テレビ「AQUOS 8K」を発売するなど液晶事業にも大きな投資をしている。そのなかで、亀山工場は液晶パネル工場としては依然として世界最先端であることには変わりなく、「液晶分野で一番重要な拠点」と位置付けられ[8]、2017年度の黒字転換を目指して液晶パネルの生産と有機ELの開発が行われている。ただし亀山工場でiPhone用有機ELパネルの量産を行う予定はなく、未来のiPhoneへの採用を目指すシャープの有機ELパネルは鄭州にある鴻海のiPhone組み立て工場(富士康鄭州工場)に併設して2018年に建設される予定の工場で、2019年より本格量産が開始される予定。
2017年現在、亀山工場と矢板工場で行われているシャープのテレビの生産台数は計数十万台とみられており、生産施設の老朽化が進んで採算が悪化している[9]。特に亀山工場は、2017年時点で稼働中の液晶パネル施設としては世界最古となる[10]。そのためシャープは、手作業での組み立てが多いテレビなどのアッセンブリーラインは全面的に鴻海などの海外工場に委託する方針を2017年に固めたが、国内工場はスマートファクトリー化(全自動化)を前提に、一部の液晶テレビ生産を残す方針。亀山工場では45型テレビの全自動生産ラインの設置が検討されていた[11]。しかし最終的に、テレビ用大型パネルの生産は堺工場に集約された。
かつてiPhone用ディスプレイ専用工場だった第1工場でも、産業用8Kパネルや車載用パネルなどが製造されている。
2017年10月発売の「iPhone X」より、iPhoneに有機EL採用モデルが登場するが、有機ELディスプレイの開発で乗り遅れたシャープは、亀山工場ではiPhone用の有機ELディスプレイを製造せず、代わりにiPhone用カメラモジュールを製造する方針を取った[12]。
亀山工場は、シャープの経営が悪化してから人員がリストラされる一方だったが、2017年7月、スマホ用カメラモジュールの製造に向けて、亀山工場の人員を増強する方針を発表。しかし雇用は不安定で、2017年12月には外国人3000人を含む約4000人が雇い止めとなり、労働組合とトラブルになった[13]。
2020年8月、シャープ・アップル連合はジャパンディスプレイ(JDI)からJDI白山工場を買収することを発表。買収に伴い、2021年8月、iPhone用パネルの製造は亀山第1工場から白山工場に集約された[14]。
2020年にコロナ禍の「巣ごもり需要」により黒字化したシャープの液晶事業は、コロナ明けに再び赤字に陥る。2024年5月、巨額の赤字に耐えかねたシャープは、堺工場に集約されていたテレビ用パネルの生産から撤退するなど、液晶事業を大幅に縮小する方針を発表した。
亀山工場自体は2024年時点で、第1工場は車載向けパネルや電子部品の生産を中心に、第2工場はパソコンやスマートフォン向けの中小型パネルの生産を中心に、それぞれ堅調だったが、シャープは亀山工場の液晶事業も縮小することを発表[15]。iPhone用カメラモジュールの生産は2023年発売のiPhone 15が最後となり、2024年に撤退した。
シャープ亀山工場は亀山市内の亀山関テクノヒルズ工業団地内に立地する。付近には東名阪自動車道や名阪国道、国道1号などが接続する亀山ICがある。亀山ICからは伊勢自動車道とも、さらに2008年2月には東名阪自動車道亀山JCTを介して新名神高速道路とも接続されるなど、道路交通の便に優れた地域である。また、天理研究所と三重工場との連携も考慮されている。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.