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科学における不正行為

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科学における不正行為(かがくにおけるふせいこうい、: scientific misconduct)とは、科学学問としての規範や、研究を行う際に守るべき研究倫理基準に対し、違反する行為のことを指す。研究不正(けんきゅうふせい)ともいう。

定義

国によって異なる。

  • 日本(2014年):研究者倫理に背馳し、研究活動及び研究成果の発表において、その本質ないし本来の趣旨を歪め、科学コミュニティの正常な科学的コミュニケーションを妨げる行為[1]
  • アメリカ(2000年):研究の企画、実行、評価および結果の報告における捏造・改竄・盗用[2]
  • デンマーク(1992年):故意または重過失により、科学的メッセージの改竄や歪曲あるいは科学者に対する誤った信用や注目をもたらすこと[3]
  • フィンランド(1994年):科学コミュニティに対して捏造、改竄、または盗用された観測または結果を提示すること、および健全な科学的慣行に違反すること[3]
  • ノルウェー(1994年):研究の企画・実行・報告における確立した倫理的研究慣行からの重大な逸脱のすべて[3]
  • スウェーデン(1997年):データの捏造、他の研究者の原稿や企画書や出版物からのデータ/文章/仮説/方法の盗用/剽窃などの方法で、故意に研究プロセスを歪曲すること[3]

捏造・改竄・盗用(英語の頭文字をとってFFPと呼ばれる)のみに絞るアメリカの定義が最も狭義である。但し、アメリカは、他の国では研究不正として扱われる行為を「懸念ある研究行為」(questionable research practices)と呼ぶことで問題提起を行っている[4]

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よくある誤解

再現性の欠如との混同

再現性の欠如はしばしば研究不正として捉えられるが、これは別個の概念である[5]。但し、再現性がありコアデータのインパクトも大きい論文の場合、研究不正が看過されることはある。例えばメンデルの遺伝法則の論文は統計学的に疑問視されていたことがあるが[6]、疑問視されていた最中においても賞賛された[7]。また、日本の衆議院では、匿名Aの事件の際に、研究不正の調査に再実験が含まれ得るとの答弁が文部科学省の政務官から2015年5月19日になされている[8]。文部科学省が2006年に作成した研究不正調査についてのガイドラインにも、再現性を示す機会を保障するとの記載が含まれている[9]

論文撤回との混同

日本における研究不正の深刻さが、Retraction Watchが作成する個人別撤回論文数ランキング[10]の上位の大半が日本人であることを根拠に主張されていることがしばしばある[11][12][13][14][15][16][17][18][5][19][20][21][22][23][24]。しかしながら、論文が撤回される理由は研究不正だけではない。また、不正論文を撤回することは、不正論文を看過することより倫理的に望ましい行為である。撤回論文数が多くなる国を目指すべきという考え方もある[25]。撤回論文数のランキングの解釈は慎重に行わなければならない[26]

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分類

行為の内容

  • データの捏造(ねつぞう、Fabrication)
  • データの改竄(かいざん、Falsification)
  • データの盗用(とうよう、Plagiarism)・剽窃(ひょうせつ)
  • 他の科学者のアイデアの盗用

定義の項目で述べたように、これらの一部は国によっては研究不正には当たらない[4]

発生領域

科学における不正行為は、科学コミュニティ内部の問題、とりわけ出版された学術論文の問題としてとらえられることが多い。しかし、科学コミュニティの外部でも科学的知識の伝達・利用は日常的におこなわれている。そのため、たとえば学校での教育企業による商品開発広告特許等の知的財産権の取得(後述)、政府等の機関への情報提供、マスメディアインターネットでの広報など、さまざまな領域において科学的メッセージの歪曲などの不正は発生する。

頻度

2002年にアメリカ国立衛生研究所がアンケートを行ったところ、33%の人が過去3年間に何らかの不正行為をしたことがあると回答した[27]。2013年の日本分子生物学会のアンケートでは、10.1%の人が所属研究室で研究不正を目撃したことがあると回答した[28]

