トップQs
タイムライン
チャット
視点

著作権法の判例 (アメリカ合衆国)

ウィキメディアの一覧記事 ウィキペディアから

著作権法の判例 (アメリカ合衆国)
Remove ads

アメリカ合衆国著作権法の判例(アメリカがっしゅうこくちょさくけんほうのはんれい)では、米国著作権法に関連した主要な判例をまとめる。2008年からの10年間を例にとると、米国内で年3000件前後と多くの著作権関連案件が連邦裁判所に新規提訴されていることから[注 1]、法学の専門家によって言及・解説されるなど、特筆性の認められる判例に絞って本項で取り上げる。米国著作権法には連邦法と州法が存在し、二重に権利が保護されているが[4]、両者の間で矛盾する場合は連邦法としての著作権法 (合衆国法典第17編に収録) が優先されることから[注 2]、以下では特記のない限りは連邦法について述べる。

Thumb
作家オスカー・ワイルドを撮影した写真の著作権侵害を巡る裁判。最高裁は1884年、この写真に著作物性を認めた[1]

なお、米国は著作権の各種国際条約に加盟しており[注 3]、これに従って 第104条 では、条約加盟国で発行された外国著作物に対しても米国著作権法によって保護を与えると定められている。したがって、国をまたいで流通する著作物についても、米国連邦裁判所の判決が実際に存在する。

Remove ads

判例の特徴

要約
視点

米国著作権法における司法判断の特徴として、フェアユース (fair use、公正利用) の法理が挙げられる[8]。一般的には、著作権者に無断で著作物を第三者が利用した場合、著作権侵害となる。しかし合衆国法典第17編 第107条 に基づき「批評、解説、ニュース報道、教育、研究または調査」などの利用シーンで[注 4]

  1. 「使用の目的・性質」(非営利の教育など)
  2. 「著作物の内容」
  3. 「量・質の両側面から著作物が利用された割合」
  4. 「利用によって著作物の市場価値にどの程度影響を及ぼすか」(市場代替性)

の4基準などを総合的に考慮して、著作権侵害に当たらないフェアユースであると判示されることがある。

第1基準については、原著作物を利用したいわゆるパロディなどの著作権侵害を巡って、被告側がフェアユースで抗弁することもある。これは第1基準で「変形的利用英語版」(transformative usetransformativeness) が認められているからである[9]

4基準のうち、第1基準の変形的利用、および第4基準の市場代替性の2点セットが他基準に優先して重視されているとの指摘がある。これは、元となった著作物とは異なる目的に変形されることで、元の著作物と市場で競合して経済的利益を損ねることなく併存できるためである。つまり、第1基準で営利活動だと認められても、変形度が高く第4基準に影響しなければ、フェアユース判定されることがある[10](例:「#キャンベル対アカフ・ローズ・ミュージック裁判」など)。

フェアユース以外では、著作権の保護対象物の定義を問う判例もある。その代表例が、特許権商標権などの産業財産権と、著作権とを線引きする「アイディア・表現二分論」である。産業財産権は、産業の発展のためのアイディア・思想を強い独占性で保護する。一方アイディアそのものではなく、その文化的で創作的な表現を対象に緩い排他性で保護するのが著作権である (例: 「#ベーカー対セルデン裁判」など)[11]。しかし実際には、アイディアと表現が一体化していて切り離せないケースもあり、表現に著作権の独占を認めるとその大元となるアイディアまで独占され、産業の発展が阻害されうる。このようなケースでは「マージ理論」で抗弁することもある[12] (例:「#モリシー対P&G裁判」、「#サイエントロジー対ラーマ裁判」など)。

判例の年代別に見ると、米国連邦著作権法にはいくつか転換期がある。

Remove ads

判例の読み方

要約
視点

判例の一部は判例集に掲載されることから、一般的には "Nichols v. Universal Pictures Corp., 45 F.2d 119 (2nd Cir. 1931)" のように表記される。これは1931年に第2巡回区控訴裁が「#ニコルズ対ユニバーサル・ピクチャーズ裁判」において下した判決であり、合衆国控訴審裁判所判例集 (Federal Reporter) の第2次シリーズの第45巻 119頁以降に掲載されていることを表す。これが連邦地方裁であれば、"F.2d" の代わりに合衆国地方裁判所判例集を意味する "F. Supp" (Federal Supplement) となる。最高裁まで上訴・審理されれば、合衆国判例集英語版を意味する "U.S." (United States Reports) または "S.Ct." (Supreme Court Reporter) になる[21]

Thumb
連邦地方裁と連邦控訴裁の管轄マップ

米国著作権法は連邦法である合衆国法典第17編 (17 U.S.C.) に収録されていることから、これに基づき司法判断を下すのは連邦裁判所の役目となる[22]。連邦裁判所とは具体的には以下で構成されている[23]

  • 一審の合衆国地方裁判所 (連邦地裁) -- 全米に94か所[23]
  • 二審の合衆国控訴裁判所 (連邦控訴裁) -- 全米に13か所 (11の巡回区を含む) あり、一審の訴訟を取り扱った連邦地裁の場所に応じて決まるが[23]、うち連邦区控訴裁判所に限っては特許権などを特別に扱うため、著作権のみの訴訟は担当しない[22]
  • 三審の合衆国最高裁判所 (連邦最高裁) -- 全米に1か所のみ[24]

