番 |
歌 |
場所 |
1 |
補だらくや名立の浦ときくときは 潮の音も御法なりけり |
名立。岩屋堂(西頸城郡名立町) |
2 |
蓮す葉𛂜(の)にごりに𛁈(し)まぬ心とて まことをてらす摩尼𛂜(の)しらたま |
十日市。摩尼王寺(中頸城郡斐太村十日市) |
3 |
みなかみをたづねのぼりて大清水 つきぬめぐみのな𛀙(か)れとぞおもふ |
大清水。大泉寺(中頸城郡米山村大清水) |
4 |
鯨よる海のほとりにあとたれて ふかき誓ひのあとぞ知らるゝ |
鯨波。妙智寺(刈羽郡鯨波村) |
5 |
絶えせじなこゝも名におふ普陀落の みなみの山におつる瀧つ瀬 |
瀧谷。寳藏院(刈羽郡刈羽村瀧谷) |
6 |
玉崎とたづね〳〵(たづね)てきて見れば われが心のうちにこそあれ |
玉崎山。常楽寺(刈羽郡二田村大字井ノ岡) |
7 |
むらさき𛂜(の)雲もたなびくふぢばしに かけてぞたのむ二世の願ひを |
藤橋。觀音堂(刈羽郡高田村字藤橋) |
8 |
いつとなく大悲の光りかゞやけば こゝもうへ見ぬわしの尾の寺 |
宮ノ窪。不動院(刈羽郡上條村宮ノ窪) |
9 |
としごとに雪は降れども黒姫𛂜(の) 山のはそでのいろはかはらず |
黒姫山。觀音堂(刈羽郡高柳村岡ノ町坪野) |
10 |
枯木にも花さくべしときくからに 𛀸(こ)ゝろある身𛂜(の)頼もしきか𛂁(な) |
伊勢平治。長徳寺(中魚沼郡千手町村伊勢平治) |
11 |
世をすくふちかひもいくせ長崎𛂜(の) 大悲のめぐみつきせざりけり |
長崎村。大福寺(南魚沼郡上田村大字長崎) |
12 |
君かへる山𛂜(の)こなたの思川 ふ𛀙(か)き誓ひをわたりてぞ𛁈(し)る |
思川。天昌寺(南魚沼郡塩沢町思川) |
13 |
はる〴〵(ばる)とぐせいの寺に来て見れば のりのみ舟に乘るこゝちする |
田川。弘誓寺(北魚沼郡堀之内町字田川) |
14 |
風かほる池津の寺に来てみれば 御手𛂜(の)はちすの花もさきけり |
池津。眞福寺(三島郡片貝村大字池津) |
15 |
繰𛀙(か)へしたのみ賴めば玉𛂜(の)緒の ち𛀙(か)ひの糸も𛂁(な)かをかのてら |
長岡。千藏院(長岡市千手町) |
16 |
椿澤八千代を𛀙(か)けていのるから 心の花もさ𛀙(か)りひさしき |
椿澤。椿澤寺(古志郡北谷村大字椿澤) |
17 |
たゞたのめたのむ心𛂜(の)一すぢに い𛂙(の)らばやすくいたる彼のきし |
小栗山。不動院(南魚沼郡新潟村字小栗山) |
18 |
たらちね𛂜(の)ねだちの寺ときくからは 𛀸(こ)𛂙(の)行くすゑもみすてたまはじ |
上岩井。根立寺(三島郡脇野町字上岩井) |
19 |
爰もまた八重垣つくる出雲崎 大慈大悲のかげをとゞめて |
尼瀬。光照寺(三島郡出雲崎町字尼瀬) |
20 |
𛀸(こ)し𛂜(の)浦波のよるひる夜をてらす ほとけの誓ひたのまぬは𛂁(な)し |
寺泊。照明寺(三島郡寺泊町) |
21 |
彼のきし𛂌(に)渡部の舟の渡しもり ふ𛀙(か)きめぐみをさして賴まむ |
渡部。吉田寺(西蒲原郡國上村字渡部) |
22 |
くがみ山生死の海をよそに見て のぼればすゞしごくらく𛂜(の)風 |
國上。國上寺(西蒲原郡國上村) |
23 |
春さめのめぐみにもゆるこのめ澤 たれもあまねきち𛀙(か)ひたのまん |
彌彦村。觀音寺(西蒲原郡彌彦村字觀音寺) |
24 |
平等の利益にもれぬしるしをば 𛀬(く)む人ぞ知るひらさはの水 |
平澤。景清寺(西蒲原郡峯岡村字平澤) |
25 |
参りつゝさとりの花もひらくれば ここもまことのみやこなるらん |
新潟。眞城院(新潟市西堀道八番町) |
26 |
もろこしの人もたづねてきのと寺 いまたたえせぬ法のともしび |
乙村。乙寳寺(北蒲原郡乙村大字乙) |
27 |
ありがたやまよひのやみを照すとて 今このしやばにありあけ𛂜(の)月 |
有明。光浄寺(岩船郡神納村字有明) |
28 |
いはゐ堂ふかきめぐみを頼ますば 浅きつみすらの𛀙゛(が)れさらまし |
五十公野。白蓮寺(北蒲原郡五十八野村)
(注:八は原文の誤字。正しくは五十公野村) |
29 |
くもきり𛂜(の)越路のはてまでも たづぬるのり𛂜(の)みちはありける |
聖籠。寳積院(北蒲原郡聖籠村諏訪山) |
30 |
いのるから今は残らず身のつみを あさひのさとの霜にたとへて |
朝日。普談寺(中蒲原郡金津村朝日) |
31 |
ひとむら𛂜(の)松にやどれるひ𛂁(な)つるも ともにみのりの聲たてつべし |
村松。正圓寺(中蒲原郡村松町) |
32 |
なむ大悲あまねきかど𛂜(の)廣ければ あらゆるつみもさはらざらまし |
三條。寳塔院(三條市) |
33 |
降りつもる氷もとけてい𛀙(か)らし𛂙(の)清きなかれにやとる月𛀙(か)げ |
院内。最明寺(南蒲原郡森町村大字院内) |
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苦もらくもたゞ一ときのかりの世ぞ ながきみらいのよしあしを知れ |
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山のなも残れる雪のしろたへに 月すみわたるい𛀙(か)らしの川 |
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世をてらすほとけの誓ひありければ まだともしびは消えずありけり |
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今まではおやとたのみしおひづるを ぬぎてをさむるゐんないのてら |
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下正中 (1935)より引用。括弧内の仮名書きは新潟県郷土叢書編集委員会 (1977, pp. 123–128)による文字起こしを参考。 |