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江ノ島電鉄

日本の鉄道事業者 ウィキペディアから

江ノ島電鉄
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江ノ島電鉄株式会社(えのしまでんてつ、: Enoshima Electric Railway Co., Ltd.)は、神奈川県藤沢市片瀬海岸一丁目8番地に本社、同市片瀬海岸一丁目4番地の江ノ島駅に本店を置く鉄道事業者である。一般には江ノ電(えのでん)と略称される。神奈川県内で鉄道を1路線(江ノ島電鉄線)運営している。小田急電鉄の完全子会社であり、小田急グループに属する。

概要 種類, 市場情報 ...

鉄道事業、一般旅客自動車運送事業の管理の受託事業(実際の運行業務は関係会社の株式会社江ノ電バスが行っている)のほか、江の島灯台など観光業、ビルなどの賃貸を行う不動産業なども営む。かつては子会社によって百貨店業も営み、藤沢駅には駅ビル形式で「江ノ電百貨店」が入居していたが、1985年からは小田急百貨店に賃貸され、2019年からは「ODAKYU 湘南 GATE」の店名で営業している。

正式社名の「江ノ島電鉄」で呼ばれる例は少なく、一般には「江ノ電」と呼ばれ、自社でも積極的に「江ノ電」と呼称している[注釈 1]

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歴史

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鉄道事業

要約
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鉄道路線図

沿線には湘南江の島や、かつて幕府があった鎌倉などの豊富な観光資源と名勝旧跡が多数存在する。アクセス面でもJRや小田急の有料特急も含めた東京都心からの直通列車を多く抱えるターミナル駅である藤沢駅を始発駅、横須賀線が直通する鎌倉駅を終着駅に持ち非常に良好といえる。さらに江ノ電自体が特徴的で被写体になりやすいところから、テレビドラマグラビア写真の撮影に利用されることが非常に多く(「江ノ電を題材とした作品」の節を参照)、『SLAM DUNK』などの漫画にも時折登場し、その認知度は日本国内のみならず、日本の代表的な観光鉄道路線として世界的にも知られた存在といえる。特に『SLAM DUNK』に登場した鎌倉高校前駅の踏切は外国人による観光スポットとなっており、踏切付近に鎌倉市の警備員が配置されるなど安全対策が強化されている[30][31]。一部車両は、ワンマン運転装置を有するものの、2025年現在、ワンマン運転は実施されておらず、全列車に車掌が乗務する。

2010年3月31日初電より全通100周年を記念して、鉄道係員(駅係員・乗務員)の制服を一新した。黒に近い濃紺の上下で、上衣袖部に江ノ電カラー(緑と黄色)のバイピングが入り、襟部にも同様のバイピングが入る、最近の他社局の鉄道係員の制服に共通するものとなっている[注釈 4]。これにより、同社の鉄道係員と傍系バス会社係員の制服が完全に分かれた。

路線

鉄道路線についての詳細は以下の項目を参照のこと。

後述の併用軌道区間だけでなく、わずか10 kmほどの短い路線でありながら、以下のような多数の特徴的な鉄道風景がある。

  • 駅ビル2階にあるドーム型ホームの駅(藤沢駅)
  • 近代的な作りの高架区間(藤沢駅 - 石上駅間)
  • バラスト敷設式の鉄橋(鵠沼駅 - 湘南海岸公園駅間)
  • 半径28 mの急曲線(江ノ島駅 - 腰越駅間・軌道を除き鉄道路線としては日本最急)
  • 道路と鉄道線が同一平面を共用するものとしては日本唯一の鉄道道路併用橋(腰越駅付近)。
  • 建築限界ぎりぎりにある民家(腰越駅附近)
  • 軌道内に向けて門のある民家(元は道路に線路を敷いた軌道線の名残りで線路横断が前提)
  • 海岸線を併走する区間(腰越駅 - 稲村ヶ崎駅間)
  • 一世紀を越えるレンガ積みのトンネル(極楽寺駅 - 長谷駅間)
  • 本線上にある分岐器の多くが発条転轍器であり、交換駅等を出発する列車は自ら割り出して進出して行く(逆に側線は電動式)。また、レールに火を当てる旧式の融雪器(融雪カンテラ)も一部で現役[32]
  • 本線上での増解結作業(通常は、極楽寺駅・江ノ島駅で実施される)
  • 改札口における改札鋏の使用(スタンパーを使用していない)
  • 硬券の常時取り扱い(入場券のみ)
  • ホーム長不足によるドアカット(腰越駅のみ)
  • 構内踏切(稲村ヶ崎駅のみ。江ノ電の駅には跨線橋の類は一切無い)
  • 列車交換を行うための信号場峰ヶ原信号場)。
  • 急曲線を通過するため、全編成が2両1組の連接車
  • 鉄道線ながら路面電車並みの低い平均速度(約22 km/h・表定速度は日中約18 km/h)
  • 全駅がバリアフリー(ただし一部は、駅係員勤務時間帯のみ。これはリフト等の操作が必要な駅があるため)
  • 併用軌道を擁する鉄道線のため、道路上(江ノ島駅付近歩道上)にも鉄道信号機(江ノ島駅上り場内の遠方信号)が設置してある。

