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南本線

タイの鉄道路線 ウィキペディアから

南本線
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南本線(みなみほんせん、タイ語: ทางรถไฟสายใต้)は、タイ王国の鉄道路線であり新トンブリー駅スンガイコーロック駅(1142.99 km)間を結ぶ鉄道である。ハジャイ分岐駅 - パダン・ブサール駅手前に位置する国境間(44.96 km)等7つの支線を有する。

概要 南本線, 基本情報 ...
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当記事では上記7つの支線も併せて述べる。

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概要

要約
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2024年時点のタリンチャン分岐駅で分岐点

タイ国有鉄道南本線は東北本線北本線に次ぐ3番目の幹線として着工された。南本線は前記2線とは異なり始めからメーターゲージ、すなわち 1,000 mm軌間を採用して敷設された[2][注釈 5]。旧トンブリー駅 - ペッチャブリー駅間(150.49 km)が1903年6月19日に開業したのを皮切りに南北3か所(ペッチャブリー駅ソンクラー駅カンタン駅)より同時に延伸工事が開始され、まずソンクラー駅 - カンタン駅間が1914年10月1日に繋がり1916年 9月1日に南北からの工事が完成した[4]。その後スンガイコーロックへ向け工事が進められ、1921年9月17日に南本線全線開通となった。この段階で既に南本線、カンタン支線、ソンクラー支線、及びナコーンシータンマラート支線の一大路線網が完成していた。その後ナムトック支線、キーリーラットニコム支線、スパンブリー支線が開通したが、のちにソンクラー支線は廃止された[5]

1927年1月、タリンチャン駅から分岐してチャオプラヤー川を渡る支線が開業し、バーンスー分岐駅から北本線へ乗り入れフアランポーン駅(フワランポーン駅とも)に直通する新ルートが確立された。これにより、一部の長距離列車はトンブリー駅発着からフアランポーン駅発着に変更され、21世紀の現在も踏襲されている[注釈 6]

2019年現在、南本線で運行されている特急及び急行列車には2往復の夜行特急列車(うち1往復の一部はわずかな距離ながらマレーシア領内に乗り入れ、マレー鉄道パダン・ブサール駅まで運行される)、2往復のディーゼル特急列車(うち1往復は運用上、途中駅で増解結する車両を1編成の独立した別列車として扱っているため、書類上は3往復となる)、2往復の夜行急行列車がある。その他にも数本の長距離快速列車が運行されているが、殆どの列車が夜行でありタイの他の路線と比べて乗車時間が長いことなどから、他路線では原則的に優等車両を連結しない快速列車の多くにも、常時1 - 2両のエアコン付2等寝台車が連結される。

2021年バーンスー中央駅(当時)を起点とする電化新線のレッドライン、2路線が開業した。うち、ライトレッドラインが南本線地上線と平行する新線(一部高架)を走行する[注釈 7]

2022年にバーンスー中央駅(高架駅)はクルンテープ・アピワット中央駅に改名が発表され、のちに実施された。ただし、一部列車が停車する地上旧駅に対し、公式に旧駅名で呼称する場面も多く、本記事では「バーンスー分岐駅(地上駅)」表記も併用する。

2023年 1月19日、ダイヤ改正によりフアランポーン駅発着列車の大半がクルンテープ・アピワット中央駅発着に変更され、ライトレッドラインと同じ新線を走行するようになった。改正後も2往復がフアランポーン駅発着で残され、地上線を経由する。

2023年12月、複線化予定区間の一部完成に伴い、暫定ダイヤによる運転が施行された[6]

下り列車で約4時間、上りで5時間程度を要したバンコク-フワヒン間が、下り3時間半、上り4時間弱に高速化された。

2024年、チュムポーン駅までの複線化が完成、同年8月12日より営業を開始した[7] [8]

列車にもよるが、バンコク(クルンテープ・アピワット中央駅)-チュムポーン間の所要時間が2時間以上高速化された便が存在する。

複線化事業

ナコーンパトム 以遠の長大な単線区間を近代化すべく、第一期複線化事業として ナコーンパトム(48.12 km) - チュムポーン (468.53 km) 間、約420 kmの工事が実施された[9]

2023年に完成予定とされていたが[注釈 8]、一部区間を残して同年12月15日、暫定的に供用を開始した[6]。残り区間も、2024年8月12日に営業開始した[7][8]

また、チュムポーン以南についてもパダン・ブサールまでの複線化が検討されており、実現すればバンコクから国境に至る長大な複線区間が完成する[11]。のちに、他の支線群についても複線化構想が浮上している[6]

複線化事業には踏切の立体交差化、さらに列車保安装置としてETCS Level 1 導入なども含まれ、高速化のみならず安全面の強化が期待されている。将来的にはマレー半島における高速鉄道プロジェクトに組み込まれる可能性がある[12]

