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山口昌男

日本の教育者、文化人類学者 ウィキペディアから

山口昌男
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山口 昌男(やまぐち まさお、1931年昭和6年〉8月20日 - 2013年平成25年〉3月10日)は、日本教育者文化人類学者東京外国語大学名誉教授文化功労者瑞宝中綬章受勲。位階正四位

概要 やまぐち まさお山口 昌男, 生誕 ...

経歴

要約
視点
出生から修学期

1931年、北海道美幌町で9人兄弟の次男として生まれた。美幌尋常小学校、旧制網走中学校を経て、新制網走高校(現・北海道網走南が丘高等学校)に進学。1950年3月に卒業し、同年4月に青山学院大学文学部第二部仏文科に進学。在学中には、展覧会と古書店に頻繁に巡った。青山学院大学には1学期のみ通い、1951年に東京大学教養学部文化二類に入学[1]。同学年に作曲家となる三善晃、美学者となる宇波彰らがいた[2]。また、東京大学駒場美術研究会では、磯崎新らと親交を結んだ。1955年、坂本太郎を指導教官とし、卒業論文『大江匡房平安末期一貴族の意識』を提出して卒業。

卒業後は、麻布中学校教諭として勤務(1961年3月まで)。日本史を担当し、この時に教え子には川本三郎山下洋輔らがいた[3])。教員として勤務する一方で旧・東京都立大学大学院社会科学研究科に進み、社会人類学を専攻。1960年に修士課程修了。修士論文は『アフリカ王政研究序説』であった。その後、博士課程に進んだ。

文化人類学研究者として

国際基督教大学非常勤助手に採用された。1963年10月、ナイジェリアイバダン大学社会学講師に就いた。1965年東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所講師に就いた。翌1966年、助教授昇格。1968年より東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助教授。通称「AA研」と呼ばれる同研究所を拠点に研究を進めた。1969年より「文化と狂気」を『中央公論』に、「道化の民族学」を『文学』1~8月号(岩波書店発行)に連載[4]。また、「王権の象徴性」(『伝統と現代』)、「失われた世界の復権」(『現代人の思想 第15巻 未開と文明』解説)を執筆して注目された[5]

1970年、エチオピア調査を行い、またパリ大学ナンテール分校客員教授を務めた。在任中には研究室には膨大な蔵書が山積みになっていたが、海外出張中に電話をかけ「何番目の山の何冊目の何ページを引用するから探せ」と指示を出したという[6]。また同1970年6月からは「本の神話学」を『中央公論』に連載[7]1973年、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授に昇格。1977年、メキシコ大学院大学客員教授。

東京外国語大学退任後

1984年から1994年まで、磯崎新大江健三郎大岡信武満徹、中村雄二郎と共に学術季刊誌[8]へるめす』(岩波書店)の編集同人として活躍した。1989年、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所所長に就任。1992年には、電通総研の「経営の精神文化史研究会」発足に尽力。1994年に東京外国語大学を定年退職し、名誉教授となった。

同1994年4月、静岡県立大学大学院国際関係学研究科教授に就き、また中央大学総合政策学部客員教授となった。

1997年札幌大学文化学部に転じ、文化学部長を務めた。1999年、札幌大学学長に就任。2008年脳梗塞で倒れてから療養生活を送っていたが、2013年3月10日肺炎のため、東京都三鷹市の病院で死去[9][10][11]。歿日付けで正四位に叙された。墓所は府中市観音寺墓地にある。

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受賞・栄典

受賞
栄典

研究内容・業績

専門は文化人類学アジアアフリカ南アメリカなど世界各地でフィールドワークを行い、両性具有トリックスターをテーマとした著作で「中心と周縁の理論」を発表し、評価が高い[14]

その一方で、1970年代初頭から創刊間もない青土社の月刊誌『現代思想』に中村雄二郎らとともに寄稿し始め、構造主義記号論を学術界以外に紹介。既存の学問の方向性を再考する議論を活性化し、西洋近代的知の体系への懐疑を促す大きな力となった。これらの活動は、1980年代浅田彰中沢新一らによって本格化したいわゆるニューアカ(ニュー・アカデミズム)」ブームが登場する基盤を作った。死去の約2ヵ月後、『ユリイカ』(2013年6月号)で「山口昌男:道化・王権・敗者」と題する特集が組まれた。

