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阪急8300系電車

阪急電鉄の通勤電車(1989-) ウィキペディアから

阪急8300系電車
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阪急8300系電車(はんきゅう8300けいでんしゃ)は、阪急電鉄(阪急)の通勤形電車である。

概要 基本情報, 運用者 ...

本項では、解説の便宜上梅田方先頭車+F(Formation=編成の略)を編成名として記述(例:8302以下8両編成=8302F、8333以下2両編成=8333F)する。

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概要

本系列は、8000系京都線仕様、地下鉄堺筋線直通対応車として製造され、1989年平成元年)年7月9日より運用開始された[4]

車両概説

要約
視点

車体

車体は神宝線8000系とおおむね共通するが、中津駅神戸本線宝塚本線の離線間隔の問題が発生したことから規格統一が先送りとなり、車体幅は7300系と比較して50 mm拡大され、3300系5300系と同じになった[5]

前面は8000系と同様の額縁スタイルで登場し、1991年(平成3年)増備の8311Fからは前面の飾り帯が廃止され、後に既存の編成からも撤去された。この前面形状は他形式と比較して風圧が大きいとの指摘があり、8300系運用開始後の大山崎駅のJRとのアンダークロス付近では、沿線からの苦情もあったという[6]。同じ額縁スタイルの大阪市交通局(現:Osaka Metro60系を借用して比較したが、60系では問題はないとの結果であった[6]

これを受けて、1993年(平成5年)増備の8303Fからは8000系8033F以降と同様に前面のデザインが変更され、「く」の字に傾斜した形状に変更されるとともに[7]、車両番号表示の位置が向かって左の窓下に変更され、種別・行先表示が大型化された。

1995年(平成7年)増備の8304Fからは前面窓が下方向に拡大され、前面の車両番号表示も電照式になった[7]

内装

車内の濃色の木目調化粧板、車椅子スペースの設置、側窓のパワーウインドウ化などは8000系と同一である。8000系の一部編成に導入されているクロスシートは設置されていない。

1992年(平成4年)増備の8312Fでは、阪急の車両で初めて堺筋線用の自動放送装置が取り付けられた。その後、同じく堺筋線直通列車に使用される3300系・5300系・7300系も含めて、他編成にも設置されたが、8300F・8301Fは構造上取付不可能なため、堺筋線内では車掌の肉声放送を行う。自動放送装置は当初磁気テープ式であったが、地下鉄の車両より早く音声合成式に交換している。

最終増備車の8315Fは同時期製造の8200系に準じた仕様で、扉上部にLED式の車内案内表示器を設置し、かつてはFM大阪のニュース(見えるラジオ)が表示されていた。日除けもアルミ製の鎧戸から巻き上げ式カーテンに変更された[8]。また、側面方向幕の位置が既投入車より若干高く設置されている。

主要機器

制御方式はVVVFインバータ制御で、東洋電機製造製のGTOサイリスタ素子インバーター装置を搭載した。製造時期によってインバータ装置の形状や磁励音が異なる。惰行制御装置も装備しており、設定から±3 km/hの速度差になると加減速を行うが、後期車は±1 km/hの時点で行うよう改良された[9]

ブレーキは電気指令式ブレーキの HRDA-1 である[8]。冷房装置は12,500 kcal/h×3に増強された[8]

台車は初期車ではS型ミンデン台車を採用し、FS369A(電動台車)、FS069(付随台車)を装着する。8331F(2両編成)の8331・8451の台車は、5200系から流用したものを使用する。後期車はモノリンク式ボルスタレス台車が採用され、8332Fで SS139(電動台車)と SS039(付随台車)を導入、8304Fより SS139A(電動台車)と SS039A(付随台車)が本格採用された[7][注 1]。また、8332号車のみ阪急で唯一ヨーダンパが搭載されたが、後に撤去されている。

パンタグラフは当初は下枠交差式を採用し、最終増備車の8315Fではシングルアーム式となった[10]

先頭部の連結器は、増解結を行う8300形・8450形は全自動密着連結器を採用している。増解結を行わない8400形は、当初は自動連結器を採用していたが、1993年(平成5年)増備の8302F以降は電気連結器のない密着連結器に変更され、以前の編成についても1994年(平成6年)までに交換がなされた[11]。この変更は、以降の新造車にも受け継がれた[注 2]

