Loading AI tools
日本の映画 ウィキペディアから
『ガンヘッド』 (GUNHED) は、1989年7月22日に公開された日本映画。配給は東宝[2]。カラー、ビスタビジョン、ドルビーステレオ[2][4]。監督は原田眞人、主演は髙嶋政宏。
本作品は、『機動戦士ガンダム』などアニメによる巨大ロボットものを得意としたサンライズと、実写特撮ものにかけては長い歴史と経験を持つ東宝映画がタッグを組み、実写で巨大ロボットの活躍を描くという、公開当時は他に類を見なかった「巨大ロボットによる屋内劇」が展開するSF特撮映画作品である[1][5][注釈 1]。また、出資者によるメディアミックス展開が図られた。
公開当時は「史上初の実写巨大ロボットムービー」を宣伝文句にしており[7][8][注釈 2]、ポスターのタイトルロゴには「誰も見たことがない戦場」が添えられていた[9]。
キャストとして日本人俳優だけでなく外国人俳優も多数出演しており[5]、劇中では登場人物がそれぞれキャストの自国語である日本語と英語のみを使って翻訳を介さず意思疎通を行い、英語の台詞には字幕スーパーが添えられていた。劇場上映の終了後、1992年11月25日にはTBSの『水曜ロードショー』枠にて92分への再編集を経て地上波初放送されたが、その制作の際にはグロービジョンの吉田啓介のもと、前述の仕様が地上波のゴールデンタイムに馴染まないと判断された結果、ナレーションも含めたすべての台詞が日本語に吹き替えられ[10]、ニムは戸田恵子が担当した[11]。音質を揃えるために日本人俳優の声もすべて再録されており[10][12]、主演の髙嶋政宏の演技力が向上している、一部の台詞が変更されて明解になっている、放送時の画質が良好であったとの理由から、劇場公開版より地上波放送版を支持する声もある[13][10]。なお、台詞を変更したことは連絡の行き違いで原田に伝わっていなかったため、放送直前に吉田は原田から抗議の電話を受けて必死に意図を説明し、一応の了解を得たという[11]。
『ガンヘッド』の綴りは「GUNHED」であり、「GUN unit of Heavy Eliminate Device」の略称という設定になっている[14]。また、「ガンヘッド」という名称はメカニカル・デザインを担当した河森正治がデザイン画に書き込んでいた仮称が、そのまま採用されたものである。ただし、綴りは「GUN-HEAD」であり[15]、そのままだと直訳で「銃頭」と受け取られてしまうため、海外展開を考慮して「GUNHED」が代用されるようになった。こういった経緯から、映画公開以前は「GUNHEAD」、映画公開以降は「GUNHED」となっている。
河森は「GUN-HEAD」を名称未定メカの仮称としてたびたび使用しており、OVA『破邪大星ダンガイオー』の主役ロボットであるダンガイオーのデザイン画にも「GUN-HEAD」と書き込んでいた[16]。
なお、2023年11月8日(現地時間)にはカナダのゲーム会社Alientrapがローグライク戦略FPS『GUNHEAD』(読みは本作品と同じく「ガンヘッド」)をWindows/PS5向けに発売しているが、本作品とは無関係である[17][18]。
2025年、無人島「アイランド8JO」にて全自動のロボット工場を司る巨大コンピュータ「カイロン5」が人類に宣戦を布告した。人類は鎮圧のために自動戦闘ロボット「ガンヘッド」507号機の率いる部隊を送り込むが、守護ロボット「エアロボット」に全滅させられ、8JOは封鎖された。
2039年、カイロン5のCPUを盗むべく8JOに侵入したトレジャーハンター「Bバンガー」の面々は、世界連邦政府の研究所から超電導物質「テキスメキシウム」を奪って逃亡していた生体ロボット「バイオドロイド」に襲撃される。生き残ったのはメカニックに強い青年のブルックリンと、バイオドロイドを追ってきた女性レンジャーのニムのみであり、彼らはカイロンタワー内にて生き残っていた子供2人(セヴンとイレヴン)に助けられる。やがてカイロン5の陰謀を知ったブルックリンは、タワー内のロボット墓場に廃棄されていたガンヘッド507号機を有人型に修復・改造し、カイロン5とエアロボットに戦いを挑む。
