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ふしぎの国のアリス
1951年のアメリカのアニメーション映画 ウィキペディアから
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『ふしぎの国のアリス』(原題:Alice in Wonderland)は、ウォルト・ディズニー・プロダクションが製作し、ルイス・キャロルの小説を原作とした1951年のアメリカのミュージカル・ファンタジー・コメディ・アニメーション映画である。

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あらすじ
要約
視点
ある日の昼下がり。静かな川辺の野原で、アリスは姉と一緒に歴史の本を読んでいたが、すっかり退屈しており、姉の目を盗んで飼い猫のダイナと一緒に川のほとりでくつろいでいた。その時、アリスはチョッキを着ている白いうさぎが大きな懐中時計を持って走り去るのを見て、必死で白ウサギを追いかけた。彼女は白ウサギを追ううちに大きなトンネルまで入ったが、その先にあった大きな穴に落ちた。一番下まで落ちると、白ウサギが走っているのを見つけて、アリスは追いかけ、奇妙な空間の部屋にたどり着く。そこには小さい庭のドアがあったので、開けようとしたが、ドアノブが喋って「大きすぎて入れないから無理」と言われた。アリスがどうしようかと悩んでいたところ、不意にガラスのテーブルが出てきた。テーブルの上には瓶があって、そこには一切れの紙に「私を飲んで」と書いてあった。アリスがそれを飲むと、身長が約3cmに縮んだ。そこでアリスはドアを開けようとしたが、肝心な金の鍵をテーブル上に忘れていたのでまた入れなかった。アリスがまた悩んだところ、今度はクッキーがたくさん入った箱が不意に出てきた。そのクッキーには「私を食べて」と書いてあり、アリスがそれを食べると部屋につっかえる程大きくなった。困ったアリスは泣き出し、部屋は涙で水浸しになり、彼女はとっさにさっきの瓶の中身の残りを飲んだ。そして、瓶の中に入り込み、ドアノブの鍵穴を通り抜ける。
流れ着いた海岸では、ドードー鳥達がコーカス・レースをしていた。アリスはそれに加わったが、白うさぎを見てまた追いかける。その途中で、アリスはトゥイードルディーとトゥイードルダムに出会い、遊びに誘われるが1度は断る。しかし諦めない2人は粘って「セイウチと大工さんの話」を聞かせることに成功した。2人で遊びだしたのを機にその場を離れたアリスはその後、白ウサギの家にたどり着く。そこでアリスは「手袋を持って来い」と白ウサギに言われ、家の中に入った。手袋を見つけたアリスが、2階にあったクッキーを食べてしまうと、彼女は家につっかえてしまう程大きくなり、白ウサギは驚いて逃げ出してしまう。そこへ白ウサギと共にドードーが現れて、「魔物を退治する」という名目で通りかかった煙突掃除のトカゲ、ビルを家に送り込むが、アリスが煤にむせたため、煙突から飛び出し行方不明になってしまう。それを見たドードーは「家を焼き払おう」とアリスが大きくなった際に蹴り出した家具を壊し、マッチで火をつけてしまう。しかしドードーが火を大きくしようと躍起になっている間にアリスはにんじん畑に気づき、そのうちの1本を食べて、以前より縮んだ。
逃げた白ウサギを追いかける途中で見失い、アリスはしゃべる花たちの壇に出会い、その歌を聴く。しかし、花たちはアリスを雑草だと誤解し、アリスは花たちに追い出された。その後イモムシに出会い、不思議な詩を聞かされたアリス。「せめて身長を7cmくらいにしたい」と言った事がきっかけでイモムシを怒らせてしまうも、その怒りでちょうちょへ変貌した彼から大きくなるアドバイスを聞く。それを受けて、大きくなりすぎたりしたものの、アドバイス通りにマッシュルームを交互に食べながら、無事望んだ大きさになったアリス。その後アリスはチェシャ猫に出会い、彼に言われてマッドハッター、三月ウサギとドーマウスの所に行った。そこでは“誕生日じゃない日(なんでもない日)”をお祝いするというおかしなお茶会をしていた。アリスは白ウサギの行方を聞くべくそのお茶会に加わるが、なかなか話が通じない。そこへ乱入してきた白ウサギがマッドハッターに時計を壊され、失意を顕わにしながらも「遅刻遅刻」と走り出したのを追いかけるも、途中で道に迷ってしまい、アリスはとうとう白ウサギを追いかけるのを諦めた。そこへ突然チェシャ猫が現れ、「この辺りの道は女王のもの」だとアリスに教える。アリスがハートの女王と会ったことがないと知ると、チェシャ猫は「ハートの女王に会うなら、オレは近道を通る」と言って、アリスをトランプの国に誘い込む。