特にメディア・エンターテイメント業界やIT業界が集積するカリフォルニア州 (C.D. Cal. とN.D. Cal.、および第9巡回区) とニューヨーク州 (S.D. N.Y. とE.D. N.Y.、および第2巡回区英語版) の訴訟件数が多い[2][3]。第9と第2巡回区の控訴裁判決は他の巡回区以上に注目されるものの、巡回区外での法的拘束力はなく、時として互いの巡回区で異なる判決が下されることもあることから、このような矛盾は連邦最高裁で解消されることとなる[25]

米国では上告された事案を受理して審議するか却下するか、連邦最高裁が事前に裁量で判断 (足切り) することができる。受理した案件は、移送令状英語版 (ラテン語: certiorari、サーシオレイライ) が発せられ、二審の連邦控訴裁から連邦最高裁に移送・審理される[26]。却下された場合は "Warner Brothers Pictures, Inc. v. Columbia Broadcasting Systems, Inc., 216 F.2d 945 (9th Cir. 1954), cert. denited, 348 U.S. 971" のように引用表記されることもある (文献によって異なる)。これは「#ワーナー・ブラザース・ピクチャーズ対CBS裁判」の移送が最高裁で事前に却下され (cert. denied)、二審の第9巡回区控訴裁の判決で確定したことを意味する[27]。なお、どの案件を最高裁が受理するかは「重要な連邦問題」か否かで判断され、時にはこの「重要な」の定義に政治的な判断が含まれることもあると言われる[28]:59

米国著作権法には州法も一部存在していることから、これらは州裁判所の管轄となるが、特筆性の観点から州裁判所の判例が引用されることは少ない[注 6][注 7]

裁判所名に "D" が表記される場合、一審の連邦地裁 (District Court) の判例であることを意味している。Dの後ろには州の略称がつく (例: マサチューセッツ州連邦地裁であれば "D. Mass")。

"Cir" は二審の連邦控訴裁 (United States Courts of Appeals) の意味で、第1-第11の巡回区 (Circuit) を指す (例: ニューヨーク州などを管轄する第2巡回区控訴裁であれば "2nd Cir")[24]。なお、建国当初は三審の連邦最高裁判所判事が二審の連邦巡回裁判所 (Circuit Court) にも参加する形をとっていたが、1891年に二審が連邦控訴巡回裁判所 (Circuit Court of Appeals) に改組されたタイミングで、専任の裁判官のみで二審が構成されるようになった。さらに1948年、二審を第XX巡回区連邦裁判所 (Court of Appeals for the XX Circuit) に改称している[32]

判例名は一審では一般的に「原告名 (著作権者) v. 被告名」で記されるが、被告が二審や三審に上訴した場合は、原告名と被告名の順が逆転して表記されるため注意が必要である[注 8]

過去の改正により著作権法の条文体系が大きく変更しているため、判例の年代によりその判例が引用する条文が指し示す内容が異なる点にも注意が必要である。たとえば1947年改正法以前の第25条は、1947年改正法の第101条であり、これは1976年改正法で第412および第501 – 第504条に継承されている[35]。各改正による条文対比表は 政府公式サイト を参照のこと。

Remove ads

連邦最高裁判所の判例

要約
視点

最高裁で係争中の案件は「#連邦下級裁判所の判例」を参照。

※表中の「判例の通称」の英語表記をクリックすると、英語版ウィキペディアの個別判例ページに遷移する。また判例集番号末尾をクリックすると、JustiaFindLawなど判例を転載した外部サイトに遷移する。デスクトップビューで閲覧の場合、表の項目名横をクリックすると、昇順または降順で並び替えることができる (モバイルビューやモバイルアプリでは並び替え機能なし)。判例の通称は英語名アルファベット順で並び替えされる。

さらに見る 判例の通称, 判決年 (判例集番号) ...
Remove ads

連邦下級裁判所の判例

要約
視点

下級裁判所の判例であっても、後の類似訴訟で引用参照されることが多いなど、法学の研究機関や専門家が特筆性があると言及した判例に絞り、一覧化している。

フェアユース関連

さらに見る 判例の通称, 判決年 ...

フェアユース関連以外

さらに見る 判例の通称, 判決年 ...
Remove ads

州裁判所の判例

過去には未発行の著作物は主に州法、発行後の著作物は連邦法で保護される二元的な法体系であったが、1976年制定・1978年施行の著作権法改正英語版によって未発行の著作物も連邦著作権法で保護されることとなったことから、1978年以降は州法のコモンロー・コピーライト (判例法) による保護を求める機会は減少している[279]

さらに見る 判例の通称, 判決年 ...
Remove ads

関連画像・音声・動画

上述の判例に関連する画像、音声および動画を紹介する。

概要 映像外部リンク ...
Remove ads

脚注

関連項目

外部リンク

Loading related searches...

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.

Remove ads