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難病の患者に対する医療等に関する法律
日本の法律 ウィキペディアから
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難病の患者に対する医療等に関する法律(なんびょうのかんじゃにたいするいりょうとうにかんするほうりつ、平成26年5月30日法律第50号)は、難病対策の新しい法制度に関する法律である。難病法(なんびょうほう)とも称される。
![]() | この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
法案審議の際に附帯決議が採択された[1]。日本において2014年(平成26年)5月23日に成立した、2015年(平成27年)1月1日より施行された。
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概説
要約
視点
趣旨として、以下のように述べられる[4]。
持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律に基づく措置として、難病の患者に対する医療費助成に関して、法定化によりその費用に消費税の収入を充てることができるようにするなど、公平かつ安定的な制度を確立するほか、基本方針の策定、調査及び研究の推進、療養生活環境整備事業の実施等の措置を講ずる。
医療費助成の対象疾病の拡大として、対象疾病を従来の56疾病から、306疾病へと増やす。これにともない、受給者数は、約78万人(平成23年度)から、約150万人(平成27年度)(試算)へと増える。医療費助成の予算規模は、平成23年度(実績)1190億円から、平成27年度(予算)2221億円へと増大する。[5]その一方で従来からの特定疾患(特定疾患治療研究事業対象)であった患者(難病療養継続者)にとってはおおむね助成の減額となるため、3年間の経過措置により影響を緩和しようとしている[6]。
自己負担上限額と、患者負担割合2割のどちらが優先かについては、小さい方が窓口での負担額となる[7]。難病法による医療費助成のことを特定医療費と称する。特定医療費の支給に当たっては医療保険制度、介護保険制度による給付を優先する(保険優先制度)[7]。

指定医の制度が開始された。新規に難病法のための診断書を作成できるのは難病指定医のみとなった。更新のための診断書を作成できるのは難病指定医と協力難病指定医である。ともに研修を必要とし、5年ごとの更新制である。[8]指定医療機関の制度が開始された。病院、診療所、薬局などの申請に基いて、都道府県知事が、難病法による医療を受けられる医療機関の指定を行う方式となった。[9]
難病法のための診断書を、申請書とともに都道府県の窓口に提出することによって、医療受給者証が発行され、受給が開始される[2]。ただし、注意すべき点として、軽症者については原則として対象外であり[10]、軽症の定義は各疾患により異なる[11]。これに対して、高額な医療を継続することが必要な軽症者の取扱いが定められている[12]。
医療費助成制度の見直しで、約15万人の軽症患者が受給対象から外れたことにより[13]、対象外になった患者の半年の平均通院回数が5.3回から3.6回に減ったことが厚生労働省研究班の調査で判明した[14]。
障害福祉サービスについては、本法ではなく障害者総合支援法が適用される。対象となる難病が151疾患へと拡大された[15]。
小児に対しては、本法ではなく児童福祉法が適用される[16]。その制度は、小児慢性特定疾病医療費助成制度[17][3]と称される。自己負担上限額として成人の半分とし、入院時の食費が原則として半分助成される。また、小児期に亡くなるため成人例がこれまで存在しなかった疾患が多く、704疾患が対象である。このため小児慢性特定疾病医療費助成制度で助成を受けられた者が18歳になった際に、難病医療費助成制度で補助が受けられない問題が発生することから「小慢のトランジション」と呼ばれている[18]。
また、各疾患の基準を満たし、審査が通れば、障害年金が受給される。
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指定難病
要約
視点
難病法の対象疾患として指定を受けた難病のことを指定難病と呼んで、従来の特定疾患56疾病と区別されている。
第1次実施分は平成27年1月1日から、第2次実施分は平成27年7月1日から、第3次実施分は平成29年4月1日から、第4次実施分は平成30年4月1日から、第5次実施分は令和元年7月1日から、第6次実施分は令和3年11月1日から、第7次実施分は令和6年4月1日から施行された。これにより従来の特定疾患を含めて341疾患となった。
第1次実施分(平成27年1月1日施行)
各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[19]。
第2次実施分(平成27年7月1日施行)
各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[21]。
第3次実施分(平成29年4月1日施行)
各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[24]。
第4次実施分(平成30年4月1日施行)
各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[27]。
第5次実施分(令和元年7月1日施行)
各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている[29]。
第6次実施分(令和3年11月1日施行)
各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている。
第7次実施分(令和6年4月1日施行)
各疾患の診断基準等および申請用個人票については厚生労働省のサイトに掲載されている。
選定方法と課題
難病の定義として、次の4項目が挙げられている。[32]
- 原因不明(発病の機構が明らかでない)
- 治療方法が確立していない
- 希少な疾病
- その病気によって、長い間療養を必要とすることとなるもの
このうち、さらに2項目で選定されて、指定難病となる。
- 患者数が日本国内で一定の人数(人口の0.1%)に達しないこと
- 客観的な診断基準(又はそれに準ずるもの)が確立していること
患者数の条件については、潰瘍性大腸炎などを指定の範囲に留めるため、後に0.15%未満の疾患についても便宜上対象とすることが示された[33][34]。
選定は第三者機関の形をとった、厚生科学審議会 (疾病対策部会指定難病検討委員会)により行われる。[35]
しかしながらこうした選定方法について、課題も指摘されている[36][37]。一つには、希少性の条件と、病名によって、助成の基準を区切ることが不適切ではないかという指摘である[38]。
2015年度中に、もう一度指定難病検討委員会が開かれることがアナウンスされている[39]。
目立った批判として日本弁護士連合会より、「難病者の人権保障の確立を求める意見書」が[40]、2015年7月28日付けで、内閣総理大臣、文部科学大臣及び厚生労働大臣宛てに提出された[41]。 その中で「難病者」の概念について、障害者権利条約を受けた、改正障害者基本法に即した考え方を採用することなどが、強く要望された。
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難病と希少疾患
本法における難病の定義とは、指定難病の条件を除けば、先述の4つの条件、原因不明(発病の機構が明らかでない)、治療方法が確立していない、希少な疾病、その病気によって長い間療養を必要とすることとなるもの、を満たす疾患である[32]。ここで希少な疾病とは、患者数の少ない疾患を意味し、具体的に条件を課すと、欧米で希少疾患と呼んでいる概念である。希少疾患は、人口比として約0.06%(米国[42])、0.05%(EU[43])未満の疾患である。希少疾患は、欧米の行政上は主として、人口比が小さく薬剤開発が進まない疾患への便宜、いわゆるオーファン・ドラッグの認定の際に関係している。日本で欧米の希少疾患に近い概念として、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)で定められる希少疾病用医薬品が挙げられ、人口比として約0.04%未満の疾患に対して便宜が図られている。
本法における指定難病の条件として原則0.1%未満が用いられていることで、指定難病の希少性の条件は、欧米の希少疾患、また、日本の薬事法で定められる希少疾病用医薬品の条件よりも広いが、希少性以外の条件を加味すると難病の範囲は狭くなる。したがって、本法における難病と希少疾患は、法的解釈として、厳密に言うと異なる概念である。しかし、実際問題として、広義に解釈すれば、日本では伝統的に難病と呼ばれてきたものが、欧米で伝統的に希少疾患と呼ばれてきたものに近い。
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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