近年登場した論文工場[29]捕食雑誌[30]により、原理的にはこの世の100%近い論文が完全な虚偽論文になる可能性がある。日本分子生物学会の欧文誌では、2020年の時点で投稿論文の過半数が論文工場由来と推定されている[31][32]

捏造・改竄・盗用

エリザベス・ビクは、20,000報の論文を目視した結果、4%の医学論文に不自然な改変や重複使用が疑われる画像データを見つけたことを2016年に発表した[33][34]。疑惑画像が見つかる確率が最も低い国は日本だった[34]

二重投稿

2008年のNature誌の記事では、発表論文の1%程度が二重投稿との推計が紹介された[35]

ギフトオーサーシップ

2020年~2021年に行われた調査によると、貢献のない論文の著者になった自覚があると回答した研究者の割合は、米国では約55%、欧州では約69%であった[36]

再現性の欠如(参考)

2012年、製薬企業アムジェンが調べたところ、有名なガン研究の論文の89%に再現性が無かった[37]

2015年、有名な心理学の論文のうち再現が取れたのは39%という報告がなされた[38]

2021年、ガン研究の有名論文53報に掲載された193個の実験のうち半分以上の実験について再現を確認できなかったという報告がなされた[39][40][41]。実験条件を問い合わせても著者から協力が全く得られない割合は32%であった。

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深刻さ

研究不正問題の深刻さについては、肯定的な意見と否定的な意見が存在している。

肯定的

  • 2013年の日本分子生物学会のアンケートでは、97.5%の人が研究不正は大きな問題だと思うと回答した(「ライフサイエンスにおいて、研究不正は大きな問題だと思いますか?」という質問に対して、81.6%が「そう思う」、15.9%が「ある程度そう思う」)[28]
  • 2015年1月30日、文部科学大臣下村博文は、「STAP細胞論文をはじめとする研究不正、これは科学技術に対する国民の信頼を揺るがす問題であると深刻に受け止めております」と記者会見で述べた[42]

否定的

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原因

2013年の日本分子生物学会のアンケートでは、個人に原因があると考える人と構造に原因があると考える人がほぼ同数であった[28]

ドナルド・クレッシーによると、組織が絡んだ犯罪は、「機会(実行を可能にする機会・手段)」「動機(実行に至った事情)」「正当化(自らを納得させる理由付け)」 の3つの要素が満たされた時に起こる。研究不正の場合、このうち動機については「publish or perish」と呼ばれる研究者の過酷な競争に原因があるとする見方がある[44]。近年、特に日本では大学改革が行われた2004年以降、大学や研究者は、暗闇の中で一筋の光を見つけていくような[45]知的で自由なものから、発表論文のメトリクスで定量的に評価される産業的な監視対象[46][47][48][49]に変質しているのである。

査読に原因があるとする見方がある。論文業績が重視されるに従い査読が研究者の生殺与奪を決定するようになったため、査読のやり取りは、新しく生まれた知見を真剣に討議できる知的な楽しみから、生計を維持するための奴隷的な作業になった。研究室主催者の意向が実際には査読者の意見ということも多くなった。査読者のコメントによって研究不正が誘導され得るため、リバイス時は捏造のリスクが上がる[50][51]。2022年にeLife誌が査読過程におけるリジェクトの廃止を発表したこと[52]は、この原因を取り除くことにつながる可能性がある。

製薬企業等の特定の組織から研究費を受け取る場合、研究者はその特定の組織が有利になる論文を発表する傾向があると言われている(詳しくは利益相反を参照のこと)。Tansa(旧ワセダクロニクル)らが作成している製薬マネーデータベース『YEN FOR DOCS』[53]は、1割程度の学会理事が多額の金銭を製薬会社から受領していることを明らかにしている[54]

産業技術総合研究所夏目徹は、2008年の日本分子生物学会において捏造データが生まれる仕組みを4つに大別し[55](pp19-20)、話題となった[56]