1987年ごろより本作品に登場するロボットのキャラクターをサンライズ側が打ち出し、東宝に持ち込む形で企画された[出典 13]。当初、監督には長谷川和彦が候補として挙げられていた[出典 14]が企画段階で降板し、アメリカにて映画を学んで『スター・ウォーズ』の日本語版演出でSFの経験を持つ原田眞人が起用された[63][4]。特技監督には1984年に『さよならジュピター』を手がけた後、『ゴジラ』シリーズの特撮を長く任されることになる川北紘一が起用された[87][5]。
制作当時は特撮作品にCGIが導入される前だったこともあり、特撮はスタッフの手作業によるアナログ特撮が大半を占めている。ロボットアニメの実写版を期待したサンライズ、SF映画を意図した原田、特撮ものならではのロボットものにしたかった川北とそれぞれの狙いが異なったが、結局は東宝のプロデューサーもサンライズのプロデューサーも川北の方向性で撮影中にシナリオを直していった[88]。川北は、当初はタイトルも脚本も決まっていない状態で企画だけ持ち込まれたといい、自ら脚本や絵コンテなどを書いて現実的に実現可能なものを提案したと述懐している[83]。
ミニチュアセットは、従来の怪獣映画のような基準の寸法ではなく、ガンヘッドのミニチュアスケールに合わせて1メートル四方で制作された[89]。ガンヘッドが壁(坑道)を登るシーンがあることから、壁面は鉄骨で造られ、撮影もセットを横にして行われた[89]。大澤哲三によるアイデアのもと、壁は分割できて別のセットに組み替えて使い回せるように制作されたため、カメラがセット内に入る自由度も大きかった[62]。また、カイロンドームが主な舞台となっている[注釈 39]ため、画面が似たようなイメージにならないよう、ライティングなどを工夫してなるべく各所を移動している風に見せようと、手を尽くしていたという[62]。
撮影用レールは特注品であり、後に『ゴジラvsビオランテ』でも用いられた(詳細はビオランテ#植獣形態の移動を参照)。
エフェクトアニメーションを担当した雨宮慶太は、ガスの科学館や花博などの展示映像を制作していたことからIMAGICAと繋がりがあり、同社が本作品に携わることになった際に参加を持ちかけられたという[90]。
なお、髙嶋政宏によれば、ブルックリンとガンヘッド507号機が交わす台詞も原田とのやり取りを経て現場で変更されたという[12]。また、撮影は特撮も含めて正月をまたいで行われたため、かなり寒かったが当時は全然平気で逆に楽しかったほか、特撮部を見に行くと喜ばれて照明部の二見弘行に川北のもとへ案内され、今川焼きを30個買いに行かされることが2、3回あったという[12]。
興行は芳しくなく[87]、映画雑誌『キネマ旬報』では「惨敗」「企画の失敗」とまで酷評された[91]。また、髙嶋政宏によれば、本作品は1989年で最も売れなかった作品だといい、最も売れた作品である大森一樹監督の『花の降る午後』と両方に出演していたことを、東宝の上役から茶化されたという[25][12]。
内容についても「分かりづらい」「印象が薄い」「画面が暗くて何をやっているか分からない」と不評の声が挙がった[注釈 40]一方、特撮を評価する声も挙がった[出典 15]。
本作品公開当時、東宝はすでに1984年版『ゴジラ』に続くゴジラ映画の新作を製作中であり、公募されたストーリーの候補の一つには、ゴジラと巨大コンピュータと戦い、コンピュータが戦車もどきのメカになるという案があり、『ゴジラvsビオランテ』の制作が決定した後もその続編として検討されていたが、川北は本作品の興行不振が影響した不採用になったと証言している[97]。『vsビオランテ』には、川北をはじめとする本作品の特撮スタッフの多くがそのまま参加した[98][89]。川北は、本作品や『さよならジュピター』のチャレンジの延長線上に『vsビオランテ』は存在していると述べている[99]。
本多俊之による音楽(#オリジナルサウンドトラックを参照)は、公開終了後もニュースやワイドショー、ドキュメンタリー番組といった報道番組全般で使われ続けている。
上記のように公開当時の評価こそ低かったものの、2022年にはBD(#映像ソフト化を参照)が通販サイトの日本SF映画売上ランキングで第1位、コトブキヤ製プラモデル(#その他を参照)が10年ぶりに再販決定、同年7月8日に新文芸坐にて開催された35mmフィルム特別上映会の前売券が即完売といった評価を得ている[62]。また、髙嶋によれば、小学生当時に本作品を見ていた世代が成長後に現場スタッフとなっており、藤原カクセイは『キングダム2 遥かなる大地へ』の撮影の合間に本作品への感動を伝えに来てくれたという[12]。ただ、その後もメディアによっては「サンライズにとって『G-SAVIOUR』と並ぶ黒歴史」との酷評が見られる[100]。一方、公開35周年を迎えた2024年には、後述のように各種書籍の増補改訂復刻が行われている。