日本史精神史関連

近代日本を人類学の視点から論じた著作を1995年頃から発表。晩年の大著となる『「挫折」の昭和史』、『「敗者」の精神史』では、近代日本史の中で重要視されていなかった「旧幕臣」系または「趣味人」系の人物の人的ネットワークを洗い出し、検証した。

漫画評論

20代の頃から漫画評論を手がけており、先駆的存在であるといえる。

「山口文庫」

蔵書は札幌大学図書館に寄贈され、「山口文庫」として一般公開されている[15]。母校である網走南ヶ丘高等学校にも分室を開設[16]

エピソード

  • 「偏差値秀才は社会で通用せず、学歴主義は既に崩壊している。それにも関わらず、大学受験予備校の河合塾が、ランク付けに新たにボーダーフリーを設け、私が務める当校(札幌大学)の学部でFランク大学指定を受けた。当校では、ロシア語弁論大会で1位を出すなど実績を上げている。この事1つをとってみても、大学受験予備校のランク付けが内実を反映していない。」[17]との論文を投稿したのに対し、教育ジャーナリストより「現状を把握せず、大学が潰れる事もありうるという意識が希薄な学校経営者であり、残念ながらこんにち日本では、高級官僚・大企業社長・大学教員のほとんどが偏差値秀才である。また世界のどの国で学歴社会が崩壊したのであろうか」という批判を受ける[18]

交遊

美幌町時代

都市の会

「へるめす」同人

東京外骨語大学

山口昌男を「学長」とする交流会。

  • 坪内祐三(助教授)
  • 内堀弘(石神井書林) 当時学生
  • 高橋徹(月の輪書林) 当時学生
  • 田村治芳 当時学生。『彷書月刊』の編集兼発行人。

「例の会」メンバー

季刊誌として創刊された「へるめす」前身となる会。

家族・親族

著書

  • アフリカ神話的世界』岩波新書 1971
  • 『人類学的思考』せりか書房 1971
  • 『本の神話学中央公論社 1971
  • 『歴史・祝祭・神話』中央公論社 1974
    • 中公文庫 1978
    • 岩波現代文庫 2014
  • 道化民俗学新潮社 1975
  • 『道化的世界』筑摩書房 1975。ちくま文庫 1986
  • 『文化と両義性』岩波書店 1975(哲学叢書)
  • 『黒い大陸の栄光と悲惨 世界の歴史 6』講談社 1977
    • 改題新版 『アフリカ史』今福龍太改訂、講談社学術文庫 2023
  • 『知の遠近法』岩波書店 1977
    • 岩波同時代ライブラリー 1990
    • 新訂 岩波現代文庫 2004
  • 『知の祝祭:文化における中心と周縁』青土社 1979。河出文庫 1988
  • 『文化とその痛み』(現代セミナー 10) 現代研究会 1979 - 講演冊子
  • 『道化の宇宙』白水社 1980。講談社文庫 1985
  • 『仕掛けとしての文化』青土社 1980。講談社学術文庫 1988
  • 『文化人類学への招待』岩波新書 1982
  • 『文化の詩学 I・II』岩波書店 1983(岩波現代選書)
    • 単行新版 岩波書店 1998
    • 新訂 岩波現代文庫 2002
  • 『笑いと逸脱』(Scrap book 1) 筑摩書房 1984。ちくま文庫 1990
  • 『文化と仕掛け』(Scrap book 2)筑摩書房 1984
  • 『流行論 週刊本朝日出版社 1984
  • 『演ずる観客:空間万華鏡』白水社 1984
  • 『祝祭都市:象徴人類学的アプローチ』岩波書店 1984(旅とトポスの精神史)
  • 『河童のコスモロジー石田英一郎の思想と学問』講談社学術文庫 1986
  • 『冥界遊び』(Scrap book 3)筑摩書房 1986
  • スクリーンの中の文化英雄たち』潮出版社 1986
  • 『学校という舞台:いじめ・挫折からの脱出』講談社現代新書 1988
    • 改題新版『いじめの記号論』岩波現代文庫 2007
  • モーツァルト好きを怒らせよう:祝祭音楽のすすめ』第三文明社 1988
  • 『「知」の錬金術』講談社 1989
  • 天皇制の文化人類学』立風書房 1989
  • 『知の即興空間:パフォーマンスとしての文化』岩波書店 1989
  • 『気配の時代』筑摩書房 1990
  • のらくろはわれらの同時代人:漫画論集』立風書房 1990
  • 『宇宙の孤児:演劇論集』第三文明社 1990
  • 『病いの宇宙誌』人間と歴史社 1990 - 対談も収録
  • トロツキーの神話学』立風書房 1991
  • 『自然と文明の想像力』宝島社 1993 - 対談も収録
  • 『「挫折」の昭和史』岩波書店 1995。岩波現代文庫 上下 2005 - 三部作
  • 『「敗者」の精神史』岩波書店 1995。岩波現代文庫 上下 2005 - 三部作
  • 『知の自由人たち』日本放送出版協会(NHKライブラリー) 1998[20]
  • 『踊る大地球:フィールドワーク・スケッチ』晶文社 1999[21]
  • 『敗者学のすすめ』平凡社 2000[22]
  • 『独断的大学論:面白くなければ大学ではない!』ジーオー企画出版 2000
  • 内田魯庵山脈:〈失われた日本人〉発掘』晶文社 2000。岩波現代文庫 上下 2010 - 三部作
  • 『経営者の精神史:近代日本を築いた破天荒な実業家たち』ダイヤモンド社 2003
  • 『本の狩人:読書年代記』右文書院 2008 - 巻末に著書目録
  • 『学問の春:〈知と遊び〉の10講義』平凡社新書 2009
  • エノケン菊谷栄:昭和精神史の匿れた水脈』晶文社 2015[23]
  • 『古本的思考:講演敗者学』晶文社 2018