  • ボトムアップ出来心型:個人の出来心によるデータ操作
  • ボトムアップ確信犯型:どうせバレないと考えて、意図的にデータを捏造する
  • トップダウン恫喝型:研究室のボスの考えたストーリー通りの結果を出すことを強制される
  • トップダウン洗脳型:捏造が研究室などの内部で奨励されている
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告発と調査

要約
視点

松澤孝明による数十カ国の分析によると、告発の受付と調査を担う研究公正システムは、タイプ1「調査権限を有する,国として立法化された集権システム」、タイプ2「研究資金配分機関や個々の機関とは異なる,監督のための法律によらない組織からなるシステム」、タイプ3「独立した研究公正監督組織やコンプライアンス機能がないシステム」の3つに分類される[57]。例えば米国はタイプ1を採用しており、研究公正局などが疑義の連絡や告発を受け付けて調査を行う。現状の日本はタイプ3を採用している。

日本の場合

告発先

不正の疑義に関する調査は研究者が所属する大学や研究機関が実施するのが原則である[58]。文部科学省や日本学術振興会などにも告発の受付窓口があるものの、告発文書を大学や研究機関へ回付するだけに留まる。

調査のプロセス

まず告発された研究機関内の研究者で構成される予備調査委員会により調査がなされる。本格的な調査が必要と判断された場合に限り、外部有識者を交えた本調査委員会が組織される。本調査で不正が認定された場合、研究機関は文部科学省及び研究資金配分機関に当該調査結果を報告するものとされている。

論点・問題点

タイプ3を採用していることによって、次の2つの問題が発生している:(1)調査の限界、(2)利益相反。

【調査の限界】

日本の大学や研究機関は、警察のような捜査権は有していない。そのため、被告発者の善意がなければ不正の証拠は提出されない。例えば東京大学分子細胞生物学研究所の事件では、最後まで調査に非協力的であった人たちは不正を認定されなかった[59]。このような本末転倒な状況を解決するため、捜査権を持つ警察が関与するべきという意見もある[60]。一方、あるノーベル賞受賞者は「証拠(実験ノート)を出さなければ不正とみなす」という意見を2014年の国会で述べた[61]。証拠を出さないことをもって不正を認定することの法的妥当性については懸念もあるが[62]、認定は可能との判例も地方裁判所で1例ある[63][64]

【利益相反】

告発を受けた研究機関には、不正を認定すれば自らの評価が悪化するという利益相反がある[65]。例えば、告発を受けた大学・研究機関内部の研究者で構成される予備調査委員会が「論文の結論には影響しない軽微なものであるため不正はなかった」「掲載済みの論文に対する不正の疑いに関する調査は、当機構(研究機関)ではなく掲載した学術誌が責任をもって行うべき」といった解釈を行い、本調査を実施しなかった事例が2020年にあった[66]。このような利益相反の問題を解決するには、米国の研究公正局のような第三者機関の設置、すなわちタイプ3のシステムからの脱却が必要である。第三者機関は警察[60]でもよいかもしれない。日本でも第三者機関についての議論は行われてきたが[67][68]、「国の関与を強めると研究現場が萎縮する」とする意見も根強く、第三者機関の設置はこれまで見送られている[69]文科省幹部は匿名Aの事件の際に「(第三者機関が設置されても)告発が増えれば対応しきれない」とも述べている[69]

告発者

現場で遭遇した研究者が告発するケースもある。一方、自らとは無関係の論文を網羅的に調査する人(「data thug(データ刺客)」「scientific sleuth(科学探偵)」「literature watchdog(文献監視人)」などと呼ばれる)が告発しているケースも多い[70]。海外ではエリザベス・ビクやポール・ブルックス[71]などの顕名の人物が告発を担っているが、日本では実名を公には明かさない正体不明の人物がインターネット上の匿名掲示板などを利用して告発をしているケースが多い[72]。その正体不明の人物としては、11jigen匿名AOrdinary_researchersが挙げられるが、いずれも2020年には活動を休止した[70]

