1970年ベルギーグランプリ (1970 Belgian Grand Prix) は、1970年のF1世界選手権第4戦として、1970年6月7日スパ・フランコルシャンで開催された。

概要 レース詳細, 日程 ...
ベルギー 1970年ベルギーグランプリ
レース詳細
1970年F1世界選手権全13戦の第4戦
Thumb
日程 1970年6月7日
正式名称 XXIX Grand Prix de Belgique
開催地 スパ・フランコルシャン
ベルギーの旗 ベルギー スパ
コース 公道コース
コース長 14.100 km (8.761 mi)
レース距離 28周 394.800 km (245.317 mi)
決勝日天候 曇(ドライ)[1]
ポールポジション
ドライバー マーチ-フォード
タイム 3:28.0
ファステストラップ
ドライバー ニュージーランド クリス・エイモン マーチ-フォード
タイム 3:27.4 (27[2]周目)
決勝順位
優勝 BRM
2位 マーチ-フォード
3位 マトラ
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ペドロ・ロドリゲス1967年南アフリカグランプリ以来3年ぶりとなるF1通算2勝目を挙げ[3]BRM1966年モナコグランプリジャッキー・スチュワート以来4年ぶりの優勝をもたらした[4]

本レースは、スパの14.1kmコースで開催された最後のF1レースであった[5]。また、ダンロップタイヤにとってF1最後の勝利となった[6]

背景

前年はコースの安全性を理由にGPDAからボイコットされた[7]。安全性向上のため、バリアの設置やマルメディにシケインを設ける改修を行い[8]、2年ぶりにベルギーGPが開催されることになった[9]

エントリー

本レースを前にマクラーレン勢が相次いで大事故に見舞われた。前戦モナコGPを終えた直後の5月12日デニス・ハルムインディ500英語版の練習走行中に燃料が噴き出して大炎上[注 1]し、ハルムは両手と両足、そして左腕を火傷する重症を負った[10]。さらに本レースの開催を目前に控えた6月2日、オーナーのブルース・マクラーレングッドウッド・サーキットCan-AmカーのM8D英語版をテスト走行中に事故死してしまう[11]。このため、マクラーレンは本レースを欠場し、マクラーレン・M7Cを使用するジョン・サーティースも欠場することになった[12]

ジョニー・セルボ=ギャバンが冬のオフロードカーのイベントで目を負傷したことによる視力の低下を理由に前戦モナコGPをもって引退したため、ティレルジャッキー・スチュワートのみの参加となった。ロータスは新しい72と古い49を持ち込んだ[9]フェラーリジャッキー・イクスに加え、この年フェラーリでスポーツカー512Sを走らせていたイグナツィオ・ギュンティが2台目の312Bを走らせる[13][14]。イギリスのカーコレクターであるトム・ウィートクロフト英語版[注 2]がチームを立ち上げ、デレック・ベルブラバム・BT26Aを走らせる[15]

