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都市の人口過密を是正するために設けられた内閣府が推進する施策 ウィキペディアから
地方創生(ちほうそうせい)とは、東京一極集中を是正し、地方の人口減少に歯止めをかけ、日本全体の活力を上げることを目的とした一連の政策である[1]。2014年(平成26年)9月3日の第2次安倍改造内閣発足後の記者会見で発表された[2]。ローカル・アベノミクスともいう[3]。
加速度的に進む日本全体の人口減少は、日本の経済社会にとって大きな重荷であり、今後も続くと推計される東京圏への人口流入に起因する、地方から始まり都市部へと広がる人口減少の是正のため、各地域の人口動向や将来の人口推計(地方人口ビジョン)、産業の実態や、国の総合戦略などを踏まえた、地方自治体自らによる「地方版総合戦略[注釈 1]」の策定と実施に対して、国が情報・人材・財政の各種支援を[1]、地方の自立性、将来性、地域性、直接性、そして結果重視の原則に即して行い[7]、地方における安定した雇用の創出や、地方への人口の流入、若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえ、時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るとともに、地域間の連携を推進することで、地域おこしとその好循環の維持の実現を目指すとしている[1]。
国の総合戦略の具体的な目標や展望については以下のとおり。
地方自治体それぞれの地方版総合戦略に対しての交付金。地方創生推進交付金、地方創生加速化交付金など[13]。地方の自立性や官民連動を要件とした先駆性のある事業に用いられる[14]。例えば人口流入策なら、一定期間の流入数や増加率のような、自治体自らが策定した具体的な数値目標を、国が精査して交付額や対象事業を決定し、進捗状況を国や地域住民とともに毎年検証して、場合によっては見直しを求めたり交付の変更が可能と[15]、目標達成のために、具体的な数値目標を立て、その進捗状況を計測する「KPI(重要実績評価指標)」の設定や、「PDCAサイクル」を確立するとともに、個々の事業において民間資金を誘発し、将来的には本交付金に頼らない自立した事業構築を促すとしている[14]。
東京一極集中是正の観点から、中央省庁や研究・研修機関などの地方移転を検討。道府県からの提案を踏まえ、地方経済活性化や人口流入の好循環、機関として機能の維持や向上、移転への全国的な理解、不要な財政負担や組織・人員の焼け太りを防ぐような、地元の官民の協力・受入体制が可能なのかの視点に立って検討される[16]。政府関係機関の新設に当たっては、真に東京圏内での立地が必要なものを除き、東京圏外での立地を原則とすることとなった。
地域の活性化のために、国による規制を緩和するなどの特例を、特定の地域に適用する制度。特別区域[17]。
産業の競争力を強化し、国際的な経済活動の拠点の形成のため、経済社会の構造改革や規制改革などの施策を推進する特区[18]。また、国家戦略特区の制度を利用した特区の中で、地方創生を目的とした「地方創生特区」があり、更にその一つの形として[19]、遠隔医療、遠隔教育、無人航空機、自動運転車などの新技術を実証する領域を確保し、新たな商品・サービスに関するイノベーションの喚起をコンセプトにした、「近未来技術実証特区」がある[20]。主な規制改革の例は以下。
日本の経済社会の活性化と持続した発展のために、産業構造や国際的な競争条件の変化、少子高齢化の進展などの経済社会情勢の変化に対応して、産業の国際競争力の強化と、地域の活性化に関する施策を推進する特区[65]。産業の国際競争力強化を目的とした「国際戦略総合特区」と、地域の活性化が目的の「地域活性化総合特区」の2つがある[66]。
官民の事業や経済活動が、古い規制により妨げられていることに対して、特区を設けることによって構造改革を進めることにより、地域の特性を活かした地域活性化の実現を目指して創設された特区[78]。2015年の法改正で、以下の特例が追加された[79]。
国や民間が持つ、企業間取引や産業の分野別の情報、時間ごとの人の流れなどの地域経済に関わる様々な情報を収集したビッグデータを可視化した、地域経済分析システム「RESAS(リーサス)」とデータのAPIを提供。一部の情報を除き誰でも利用できる[82][83][84]。あわせてRESASの使い方を学べるEラーニングも開講している[85]。
地方版総合戦略の事業展開に必要な人材の育成・確保のためのオンライン講座。データ分析・総合戦略の検討、事業化・事業推進、官民の連携などを学ぶ基盤編と、総合戦略の事業化、資金調達の各種手法、地域産業の振興などを学ぶ総合プロデューサー、観光・DMO、地域商社、生涯活躍のまちなどについて学ぶ分野別プロデューサー、住民自治や交流について学ぶ地域コミュニティーリーダーの3種類の専門編がある[86][87]。