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対策

要約
視点

米国では1970年代半ばに研究不正が社会問題になったため、1980年頃から対策が進められてきた[73]。一方、日本では研究不正が表沙汰になることは最近まであまりなかった[8]。2013年のNature誌の記事においては、科学技術振興機構が研究不正を認定した数が1957年の設立以来ゼロであることが批判されていた[74]。そのような状態だった昔に比べれば、現状把握と対策が今の日本で行われていることは間違いない。一方、文科省の職員が、対策の方法に悩んでいることや、現状を深刻に見ていることが報道などで明らかにされている[75][76]。すなわち、現在の日本の対策は、十分効果があると評価されているわけではない。

教育

研究倫理教育は世界各国で行われている[77]。日本では、STAP事件を契機として、公的研究費を用いる研究者に対して受講が義務化された。公正研究推進協会(APRIN)という研究倫理教育を考える一般財団法人も設立された[78]。しかしながら、日本分子生物学会で研究倫理教育を担当していた東京大学分子細胞生物学研究所の研究室において大量の不正論文が見つかった事件[43][79][80]を踏まえると、研究倫理教育で防止できるとは考えにくい。事実、事態を受けて研究倫理教育をさらに強化していた渦中の東京大学分子細胞生物学研究所で、2016年に2件目の大きな不正事件が発覚した[81]。しかし、現在も有志は教育手法の模索を続けている[82][83]

実験ノートやデータの保管の義務化

実験ノートをしっかり書き、それを管理することが防止につながるとする意見がある。日本学術会議は、研究活動を記録した実験ノート、論文等を発表する根拠となった文書・数値・画像等、研究に関わる資料等を原則10年間保存することを義務づけるガイドラインを2015年に提唱した[84]

処罰

国により異なるが、刑事による収監[85][86]医師免許剥奪[87][88][89]が行われる場合もある。中華人民共和国では死刑も定められている[90]。日本では刑事罰は定められていないが、不正が公に認定された場合は何らかの人事処分と公的研究費申請資格の停止が行われることが多い。STAP事件のようにメディアに盛んに報じられた場合は、大きな社会的制裁を受ける結果になる(関係者が自死したケースも複数存在する[91])。

評価方法の改革

論文の定量的な評価に基づいている研究者の評価体系を、別のものへと変更する試みが欧州では始まっている[92]

エリザベス・ビクは、研究の評価体系を、再現性が確認された実績に基づくものに移行する必要があると主張している[93]。背景には、人工知能の利用拡大[94]によって、このままでは人間が真贋を見抜けない虚偽論文に学術界が占有されるという危機がある。

対策への苦言

研究不正への対策が進むと若手研究者などが萎縮しチャレンジ精神が失われるという意見もある[95]

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周囲の研究不正に気付く方法

キャリアの浅い人が業界の慣行と研究不正を区別することは、一般的には難しい[96]。多くの場合、かなりの時間が経ってから気付くことになる。

出版後査読の役割を果たしているPubPeerには、多数の論文について疑惑の指摘を含めたコメントが掲載されている[97]。PubPeerを著者名や論文のタイトルで検索し、コメントの内容を吟味して判断することは可能かもしれない。

Retraction Watchは撤回論文のデーターベースを作っている[98]。検索し、論文の様態や撤回の理由を吟味して判断することは可能かもしれない。

巻き込まれた時の心構え

弱い立場の大学院生やポスドクが研究不正に巻き込まれ、追試も出来ないような状態になると、過失がなくても多大な損害を受ける。もっとも大きな影響は、他人と協力することや科学全般についての絶望といった心の傷であると言われる[99]白楽ロックビルによると、政府や大学は、巻き込まれた大学院生やポスドクに対する手当や対応基準を用意していない。周辺の教員が個々に対応しているのが現状である[100]

The Lab[101]という研究不正に巻き込まれることを疑似体験できる米国の教材において、どのような選択肢を選んでも大学院生にはハッピーエンドがないことを科学技術振興機構は認めている[102]

仮に所属研究室の不正に気付いた場合は、研究室の運命を左右する問題を一人で背負うことは危険であるので、研究不正行為が行われている場から離れた後に信頼できる機関に情報提供することが望ましいとされる[103]。研究室から離れるには、研究不正を訴えるより人間関係の悪化を訴える方が容易と言われる[96]