庭の生け垣の迷路で、アリスは白いバラに赤いペンキを塗っている3人のトランプ兵たちに会う。そして、そこへやってきたハートの女王に出会い、クローケーゲームに招待された。それは、フラミンゴをクローケー代わりに、そして、針鼠をボール代わりに使うというおかしなゲームだった。どうにかうまくいくも、途中で不意に出くわしたチェシャ猫のせいで、ハートの女王といざござを起こしてしまい、アリスは裁判にかけられる(なお、提案したのは王様である)。アリスはお茶会の3人を証人として呼んだおかしな裁判のやりとりに苛々し、騒動の元凶ともいえるチェシャ猫の存在を告げた際に暴れだしたドーマウスがきっかけで更に騒ぎが大きくなってしまう。そこで持っていたマッシュルームを両方食べて大きくなり、ハートの女王に向かって「デブで、わがままで、底意地の悪い暴君」と主張するも、結局追い回される。途中でもう一方のマッシュルームが影響したのか小さくなってしまうが、その直後に女王が言った「今、何と言ったんだい?」という質問に対しチェシャ猫が女王にその言葉を繰り返したのも原因である。
しかしドアノブにたどり着いたアリスは、自分が眠っているだけなのだと知ると「起きるのよ」と呼びかける。うなされている自分を呼ぶ姉の声で目が覚めたアリスは、「目を覚まして詩の暗唱をしなさい」と言われた際、イモムシが教えてくれた詩を暗唱したことで姉に「あなたは夢を見たのね」と言われ、お茶の時間に誘われるのだった。このようにしてアリスの不思議な冒険は終わる。
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登場キャラクター
- アリス(Alice)
- 本作のヒロイン。夢の中で大冒険をする。一人称は「私」。当初は現実のありきたりさに嫌気がさしていたが、ふしぎの国の非常識な面々に振り回され、元の世界に帰りたいと思うようになる
- 白ウサギ(White Rabbit)
- アリスの友達のうさぎ。言葉をしゃべることができる。いつも急いでいる。チョッキを着て、懐中時計を持っているが実は壊れている。穴に入る前と後では服装が違い、入る前はスーツで、入った後に家で着替えた時はエリザベスカラースタイル。一人称は「わし」または「私」。

- イモムシ(Caterpillar)
- 水たばこをふかし、煙を吐きながら不思議な歌を歌っているイモムシ。一人称は「わし」。毛虫と呼ばれても本人は気にしていない。アリスにキノコの秘密を教える。そしてちょうちょに変身する。
- ハートの女王(Queen of Hearts)
- 本作のディズニー・ヴィランズ。大柄でわがままで怒りっぽい帝政国家の元首。「首をはねよ!」が口癖。下着のパンツの柄もハート。一人称は「私」。
- ハートの王(King of Hearts)
- ハートの女王よりも身長と立場はだいぶ下。女王とは逆に小柄で気弱で、女王には逆らえない。
- トランプ兵(Card Guards)
- トランプ兵。ハートの女王に処刑されっぱなし。
- チェシャ猫(Cheshire Cat)
- 紫とピンクの縞模様で、消えたり現れたりする、神出鬼没のネコ。アリスに不思議の国では誰もがいかれていることを話す。チェシャ州との関連は諸説ある一方、チシャ(=野菜のレタスの意)との関係は不明。一人称は「おれ」または「私」。

- トゥイードルダムとトゥイードルディー(Tweedledum and Tweedledee)
- 二人の違いは襟の刺繍部分の名前。アリスに無理やりセイウチと大工の話をする。
- セイウチ(Walrus)
- セイウチ。カキを食べてしまったことで大工の怒りを買い、逃げ回った。一人称は「オレ」。
- 大工(Carpenter)
- セイウチの友人。料理の腕もお手の物。カキを勝手に食べたセイウチに対し立腹していた。
- カキ(Oysters)
- 海に住む牡蠣たち。セイウチに食べられた。
- 年老いたカキ(Mother Oyster)
- 老婆のカキ。セイウチに気絶させられた。
- マッドハッター、三月ウサギとドーマウス(Mad Hatter, March Hare and Dormouse)
- マッドハッターと三月ウサギの二人で「お誕生日じゃない日(吹き替え:なんでもない日)の歌」を歌いながらお茶会をしている。この2人が「2日遅れてる」と言って、白ウサギの大切な懐中時計を壊してしまう。たくさん並んでいるポットの中の一つにドーマウスが入っており、「ねこ」という言葉を聞くと驚いて錯乱するが、ジャムを鼻に塗られるとおとなしくなる。

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声の出演
要約
視点
- TBSテレビ版:1979年4月4日『ディズニースペシャル』枠で初放送(19:30-20:55)
