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最高裁判所事務総局
日本の最高裁判所において、その庶務を掌らせるために置かれる附属機関 ウィキペディアから
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最高裁判所事務総局(さいこうさいばんしょじむそうきょく)は、日本の最高裁判所において、その庶務を掌らせるために置かれる機関[1]。法律上は最高裁判所長官の監督の下、最高裁判所事務総長によって掌理される[2]。2016年(平成28年)度の定員は事務総長を含み644名である。
概要
要約
視点
裁判所法には「最高裁判所の庶務を行う」とのみ記され、その具体的に行うべき事務は明示されていない。裁判官と裁判所職員に関わる「司法行政」を行うことを目的とし、最高裁判所規則・最高裁判所規程に基づいて複数の局・課や様々な役職が置かれると共に、各課の所掌事務が定められており、法律上は最高裁判所の裁判官会議の議に基づいて行われる司法行政事務に携わると定義されている。しかし、最高裁判所も含めて日本の裁判官は非常に多忙であり、実際の裁判官たちは裁判官会議に時間をかける余裕がないため、裁判官会議は最高裁判所事務総局が決めた事を追認するだけの形骸化した会議に過ぎず、実質的には最高裁判所事務総局が日本の司法行政権の全てを掌握する形になっている[3][4][5]。
通常、最高裁判所事務総局の主な機能は大きく以下の6つに分類できるものと解釈されている[6]。
- 最高裁判所の規則・規程の作成
- 法律・政令の制定に関する法務省との交渉・調整
- 裁判官の人事に関する機能
- 裁判所の予算に関する機能
- 全国の高等裁判所長官・地方および家庭裁判所の所長を招集し、最高裁判所事務総局からの各種通達や協議を行う『裁判官会同・協議会』の実施
- 海外の裁判制度に関する調査研究、各級裁判所における判決・検察や弁護人の主張・弁護士界の動向などの分析や、それに関係する資料の収集と整理
これらの機能は、大日本帝国憲法の時代に日本国内の全ての裁判所と裁判官を支配・統制していた司法省から受け継がれたものである。
敗戦後の1946年(昭和21年)、司法省に「臨時司法制度改正審議会」が設置され、司法省存続の是非、最高裁判所の構成、弁護士制度の関する議論が始まり、司法官僚を中心に、司法省の解体・廃止を狙う連合国軍最高司令官総司令部 (GHQ) との折衝が行われていた。同審議会は同年7月12日に裁判所法、検察庁法、最高裁判所裁判官国民審査法の要綱をまとめたが、裁判官の人事権や予算編成権などの、全国の裁判所を統制する権限を巡って司法省(検事)と大審院(判事)との間で論争となった。司法省側は戦前と同様に人事・予算ともに司法大臣が権限を持つべきと主張したのに対して、大審院側は人事・予算に関する権限があってこその司法権の独立であると主張し、両者の対立が激化した[7]。
戦前、司法省では「検尊判卑主義」が公然と囁かれており、検事局・司法省・裁判所の要職を、検事がほぼ独占していた。そのため、判事は検事よりも格下の扱いだった[8]。こういった事情から、大審院には、司法省に対する強烈な拒否反応が生じていた[7]。
最終的にGHQは最高裁判所が人事権と予算編成権を持つべきだと決定を下し、1947年(昭和22年)5月3日、裁判所法と検察庁法が日本国憲法施行とともに施行され、新裁判制度がスタートした[7]。
最高裁判所事務総局は、日本国憲法施行後に、GHQによる司法改革(司法省の解体・廃止)の一環として新設された最高裁判所に移籍した旧司法官僚の判事[注釈 1]によって設立された機関であり、事務総局の組織自体も司法省を参考に編成された。このため、最高裁判所事務総局は「司法省の戦後の再編成版」とも呼ばれ[9]、現在も司法行政の中枢機関として、日本国内の全ての裁判官の職務に多大な影響を及ぼしている。
なお、旧司法官僚のうち検事は法務庁(現・法務省)と検察庁を設立し、最高裁判所事務総局と法務省は司法省の廃止後も判検交流と呼ばれる人事交流を行うなど[注釈 2]、付かず離れずの関係を維持し続けながら現在に至っている。
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沿革
- 1947年(昭和22年)12月1日 - 日本国憲法施行後に裁判所法及び最高裁判所事務局規則に基づき、最高裁判所事務局を設立。事務局には事務総長の外、裁判所事務官(1級~3級)と裁判所技官(2級~3級)が任官した[注釈 3]。司法官僚のうち、判事であった者が最高裁判所の内部へ多数移籍し、大日本帝国憲法の時代に司法省が有していた司法行政権の全てを継承する。
- 1948年(昭和23年) - 裁判所法改正により、最高裁判所事務局から最高裁判所事務総局へと改称した。
- 1952年(昭和27年) - 最高裁判所事務総局規則を改正し、員数や任官資格の規定を「最高裁判所規程」に移す[注釈 4]。
- 2001年(平成13年) - 司法行政文書の情報公開制度の実施に伴い、最高裁判所の保有する司法行政文書の開示等に関する事務の取扱要綱を施行(2006年〈平成18年〉改正)[注釈 5]。
組織
- 事務総長(氏本厚司)
- 事務次長(非常置ポスト)
- 審議官(染谷武宣)
- 家庭審議官(工藤眞仁)
- 秘書課(板津正道)
- 広報課(板津正道)
- 情報政策課(杜下弘記)
- 総務局(小野寺真也) - 第一課、第二課、第三課
- 人事局(徳岡治) - 任用課、能率課、調査課、公平課、職員管理官
- 経理局(染谷武宣) - 総務課、主計課、営繕課、用度課、監査課、管理課、厚生管理官
- 民事局(福田千恵子) - 第一課、第二課、第三課
- 行政局(福田千恵子) - 第一課、第二課、第三課
- 刑事局(吉崎佳弥) - 第一課、第二課、第三課
- 家庭局(馬渡直史) - 第一課、第二課、第三課
- 事務次長(非常置ポスト)
最高裁判所事務総局の局長、課長等は本来は裁判所事務官または裁判所技官のポストである[11]が、実際には家庭審議官[注釈 6]や一部の課長を除き、ほとんどのポストにはキャリア裁判官が充てられている[注釈 7]。最高裁判所事務総局の要職を経験した裁判官の多くが後に最高裁判所裁判官(最高裁判所長官を含む)や高等裁判所長官へと昇進している(詳細は下記「歴代在職者一覧」を参照)。
このように、最高裁判所事務総局は日本の司法行政の中枢機関であると同時に、最高裁判所裁判官や高等裁判所長官の候補生を育てる養成機関としての機能も有しており、特にキャリア裁判官出身の最高裁判所裁判官は原則として最高裁判所事務総局の勤務経験者の中から任命される事が慣例となっている[注釈 8]。このように最高裁判所裁判官の限られたポストを最高裁判所事務総局の勤務経験者たちが代々独占し続ける人事制度により、最高裁判所事務総局は日本国内の全ての裁判所の司法行政部門と裁判部門に対して強い権限と影響力を持っている。
歴代在職者一覧
事務総長
→詳細は「最高裁判所事務総長」を参照
経理局長
人事局長
総務局長
民事局長兼行政局長
刑事局長兼最高裁判所図書館長
秘書課長兼広報課長
家庭局長
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脚注
参考文献
関連項目
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