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複々線

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複々線
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複々線(ふくふくせん、: quadruple track)とは、2つの複線軌道、すなわち4本の軌道が敷設された線路を指す[1]。言い換えると四線(しせん)。

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アメリカ北東回廊ペンシルベニア州の複々線区間
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京阪電気鉄道京阪本線の複々線区間
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東日本旅客鉄道(JR東日本)東北本線の三複線区間(蕨駅)。
写真では計7本の線路が写っているが、左から2番目の線路は未使用の側線

同様に、6本が敷かれている3組の複線は三複線、8本が敷かれている4組の複線は四複線と呼ぶ。

概要

複線線路が隣接して敷設された状態。一般的にそれぞれの複線は列車の種別や系統によって使い分けられる。一部には立体的に複線を並べる場合もある[注 1]

緩急分離運転を行っている場合、速達列車が走行する線路を急行線または快速線、普通列車が走行する線路を緩行線と呼ぶ。JR線では歴史的な経緯から、それぞれを電車線・列車線と呼ぶ場合がある。

複々線は、複線と比較して停車場以外でも列車の追い越しが可能である。そのため、様々な速度帯、種別の列車を運行している路線では、適切に線路を使い分けることで、待避列車の待ち合わせ時間をなくすなど、効率的なダイヤが設定できる。

異なる事業者の複線が並行している場合や、同一事業者の複線路線が並行する区間でも、完全に別系統として運行管理されている場合は、複々線として扱われることは少ない[注 2]

日本一長い複々線区間は、西日本旅客鉄道(JR西日本)の東海道本線草津駅 - 山陽本線西明石駅間 (120.9 km) 。一方、JR四国はJR6社で唯一、複々線が存在しない。日本の私鉄で最も長い複々線区間は、東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)の北千住駅 - 北越谷駅間 (18.9 km) 。

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配線による分類

要約
視点

複々線の配線は、方向別複々線線路別複々線(系統別複々線)の2種類に大別できる。方向別複々線は、4線を上・上・下・下のように2線ずつ方向をそろえて敷設。線路別複々線はA線上・A線下・B線上・B線下のように路線別に並べて敷設。

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方向別複々線を並走する列車(東急東横線東急目黒線

方向別複々線

同じ方向への列車が隣り合って走行するため、間に島式ホームを設置することで、同方向の列車の対面乗り換えが可能。緩急分離運転を行っていれば、速達列車と緩行列車の連絡は容易。旅客にとっては便利な構造といえるが、後述のとおり事業者側にとっては不都合な側面もある。

  • 複線区間を途中から方向別複々線にする場合は問題にならないが、二方から複線線路が合流してできる複々線区間を線路別複々線とするには、合流部分で少なくとも内側の2線は互いに交差させる必要がある。
    • この交差部を立体交差とする場合は建設費用が大きくなり、建設自体困難な場合もあり、平面交差とする場合はダイヤ構成に制約が生じる。
  • また、複々線区間で外側の線路を走行する列車を折り返す場合、内側の2線を横断する必要があるため、運転上の制約が生じる。
    • これを完全に回避するためには引上げ線の立体交差化が求められる(例:萱島駅)が、それが不可能な条件下であっても、内側の線路の間に引上げ線を設ける(例:京都駅)ことで制約を軽減できる場合もある。
  • 上記とは反対に、内側の線路を走行する列車の車両基地が線路外に存在する場合にも外側の2線を横断する必要がある。(例:東武伊勢崎線竹ノ塚駅高架化前の東京地下鉄千住検車区竹ノ塚分室
  • 可動式のホームドアが設置されていない駅において、急行線を走行する列車に通過列車と停車列車が混在する場合、急行線に面するホームを完全に壁や柵で塞ぐことはできないため、混雑時は安全上の懸念が生じる。ただし、一部の時間帯だけ急行線のホームが使用され、大半の時間帯が全列車通過となる路線において、当該急行ホームにロープを張って安全性を高めているケースもある(JR京都線JR神戸線など)。

1970年代以降にラッシュ緩和を目的として整備された複々線は方向別が多い。

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線路別複々線を並走する列車(JR東日本中央本線

線路別複々線

隣り合う線路を走る列車は上下逆となるため、同方向へ向かう列車の乗り換えでは別のホームへ移動する必要がある。緩急分離運転であっても、列車同士の連絡は悪くなり、旅客にとっては不便な構造といえるが、後述のとおり事業者側にとっては好都合な側面もある。

  • 2つの複線路線を合流させて線路別複々線区間とする場合、交差は生じない。
    • 反対に複線区間を途中から線路別複々線区間とする場合は交差が生じる。

日本ではJR東日本の首都圏エリアで多い方式で、国鉄時代の通勤五方面作戦で線路別複々線化の方式がとられたことによる。これは工事のしやすさや、駅ホームのスペースを重視したためである[3]。利用客の反発をうけ、急行線でも各駅停車運転を行った例もある[4]