市町村長の補佐役として、国家公務員や大学の研究者、民間シンクタンクの人材などを派遣し、地方創生に意欲のある市町村の総合戦略の施策の推進を支援する制度[88][89]。
地方自治体の地方創生の取り組みの相談を、一括して引き受ける国の相談窓口。それぞれの都道府県の出身や勤務経験がある、各省庁の職員が対応にあたる[90][91]。
各地域の企業と、都市圏などの企業で商品開発など様々な分野の専門知識を持つ人材を結びつける拠点の設置。地域活性化の好循環のため、地域企業の事業革新や新商品開発など、積極的な経営への転身をサポートを行うとしている[92][93]。
地域の成長力の強化や雇用創出などを将来担えるような人材育成のために、地域産業、農林水産業、観光などの特定の知識を持つ専門家を紹介[94][95]。
地域の活性化や雇用の創出などを推進するため、地域再生法に基づき、地方自治体の「地域再生計画」を支援する制度[96]。農地を面積などの要件にかかわらず、企業やNPO法人の施設に転用の可能化や、地方に本社機能を移した企業への税制優遇措置などの規制緩和[97]、観光客の誘致、道路や港のインフラ整備などの事業に対して、補助金で支援などの施策を行うほか[98]、地方交付税を交付されていない一部の自治体以外の対象事業に、企業が寄付をした場合、約3割の損金算入と、最大で3割の税額控除を合わせて、寄付額の約6割が減税の対象となる「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)[注釈 3]」。地方や、地域の町中への移住を希望する、50代以上を中心とした中高齢者の生活拠点「生涯活躍のまち(日本版CCRC)」や、診療所や学校、交通サービスなどの各種生活支援機能を集約・確保する「小さな拠点」の形成事業に対して、情報・人材・財政支援に加え、移住者の雇用や介護サービス等の、事業のための認可手続きを簡略化する特例措置などを行う[100][101]。
中央市街地の都市機能や経済活動の活性化を、少子高齢化、消費生活などの社会環境の変化に応じて支援する制度。市町村が策定した中心市街地活性化基本計画を内閣が認定して、都市再生整備計画事業、暮らし・にぎわい再生事業、中心市街地共同住宅供給事業、街なか居住再生ファンド、中心市街地再興戦略補助金、中心市街地活性化ソフト事業の各種支援を行う[102]。
21世紀型都市再生プロジェクトや土地の有効利用を、環境、防災、国際化等の観点から推進する制度[103]。2014年の閣議決定で、医療・福祉、商業施設などが住居の近くにある、あるいは公共交通によりアクセスができるなど、日常生活に必要なサービスが身近にある「コンパクトシティ」を目指すことによって、生産性の向上や都市経営コストの縮減を目指すなどの、都市再生基本方針の変更が行われた[104]。
温室効果ガス排出の大幅な削減などの目標を掲げて、低炭素社会の実現と持続的発展に向けて取り組む「環境モデル都市」を基盤として、低炭素・省エネルギーなどの環境価値や、介護や育児などの社会的価値、雇用や観光などの経済的価値の三側面の価値のある、「環境未来都市」の実現と、その成功事例の国内外への普及を目指す取り組み[105]。
文化庁の京都府への数年内(2023年)の全面的な移転のほか、研究・研修機関等のうち、23機関・50件の全面移転や一部移転などが盛り込まれた政府の基本方針が決定された[16][106]。2017年度に各関係者間で取組の年次プランが作成されている[107]。
移転機関 | 都道府県 | 備考 |
---|---|---|
海洋研究開発機構 | 青森県・高知県 | 連携拠点の設置、地方拠点の拡充 |
国立がん研究センター | 山形県 | がんのメタボローム研究分野の研究拠点の設置 |
水産研究・教育機構 | 宮城県・静岡県 | 水産研究の連携拠点の設置等 |
福井県 | 新日本海水産振興センターの設立協力 | |
山口県 | 山口連携室の設置(2017年) | |
福島県 | イノベーション・コースト構想におけるロボットテストフィールド、国際産学連携拠点の設置 | |
医薬基盤・健康・栄養研究所 | 新潟県・佐賀県 | 研究連携に向けた協議会の設置等 |
産業技術総合研究所 | 石川県・福井県 | 中部センター石川サイト、福井サイトの設置(2016年) |
愛知県 | 産総研・名大窒化物半導体先進デバイスオープンイノベーションラボラトリの設置(2016年) | |
福岡県 | 産総研・九大水素材料強度ラボラトリの設置(2017年) | |
国立医薬品食品衛生研究所 | 富山県 | 天然物医薬品分野での研究連携拠点の設置 |
情報通信研究機構 | 石川県 | 北陸ICT連携拠点の設置(2016年) |
京都府 | 地方拠点の機能拡充、研究連携体制の構築 | |
理化学研究所 | 福井県 | 育種研究連携拠点の設置 |