ナムトック支線

ノーン・プラードゥック分岐駅 - ナムトック駅間を結ぶ支線の通称。タイ国鉄やタイ国政府観光庁が発行する刊行物やウェブサイト上には、「西線」もしくは「Western Line」と記述される場合もある。これは同支線が旧泰緬鉄道の一部であり、バンコクより西進してタイ=ビルマ(現ミャンマー)国境を越え、ラングーンを結ぶ路線として名実ともに西方への基幹路線として機能していた歴史的経緯の名残であると言える[注釈 9]

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開業の歴史


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区間

要約
視点

フアランポーン - バーンスー間は北本線に乗り入れる。全線複線。バーンスー - タリンチャン間については電化新線ライトレッドラインと合わせて複々線となる[注釈 10]

フアランポーン駅 - タリンチャン分岐駅

タイ国鉄刊行の公式資料ではバーンスー - タリンチャン間をラーマ6世橋支線としている[13]

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トンブリー駅 - スンガイコーロック駅

概要で述べた通り、歴史上そして登記上の両観点から見ても、南本線の本線(基幹路線)はこちら、トンブリー - スンガイコーロック間の区間である。トンブリー駅が移転した現在もなお、各駅のキロ程トンブリー駅が基準となっている。

一部の書籍や個人製作によるウェブサイト等には、フアランポーン - バーンスー - タリンチャンを結ぶ経路、或いは南部のハート・ヤイ(ハジャイ)からパダン・ブサール駅を介してマレー鉄道に接続する経路を「本線」として紹介する記述が見られる。しかし、これは「マレー半島縦断鉄道ルート」という専ら外国人観光客の視点から見た場合の誤解であり、単独の「タイ国鉄南本線」として扱う場合においては誤記であると言わざるを得ない。

20世紀末からトンブリー駅周辺の再開発計画が始動した。旧トンブリー駅はシリラート病院の拡張用地に転用され、新たな起点駅として新トンブリー駅2003年に開業したが、他の交通機関との接続はまるで考慮されておらず利用者に不便を強いることになった。1953年フアランポーン駅への直通運転が再開した当初、同駅発着列車は少数であったが後に逆転し、現在のトンブリー駅は昼行列車が発着するのみである。

ライトレッドライン開業後、トンブリー - タリンチャン - ナコーンパトム を結ぶ短距離列車が増発されており、利便性を向上させる動きがみられる。なお、ナコーンパトムまでは電化区間延伸が予定されている。さらに、トンブリー - タリンチャンを電化のうえライトレッドライン支線とする計画が承認されており、実現すると新トンブリー駅はシリラート駅タイ語版として旧トンブリー駅に近い位置に再び移転することになる。シリラート駅には地下鉄(バンコク・メトロ)の新路線接続も計画されており、すべて計画が実現すればタイ南部からバンコク中心部への近道となる可能性がある[注釈 12]

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ノーンプラードゥック分岐駅 - スパンブリー駅

南本線と北本線の短絡線として計画されたもので、当初はロッブリー駅まで延伸する予定であった。スパンブリー県まで完成したものの採算性が問題となり計画は中断した[16]。スパンブリーの一帯は穀倉地帯であり、米の輸送が1990年頃まで実施されていた[16]。スパンブリーからビルマ(現・ミャンマー)国境方面への延伸が検討されたこともあるが、実現には至っていない[17]

当支線には終着駅も含めて交換設備がいっさい存在せず、全線が単一の閉塞区間となっている。

バンコクから比較的近くにありながら列車運転本数は極端に少なく、一日一往復のみという状況が続き、好事家の間では乗車しづらい路線として知られる。

2025年現在、毎週日曜日の夜に下り1本、月曜日の朝に上り1本のみという週一往復体制で運行している。

スパンブリー支線で途絶えて久しい貨物輸送であったが、2022年 3月、実験的にシーサムラン停車場を発送駅とするビア・シン(日本ではシンハ―のブランドで知られる)製ビールの発送が開始された[18]

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ノーンプラードゥック分岐駅 - ナムトック駅

軍事輸送を目的として1942年建設開始された泰緬鉄道は、翌1943年10月に完成した。急ピッチで行われた工事は苛烈を極め、一説には作業員の半数が死亡したとされる。

終戦により分断された線路跡はタイ政府に払い下げられ、鉄道が再建されることとなった。1949年カンチャナブリーまで部分開通し、旅客営業が開始された。1952年ワンポーまで延伸、さらに1958年にはナムトックまで開通し、今日のナムトック支線となった[注釈 13]

車内からの眺望が良好な観光路線として内外からよく知られており、週末には観光列車も運行される。

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バーントゥンポー分岐駅 - キーリーラットニコム駅

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トゥンソン分岐駅 - カンタン駅

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カオチュムトーン分岐駅 - ナコーンシータンマラート駅

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ハジャイ分岐駅 - パダン・ブサール駅(マレーシア国境)

かつてはタイ・マレーシア両国の定期国際列車が当支線を経由し相互に乗り入れていたが、タイ編成の列車はパダン・ブサール駅発着便に切り替わり、マレーシア編成の列車は廃止された。

