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八日目の蟬

日本の小説、メディアミックス作品 ウィキペディアから

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八日目の蟬』(ようかめのせみ)は、角田光代による日本小説読売新聞夕刊にて2005年平成17年)11月21日から2006年(平成18年)7月24日まで連載、中央公論新社より2007年(平成19年)3月25日に刊行された。第2回中央公論文芸賞受賞作[1]。2010年(平成22年)にNHK総合テレビにてテレビドラマ化(後述)、2011年(平成23年)に松竹配給映画化(後述)された。

概要 八日目の蟬, 著者 ...

母性」をテーマに、不倫相手の女児を誘拐した女性の逃亡劇と誘拐された少女の成長後を描く。1993年(平成5年)12月に発生した日野OL不倫放火殺人事件が本作のヒントになっている[2]

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概要

母性」をテーマにした作品。不倫相手の子供を誘拐した女・希和子の3年半の逃亡劇と、事件後、大人になった子供・恵理菜の葛藤を描く全2章(プロローグである第0章を入れると全3章)から構成される。サスペンス調だが、出生、愛情、家族などの日常的な要素が、独特の切り口で描かれる。

あらすじ

第0章
秋山丈博の愛人であった野々宮希和子は秋山宅に侵入した。眠っていた赤ん坊(秋山恵理菜)を一目見るためであったが、赤ん坊が笑いかけたのを見て衝動的に誘拐した[3]
第1章
希和子は「薫」と名づけた赤ん坊とともに逃亡を始め、まず事情を知らない親友の手を借りた。その後、立ち退きを迫られている女の家での滞在や、偶然に遭遇した女性だけで共同生活を送る「エンジェルホーム」に所持金をすべて手放して入所した。さらにエンジェルホームで出会った共同生活者の手助けを得て、瀬戸内海小豆島に逃亡し、安心感を得た生活を送ったものの、1枚の写真がきっかけで希和子は逮捕された[4]
第2章
成人した恵理菜は、妻子持ちの岸田と付き合う中で希和子と同様に妊娠し、岸田は丈博同様頼りにならなかったが、「緑のきれいなころ」という言葉から、自分の判断を下した。また、恵理菜の前に、かつてエンジェルホームにいたという安藤千草が登場した。最後は瀬戸内海の場面と「仮の親子」の運命に関する描写で締めくくられる[5]
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登場人物

要約
視点

主要人物

野々宮 希和子(ののみや きわこ) / 宮田 京子(みやた きょうこ) / ルツ
1955年、小田原市生まれ。大手下着メーカーK社に就職。不倫と知りつつも相手の言葉に乗せられ、同僚の秋山丈博と付き合い始める[6]。丈博の子を堕胎した経験から子宮内が癒着し、子供を産めない体になる。恵津子に言われた言葉が今も心の傷となっている。恵理菜を一目見るだけのつもりだったが、衝動的に連れ去り[7]、「薫」と名付ける。これが原因で誘拐犯として追われる身となり、潜伏先を転々としながらエンジェルホームに逃げ込む。そこでも自分たちの娘や妻を奪い返そうとする家族団体からの抗議に巻き込まれる中、警察の介入を恐れて再び逃亡を計画。久美の協力を得て小豆島へ逃亡する[8]。久美の母・昌江のもとで偽名(宮田京子)を使い働きながら[9]、愛情をもって薫を育てるが、既に指名手配犯となっていた。小豆島の行事で自身が写ったアマチュアカメラマンの写真が全国版の新聞に載ったことがきっかけで、最終的に警察に逮捕される[10]
秋山 恵理菜(あきやま えりな) / 宮田 薫(みやた かおる) / リベカ
1984年8月19日生まれ[11]。薫としては7月30日生まれ[12]。大学生。生後6か月で希和子に連れ去られ、彼女の娘・薫として育てられるが、4歳の時に希和子が逮捕され、家族のもと(秋山家)に戻る。しかし、このことが大々的に報道され、世間からの好奇の目に晒されてしまったため、誰とも馴染めない日々を過ごす。実の親との関係もぎくしゃくし、親の反対を押し切って一人暮らしをしている。18年前の出来事を客観的に見ているものの、実は自分が何者なのか分からずにいる。岸田と不倫関係にあり、岸田の子を妊娠。希和子と同じ道を歩んでしまっている[13]。18年ぶりに千草と再会し、次第に彼女に心を許す中で、失った自分を取り戻していく。