エントリーリスト

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チーム No. ドライバー コンストラクター シャシー エンジン タイヤ
イギリスの旗 ヤードレー・チーム・BRM 1 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM P153 BRM P142 3.0L V12 D
2 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー
3 カナダの旗 ジョージ・イートン 1
イギリスの旗 ブルース・マクラーレン・モーターレーシング 4 ニュージーランドの旗 ブルース・マクラーレン 2 マクラーレン M14A フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
5 イギリスの旗 ピーター・ゲシン 2
6 イタリアの旗 アンドレア・デ・アダミッチ 2 M7D アルファロメオ T33 3.0L V8
イギリスの旗 フランク・ウィリアムズ・レーシングカーズ 7 イギリスの旗 ピアス・カレッジ デ・トマソ 505 フォードコスワース DFV 3.0L V8 D
イギリスの旗 トム・ウィートクロフト・レーシング 8 イギリスの旗 デレック・ベル ブラバム BT26A フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
イギリスの旗 マーチ・エンジニアリング 9 スイスの旗 ジョー・シフェール マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
10 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン
イギリスの旗 ティレル・レーシング・オーガニゼーション 11 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 D
イギリスの旗 アンティーク・オートモビルズ・レーシングチーム 14 スウェーデンの旗 ロニー・ピーターソン マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
アメリカ合衆国の旗 STPコーポレーション 15 アメリカ合衆国の旗 マリオ・アンドレッティ 3 マーチ 701 フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
スイスの旗 シルビオ・モーザー・レーシングチーム 16 スイスの旗 シルビオ・モーザー 4 ベラシ F1 70 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
イギリスの旗 チーム・サーティース 17 イギリスの旗 ジョン・サーティース 2 マクラーレン M7C フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
イギリスの旗 モーターレーシング・ディベロップメンツ・リミテッド 18 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム BT33 フォードコスワース DFV 3.0L V8 G
イギリスの旗 アウト・モトール・ウント・シュポルト 19 西ドイツの旗 ロルフ・シュトメレン
イギリスの旗 ゴールドリーフ・チーム・ロータス 20 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ロータス 49C フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
21 イギリスの旗 ジョン・マイルズ 72B
イギリスの旗 ワールドワイド・レーシング 22 スペインの旗 アレックス・ソラー=ロイグ 72
イギリスの旗 ブルックボンド・オクソ・レーシング/ロブ・ウォーカー 23 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス 49C フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
アメリカ合衆国の旗 ピート・ラブリー・フォルクスワーゲン・インク 24 アメリカ合衆国の旗 ピート・ラブリー 3 ロータス 49B フォードコスワース DFV 3.0L V8 F
フランスの旗 エキップ・マトラ・エルフ 25 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ MS120 マトラ MS12 3.0L V12 G
26 フランスの旗 アンリ・ペスカロロ
イタリアの旗 スクーデリア・フェラーリ SpA SEFAC 27 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 312B フェラーリ 001 3.0L F12 F
28 イタリアの旗 イグナツィオ・ギュンティ
ソース:[16]
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追記
  • ^1 - イートンは病気のため欠場[17]
  • ^2 - マクラーレン勢とサーティースはブルース・マクラーレンの事故死のため欠場[17][12]
  • ^3 - エントリーのみ[17]
  • ^4 - マシンが準備できず[17]

予選

ジャッキー・スチュワートポールポジションを獲得し、ヨッヘン・リントクリス・エイモンとともにフロントローに並んだ[注 3]ジャッキー・イクスジャック・ブラバムが2列目、ペドロ・ロドリゲスロルフ・シュトメレンイグナツィオ・ギュンティが3列目を占めた[9]

予選結果

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追記
  • ^1 - ソラー=ロイグは規定周回数(5周)を走行できなかったため予選落ち[20]