冒頭で述べた通り、本線直通の特急列車が1往復(スンガイコーロック方面便と併結)、支線のみ走行する普通列車が2往復設定されている[19]

これらとは別に、観光列車イースタン&オリエンタル・エクスプレスマレー鉄道による臨時列車が不定期に走行する。

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ハジャイ分岐駅 - ソンクラー駅 (廃止)

1978年7月1日に路線休止となり、のちに廃止された。

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主な事件、事故

  • 2007年6月4日 - ヤラー県にて線路のボルトが多数抜かれ、列車が脱線・転覆、13人が負傷した。その影響で深南部線が8日朝まで運休。
  • 2009年10月4日 - トラン発バンコク行き第84寝台急行列車でプラチュワップキーリーカン県ホアヒン郡カオタオ地区を走行中に15両編成中機関車(4544)を含む前部計5両が脱線、転覆し多数の死傷者を出した。脱線時大雨だった。脱線した車両には日本からの譲渡車が含まれている。
  • 2010年2月23日 - 午後、バンコクからハジャイに向かっていた貨物列車が南部パタルン県内で脱線、転覆した。けが人はなかった。国鉄関係者は枕木の老朽化が原因とみている。
  • 2010年2月25日 - 午前9時25分、ヤラー市からナコンシータマラート市に向かっていた4両編成の第456普通列車がソンクラー県内で脱線、転覆し乗客乗員22人が重軽傷を負った。
  • 2010年11月26日 - 午前8時半ごろ、バンコク発トラン行きの第83寝台急行列車がタナコンシータマラート県で機関車(4223)を含む3両が脱線、転覆した。
  • 2011年7月25日 - 午前1時45分ごろ南本線のチャアム―ノーンサーラー間でバンコク発の急行列車が脱線した。けが人はなかった。
  • 2011年12月28日 - 午後4時過ぎスラータニー発バンコク行きの第40特急列車が、途中プラチャップキリカーン県内の踏み切りでトラックと衝突し、脱線炎上した。
  • 2012年5月5日 - 午後バンコクからマレーシアに向かっていた貨物列車(19両編成)がナコンシータマラート県内で機関車(4527)を含む17両が脱線、転覆した。この事故で列車の乗員1人がけがをし、南部線は一時不通になった。タイ国鉄は脱線の原因について、豪雨で地盤が緩んだためとみている[20]
  • 2012年11月8日 - 午前7時15分ごろナラティワート県の線路上でガスボンベを使った爆弾が爆発し、走行中の旅客列車が大破、脱線し、列車に乗っていた3人が死亡し、15人が重軽傷を負った[21]
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注釈

  1. 2023年現在、連続高架化事業が進められており、新駅舎がほぼ完成している。
  2. 2023年現在、連続高架化事業が進められており、新駅舎がほぼ完成している。
  3. 2023年現在、連続高架化事業が進められており、新駅舎がほぼ完成している。
  4. 2022年以前はバーンスー分岐駅を名乗った。2023年以降も地上駅に限り、公式サイトなどで旧名で案内される場合がある。
  5. 前記2線は当初は標準軌間である1,435 mmで敷設されたがその後1,000 mm軌間に改軌された[3]。理由として、既にメーターゲージで営業していたマレー鉄道に合わせたという説と工事費を安くするためとする2つの説がある。柿崎説は後者寄りである[2]
  6. 1945年バンコク空襲によりラーマ6世橋英語版が損傷して1953年に修復されるまでの運休期間を除く。2023年1月ダイヤ改正以降は優等列車のフアランポーン乗り入れを終了(後述)。
  7. この時点での長距離列車はすべて従来同様に地上線経由のまま。
  8. 当初、2021年1月完成予定だった土木工事期間が2022年9月まで延長されたことにより信号施設関連を含めての最終的な完成は2023年1月と見込まれたが[10]、2022年4月時点では更に伸びて2023年下期完成と報道された[11]
  9. ただし当時は軍用輸送が目的であったことに注意。当支線の大部分が属するタイ中部カンチャナブリー県タイ西部英語版タイ語版とみなす場合があることによる命名とも解釈できる。
  10. 2023年現在、レッドラインの運営はSRTETに委託され将来的に民間企業へ引き継ぎが予定されているが、線路施設はSRTが保有する。
  11. 12.90 kmとする説もあるが、地図を参照する限りは誤りである。実際の12.90 km地点はラーマ6世橋梁の近傍であり、2 km以上離れている。
  12. ただし報道によれば、建設承認を受けたシリラート駅のホームは2面2線のみであり、ターミナル駅としてはごく小規模なものとなる[15]
  13. ナムトック以北の廃線跡についても再建案が存在するが、一部がワチラロンコンダム英語版の湖底に沈み、またミャンマー領内の沿線は民族独立運動の拠点として政情不安定な地域でもあり再開は困難とみられる。
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脚注

参考文献

関連項目

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