恵理菜の近親者

秋山 丈博(あきやま たけひろ)
1951年、長野県生まれ。恵理菜の父親。不倫中は希和子に妻との離婚をよく口にし、希和子は丈博との将来を現実的に考えるようになる[6]。しかし妊娠を告げた希和子に、離婚計画が台無しになると堕胎を説得する[7]。事件解決後、誘拐事件に対して無関心を装い住居や職を転々とする。原因が自分にあると指摘されるのを心底恐れていたためである[13]
秋山 恵津子(あきやま えつこ)
1953年生まれ。恵理菜の母親[6]。ヒステリックな一面を持ち、夫の不倫相手だった希和子を罵倒する。誘拐事件当時は別の男友達がおり、事件発生直後に男友達を疑ったために誘拐事件の初動捜査が狂い、希和子が逃亡できた原因を作る[7]。戻ってきた恵理菜にどう接してよいか分からず、不器用な愛情を与えたことが原因で、恵理菜を苦しめる存在となっている[13]
秋山 真理菜(あきやま まりな)
1985年生まれ。恵理菜の妹。今でこそ恵理菜が唯一緊張せずに話し合える仲だが、戻ってきた当初は彼女を避けていた。
岸田
恵理菜の不倫相手。恵理菜が事務のアルバイトで勤務した塾の講師[14]

逃亡生活の中で出会った人々

仁川 康枝(にがわ やすえ)
希和子の学生時代の同級生。希和子の不倫関係の相談に乗っていた親友。事情を知らずに一時的に希和子を住まわせる[7]
中村 とみ子(なかむら とみこ)
康枝宅を出て、最初に逃げ込んだ家の住人。家からの立ち退きを迫られているが、周囲との関わりを一切絶ち、要請にも応じない。演歌を大音量で流している[15]
安藤 千草(あんどう ちぐさ) / マロン
1976年頃生まれ[16]。エンジェルホームではマロンと呼ばれ、リベカ(薫)とよく遊んでいた。フリーライターとしてエンジェルホームの問題や恵理菜の事件を取材し、これまでは自費出版だが、今度は正式に出版社から本を出そうとしている[17]。エンジェルホームにいたことが原因で、いじめを受けたりして、本人いわく、現在は「母親のすねをかじって」いる[18]。男性経験がないことをコンプレックスに感じている[19]。後半、物語が大きく動くきっかけとなる存在。
沢田 久美(さわだ くみ) / エステル
1957年生まれ。夫の不倫が原因で離婚した後、裁判で子供の親権も奪われたことに絶望し、エンジェルホームにやってくる。のちにルツ(希和子)に自分の母親の住所を教え、希和子の逃亡を手助けする[9]
沢田 昌江(さわだ まさえ)
久美の母親。小豆島で素麺屋を営む。久美が離婚した後、突き放すような言い方をしてしまい、それによって久美が姿を消したと思い心配している。希和子が久美のことを知っていて、自分を頼るように言付けていたことから希和子を受け入れ、自分の素麺屋で働かせるが、彼女が指名手配されていることを知らなかった[9]

エンジェルホーム

ボランティア団体を自称し、現世において具現化された楽園としているが、実態は家族や夫らに理不尽な仕打ちを受けたり、見放されたりするなど複雑な事情を抱えてやって来た女性たちで構成されている。ここではこの楽園を世に広めることを奉仕として行っており、雑誌などの持ち込みは一切禁じられている。「スタディ」という名の研修を行い、その後の面談を経てホームメンバーの可否が決められる。このとき、持っている財産をすべて手放さなければならないという誓約を交わす。メンバーは俗世で「ワーク」という名の労働を行う[20]

