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1983年公開の日本映画 ウィキペディアから
『うる星やつら オンリー・ユー』(うるせいやつら オンリー・ユー)は、1983年2月11日より東宝系で公開された、日本の長編アニメーション映画[1][注 2]。高橋留美子原作のテレビアニメ『うる星やつら』(1981年版)の劇場版アニメシリーズ第1作である。
『うる星やつら』劇場版アニメシリーズの1作目で、アニメーション監督・押井守の実質上の劇場版アニメ初監督作品である。オリジナルストーリーの作品であり、原作者の高橋留美子からは絶賛されたが、押井はこの作品を「完全な失敗作・大きいテレビ」と後に語っている。
公開対談で押井は「本来この作品は別の監督が就任して作業をしていたが、途中で勝手に降板したため、結局自分がやる羽目になった」ということを述べている。押井が参加した時点での制作状況は、原作者から示されたオリジナルキャラクター「エル」のイラストと、メカデザインが数点と完成していた脚本のみで、それ以外は全く進行しておらず、期限は残り5ヶ月という最悪の状態でのスタートであった[注 3]。さらに押井は脚本に不満を抱き、内容を改変したものをそのまま絵コンテに切っていった[注 4]。プロデューサーや脚本家の金春智子からクレームが付いたが、すでに期限が迫っており、結局押井の修正したストーリーがそのまま採用された。
パロディが多く、ダスティン・ホフマン主演の映画『卒業』をイメージしたシーンは有名。
公開時、併映作品との関係から上映時間を89分と短くすることとなり、これにより一部のシーンがカットされた[注 5]。後にファンの声に応え、カットされたシーンを加えて104分に再編集した『うる星やつら オンリーユー(ノーカット版)』が、『うる星やつら』の公式ファンクラブのイベント内で公開された。だが、このノーカット版を『プロデューサーズ・カット』と揶揄する押井は「やっぱり長過ぎた」と後に語っている。
ノーカット版でも使用されなかった完成フィルムも多々存在する。その中でも一番尺が長いものは星間タクシー内でのメガネ達の宴会シーンで[注 6]、その他にも本編中盤まで細かい未使用カットがあり、それらについては公開当時発売されたフィルムコミック上巻に台詞入りで収録されている。
音楽を担当したのは、テレビアニメの製作にも参加した安西史孝で、当時1000万円以上と高価だったシンセサイザー『フェアライトCMI』を用いBGMを演奏、独特な音色で作品の世界を表現している。また、当時は珍しかったオーケストラル・ヒットを使用した[注 7]。他にも、原作者・高橋留美子の叫び声をサンプリング・加工し、BGMとして使用するなど、実験的な試みを多く行っていることも特色である。
同時上映作品は、『ションベン・ライダー』(監督 - 相米慎二、主演 - 河合美智子)である。
影踏み遊びをするシルエットの少年と少女。影踏みに勝ったと主張する少年は、少女から11年後に結婚しようと告げられる。そして少女は宇宙へと去っていった。
ある日、諸星あたるのクラスメイトやラムの友人達に、あたるとエルという女との結婚式の招待状が次々と届けられた。あたるには「エル」という宇宙人の婚約者が既に存在しているというのだ。あたるはラム親衛隊のメガネ達から拷問され、三宅しのぶからは凄まれ、私設軍隊を引き連れた面堂終太郎には「たたっ斬る」と息巻かれ、ついにはラムの電撃を受けて問い詰められるが、あたるにはそんな記憶は全くない。しかしエルからの使い・ババラが現われ、エルが美人であると聞くと、いつもの浮気癖を出したあたるはあっさり約束を受けた。
ラムは事情を聞いて地球に来た弁天と相談し、あたるとその両親を始め、面堂・しのぶ・サクラ・錯乱坊・ラム親衛隊らの友引町のメンバーをバス型UFOに巻き込んで宇宙の果てへ飛び立つ。宇宙空間でラムの両親や、弁天、海王星のおユキ、ラン、レイ、クラマ姫などと合流し、エルよりも先にあたると結婚式を挙げようとしたが、その前にあたるを奪いに来たエル星の艦隊が立ち塞がる。激怒したラムの父はエル軍との宇宙戦争を宣言。交戦開始寸前の状況まで発展するが、その隙にエル星のスパイであるロゼの手により、あたる(と面堂やメガネ達までも)が連れ去られてしまう。ラムはあたるを取り戻すため戦闘機に乗り追跡するが、修理中であったこの機体はエンジンが爆発してしまう。「ラム!」爆発を見たあたるはラムの身を案じて叫ぶが、ラムが救出カプセルで脱出し一命を取り留めたのを見て胸を撫で下ろした。ラムの叫びも空しく、結局あたるはエル星艦隊と共に去っていった。
