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連座制(れんざせい)とは、候補者の関係者が選挙違反(選挙犯罪)をしたことを理由として、選挙違反に直接関与していない候補者について、当選無効等の不利益を与える制度のこと。
イギリスの1883年腐敗違法行為防止法においては、運動員による選挙違反が立証された場合、候補者は、選挙違反に対する関与の有無を問わず、その当選が無効とされる。また、当該候補者は、違反を犯した選挙区からの立候補を永久に禁止され、その他の選挙区においても7年間立候補をすることが禁止される。
同法は、腐敗を極めていた選挙の健全化に大きく貢献した。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本の公職選挙法における連座制は、同法251条の2から251条の4において規定されている。その内容は、以下の通りである。
以下のいずれかに該当する場合、候補者[注 1]の当選が無効とされ、当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙において立候補が5年間禁止される(公職選挙法251条の2から251条の3)。衆議院の比例区選挙については原則として適用されないが、重複立候補をしている候補者で小選挙区において連座制の適用を受けた者は、比例区についても当選無効の効果が生じる(公職選挙法251条の2第5項、251条の3第3項)。
なお、#連座制適用の手続の節において述べる通り、以下のいずれかに該当する場合に直ちに当選無効及び立候補禁止の効力が生じるわけではない(公職選挙法251条の5)。
また、公務員等[注 8]であった者が当選した場合については、かつての同僚である公務員等が指示・要請等を受けて選挙犯罪を行ったとき、連座制が適用される(公職選挙法251条の4第1項)。こちらは当選無効の効果のみ生じ、同一選挙区からの立候補を禁止されることはない。また衆議院の比例区選挙については適用が無く(同条第2項)、重複立候補時に選挙区での連座制適用によって比例区当選が無効になることもない。
以下の場合に該当する限り、連座制の効果のうち、立候補禁止の効果及び衆議院比例代表選挙における復活当選の無効に限って連座制は適用されない(公職選挙法251条の2第4項)。ただし、通常の当選無効の効果は免れることができない。
また、組織的選挙運動管理者等の違反に限っては、免責規定に該当する限り、当選無効も含めて全ての連座制の効果が及ばない(公職選挙法251条の3第2項)。
連座制が適用され、当選無効及び立候補禁止の効力が生じるまでの流れは、以下の通りである。
また、検察官が議員の当選無効を求めて提起した場合(公職選挙法法211条1項)には、その訴訟において原告(検察官)の勝訴が確定した時に、当選無効及び立候補禁止の効力が生じる(同法251条の5)。
当選無効となった場合は、繰上補充が可能な場合は繰上補充、それ以外の場合で再選挙の要件を満たす場合は再選挙となる。
なお、連座制の適用に直接関係はないが、候補者であった者に通知をした裁判所長は、上記通知をした旨を、総務大臣等に通知することとされている(公職選挙法254条の2第3項)[注 9]
連座制は1925年に普通選挙制を導入した衆議院議員選挙法(普通選挙法)で選挙事務長を制度化し、選挙事務長が一定の選挙犯罪で刑に処せられた場合は当選を無効とする規定が定められたのが最初である[1]。ただし、「事務長ノ選任及監督ニ相当ノ注意ヲ為シタルトキ」は免責とされていた[1]。1934年の衆議院議員選挙法改正で事実上の選挙運動総括主宰者も連座制の対象となった。ただし、当選人が当該人物が「選挙運動総括主宰者であることを知らなかったとき」「当選人の制止に関わらず、事実上の選挙運動総括主宰をしたとき」は免責とされた。1945年の衆議院議員選挙法改正で選挙事務長制度が廃止され、連座制となる事実上の選挙運動総括主宰者の免責について「当選人が総括主宰者の選任及び監督につき相当の注意をしたとき」が加えられた。1947年に制定された参議院議員選挙法では参議院議員の選挙に関して、衆議院議員の選挙の罰則に準用する規定が設けられた。1950年に制定された公職選挙法では出納責任者が一定の選挙犯罪で実刑に処せられた時は当選を無効とするという規定が設けられた[1]。ただし、「当選人が出納責任者の選任及び監督につき相当の注意をしたとき」は免責とされた。