軌道(路面電車)か鉄道かについての議論

江ノ電の路線は軌道法制(軌道条例軌道法)に基づく軌道(路面電車)として開業した。その後、第二次世界大戦下における国防を考慮した国策[注釈 5]において1944年11月に地方鉄道法鉄道事業法の前身となる法令の一つ)による鉄道への変更が許可され[6][33]、終戦後の1945年11月に実施された[34]。そのため、鉄道事業法第61条(地方鉄道法においては第4条)で併用軌道を原則禁止されている鉄道路線でありながらも、道路上を走る併用区間(4箇所延980 m)を有する。

鉄道としては、やや小振りな車両や江ノ島 - 腰越間などで道路上を走る区間があることにより、現在でもメディアなどでは、「路面電車」として江ノ電が取り上げられることが多い。軌道として開業し、その後戦時体制下の行政簡素化によって準拠法の変更がなされ、全線にわたって鉄道路線となっているという背景から鑑みれば軌道(路面電車)としてそのように捉えるのも強ち間違いではない。行政上は鉄道路線であるためこの区間については、鉄道事業法第61条2項に基づく「鉄道線路の道路への敷設の許可手続を定める政令」による手続きを経て、国土交通省から許可を受けている。よく、この区間を「長大踏切」と記載された文献も見掛けるが、前述のような理由により、「長大踏切」ではない。また同様に、道路上にも道路交通法で定められた標識「踏切あり」が1本も無いことから、同法の上でも踏切ではないことが明白である。

なお、一般道路を自動車と同じ路面で走る鉄道としては、日本で唯一の路線である[注釈 6]。また七里ヶ浜付近や稲村ヶ崎付近に見られる、道路片側に専用のバラスト軌道を敷設した区間も併用軌道であり、その特徴として道路と軌道の間はフェンスなどで仕切られていない。

未成線

  • 懸垂式鉄道線
  • 茅ヶ崎・辻堂・鵠沼線
    • 大船から鵠沼、辻堂を経て茅ヶ崎へ至る路線[37]。破綻した別会社から事業を引き継ぎ、このうち辻堂 - 辻堂海岸と鵠沼 - 茅ヶ崎は一部着工された[38]
  • 江の島・大船線
    • もともと鵠沼 - 大船の計画であった計画線が変更されたもの[39]。他事業者へ権利譲渡後[40]、いったん放棄されたが、のちに湘南モノレールとして実現[36]
    • 権利譲渡後、戦後まもなく江ノ島から(おそらく神奈川県道304号に沿う形で)腰越、深沢を経て大船に至る路線、藤沢から深沢を結ぶ支線の新規2路線が計画され、実際に免許申請したという資料が残っている[41]

車両

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最新車両の500形
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連節台車
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日本の1,067 mm軌間の鉄道線で最後の新造吊り掛け車・1201F

現存する車両の特色としては、すべての編成が2両1組の連接車であり[注釈 8]、これを単編成の2両編成、もしくは2編成をつなげた4両編成[注釈 9]で運行されている。それ以外にも通勤通学から観光需要まで受け持つ路線の性格や運用上、車両に求められる物は多く、その特殊性から現有車はすべて自社発注車であり、東横車輛電設(現・東急テクノシステム)で製造された300形305編成をのぞき、すべてが東急車輛製造製(現・総合車両製作所)である。なお、車両の呼称にあっては、小田急電鉄や京急電鉄と同じく「形(がた)」であり、系(けい)ではない。

足回りの大規模更新や機器流用、製造当時では既に旧式となっていた機器類を採用する例も多い。ただしほとんどの編成にLCD車内案内表示器車椅子スペースが完備されるなど車内については近代化が進んでいる。

軌道時代の名残りや併用区間での視界確保のため、最新車両に至るまで中央運転台方式を踏襲している。数少ない例外としては、東急玉川線からの転入車で左運転台式の600形(旧東急デハ80形を改造改番)が挙げられる。