- ソフト版:1984年発売のVHSに初収録。以降のソフトにも数度の追加録音(下記参照)を経て収録され、Disney+などの配信にも使用。
※キャラクターの歌唱部分に関して、日本語吹き替えは台詞部分の声優とは異なる人物が担当している。TBS版ではボニージャックスとミンツが担当した。
ソフト版吹き替えの差異
1984年から1987年に発売されたソフト(ポニー・バンダイ版)、1991年から2005年に発売されたソフト(以下、BVHE版初代)、そして2005年以降に発売されているソフト(以下、BVHE版2代目)では、それぞれ音声の一部に差し替えが行われており、内容がわずかに異なっている[2]。
BVHE版初代では、一部の歌のみ変更が行われた。
BVHE版2代目では全編に亘って台詞・歌詞が改訂されており、一部のキャラクター名や単語の訳が以下のように変更された。なお、初出となったDVD『ふしぎの国のアリス スペシャル・エディション』には、パッケージ裏面に「一部を、現在の日本語表現に合うよう新しく収録しています」との記載がある。
- 単語
- 「いかれてる」「いかれ」(“mad”の訳語)→「へんてこ」「変」
- 「デブ」(“fat”の訳語)→「怒りんぼ」
- 「殺される」→「クビになる」
- キャラクター名
- いかれ帽子屋 → マッドハッター
- 眠りネズミ → ドーマウス
- 毛虫 → イモムシ
- 大工 → 大工さん
- クローケ → クロッケー
変更箇所の追加録音には、基本的に当時の声優が続投した。ただし、引退などの事情から一部の声優は変更されている。
1973年公開時の吹き替え
1973年に「ウォルト・ディズニー・カンパニー創立50周年記念映画」として本作がリバイバル上映され、その際に日本語吹き替え版が新規制作された。1987年にもリバイバル上映され[注 2]、1973年版と同一の音源で公開された。
出演は愛川欽也[1]や山田康雄など。ただし、公開時のポスターやパンフレットには吹き替え声優の記述が存在せず、2007年時点では配役の詳細が不明となっている[3]。
スタッフ
映像制作
日本語版
- 字幕翻訳:吉田由紀子
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楽曲
要約
視点
未発表曲
本作にはリプライズを除き、17曲の挿入歌が使用されている。映画の製作当時、これらの17曲以外にも複数の曲が制作されていたが、結局、不採用にされて、長らく日の目を見ることはなかった。
1999年、アメリカ合衆国で発売されたDVD版に特典映像として、ボツになった曲の1つ「I'm Odd」(チェシャ猫のテーマソング)が収録された。
当時、オリジナル版の映画(1951年)でチェシャ猫の声を演じたスターリング・ホロウェイは1992年で亡くなっており(1989年にすでに引退していた)、代役としてジム・カミングスがチェシャ猫の歌声を担当した。
レコード
1972年、キングレコードから「ディズニーランド・レコード」シリーズの一環として、ドラマパート付きのサウンドトラック盤が発売された。
配役は独自のもので、編曲は日本で行われたオリジナルのものとなっている。
キャスト
スタッフ
- 構成・脚色・演出 - 東龍男
- 訳詞 - 山上路夫
- 編曲 - 大柿隆
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製作
ウォルト・ディズニーはカンザスシティの失敗したスタジオを閉めてロサンゼルスに拠点を移し、1923年から1927年までアリス・コメディという短編オリジナル動画を作成し、この作品で商業的に始めて成功することができていた。当時の英国法により1907年頃にルイス・キャロルの原作が著作権満了[4]となり、翻案などにすでに制約がなかったことを1932年頃にウォルトの弟のロイ・オリバーが聞きつけたため、女優を使ったリメイクの作成を検討し始めた。ディズニー自身も、夢の中で生き、世界がなぜこんなに奇妙なのか理解できない少女、というアイデアを気に入っていた[5]という。
スタジオは「鏡の中のアリス」に題材を得て、ミッキーマウスを主人公にした短編を1936に制作した。1938年にはアメリカ映画協会に「ふしぎの国のアリス」について1度申請書を提出している。しかし原作の難解さからシナリオ作りは難航し、多くの脚本家に依頼しては逃げられ、あるいはトラブルを引き起こした。1939年9月20日のストーリーボードにはウォルトが自身の罠にかかってしまい、脚本を完成させることは決して出来ないと考えていたことが分かる[6]。それでも1946年末にようやくスタジオはアリスの映画化をフルアニメーションで制作することを正式に決定し、1947年の会社の年次報告書では次年度に公開する意向を示した。しかし1948年初頭には進捗が早かった「シンデレラ」を優先することとなった。しかし本作も本格的な制作は1948年頃に始まったと考えられている[7]。