連座制の免責規定が甘いとして、1954年の法改正で免責規定について「おとり行為」「寝返り行為」と具体的条文で限定する旨の規定が設けられ、1955年3月1日から施行された[1]。さらに1962年の法改正で地域主宰者や公職の候補者と同居している父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹で当該公職の候補者又は総括主宰者若しくは地域主宰者と意思を通じて選挙運動をしたもの、公務員の地位利用について連座制の対象とし、また総括主宰者、出納責任者、地域主宰者や地位を利用した公務員については罰金刑や執行猶予の禁錮以上の自由刑判決でも連座制の対象となることとされ、同年5月10日から施行された[1]。1981年の法改正で同居していない父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹も連座制の対象となることとされた[1]。
しかし、当初の刑事訴訟に関する百日裁判規定は具体的公判日程に関する規定がないため、裁判所の訴訟指揮が緩い場合は、制度の趣旨が生かされずに長期裁判となることがあった。また連座制の場合は当該選挙の当選無効しかなかったために、任期満了又は議会解散で任期が終了したものの次回選挙等に当選した後で連座制で任期満了又は議会解散による失職という形で任期が既に終わった選挙について当選無効に絡む有罪判決が確定しても、公職政治家としての地位に影響しなかった事態も度々発生していた。このような事態に対応するため、百日裁判について具体的に公判期日をあらかじめ一括して設定する等の具体的な公判日程を盛り込んだ条文が1992年の法改正で規定され、同年12月16日に施行された。
1994年2月の法改正で「従来の連座制は当選無効に限定されていたものを、新たに当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙において立候補を5年間禁止する規定」「公職候補者等の秘書を新たに連座制の対象に加える規定」「父母、配偶者、子若しくは兄弟姉妹については禁錮以上の刑に処されても執行猶予の言い渡しを受けた場合は連座制の対象とならなかったものを、執行猶予付き判決の場合も連座制の対象に含める規定」が設けられた[2]。また、1994年11月の法改正で組織的選挙運動管理者等の選挙違反についても連座制の適用とする規定が設けられた[2]。1994年2月及び1994年11月の法改正は「拡大連座制」とも呼ばれた。
総選挙 | 選挙区 | 候補者 | 政党 | 当落 | 違反者 | 違反行為 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1996年衆院選 | 静岡7区 | 小池政臣 | 無所属 | 落選 | 後援会幹部 | 買収 | その後三島市長に当選 |
1996年衆院選 | 宮城6区 | 菊池福治郎 | 自民党 | 当選 | 秘書の長男 | 買収 | 議員辞職、引退 |
1996年衆院選 | 和歌山3区 | 野田実 | 自民党 | 比例復活 | 秘書の事務所職員 | 買収 | 失職、引退 |
2001年参院選 | 比例区 | 高祖憲治 | 自民党 | 当選 | 後援会幹部 | 公務員の地位乱用 | 議員辞職 |
2001年参院選 | 愛知選挙区 | 関口房朗 | 無所属 | 落選 | 秘書 | 買収 | 2007年参院選比例区に立候補も落選 |
2002年衆院補選 | 福岡6区 | 延嘉隆 | 無所属 | 落選 | 出納責任者 | 利害誘導罪 | 政界進出なし、加藤紘一の元秘書 |
2003年衆院選 | 埼玉8区 | 新井正則 | 自民党 | 当選 | 本人、出納責任者 | 買収 | 議員辞職、自身も逮捕され有罪判決 |
2003年衆院選 | 宮城1区 | 今野東 | 民主党 | 当選 | 後援会幹部 | 利害誘導罪 | 議員辞職、2007年参院選比例区で当選 |
2003年衆院選 | 宮城2区 | 鎌田さゆり | 民主党 | 当選 | 後援会幹部 | 利害誘導罪 | 議員辞職、仙台市長選に立候補も落選、その後2015年に宮城県議会議員に当選ののち、2021年衆院選に宮城2区から立候補し当選 |