機器面については、最古参の305編成は、集電装置が菱形パンタグラフ式で、マスター・コントローラーは左が力行・右が制動のツーハンドル式、その他の車両は集電装置がシングルアームパンタグラフ式で、マスター・コントローラーが右手操作のワンハンドル式である。また、いずれの車両も総括制御が可能であることに加えて、ブレーキが電気指令式で統一されているため、ワンマン装置が設置されている車両を除き形式間の区別無く連結して編成を組むことができる。

305編成は車長が短いため(他車に比べ編成あたり△1.3 m)繁忙期には車庫で休む傾向が多い。同編成は機器面では中空軸平行カルダン駆動方式で、冷房装置も搭載して一応の近代化がなされているが、車内においては鋼製車体と木張りの床の組み合わせにバス窓を備えた前世代的な車両であり、現役最後の旧世代車両ということもあり人気を博しており、広報やグッズでも最新車両の500形や最多数の1000形を差し置いて大きくプッシュされている。

1000形1001, 1002, 1101, 1201各編成(1979年 - 1983年製)は、駆動方式が製造当時新造の旅客車においてはすでに廃れていた吊り掛け式であり、特に1201編成は現状1,067 mmゲージの普通鉄道用の電車では、同方式を採用した日本国内向け最後の新造車両である。なお、1001編成と1002編成は、1980年に中小私鉄としては初めてブルーリボン賞を受賞している[注釈 10]

1000形系列と305編成の室内冷気排出口に設置してある、ステンレス製の冷気調整蓋は、JR東日本から113系電車の発生品を譲り受け装備したものである。

車両の新旧に関わらず、現在ではすべての編成に英語放送付きの自動放送装置(運用はされていないが、中国語や韓国語放送も可能)が設置されている。現在設置されている自動放送装置は音声合成式で、腰越駅でのドアカットや途中駅での増解結・車両交換についても英語放送が行われる。

1982年に300形と旧500形をサンオイル広告電車としてブロンズ色塗装にしたのをきっかけに、車体全面を塗装やラッピングした広告電車が数多く登場している(契約終了後も塗装車は全般検査まで広告主のカラーリングで運行)。ただし、広告自体は、鎌倉市の屋外宣伝広告物に対する条例に拠る規制で、腰板部分に限っての掲示となる。

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開業95年を記念して造られた「レトロ車両」10形

中規模の鉄道会社ではあるが、洗車機を持たずに手洗い洗車で対応している。これは下水施設など行政の遅れで洗車機が設置できないという事情もあるが、環境面も考え水道水や環境型洗剤だけによる手洗い洗車で対応しているためでもある。

現有車両

付番法則としては、3ケタ以上の系列の場合は鎌倉方が系列+50(1000形の場合は1050形)となるが、2ケタ形式(10・20形など)は鎌倉方が系列+40と変則的になる。

導入予定の車両

過去の車両

*を付したものは保存車が現存する車種。

姉妹提携・連携協定

嵐電との姉妹提携

2009年10月14日より京福電気鉄道(嵐電)と姉妹提携している[22][23]。これは、京福が開業100年、江ノ電が全通100年を翌年に迎えるのを記念し、同じ古都を走る路面区間を持つ鉄道会社同士ということで始まったもので、日本国内の鉄道会社同士がこの様な姉妹提携を締結するのは初めてのことである[注釈 12]。なお、あくまでも誘客などの営業的な提携に過ぎず、資金面や業務的な提携ではない。

台湾の鉄道との連携協定

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江ノ電と台鉄平渓線との共同送客を伝える展示(台湾台北駅コンコース)

2013年4月23日に台湾鉄路管理局と観光連携協定を締結し、一方の使用済乗車券を掲示する客にもう一方の未使用乗車券を無償提供するキャンペーンを2016年まで行った[注釈 13][24][43]。これをふまえ、翌2014年7月には台湾観光協会や江ノ島電鉄、チャイナエアライン、神奈川県の4者が観光促進協定に調印した[43][注釈 14]。2016年3月15日には台湾鉄路管理局と友好鉄道協定を締結し、同年5月1日から2018年3月31日まで、相手方の使用済み一日乗車券との引き換えで沿線施設等の特典付ガイドブックを配布するサービスを実施した[26][45]

2016年6月には同様の観光連携協定を高雄捷運公司と締結し[46]、相手方使用済み乗車券と前述のガイドブックの交換サービスを7月15日より開始し[27][47][48]、また、同月14日より7月末まで高雄捷運駅構内では「好きです江ノ電」の到着メロディと日本語での案内放送を流した[49]

運賃

大人普通運賃(小児半額・10円未満切り上げ。以下1日乗車券なども特記なければ同様)。ICカード・きっぷ共に同額。2019年10月1日改定[50][51]