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形式

要約
視点

2017年(平成29年)9月に形式呼称が変更された[12]。本節では左が旧形式、右が新形式を記す。なお、新形式呼称でのハイフン以下の枝分けは、2021年令和3年)以降は廃止された[13]

  • 8300形/Mc8300形(8300 - 8304・8310 - 8315・8330 - 8333:15両)
大阪梅田方の制御電動車。主電動機、主制御器およびパンタグラフを搭載する。投入途中に制御機器、前面、さらにはパンタグラフが変更されたため、本形式は様々なバリエーションがある。新形式呼称では、ミンデン台車装備車は Mc8300形 、ボルスタレス台車装備車は Mc8300-1形 、ボルスタレス台車装備・制御装置更新車は Mc8300-2形(2018年(平成30年)に可とう歯車継手変更改造を受けて Mc8300-4形 に再変更)、ミンデン台車装備・制御装置更新車は Mc8300-3形 、ボルスタレス台車装備・制御装置未更新・可とう歯車継手変更改造車は Mc8300-5形 に枝分かれしている。
  • 8400形/Mc8400形(8400 - 8404・8410 - 8415:11両)
京都河原町方の制御電動車。主電動機および主制御器を搭載する。新形式呼称での枝分けの仕方(ハイフンを付ける基準)は、Mc8300形と同様。
  • 8450形/Tc8450形(8450 - 8453:4両)
2両編成の河原町方制御車。補助電源装置 (SIV) および空気圧縮機を搭載する。新形式呼称では、8450が Tc8450形 、8451は Tc8450-1形 、8452・8453は Tc8450-2形 となる。
  • 8900形/M8900形(8900 - 8904:5両)
大阪梅田方の中間電動車。主電動機および主制御器を搭載する。新形式呼称では、ミンデン台車装備車はM8900形、ボルスタレス台車装備・制御装置更新車は M8900-1形(2018年(平成30年)に可とう歯車継手変更を受けて M8900-3形 に再変更)、ミンデン台車装備・制御装置更新車は M8900-2形 となる。なお、新形式呼称制定の時点で、ボルスタレス台車装備・制御装置未更新の車両は消滅している。
  • 8850形/T8850形(8850 - 8854・8860 - 8865・8870 - 8874・8880- 8885:22両)
大阪梅田方の中間付属車。SIVおよび空気圧縮機を搭載する。新形式呼称では、ミンデン台車装備車はT8850形、ボルスタレス台車装備車は T8850-1形 となる。
  • 8950形/T8950形(8950 - 8954・8960 - 8965・8980 - 8984:16両)
中間付随車。走行に必要な機器は搭載しない。新形式呼称での枝分けの仕方は、T8850形と同様。
  • 8800形/M8800形(8800 - 8804・8810 - 8815:11両)
京都河原町方の中間電動車。主電動機、主制御器およびパンタグラフを搭載する。新形式呼称での枝分けの仕方は、Mc8300形・Mc8400形と同様。

製造

要約
視点

8300系の車両番号は、8両編成・7両編成で製造された編成は8300番台、6両編成で製造された編成は8310番台、2両編成で製造された編成は8330番台となっている。

8300F・8301F・8330F・8310F

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8300系1次車8300F
(2019年7月16日)
飾り帯つき時代の8300系1次車8301F
(1995年8月 桂駅

1989年(平成元年)5月にトップナンバーの8300Fが8両編成で登場し、同年7月に営業運転を開始した[14]。同年度中に第2編成の8301Fも竣工している。1991年(平成3年)に増備された8両は2両編成の8330Fと6両編成の8310Fによる組成となり、分割して6両編成単独での運用も可能となった[15]

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8311F・8312F・8331F・8302F

1991年(平成3年)度に増備された8311Fからは前面の飾帯が廃止され、既存の編成からも順次撤去された[15]。制御装置は主回路素子に逆導通GTOサイリスタを、素子冷却に従来のフロン浸漬式に代わりヒートパイプ式を採用したものに変更され、変調音も変化した[16]

8311F・8312Fは1991年(平成3年)度に6両単独で増備されたが、1992年(平成4年)度には2両編成の8331Fが登場し、8312Fとの8両編成が組成された[17]。1993(平成5年)年には8302Fが7両編成で登場したが、同年に追加新造された8902が組み込まれた8両編成となった[17]

