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ムーンショット型研究開発制度
挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する新たな制度 ウィキペディアから
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ムーンショット型研究開発制度(ムーンショットがたけんきゅうかいはつせいど)[1]は、日本発の破壊的イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発(ムーンショット)を推進する新たな制度のこと。アメリカ航空宇宙局(NASA)による月への有人宇宙飛行計画になぞらえて命名された[2]。
「Human Well-being」(人々の幸福)を目指し、その基盤となる社会・環境・経済の諸課題を解決すべく、10個のムーンショット目標を決定している。
目標1 - 6は2020年(令和2年)1月23日の総合科学技術・イノベーション会議(第48回)[3]で、目標7は同年7月14日の健康・医療戦略推進本部(第30回)で、目標8 - 9は2021年(令和3年)9月28日の総合科学技術・イノベーション会議(第57回)[4]で、目標10は2023年(令和5年)12月26日の総合科学技術・イノベーション会議(第70回)[5]でそれぞれ決定された。
この中で、主に農林水産省に関わりのあるムーンショット目標5[6]は、世界的な食糧問題を解決するための最先端技術の創出を目指している。この目標で対象となるプロジェクトの1つに昆虫食がある[6][7]。2022年頃より日本国内で他の代替食料を差し置き際立って注目されているコオロギ食もその対象である[8]。
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制度の特徴
内閣府及び関係省庁は、ムーンショット型研究開発制度の運用や評価に関する指針を策定、制度の特徴として以下が示されている[9]。
- 未来社会を展望し、困難であるが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象とした野心的な目標(ムーンショット目標)及び研究開発構想を、国が提示する。
- 研究開発段階にある知見やアイデアを最大限に引き出し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進する。
- ムーンショット目標の達成のため、複数のプロジェクトマネージャー(PM)を採択し、PMが推進する複数の研究開発のプロジェクトで構成されるプログラムを統一的に指揮・監督するプログラムディレクター(PD)を任命する。
- 研究全体を俯瞰したポートフォリオを構築。「失敗を許容」しながら挑戦的な研究開発を推進する。
- ステージゲートを設けてポートフォリオ(プロジェクトの構成や資源配分等の方針をまとめたマネジメント計画)を柔軟に見直し、スピンアウトを奨励。データ基盤を用いた最先端の研究支援システムを構築する。
- 基金を造成し、ポートフォリオの再編を繰り返しながら、研究開発時点から5年間を基本として最長で10年間の支援を可能としている[10]。
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ムーンショット目標
要約
視点
どれもSFの域を出ないものばかりであり、実現するまでの具体的なプロセスの説明はされていない。
- 目標1.2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現[11](PD:萩田紀博・大阪芸術大学学科長・教授)
- 目標2.2050年までに、超早期に疾患の予測・予防をすることができる社会を実現[12](PD:祖父江元・愛知医科大学理事長・学長)
- 目標3.2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現[13](PD:福田敏男・名古屋大学未来社会創造機構客員教授)
- 目標4.2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環を実現[14](PD:山地憲治・地球環境産業技術研究機構理事長)
- 4-(1) 温室効果ガスを回収、資源転換、無害化する技術の開発
- 4-(2) 窒素化合物を回収、資源転換、無害化する技術の開発
- 4-(3) 生分解のタイミングやスピードをコントロールする海洋生分解性プラスチックの開発
- 目標5.2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出[15](PD:千葉一裕・東京農工大学学長)
- 5-(1) 食料供給の拡大と地球環境保全を両立する食料生産システム
- 5-(2) 食品ロス・ゼロを目指す食料消費システム
- 目標6.2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現[16](PD:北川勝浩・大阪大学大学院基礎工学研究科教授)

- 目標7.2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムを実現[17](PD:平野俊夫・量子科学技術研究開発機構理事長)
- 目標8.2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安全安心な社会を実現[18](PD:三好建正・理化学研究所計算科学研究センターチームリーダー)
- 目標9.2050年までに、こころの安らぎや活力を増大することで、精神的に豊かで躍動的な社会を実現[19](PD:熊谷誠慈・京都大学人と社会の未来研究院准教授)
- 目標10.2050年までに、フュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現[20](PD:吉田善章・自然科学研究機構 核融合科学研究所 所長)
目標毎のプロジェクト内容
終了したプロジェクト
他のプロジェクトへの参加研究者
他の類似研究プロジェクトへの参加研究者5名とその研究。
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設立の経緯
- 2018年(平成30年)6月14日の総合科学技術・イノベーション会議(第39回)[2]において、ムーンショット型研究の必要性についてCSTI有識者議員より提言があり、同年12月20日の同会議(第41回)[159]で「ムーンショット型研究開発制度の基本的考え方について」を決定。
- ムーンショット目標の設定にあたり、一般から解決を期待する社会課題や実現すべき未来像を公募、その意見に基づいてムーンショット型研究開発制度に係るビジョナリー会議[160][161]を設置して議論、ロボカップからのスピンアウトの事例や3つのエリア、13のビジョン、25の目標例などが提案される[162][163][164]。
我々が始めてから5年後ぐらいに、ある参加した研究者がサッカーロボットの技術を使って会社をつくりました。これは倉庫内物流を自動化する会社で、KIVA Systemsという会社なのですが、それが創業して5年後にAmazonに大体800億円で買収されまして、これが今、Amazon Roboticsという会社になっています。ですので、このサッカーロボットの技術というものが倉庫内物流を劇的に変化するということになりまして、基本的に我々が将来サッカーロボットを研究をするものが物流を変えるだろうという想定は実際に現実のものとなったということで、非常にインパクトがありました。この一連の出来事を目の当たりにした若手の研究者は続々とスピンアウトを作るなど、一つのエコシステムができようとしています。 — 北野宏明 (ソニーコンピュータサイエンス研究所 代表取締役社長、所長)[162]
- 2019年(令和元年)12月にムーンショット国際シンポジウム[165]を開催し、ムーンショット型研究開発制度の運営及びムーンショット目標について議論、6つの目標案を決定。
- 2020年(令和2年)1月23日の総合科学技術・イノベーション会議(第48回)[3]で、ムーンショット目標1 - 6を決定。
- 同年7月14日の健康・医療戦略推進本部(第30回)[166]で、ムーンショット目標7を決定。
- 研究推進法人がプログラムディレクター(PD)を決定、プロジェクトマネージャー(PM)を公募。産学官で構成する戦略推進会議[167]からの助言を受けてPMを決定し、研究を開始する。
所轄官庁
研究推進法人
- 国立研究開発法人 科学技術振興機構(JST) - 目標1-3、6、8-10を推進(所管:文部科学省)
- 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) - 目標4を推進(所管:経済産業省)
- 生物系特定産業技術研究支援センター(BRAIN) - 目標5を推進(所管:農林水産省)
- 国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED) - 目標7を推進(所管:内閣府)
脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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