著作集

  • 『山口昌男著作集』全5巻、今福龍太編・解説、筑摩書房 2002-2003
  1. 始原
  2. 道化
  3. アフリカ
  4. 周縁

訳書

編著・共著

  • 『未開と文明 現代人の思想 15』平凡社 1969 - シリーズ
    • 新装版『未開と文明』(現代人の思想セレクション 3)2000[26]
  • 林達夫集』(近代日本思想大系 26) 筑摩書房 1974[27]
  • 石田英一郎河童論 日本民俗文化大系 8』講談社 1979
  • 『知の旅への誘い』中村雄二郎共著、岩波新書 黄版 1981
  • 『見世物の人類学』ヴィクター・ターナー共編、三省堂 1983
  • 火まつりリブロポート 1985
  • 『世界は舞台:林達夫座談集』岩波書店 1986
  • 『越境スポーツ大コラム』TBSブリタニカ 1987
  • 『魯庵の明治:内田魯庵』坪内祐三共編、講談社文芸文庫 1997
  • 『魯庵日記』坪内祐三共編、講談社文芸文庫 1998
  • 『記号論の逆襲』室井尚共編、東海大学出版会 2002
対話集
  • 『挑発としての芸術』青土社 1980
  • 『書物の世界 共同討議』高階秀爾中村雄二郎対談、青土社 1980
  • 二十世紀の知的冒険』岩波書店 1980[28]
  • 『知の狩人:続・二十世紀の知的冒険』岩波書店 1982
  • 『語りの宇宙:記号論インタヴュー集』聞き手三浦雅士冬樹社 1983、新版 1990
  • 『文化人類学の視角』岩波書店 1986 - 対話集12名と
  • 『身体の想像力 対談集:音楽・演劇ファンタジー』岩波書店、1987
  • 『ミカドと世紀末王権の論理』猪瀬直樹との対論・対談、平凡社 1987
  • 『知のルビコンを超えて:山口昌男対談集』人文書院 1987
  • 『古典の詩学:山口昌男国文学対談集』人文書院 1989
  • オペラの世紀:山口昌男音楽対談集』第三文明社 1989
  • 『はみ出しの文法:敗者学をめぐって』平凡社 2001 - 対話集12名と
  • 『回想の人類学』川村伸秀聞き手、晶文社 2015
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参考文献

  • 大塚信一山口昌男の手紙 : 文化人類学者と編集者の四十年』トランスビュー、2007年。ISBN 9784901510547 NCID BA83171274https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008973325
  • 『北海道 人物・人材情報リスト2004 な-わ』(日外アソシエーツ編集・発行、2003年)
  • 山口昌男教授:略歴と著作目録」『アジア・アフリカ言語文化研究』46・47、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、1994年、491-540頁、ISSN 03872807NAID 120000991675

関連文献

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関連人物

脚注

外部リンク

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