エルとはエル星の若き女王であった。彼女と結婚すれば当然「王」となるあたるは、ハーレムが作れると有頂天になる。しかし、エルの横取りを画策した面堂が、エルの宇宙中の美形コレクションの10万人目として選ばれ、コールドスリープ処理をされかける。その現場をメガネたちとともに見てしまったあたるは、必死に「心から愛している」と許しを請うエルを「浮気者」と罵り、婚約破棄を宣言した。しかしエルはそんなあたるを「誰にも渡さない」と拘束し、「なぜそこまで執着するのか」と訝るババラをよそに、結婚式を強行することを決定する。テンと共に牢屋に入れられたあたるは、牛丼を貪り食いながらラムの愛情を感じ始めていた。
一方、母星に帰還したラムもあたるへの想いを断ち切れずにいたが、冷凍処理されエル星から送り返されてきた面堂達から話を聞き、あたるを奪還するため、挙式当日に変装して招待客に紛れてエル星に潜り込む。ラムの決意に気づいた弁天、おユキ、ラン、レイ、クラマ達も後を追ってエル星に潜入し、繁華街や各地で行動を開始する。コールドスリープされていた美男達を解放するなど暴動を起こしてエル軍の警戒を引きつけている間に、ラムはあたるのいる結婚式場へと向かい、あわや誓いのキス成立かというところで式に乱入する。ラムの呼びかけに応えたあたるはラムを抱き締め、弁天達と一緒にバスUFOで脱出を試みるが、あたるに懸命にしがみついていたエルも一緒に引き揚げられ、弾みでバスUFOのワープ装置が作動、大容量惑星の引力圏内でワープしてしまったために時空が変化し、過去へとタイムワープしてしまう。
一同が飛んだのは奇しくも11年前の地球。そこには、夕暮れの公園で無邪気に遊ぶ、あの幼き日のあたるとエルの姿があった。そこで一同は、当時のあたるがエルの影を踏んだと嘘をついていたことを知る。このため結婚契約が無効になってしまい、あたるたちは解放され、エルは冷酷な女王に戻っていく。
エル星から帰還するとそこは巨大な教会の中だった。あたるとラムの結婚式がサプライズとして盛大に行われたが、誓いのキスの寸前にあたるは「嫌だ!」と絶叫して逃げ出す。あたるとラムの『鬼ごっこ』は大勢の人間を巻き込んで続いていく。
テレビアニメの劇場版の王道ともいえるふんだんにファンサービスを加えた作風は、原作者やファン、スポンサーからは歓迎されたが、映画監督の金子修介によると、伊丹十三(当時はまだ俳優)から「甘いケーキ菓子のような映画」と評された[要出典]。
初めて対談した宮崎駿からは「パロディが映画を高めていない」「時計塔に見覚えのある歯車が回っていて、(『ルパン三世 カリオストロの城』などの)設定を盗んだ感じしかしない」「戦争に加担しているラムたちが戦争に対して無感動」「宇宙船の窓から戦争を見てるのに、その宇宙船には窓がない」「冒頭のように宇宙船が日本に現れたら大騒ぎになるはず」などと批判された。ただし宮崎は、テレビアニメの押井の演出(特に第86話の髪の表現など)は高評価している[2]。
押井自身も、本作をダメな映画の例だと自認しているが、実質の製作期間が4ヶ月と短期間で修正する余裕がなく、「男の自分にはラムの気持ちが理解できない」「すでにやった事のある描写(第1話のラムの登場に対する市民の反応)はしたくなかったが、劇中のような演出(宇宙船から老婆が登場)しか思いつかなかった」と語っている[3]。また、併映作品であった相米慎二監督の『ションベン・ライダー』が本作品と比べ、あまりにも監督の自由が反映された作風であったことに、押井は衝撃を受けたという[4]。これらの経験が、次回作の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』以降、押井の作家性を大きく打ち出すことに繋がってゆく。
いずれもノーカット版が収録されている。
この節の加筆が望まれています。 |
1984年4月20日、フジテレビ系列の『金曜ファミリーワイド』枠で放送された[12]。
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