内部告発は報復される危険性を伴う。告発により被告発者以外の組織構成員も被害を被る可能性があるため、報復する動機を持ち得るのは被告発者だけではない。純粋な被害者であっても、加害者の濡れ衣を着させられる可能性はある。データを捏造する人間や組織が無実の人の罪を捏造しない保証はない。

研究不正の疑惑がある研究室であっても、意義ある研究活動は可能かもしれない。例えば、疑惑が公に指摘されたり、論文撤回が行われたりしている研究室からノーベル賞の成果が生まれている例は多数存在する[104][105][106][107][108][109][110][111][112][113][114][115][116]

研究不正事件に巻き込まれてもキャリアが完全に閉ざされるわけではない。東京大学の研究不正事件に巻き込まれて博士号が取り消された学生が5年後に再び博士号を取得した例もある[117]

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具体例

要約
視点

全てを列挙することは現実的ではないので、(1)自殺者を含む死者を出した事件、(2)10名以上の健康被害を出した事件、(3)金銭的な影響が100億円を超える事件、(4)複数の国の複数の主要報道機関から数ヶ月以上記事が出稿された事件、(5)20報以上の論文に関わる事件、(6)過去に類似例のない事件、(7)極端に不適切な事後対応が行われた事件、(8)政府の政策や研究制度の変更を促した事件をここでは取り上げる。最終的に不正が認定されなかった事件を含む。

日本では2014年に複数の大きな事件が発生または終結し、STAP細胞問題などがメディアで盛んに報道されたことから、その時期の事件を2014年問題と総括することがある[118]

さらに見る 時期, 事件名 関係者名 ...
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参考:特許権・特許明細書における捏造

特許の審査においては基本的に書面主義が採られており、書類上の一貫性が保たれていれば、発明の実施可能性や記述の科学的な正確性について、査読追試などによる検証は行われない。このため、金銭・利益優先で「架空のデータ」を用いた出願などの問題行為がまかり通ってしまっているとの指摘がある[注 1]

これらの検証は、特許の審査においては書類上その発明が実施可能と認められない場合(特許法36条)や、発明の実施可能性について第三者からの情報提供があった場合(特許法施行規則13条の2)に行われ、特許法194条には、その手段として、有識者への調査依頼なども定められている。また、より一般的には、特許が認められた後において、第三者が発明の実施可能性を理由として特許無効の審判を提起した際に行われる。さらに、刑事上は、虚偽の記載などの詐欺行為によって特許を受けた場合には、いわゆる特許詐欺罪に問われ、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科せられる(特許法197条)。特許詐欺罪は特許審査官を欺罔する罪であり、国家的権威・機能の阻害から保護することが立法の目的[289]である。

出願する上で重要となるのは、多くの観点からの請求項を含む特許請求の範囲(クレーム)や、上位概念的な請求項から実施例に対応した請求項まで多段階にわたる特許請求の範囲を、出願時に作成することである。

幅の広いクレームを作成することによって、より権利範囲の広い特許を取得することができるため、実際には実験を行っていない範囲についてまで実施例として記載するなど、明らかに科学的手法を逸脱した記述の体裁が積極的に採用されることがある[要出典][注 2]。また、技術的な詳細の機微(ノウハウ)を可能な限り隠匿することで追従者の追跡を遅らせる意図から、実際には実験を行っていないにも関わらず、利用可能性のある要素すべてを網羅したり、数値範囲を広く記載するケースもある[要出典][注 3]

科学や学術論文の執筆の領域では、公表時点で捏造改竄が問題になる。したがって、特許出願と同様の感覚で不正なデータを含む論文を公表した場合、科学の世界では科学の世界なりの処分が下る。ただし、近年、実験データを捏造して特許を出願した大学の研究者が処分された例なども出てきており、特許出願であるからデータの捏造が認められるという感覚は通用しなくなってきている[290]

脚注

研究不正問題を扱った書籍

研究不正問題を扱ったサイト

研究不正問題を扱ったフィクション

関連項目

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