2003年衆院選 | 神奈川14区 | 中本太衛 | 自民党 | 落選 | 秘書 | 買収 | 禁止解除後、2012年衆院選で同一選挙区より立候補も落選 |
2003年衆院選 | 愛知15区 | 都築譲 | 民主党 | 比例復活 | 選対幹部 | 買収 | 議員辞職、その後一色町長当選 |
2004年参院選 | 比例区 | 信田邦雄 | 民主党 | 落選 | 選対幹部 | 買収 | 繰り上げ当選の資格喪失、引退 |
2005年衆院選 | 高知1区 | 五島正規 | 民主党 | 比例復活 | 秘書 | 買収 | 議員辞職、引退 |
2005年衆院選 | 千葉7区 | 松本和巳 | 自民党 | 当選 | 出納責任者 | 買収 | 議員辞職、2009年衆院選で千葉6区より立候補も落選 |
2007年参院選 | 神奈川選挙区 | 小林温 | 自民党 | 当選 | 出納責任者、選対幹部 | 日当買収 | 議員辞職 |
2009年衆院選 | 熊本3区 | 後藤英友 | 民主党 | 比例復活 | 出納責任者 | 買収 | 議員辞職 |
2009年衆院選 | 北海道5区 | 小林千代美 | 民主党 | 当選 | 選対幹部 | 買収 | 議員辞職、2017年千歳市議選に立候補し当選 |
2012年衆院選 | 鹿児島2区 | 徳田毅 | 自民党 | 当選 | 徳洲会のメンバー | 運動員買収 | 議員辞職(徳洲会事件) |
2013年参院選 | 比例区 | 広野允士 | 生活の党 | 落選 | 元秘書 | 買収 | 以降選挙への立候補なし |
2019年参院選 | 広島選挙区 | 河井案里 | 自民党 | 当選 | 本人、秘書、夫(河井克行) | 買収 | 失職、自身及び克行も逮捕され有罪判決(河井夫妻選挙違反事件) |
1994年2月の法改正で連座制が確定した場合は候補者の当選が無効とされ、当該選挙に係る選挙区(選挙区がないときは、選挙の行われる区域)において行われる当該公職に係る選挙において立候補が5年間禁止されるようになった。しかし、他の公職選挙や異なる選挙区での立候補は禁止されたものではないため、立候補禁止期間に他の公職選挙や異なる選挙区での立候補をすることがあり、マスメディアから倫理の問題が指摘されることがある。
連座制が適用されて立候補禁止期間の間に他の公職選挙や異なる選挙区での立候補した例として以下がある[3][4][5][6]。立候補禁止の選挙と地盤の重なる別の選挙に立候補した事例が多い[3]。
連座制は当選無効が当該選挙に絡むだけで立候補制限は当該公職の失職をする規定がない。そのため、次回選挙で当選した後に連座制が確定した場合、該当公職選挙において該当の選挙区からの立候補禁止されているにもかかわらず、該当公職選挙において該当の選挙区から当選した公職が失職せずに、任期満了まで公職の地位が保証される事態がおこりえる。
1998年3月の石川県議会議員補欠選挙金沢市選挙区では朝倉忍が当選したものの、選挙違反に絡む連座制で当選無効及び5年間の立候補禁止されたが、朝倉は判決確定前の1999年4月11日に石川県議会議員選挙で再選しており、1999年の選挙は当選無効の対象とはならず、石川県議会議員金沢市選挙区からの立候補が5年間禁止されているにもかかわらず、連座制では石川県議会議員金沢市選挙区から立候補して当選した石川県議会議員の資格は剥奪されない事態となった[7]。
連座制は対象者の刑事訴訟の判決が確定していることが前提であるため、死亡等で判決が確定しない場合は連座制の対象とはならない。
2011年4月10日投票の兵庫県議会議員選挙で当選した北川泰寿は選挙直後に母親が出納責任者として買収をしたとして同年5月13日に起訴され、罰金刑以上が確定すれば連座制が適用される可能性が報道されていた中で、懲役1年を求刑されて一審判決がする3日前の2012年2月17日に母親が自殺したことで刑事訴訟は公訴棄却となるという形で有罪とならなかったために連座制が適用されなかった例がある[8][9][10]。
連座制が適用された場合、上記の通り、公職選挙法第251条の5に基づき、当選無効の効力はその旨の判決が確定した段階等から生じる[11]。さらに、地方自治法128条は、地方議会議員について、当選の効力に関する異議申出等の争訟があっても、決定、裁決または判決が確定するまでの間は職を失わないと定めている[12]。
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