さらに見る キロ程 (km), 運賃 (円) ...
1日乗車券
  • のりおりくん(800円)
  • 鎌倉フリー環境手形(900円)
江ノ電のほか、周辺の江ノ電バスと京急バスが利用できる。
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バス事業

観光業

江の島シーキャンドル(展望灯台)・江の島エスカー

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遊覧船上から見た江の島シーキャンドル(展望灯台)と江の島(2009年5月2日)
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江の島エスカー(2010年9月18日)

江の島シーキャンドルおよび江の島エスカーは、江ノ島電鉄が所有・経営する、江の島の島内にある展望灯台および上りのみの屋外エスカレータである。

江の島シーキャンドルは高さ59.8 m(海抜119.6 m)で、2003年に旧灯台を建て替えたものである。光到達距離は23.0海里(約46 km)で民間灯台としては日本国内最大級である。第48回神奈川建築コンクールにおいて一般建築部門奨励賞受賞を受賞した。中にはカフェショップ、グッズショップ、藤沢市郷土資料館がある。毎日、日没後にライトアップが行われており、これはアジア初の省エネ高照度LEDによるものである。周辺は江の島サムエル・コッキング苑となっている。休日などは音楽ライブなどのイベントもよく行われている。以前の展望灯台は、読売新聞社が読売遊園(戦後二子玉川園に改名)に建てた戦時中のパラシュート練習塔を移設改修したものであった[52]

江の島エスカーは、1959年に開業した日本国内初のもので、高低差46mを4連で結ぶ。全長は106m。1連目と2連目が「1区」、3連目が「2区」、4連目が「3区」と呼ばれ、2区もしくは3区からの利用も可能である。また、1区出口と2区入口は少し離れており、辺津宮に立ち寄ることも可能である。所要時間は4分(看板には5分とある)。有料。知らない人にはロープウェイか何かのように誤解されることも多く、エスカーを乗り場へのエスカレータだと思い込んでしまう者も多く、また有料だということを不思議がる者もいる[53]。なお、エスカーを利用せず参道を登ることも可能である。北緯35度18分02秒 東経139度28分50秒

サムエルコッキング苑

藤沢市と共同で江の島サムエル・コッキング苑を運営している[54]

その他

江の島島内で、江の島ゆうひ茶屋(スタンド飲食)、片瀬海岸で駐車センター(江ノ電駐車センター)、イタリアンレストランのiL CHIANTI CAFEを営業している[54]

江ノ電駐車センターの駐車5時間と大人2名の江ノ島電鉄線江ノ島 - 鎌倉乗り放題をセットにした「江の島パーク&レールライド」を発売している(7月・8月は発売停止)[55]

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オリジナルグッズ販売

オリジナルグッズの製作販売にも力を入れており、模型や文具はもちろん、ミネラルウォーターや衣料品、クッキー・パンなどの食料品にも至る品揃えがあり、さらに社外においても『江ノ電』ブランドにこだわった衣料・食品・玩具・文具など多数の品物が存在し、鎌倉宮など鎌倉市内の社寺では『江ノ電お守り』まで販売しているほどである。また、2008年7月から9月までの期間限定で江ノ電史上初となる駅弁も販売された[56]

オリジナルグッズの専門店「江ノ電グッズショップ」が鎌倉駅・江ノ島駅・藤沢駅にあり、傍系の江ノ電エリアサービス(旧・江ノ電商事)がネットショップも立ち上げている。また、各地の鉄道展などで客寄せの一番候補としてグッズショップを展開することもあり、関西方面でも実績がある。

他の企業とのコラボ商品も多く、その数は他の鉄道事業者の追随を許さないほどである。

江ノ電を題材とした作品

テレビドラマ
テレビアニメ
  • SLAM DUNK - 江ノ電沿線の高校バスケ部が舞台になっており、オープニングで江ノ電の車両が通過する鎌倉高校前1号踏切が登場し、同作の国際的なヒットにより世界的な観光名所になっている。
  • ハナヤマタ - 江ノ電沿線が舞台になっており、オープニングで江ノ電の車両が登場している。また、2014年にはコラボイベントが実施され20形22編成がヘッドマークを付けていた。
  • 青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない - 江ノ電沿線の高校が舞台になっており、江ノ電の車両や駅ホームが重要な物語展開の舞台として登場している。
ゲーム
  • 電車でGO! 旅情編 - 江ノ電を運転するシミュレーション。
  • シルバーレイン - PBWだが、300形の一部が私立の小中高一貫校所有で主に小中高一貫校に入学および転入生専用車両として運用する設定で登場。
書籍
音楽
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労働組合

有価証券報告書によれば、労働組合の状況は以下の通り[57]

さらに見る 名称, 上部組織 ...

脚注

参考文献

外部リンク

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