兵庫県 | 科学技術ハブ推進本部関西拠点の設置(2016年) | |
京都府・広島県・福岡県 | 研究連携拠点の設置 等 | |
農業・食品産業技術総合研究機構 | 愛知県・島根県・香川県 | 連携拠点の設置、地方拠点の拡充 |
鳥取県 | 鳥取ナシ育種研究サイトの設置(2017年) | |
国立環境研究所 | 滋賀県 | 琵琶湖分室の設置(2017年) |
海上技術安全研究所 | 愛媛県 | 造船技術力強化を図るための連携拠点の設置 |
宇宙航空研究開発機構 | 山口県 | 西日本衛星防災利用研究センターの設置(2017年) |
防衛装備庁艦艇装備研究所 | 山口県 | 岩国海洋環境試験評価サテライトの設置 |
移転機関 | 都道府県 | 備考 |
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教職員支援機構 | 秋田県・富山県・福井県・三重県 | 研修の実施 |
医薬品医療機器総合機構 | 富山県 | 北陸支部、アジア医薬品・医療機器トレーニングセンター研修所の設置(2016年) |
国立美術館 | 石川県 | 東京国立近代美術館工芸館の移転(2020年) |
宇宙航空研究開発機構 | 岐阜県 | 宇宙教育活動における連携 |
森林技術総合研修所 | 山梨県 | 森林調査研修、森林立地研修の実施 |
岐阜県・岡山県 | 木材産業・木材利用研修の実施 | |
自衛隊体育学校 | 長野県・岡山県 | 自衛隊体育学校の合宿の実地 |
高齢・障害・求職者雇用支援機構 | 鳥取県 | 職業能力開発総合大学校基盤整備センター高度訓練開発室の移転 |
国際協力機構 | 島根県 | 開発途上国の行政官等を対象とした青年研修等の研修機能の一部移転 |
環境調査研修所 | 福岡県 | 北九州研修事業事務局の設置(2016年) |
熊本県 | 水俣研修事業事務局の設置(2017年) | |
国際交流基金 | 大分県 | 「日本語パートナーズ事業」に係る一部機能の移転による研修拠点の設置 |
移転機関 | 都道府県 | 備考 |
---|---|---|
文化庁・国立文化財機構・国立美術館・日本芸術文化振興会 | 京都府 | 地域文化創生本部の設置(2017年)、文化庁の移転(2023年) |
消費者庁・内閣府消費者委員会・国民生活センター | 徳島県 | 消費者行政新未来創造オフィスの設置(2017年)、新未来創造戦略本部への再編(2020年)[110] |
総務省統計局・統計センター | 和歌山県 | 統計データ利活用センターの設置(2018年) |
特許庁・工業所有権情報・研修館 | 大阪府 | 工業所有権情報・研修館の近畿統括拠点の設置(2017年) |
中小企業庁 | 大阪府 | 近畿経済産業局中小企業政策調査課の設置(2017年) |
観光庁 | 北海道・兵庫県 | 観光ビジョン推進地方ブロック戦略会議の発足 |
気象庁 | 三重県 | 津地方気象台と研究会の共同設置 |
2014年9月3日、地方創生担当大臣に石破茂、内閣府副大臣に平将明、内閣府大臣政務官に小泉進次郎、大臣補佐官に伊藤達也が就任[137]。同日、まち・ひと・しごと創生本部の設置を閣議決定[138]。
同年11月21日、まち・ひと・しごと創生法、改正地域再生法が成立[139]。
2014年度の補正予算で「地方創生先行型交付金」「地域消費喚起・生活支援型交付金」として、それぞれ1700億円、2500億円が配分され、前者は観光振興や産業振興、人材育成・確保などの事業に、後者はプレミアム付き商品券や、ふるさと名物商品・旅行券、多子世帯等支援策などに使用された[140]。
2015年10月7日に行われた内閣改造で、石破が地方創生担当の内閣府特命担当大臣に就任、平と小泉が退任し、新たに副大臣に福岡資麿、政務官に牧島かれんが就任[141]。
同年12月24日、国の総合戦略の改訂が閣議決定。地域全体の観光戦略を、地域のホテルなどの宿泊施設や飲食店などと連携して一体的に行う「日本版DMO」の整備の推進などが盛り込まれた[142][143]。
2016年1月20日、地方創生に関連して、1000億円の地方創生加速化交付金など、合計で3188億円が盛り込まれた2015年度補正予算が成立[128]。
同年3月29日、地方創生推進交付金1000億円(事業費ベースで2000億円)や、総合戦略に関連する事業費として約6579億円など、合計で約1兆5500億円が盛り込まれた2016年度予算が成立[144]。
同年8月3日に行われた内閣改造で、政務三役全員が退任し、新たに大臣に山本幸三、副大臣に松本洋平、政務官に務台俊介が就任[145][146][147][148]。
同年12月22日、国の総合戦略の改訂が閣議決定。東京での大学の新増設の抑制の検討や、地域を牽引する産業に財政支援を行う事業、空き家の観光利用などが盛り込まれた[134]。
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