Loading AI tools
診察および各種の検査で健康状態を評価すること ウィキペディアから
健康診断(けんこうしんだん、General medical examination)とは、診察および各種の検査で健康状態を評価することで健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるものである。健診(けんしん)、健康診査とも呼ばれる。スクリーニングのひとつ。
なお、特定の疾患の発見を目的としたものは、検診(たとえばがん検診)と具体的に呼ばれる。
近代以前の例を挙げると、松本良順が新選組の構成員に対して健康診断を行っている[注釈 1]。
日本における近代的な健康診断の仕組みは、結核の撲滅という目的のためにスタートした[1]。また、日本では健診車で巡回するスタイルも一般的になっているが、これは結核予防を目的とするレントゲン車が始まりとなっている[1]。
学校や職場、地方公共団体で行われるなど「法令により実施が義務付けられている」ものと、受診者の意思で「任意に」行われるものがある。任意に行われる健康診断は診断書の発行を目的とした一般的評価のことが多いが、全身的に詳細な検査を行い多種の疾患の早期発見を目的としたサービスも広く普及しており、船舶のオーバーホール施設になぞらえて人間ドックと呼ばれる。
また労働安全衛生法により、危険物・特定の化学物質などを扱う職業の従事者は、それに応じた健康診断を定期的に受けることが義務づけられており、この健康診断は、重大な職業病の発生を未然に防ぐことが目的という点で、一般的なものとはやや性格を異にする。
厚生科学研究班が、一般向けに作成したガイドライン(Minds医療情報サービス)に受診すべき健診5項目と対象疾患について解説がある。
労働者の健康診断は、労働安全衛生法第66条以下および労働安全衛生規則[2]によって定められている。この実施は事業者の義務であり(労働安全衛生法第66条1項)、使用者による健康診断の不実施は法違反となり、50万円以下の罰金に処せられる(労働安全衛生法第120条)。
雇用主は、常時使用する労働者に対し、以下の健康診断を実施しなければならない。派遣労働者については、派遣元が実施しなければならない。
パートタイム労働者については、以下の1,2いずれにも該当する場合には、「常時使用する労働者」に該当する(定期健康診断、特定業務従事者の健康診断においても同様)。
医師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)の実施が、2015年12月より、常時使用する労働者数が50人以上の事業者の義務となった(労働安全衛生法第66条の10)。50人未満の事業場については当面の間努力義務とされる。事業者は、常時使用する労働者に対し、1年以内ごとに1回、定期に、法で指定する職業性ストレスの検査を行わなければならない。
学校保健安全法においては、生徒および教員に対し、毎年の健康診断義務を定めている。
第十三条 学校においては、毎学年定期に、児童生徒等(通信による教育を受ける学生を除く。)の健康診断を行わなければならない。
第十五条 学校の設置者は、毎学年定期に、学校の職員の健康診断を行わなければならない。
児童福祉施設の入所者に対し、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第12条[3]により入所時及び少なくとも年2回の定期健康診断が学校保健安全法に準じて行われる。
40歳を超えた者は高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、保険者による特定健診・特定保健指導の対象となる。なお労働安全衛生法による健康診断(事業者検診)は特定健診に優先して実施義務があり、事業者検診の結果を提出することで特定健診を実施したとみなされる[4]。
健康保険法を根拠とし、保険者の任意によって行われる保健事業(努力義務)のひとつ。全国健康保険協会(協会けんぽ)では生活習慣病予防健診として実施している。他の健康保険組合でも類似の名称であったり、人間ドックとして行われることもある。
市町村は以下の乳幼児に対して、政令で定める乳幼児健康診査を行わなければならない(母子保健法12条)。
政令においては、受診の年齢(4か月、1歳6か月、3歳)や診察項目が決められている。
原子爆弾による被爆者に対する健康診断として、毎年2回の定期健康診断と、年2回を限度とする希望による健康診断(うち1回はがん検診を受診可)がある。
病院・診療所において、各種の健康診断が行われている。一般的な健康状態評価および人間ドックサービスの他、労働安全衛生法で義務付けられている健康診断の振り替えとして行われる場合がある。
保健所では、健康診断の簡略なものとして老人保健法による基本健康診査(住民検診)を行っている。自治体によっては、健康診断受診奨励金や、交通手当を支給しているところもある。
健康診断に出かける手間を省くため、または特定の項目について頻度の高い検査を行うため、家庭で簡単に健康診断を行うための検査キットが市販されている。また、検査キットを郵送することにより健康診断を行っている機関がある。次のような検査項目がある。
感染症法により、一類感染症、二類感染症、三類感染症及び新型インフルエンザ等感染症等の患者に対し、都道府県知事は健康診断の勧告ができ(17条1項)、感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由があるにもかかわらず勧告に従わない場合には当該職員に健康診断を行わせることができる(17条2項)。
この節には独自研究が含まれているおそれがあります。 |
健康診断の究極の目的は、対象者にできるだけ健康で長生きしてもらうことであり、つまりマクロで見れば対象の平均寿命の延長である。病気を早期発見でき、早めに対処できるのは無条件に良いことと簡単に考えられがちであるが、実際には以下に挙げる様々な要因のため、健康診断はマクロ的に無効で資源の無駄であるばかりか、健康に逆効果となる可能性すらある。
実施主体が、多くの金銭的負担を抱えるものである以上、その有効性がコストに見合うだけのものであることは統計的、疫学的に証明されなければならないが、多くの場合はそれらの証明には非常に長い歳月を要するため、不十分なエビデンスや予想によって検診を行わざるを得ないこともある。1970年代以降、日本の人間ドックなどでも行われている、胸部X線検査や肝機能血液検査など多くの項目は検診の有効性がないという研究結果から、欧米の医学界では多相式健康診断による死亡の率低下に対する有効性は否定されている[10]。2005年に厚生労働省の研究班が行った健康診断の各項目の有効性の検証では、主な24種類の検査と問診の内、16種が「有効性の証拠がない・見つからない」と評価されている[11]。このような点で、論争を生じている代表例としてメタボリックシンドロームも参照。
なお、この節で挙げた例はいずれも専門家でも意見の一致がないものや現在進行形で評価中のものが含まれており、検診が無効であると主張しているわけではないことに注意。[要出典]
中国では読影困難な写真による診断や検査部位を把握しないままでの検査機器の操作などが問題となっており、撮影技術や読影技術など健診従事者の人材育成や研修が課題になっている[1]。
中国の沿海部や大都市では健診サービスを展開する医療機関で価格競争がおきている[1]。一方で富裕層では日本式の健康診断が評価を受けており高い費用を支払っても受けたいという人々も存在している[1]。
インドネシアでの政府の重点的な取り組みは結核など感染症の早期発見にあり、がんや生活習慣病などは次の段階にある[1]。都市部では食事の欧米化が進み中間層にも生活習慣病予備軍が拡大しており、健診の実施による早期発見、早期治療の重要性や健診の実施により医療費の大幅な抑制が可能なことは理解されている[1]。しかし、インドネシアでは健康診断について予算化されておらず自費での受診となる[1]。
ミャンマーでは健康診断以前に医療環境が未整備な状況である[1]。日本式の健診車による健診事業も検討されたが、まずは健診車よりも医療機器の整備されていないクリニックを巡回する医療車としてのニーズに応える事業が検討されている[1]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.