決勝

ヨッヘン・リントはスタートでリードを奪ったが、1周目が終わるまでにクリス・エイモンジャッキー・スチュワートに抜かれた。2周目にスチュワートが首位に立ったが、エイモンは3周目に首位を奪い返した。その間にペドロ・ロドリゲスがリントを抜いて3位、4周目にスチュワートを抜いて2位、5周目にエイモンを抜いて首位に浮上した。しばらくの間、ロドリゲスとエイモンは首位を争ったが、その後ロドリゲスはエイモンを引き離していく。その後方でスチュワートはジャック・ブラバムの追撃を受けていたが、ブラバムは次の周でペダルに油っぽいぼろきれが絡まっていたのを見つけたため、それをマルメディで除去すると再びリントとスチュワートを追走しだした。リントとスチュワートがリタイアし、ブラバムもクラッチの故障に苦しみだすと、ジャン=ピエール・ベルトワーズが3位に浮上した。チームメイトのアンリ・ペスカロロはベルトワーズに続く4位を走行したが[9]、残り1周で燃料タンクが壊れて燃料切れとなり、緊急ピットインで燃料を補給したものの再スタートすることができなかった[15]。ペスカロロに代わって4位となったのはフェラーリの新人イグナツィオ・ギュンティで、F1デビュー戦から初入賞を果たした。チームメイトのイクスはコクピットに燃料が漏れてレーシングスーツまで染み渡ってしまったため、新しいレーシングスーツに着替えるためにピットインしなければならなかった。体に付着した燃料がスペインGPでの火災で負った火傷の痕をひどく刺激したが、8位で完走した[21]。レースはロドリゲスが制し、しばし低迷していたBRMの復活を強く印象づけた[22]。平均速度は241.308 km/h (149.942 mph)で、2年前のベルギーGPで優勝したブルース・マクラーレンが記録したF1史上最高速度記録(236.797 km/h (147.139 mph))を2年ぶりに塗り替えた[23]。2位のエイモンはファステストラップを記録したが、ロドリゲスに追いつくことはできなかった[15]ロルフ・シュトメレンは5位に入賞し、F1デビュー4戦目で初ポイントを獲得した[24]

改修が行われたものの、スパが依然危険なサーキットであることには変わりはなく、14kmのレイアウトでF1が開催されるのはこの年が最後となった[注 4]。安全性を高めるために距離を短縮した新しいレイアウトに変更されたスパに戻るのは13年後の1983年となる[8]

レース結果

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順位No.ドライバーコンストラクター周回数タイム/リタイア原因グリッドポイント
1 1 メキシコの旗 ペドロ・ロドリゲス BRM 28 1:38:09.9 6 9
2 10 ニュージーランドの旗 クリス・エイモン マーチ-フォード 28 +1.1 3 6
3 25 フランスの旗 ジャン=ピエール・ベルトワーズ マトラ 28 +1:43.7 11 4
4 28 イタリアの旗 イグナツィオ・ギュンティ フェラーリ 28 +2:38.5 8 3
5 19 西ドイツの旗 ロルフ・シュトメレン ブラバム-フォード 28 +3:31.8 7 2
6 26 フランスの旗 アンリ・ペスカロロ マトラ 27 燃料切れ[1] 17 1
7 9 スイスの旗 ジョー・シフェール マーチ-フォード 26 燃料ポンプ[1] 10
8 27 ベルギーの旗 ジャッキー・イクス フェラーリ 26 +2 Laps 4
NC 14 スウェーデンの旗 ロニー・ピーターソン マーチ-フォード 20 規定周回数不足 9
Ret 18 オーストラリアの旗 ジャック・ブラバム ブラバム-フォード 19 クラッチ 5
Ret 23 イギリスの旗 グラハム・ヒル ロータス-フォード 19 エンジン 16
Ret 11 イギリスの旗 ジャッキー・スチュワート マーチ-フォード 14 エンジン 1
Ret 21 イギリスの旗 ジョン・マイルズ ロータス-フォード 13 ギアボックス 13
Ret 20 オーストリアの旗 ヨッヘン・リント ロータス-フォード 10 エンジン 2
Ret 2 イギリスの旗 ジャッキー・オリバー BRM 7 エンジン 14
Ret 7 イギリスの旗 ピアス・カレッジ デ・トマソ-フォード 4 油圧 12
Ret 8 イギリスの旗 デレック・ベル ブラバム-フォード 1 ギアボックス 15
DNQ 22 スペインの旗 アレックス・ソラー=ロイグ ロータス-フォード 予選不通過
ソース:[25]
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優勝者ペドロ・ロドリゲスの平均速度[17]
241.308 km/h (149.942 mph)
ファステストラップ[2]
ラップリーダー[26]
太字は最多ラップリーダー

第4戦終了時点のランキング

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  • : トップ5のみ表示。前半7戦のうちベスト6戦及び後半6戦のうちベスト5戦がカウントされる。

脚注

参照文献

外部リンク

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