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運転方法による分類

複々線の分類は、緩急分離運転系統分離運転の2つの分類。またこれらを併せ持つ場合もある。

緩急分離運転

運転系統を各駅停車(緩行)と速達列車(急行)に分離する方法。これにより、速達列車の速度が向上し、緩行列車の待避も解消できる。

長距離列車を運行する列車線と短距離電車を運行する電車線の分離は、本質的には系統分離運転に属するが、分離した結果として実質的に緩急分離になることが多い。

系統分離運転

列車を運転系統で分離する方法。旅客列車貨物列車を分離する貨客分離(かきゃくぶんり)のほか、京浜急行電鉄京成電鉄名古屋鉄道のように支線が合流する駅と隣の拠点駅までの1駅間のみ複々線化する例もある。

三線

要約
視点

複線に線路を1線追加したものを、三線(さんせん)、複単線(ふくたんせん)または1.5複線[1]という。

別路線が合流する場合

別路線に直通する線路を敷設する場合に、駅と分岐点の間に敷かれる。なお、引き上げ線などをこれに充当することもある。

ターミナル駅と分岐駅の間で、複線の線路と単線の線路が併走する例

緩急分離運転の場合

上りまたは下りの一方のみ2線を使用させ緩急分離している場合と、列車種別ごとに複線と単線を割り当てる場合がある。後者の場合、単線を割り当てられた種別は途中駅で列車交換を行う場合もある。さらに三線は、輸送需要が時間帯によって偏りが出るケース、すなわち、都市中心部と郊外を結ぶ路線で、朝に都心方向、夕に郊外方向への輸送需要が増大するときなどに、輸送力の増強手段、途中駅を通過する列車の速度向上手段などとして活用できる可能性をもっている[1]。複々線に比べ、必要とする用地が4分の3であることが最大の利点であるが、双方向に運行可能とするための信号・保安設備の扱いの難しさや車両運用の問題などから、日本では以下の例のみに限られる。

上りまたは下りの一方のみ2線を使用させ緩急分離している例
列車本数の多い種別に複線、少ない種別に単線を割り当てる例
  • スイス連邦鉄道ジュネーブ - コペ(fr:Coppet)間(列車本数の多い急行線を複線、列車本数の少ない緩行線を単線とし、緩行線列車は途中駅で列車交換を行う[5][6]。)
  • スイス連邦鉄道:コペ - フネ(fr:Founex)間(一部の貨物列車は単線を走らせ、速度の高い旅客列車に追い抜かれる[7]。)

勾配緩和のため

JR東海道本線南荒尾信号場 - 関ケ原駅間は、関ヶ原越えの勾配緩和のため垂井駅を経由しない下り線(新垂井線)と、垂井駅に下り普通列車を停車させるための単線の垂井線が並行し、合計で三線となっている。なお、新垂井線は特急列車と貨物列車・回送列車のみが、垂井線は普通列車のみが走行するため、結果的には前記の緩急分離運転にも該当する。

JR湖西線山科駅 - 長等山トンネル内は、通常の複線に加え、貨物列車の牽引(けんいん)定数確保用の下り貨物線が併走している。貨物列車の他に特急列車もこの貨物線を走行し、ダイヤが乱れた場合は、貨物線を走行しない新快速や普通列車が琵琶湖線との分岐点から長等山トンネル入り口までの高架区間を使って特急を待避することがある(この区間で待避することで、後続の琵琶湖線列車に影響を及ぼさない)。

その他

西武池袋線秋津駅(正確には同駅の数百m先) - 所沢駅間では通常の複線に加え、東日本旅客鉄道(JR東日本)武蔵野線との連絡線を併走させ、三線としている。新車の甲種輸送や譲渡車の引渡しの時に使用され、現在は営業列車がこの連絡線を走行しない。

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五線

複々線に1線追加した五線の区間もある。

日本における複々線の例

要約
視点

どの範囲までを複々線とするかは、明確な定義はない。とりわけ複々線とするか別線扱いとするかは、鉄道事業者により、また時代により統一されていない[2]。一例として『鉄道要覧』において、民営鉄道の摘要欄に複々線区間が記載されているが、形態上は複々線でも別線扱いとして記載されていない場合も多いうえ、JR路線はほとんど記載されていない[注 3]。そのため、解釈によって下記以外の事例もある。

現存事例

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廃止事例

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日本における三線の例

現存事例

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廃止事例

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かつて日本で構想された複々線

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日本以外の複々線の例

要約
視点

アメリカ

台湾

韓国

韓国鉄道公社

香港

  • 香港鉄路有限公司東涌線および機場快線九龍 - 茘景手前の区間は方向別複々線、茘景駅構内 - 青茘橋手前(藍巴勒海峡を渡る橋梁)までは線路別複々線、青茘橋 - 青衣間は上下二層式方向別複々線(上層は上り東涌・博覧館方面、下層は下り香港方面)。

以下の路線は基本的に方向別複々線だが、対面乗り換えを考慮して駅間で線路配置が変わる。

中国

タイ

インド

イタリア

脚注

関連項目

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