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8303F・8332F・8313F・8333F・8314F

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8300系2次車(8332+8313F)
(2025年8月21日 南茨木駅 - 茨木市駅間)

1993年(平成5年)に登場した8303Fでは前面形状が変更され、8000系8033Fと同じく「くの字」タイプとなった。8303Fは当初は7両編成で竣工し、翌1994年(平成6年)に新製の8983を組み込んで8両編成となった[18]

8303Fと同年には8332Fの2両と8313Fの6両による分割8両編成が登場した。この8332F・8313F以降の増備車はボルスタレス台車が採用されている[19]。1994年(平成6年)には8333Fと8314Fが増備されたが、8453・8314の2両は2か月遅れて登場しており、この間の8333Fは6両編成で営業運転に使用されていた[20]

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8304F・8315F

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8300系3次車8304F
(2022年3月 西京極駅
8300系3次車8315F
(2017年6月10日 茨木市駅)

1994年(平成6年)度に登場した8304Fからは前面窓を下方へ拡大し、前面の車両番号も電照式となった[21]。1995年(平成7年)度製で8300系の最終増備車となった8315Fは、LED式車内案内装置の設置やパンタグラフのシングルアーム化などの改良が加えられた[21]

1997年(平成9年)3月のダイヤ改正に合わせて8304Fから8904・8984が外されて6両編成となり、8315Fは8904・8984が組み入れられて8両編成となった[21]。6両編成となった8304Fが2両を連結して8両編成となる場合、通常は7300系2両編成の7326Fが連結される[21]

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改造

額縁形状の改造

8300Fの大阪方の8300と8301Fの京都方の8401は、改造により腰部が埋められ[8]空気抵抗に対する実験的要素で前面下部の灯火類周りを一段高くした形状となった。その後、後述のリニューアル時に落成当時と同じレベルに戻された。8000系神戸線所属車で行われた額縁改造は本系列では単独工事としては実施されず、リニューアル工事時の同時施工となった。

機器更新

2014年(平成26年)10月から運用を離脱していた8315Fは、VVVFインバータ装置と主電動機のASSY交換が行われ、2015年(平成27年)5月18日に本線試運転が行われた[22]1300系や7300系VVVF更新車とは異なり1C4M×1群制御であるが、同一のユニットを採用することで機器の共通性を確保している[23]。以降他編成でも機器更新が実施されている。8330号車はVVVF装置の主回路半導体にSi-IGBTにSiC-ショットキーバリアダイオードを付加したハイブリッドSiCモジュールを適用している[2]

前照灯LED化

2015年(平成27年)より前照灯のLEDへの換装が開始され、全編成完了している。

リニューアル

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リニューアルされた8301F(電気連結器が撤去されている)
(2023年12月8日 南茨木駅 - 茨木市駅間)

8000系に続いて本系列にもリニューアル工事が実施されることとなり、第1陣として8300Fが、2023年(令和5年)3月9日付けで工事を受けた[24]。施工内容は8000系と同様で、京都線においても車両番号移設・額縁削りの前面形態が登場した。8300の特徴となっていた標識灯周りをかさ上げした箇所は、落成時と同じレベルに戻された[25]。8300Fは、運用復帰後ほどなくして、後述の「Memorial 8300」の装飾が施された。

その後、2023年(令和5年)7月には8301Fにも同様の工事が施工された[26][27]が、2022年(令和4年)12月に増結運用が廃止された[28]ことから、大阪側の8301の電気連結器が撤去されている[29]。なお、2編成とも堺筋線用自動放送装置は未搭載のままである。

2024年(令和6年)2月には、6両編成で初めて8311Fにリニューアル工事が施工された。合わせて同編成と連結して運用される7300系7325F(2両編成)もリニューアル工事が施工された[30][26][27]。同年12月には、8304Fにもリニューアル工事が施工された。合わせて同編成と連結して運用される7300系7326F(2両編成)もリニューアル工事が施工された[31][32][33]

