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ひずみ計
地殻変動などの観測装置 ウィキペディアから
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ひずみ計(英語: strainmeter)とは、地殻や岩盤に生じるひずみ(収縮や膨張など)を精密に測定する装置のことである。主に地震や火山噴火などの地殻変動の観測に使用されている(地球潮汐などを観測することもできる)[1]。日本では、気象庁が東海地震や南海トラフ地震などの予測をするための装置として使用されている。

概要
ひずみ計は、地下の岩盤の伸び・縮み(地殻ひずみ)を非常に高感度で観測できる地殻変動の観測装置であることから、地震観測や火山観測などにおいて重要な役割を果たす[1]。南海トラフ地震などの観測においては、ボアホールという直径約15cmの縦穴を数100メートル程度掘削して、その底に円筒形の検出部が埋設されている[2]。地下の岩盤は、周囲から加わる力の影響で僅かに伸縮する[2]。ひずみ計の検出部が岩盤と同様に変形すると、岩盤の伸び縮みを、10億分の1の相対変化まで非常に高い精度で検出・測定することができる[2]。この相対精度は、小中学校にあるプール(長さ25m、幅10m、深さ1.5m程度)に水を張り、そこに直径1cmくらいの小さいビー玉を入れたとして、その時に発生する非常に僅かな体積変化さえも見逃さないほどである[2]。
気象庁や静岡県、産業技術総合研究所は、プレート境界で発生するゆっくりすべり等に伴うごく僅かな岩盤の変形をも捉えるため、南海トラフ沿いに、ひずみ計による地殻変動の観測網を展開・設置している[2]。それぞれの観測点で記録されたデータは常時、全て専用回線で気象庁に集約され、南海トラフ地震に関連する情報の発表のために使われる[2]。
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ひずみ計の種類
- 伸縮計・ひずみ地震計

- 地震動よる地盤の伸縮(水平ひずみ)を精密に測定する装置[3]。岩盤上の2地点間のひずみを測定する[4]。実用的なものは1932年にベニオフ (1935) により初めて設置された[3]。地殻変動による地盤の長期的なひずみや、地球潮汐による固体地球の変形なども記録することができる[5]。記録できる変形の量は10-9(1kmにつき1μm)くらいまでで、感度が高い[6]。日本では、気象庁松代地震観測所にあるものなどが知られる。
- 可変容量型ひずみ地震計[4]や石英管ひずみ地震計などがあるが、最も一般的なのは石英管伸縮計である。石英管伸縮計は、数十メートル離れた2本の柱を石英の管でつなぎ(一方は固定端)、柱の間の距離の変化を測定するという仕組みである[1][7]。地表だと雨や風や温度などの影響を受けるため[8]、地下のトンネル内に設置することが多い[9]。火山観測では、山体の膨張・収縮を観測するために使用される[10]。
- 体積ひずみ計・多成分ひずみ計
- 気象庁が設置しているひずみ計は、体積ひずみ計と多成分ひずみ計の2種類である[2]。体積ひずみ計は、岩盤の伸び縮みによる検出部の体積変化「体積ひずみ」を測定する。一方、多成分ひずみ計は、検出部の45度ずつ異なる4つの方位の直径の変化「線ひずみ」を測定する。体積ひずみ計はひずみの大きさの変化を測定するが、多成分ひずみ計はひずみの大きさとその方向ごとの変化を測定できる[2]。外力により物体が変形して体積が変化したとき、変形前の体積をV、変形に伴う体積変化量を⊿Vとすると、体積ひずみ(変形の割合)は⊿V⁄Vで表される[11][12]。
- 体積ひずみ計の検出部の容器内にはシリコン油があり、岩盤の膨張・収縮に伴うシリコン油の体積変化を測定する仕組みになっている[13]。サックス・エバートソン式の体積ひずみ計(1970年)が特に有名であり[14][15][16]、シリコン油を満たしたこのひずみ計は直径約11cm・長さ約3mの金属円筒型容器となっている[17][18]。ただし体積ひずみ計はひずみの1成分しか検知できないため、後に「坂田式三成分歪計」などが考案されている[18]。
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南海トラフ沿いのひずみ計
このほか、産業技術総合研究所(産総研)が設置しているひずみ計のうち、新たに設置される大分県佐伯市蒲江・宮崎県延岡市北方町の観測点を今後気象庁の観測対象点に追加する予定である[22][23][24]。
出典
参考文献
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