本作は実際の役者がロトスコープを使用している[8]。アリスの声は当時13歳のキャサリン・ボーモントが演じた。また、ロトスコープの演技もキャサリンが演じている。
原作小説の持つ言葉遊びの要素を減らした、カラフルで健全な雰囲気のミュージカルとなっている。トゥイードルディーとトゥイードルダムなど『鏡の国のアリス』の登場キャラクターやエピソードを一部含んでいる。ハートの女王も原作小説と『鏡の国のアリス』の赤の女王を合わせたキャラクター造形となっている。「ほうき犬」は原作にはないオリジナルキャラクターである。
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批評
要約
視点
前年公開の『シンデレラ』のようなプリンセスものを期待していた聴衆の評判は悪く、批評家からも酷評された。原作自体が脈絡がなく奇想天外な展開であり、一方で言葉遊びや暗喩といった原作の要素は難解として除去されたため、大人向けとしても子供向けとしても否定的な評価に終始し、興行収入としても失敗とされた。1951年の公開時の全米での収入は240万ドル[9]であり、映画の制作予算は300万 [10]ドルだったため、スタジオは赤字を計上した。ディズニーの存命中に劇場で再公開されることはなく、短縮版などがテレビで時折放映されるのみであった。しかし1974年の劇場での再公開のさいには全米で350万ドルの収益を上げた[11]。
レビュー誌の論評は、アメリカ系はおおむね穏当でありイギリス系は痛烈であった。ニューヨーク・タイムズ紙のボズレー・クロウザーは「(原作者と挿画家の)キャロルとテニエルのイメージにあまり拘らず、ディズニーは奇抜に演出しており感銘を受けた。ある程度のゆっくりとした、しかし不均一なペースに耐えられるのならば、この映画は楽しめるはずだ。音楽は美しく甘美で、色彩は素晴らしい」と評論した[12]。イギリスの映画評論家や文芸評論家はイギリス文学の名作をディズニーはアメリカナイズしていると非難した[13]。1951年8月4日付のイギリス高級紙ニュー・ステイツマンのウィリアム・ホワイトベイトは「このディズニー映画は間違いなく最悪の作品で、冒険をディズニー作品のありきたりな表現ばかりの貧弱な展開に落とし込んでいる。この無能さは不快感しか与えない」とまで批判した[14]。
ウォルト・ディズニー自身はこの映画にはheart(心、中心)が欠けていたから失敗した、と回想したという[15]。これは2つの意味を含んでおり、1つはそのままの意味であり、バラエティ誌は「キャロルの作品に含まれるファンタジーを最もよく表現した、真摯な魅力と幻想的な美しさが表現されている。しかし、本物の心や温かさが作品には見られない。これは原作の2冊の本に欠けている要素であり、しかし以前のディズニーの長編アニメでは常に不可欠な要素であった」と述べている[16]。
もう1つは制作の観点で、本作に参加したアニメーターのウォード・キンボールによると、本作は5人の監督が分担して制作したため、それぞれが他の監督を出し抜いて自分のシーンを作品のなかで最も印象的かつクレイジーなものにしようとしていた。これが作品に逆効果をもたらしているという[17]。同じく本作にアニメーターとして参加したフランク・トーマスとオリー・ジョンストンも本作を失敗と評価し「ルイス・キャロルの想像力とその登場人物を完璧に捉えきることができた者は誰も居なかった」と述べた[18]。
しかしその後の1970年代以降のリバイバル上映で、次第にそのシュルレアリスム的な映像が再評価されることになる。また難解極まる原作のための「入門(書)」としての評価も定着し始めてている[19]。
金髪で青と白のエプロンドレスを着たアリスは、その後のアリスを題材にした映画や絵本のアリス像や、ロリータファッションに影響を与えた[20][21]。

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テレビ放送
小説
- 著:テディー・スレイター/訳:橘高弓枝『ふしぎの国のアリス』偕成社、1998年5月1日。ISBN 4037911302。
絵本
- 訳:立原えりか/中村光毅、佐藤悦夫、片山径子『ふしぎの国のアリス』講談社〈ディズニー名作童話館①〉、1987年10月8日。ISBN 4061942514。
- 訳:森山京『ふしぎの国のアリス』講談社〈ディズニーおはなし絵本館⑦〉、2002年9月20日。ISBN 4062714671。
脚注
関連項目
外部リンク
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