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運用

登場当時は8両固定編成のみで、運用も京都線の急行のみに限定されていた。2025年(令和7年)4月1日現在、8両編成×5本、6両編成×6本、2両編成×4本の合計84両が在籍しており[34][32][35][36]、8両編成(6両編成+2両編成を含む)は京都線内の特急準特急急行準急普通千里線・Osaka Metro堺筋線の普通・堺筋準急に使用されている。2001年(平成13年)から2007年(平成19年)までは8301F・8311Fが組み替えられ、一時的に7両編成で運用されていた[注 3]。また、2001年(平成13年)から8304Fが、2007年(平成19年)から8311Fが、7300系2両編成を連結した8両編成で運用されている。

行楽期には、6両編成が嵐山線に直通する臨時快速特急・直通特急や嵐山線内で運用される[37][38][39][40][41][42]

7006F京とれいん 雅洛」が検査期間中の代走として、土休日に運行される快速特急で6両編成が運用されることがある[43][44][45]

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特別装飾・ラッピング

洛西口駅開業記念ラッピング列車
8311F(当時7両編成)は2003年(平成15年)に、7321Fと共に洛西口駅開業を記念したラッピング列車として運行された。車体には洛西口駅のイメージキャラクターである「洛姫(らっきー)ちゃん」が描かれていた。
「エコトレイン 未来のゆめ・まち」号
8331F・8312Fは、2008年(平成20年)12月1日から2009年(平成21年)7月31日までの間、先頭車の車体側面までラッピングが施され、車内広告も環境をテーマにしたものが掲載されている「エコトレイン 未来のゆめ・まち号」として運行された。
「古都」号
2015年(平成27年)1月17日から2017年(平成29年)11月まで、8332F・8313Fに、京都の名所旧跡をちりばめたラッピング装飾が実施された[46][47][48][49][注 4]。2015年(平成27年)2月22日までは、6300系「京とれいん」(6354F)の検査に伴う快速特急の代走に充当された(画像参照)[46][47][48][49]。2015年(平成27年)3月には、一般公募により「古都」の愛称が付けられている[50][51]。当初は2016年(平成28年)3月までの運行予定であったが、神戸線・宝塚線のラッピング列車に合わせて、2017年(平成29年)11月まで延長して運行された[52]
Classic 8300
Classic 8000(神戸線8000F)の好評を受けて、本系列の8300Fが登場時の前面飾り帯・Hマーク・旧社章をステッカーにて復元した装飾列車となり、2019年(令和元年)5月24日より運行された[53][54][55](9月30日まで記念ヘッドマークを掲出[56])。当初は11月1日までの予定であったが、好評のため2022年(令和4年)前半頃まで延長され、あわせて「Classic(クラシック)8300」の愛称が付けられた。なお、2020年(令和2年)9月24日から11月4日まで、京都河原町方先頭の8400にのみ[注 5]新デザインの記念ヘッドマークが掲出されていた。あわせて車内妻面には、重要部検査入場までアルミプレートが取り付けられていた[57]
Memorial 8300
リニューアル工事が施工された8300Fの前面にヘッドマークとHマーク、側面にHマークとエンブレム(社章は現行のもの)、車内にアクリル製記念プレートを取り付け、2023年(令和5年)4月12日より「Memorial(メモリアル)8300」として運行されている[58][59][60]。ヘッドマークと側面エンブレムは次回検査入場時まで、Hマークは検査出場後も継続される[58][59]
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編成表

要約
視点
凡例
  • c:中間運転台の位置
  • o:運転台撤去跡の位置
  • ◇:集電装置(下枠交差式)
  • <・>:集電装置(シングルアーム)

1999年

1999年(平成11年)10月1日現在

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2006年

2006年(平成18年)4月1日現在[61]

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2023年

2023年(令和4年)4月1日現在[24]

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2024年

2024年(令和6年)4月1日現在[26][30][62]

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2025年

2025年(令和7年)4月1日現在[34][32][35][36]

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その他

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工場公開時の記念撮影用に作られた8302の前頭部モックアップ
(2011年5月8日 正雀工場

阪急正雀工場には、工場公開時の記念撮影用に8302の前頭部モックアップが展示されている。

本系列は、2002年(平成14年)3月29日付けで阪急電鉄からケイマン諸島リース会社である S&H Railway Co.,Ltd. に総数84両が譲渡され、同社からのリース(所謂信託車輛)を受けて使用していた[63][64]。その後、2007年(平成19年)の契約満了後に阪急電鉄に買い戻されている[65]

脚注

参考文献

関連項目

外部リンク

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