エンゼル / 長谷川 ナオミ(はせがわ ナオミ)
エンジェルホームの代表。希和子の正体を知ったのは受け入れ後と主張したが、犯人隠匿罪で有罪判決を受ける[21]
田辺 エレミア(たなべ エレミア) & 諸橋 サライ(もろはし サライ)
エンジェルホームの指導係(マザー)。
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書誌情報

テレビドラマ

要約
視点
概要 八日目の蝉, ジャンル ...

NHK総合の「ドラマ10」枠にて2010年3月30日から5月4日まで放送された。連続6回。

これまで火曜22時台で放送してきたドキュメンタリー番組プロフェッショナル 仕事の流儀』が半年間休止されることに伴い、空いたこの時間に「ドラマ10」が新たに設けられることになった(復枠した)。本作はこの第1作となり、主演を務める檀れいの初主演作でもある[22][23]。本作以後、『ドラマ10』で放送される番組はレターボックス16:9で放送されている。

2010年(平成22年)10月29日、第27回 ATP賞テレビグランプリ2010にて、同作品はグランプリを受賞した[24]

キャスト(テレビドラマ)

主要人物
東京の人たち
小田原の人
名古屋の人たち
  • 中村とみ子(ごみ屋敷の謎の女) - 倍賞美津子
  • 島本弁護士(とみ子に立ち退きを迫る弁護士) - 松永玲子
岐阜の人たち
小豆島の人たち

スタッフ(テレビドラマ)

撮影地(テレビドラマ)

放送日程

さらに見る 各話, 放送日 ...

関連商品

サウンドトラック
  • 渡辺俊幸『八日目の蝉 オリジナルサウンドトラック』(2010年4月21日配信、NHK出版

ソフト化(テレビドラマ)

さらに見る NHK ドラマ10, 前番組 ...
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映画

要約
視点
概要 八日目の蟬, 監督 ...

成島出 監督、奥寺佐渡子 脚本で映画化され[26]、2011年(平成23年)4月29日から全国公開。主演は井上真央

全国224スクリーンで公開され、2011年(平成23年)4月30、5月1日の土日2日間で興収1億5,557万900円、動員14万2,990人、初日3日間で興収が2億2,125万4,000円、動員が19万6,130人になり映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場第5位となった[27]第35回日本アカデミー賞では10冠を獲得した[28]

キャッチフレーズ

  • どしゃぶりの雨の中で起きた誘拐事件。犯人は父の愛人。連れ去られたのは、私。私はその人を、本当の「母」だと信じて生きてきた。

キャッチコピー

  • 優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした。
  • なぜ、誘拐したの?なぜ、私だったの?

キャスト(映画)

スタッフ(映画)

主題歌

挿入歌

撮影地(映画)

受賞歴

ソフト化(映画)

2011年10月28日発売。発売・販売元はアミューズソフトエンタテインメント。

  • 八日目の蟬 通常版(DVD1枚組)
    • 映像特典
      • 特報・劇場予告編
  • 八日目の蟬 特別版(本編ディスク+特典DVDの2枚組、ブルーレイとDVDでリリース)
    • ディスク1:本編ディスク(通常版と同様)
    • ディスク2:特典DVD
      • メイキング・ドキュメンタリー 女たちが生きた「八日目の蟬」
      • イベント映像集
      • 未公開シーン集
    • 封入特典
      • 【原作】角田光代×【監督】成島出 スペシャル対談 特製ブックレット(16P)
    • 特製アウターケース付き

テレビ放送

さらに見る 回数, テレビ局 ...
  • 視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯・リアルタイム。
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脚注

関連項目

外部リンク

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