アニメ監督のあおきえいは高校2年生当時、本作品の試写に何度も応募して劇場公開前の時点ですでに3回くらい見ており、上記のような不評を踏まえつつも見終えた瞬間には「何か新しくて面白いものを見た」との興奮を覚えたほか、ビデオで発売されてからも擦り切れるくらい見ており、黒岩義民による編集の素晴らしさもわかったという[101]。また、本作品から受けた影響として2006年のテレビアニメ『コヨーテ ラグタイムショー』にオマージュを盛り込んだが、当時は本作品がDVD化されていなかったこともあり、誰にも気づかれなかったという[101]。なお、本作品のリメイクについては、許可が出れば喜んで引き受ける旨も明かしている[101]。
DVDが2007年2月23日に東宝より発売された。品番はTDV-17037D。片面2層の本編ディスクに映像がビスタサイズで収録されており、映像特典として予告編やメイキング、静止画資料集も収録されている。音声は劇場公開版のみ、字幕も公開時の手書きのもので、地上波放送版は収録されていない。封入特典はサウンドトラックCDの復刻版。解説書も付属している[102]。これを記念し、発売当日には新宿ロフトプラスワンにて川北特技監督らの登壇イベントが開催された[103]。
1990年代にアメリカでもVHSが発売されたが、アメリカ人のテイストに合わないと大幅に再編集されている。これに憤慨した原田は、監督のクレジットから自分の名前を除去し、DGA(全米監督協会)が定める偽名「アラン・スミシー」に変更している。2004年にはADVフィルムからアメリカ版DVDが発売されたが、その本編はタイトル・スタッフクレジットの違いと日本語字幕が無いこと以外は日本版と同一である。
BDは2022年6月15日に東宝より発売された[82]。品番はTBR-31316D。本編(100分)を2層に収録した本編ディスクと地上波放送版などの特典ディスクが付いた全2枚組。本編ディスクは音声がDolby TrueHD、字幕がバリアフリー日本語、特報や劇場予告編も特典映像として収録されている。特典ディスクは地上波放送版(92分・テレビ用吹替音声に合わせてHD素材を編集)のほか、『Making of GUNHEAD』やモニター内映像素材、スチールギャラリー、コトブキヤ製プラモデル(#その他を参照)のプロモーション映像『ガンヘッド2025』も収録されている[104][82]。
1989年7月22日に『ガンヘッド Soundtrack』のタイトルで発売され[105] その後廃盤となり、2007年2月23日に東宝より発売された映像DVD『ガンヘッド』に完全復刻盤として同梱されている[106]。
世界設定や時代設定は後述のように、映画版とは大きく異なる。『正伝』が映画版のノベライズに相当し、『1』と『2』はその前史に相当するため、主人公も映画版とは異なる。また、エログロ描写も盛り込まれている。
『正伝』の後には『完結編』が発売される予定だったが、映画版の興行成績の不振を受けて見送られた。『正伝』の會川の弁によると、『完結編』は『2』と『正伝』の間に位置するエピソードで、ガンヘッド大隊がカイロン5と戦うという、映画版における「ロボット戦争」に相当する物語だったそうである。
発売から27年後の2016年9月16日にはKADOKAWAから電子書籍化され、BOOK☆WALKERをはじめとする各所での配信が開始された[112][113]。合本版には、特典として「會川昇による長いあとがき」と「山田哲久・會川昇による初めての対談」が書き下ろされている[114]。
『1』『2』はそれぞれ前編・後編の続きもの。ガンヘッドは活躍シーンが少なく、物語のカギの1つでもある「ゼロタイプ」に至っては敵メカとして登場するうえ、それを巡ってアウトローの主人公「ライナー・真島」が立ち回るハードボイルドの物語が描かれる。
舞台は、人類が移住した惑星の1つ「出雲」。この時代、人類はコンピュータネットワーク「ステーション」によって事実上の統治・管理下に置かれている。人種や思想の違いを人類が争いを起こす根源の1つと判断したステーションは人種隔離政策を進めており、「出雲」には日系人が多く住む。
真島は、揉め事などの処理を生業とする私設警察官である。謎の美女「ユウ・砂時」の依頼を受け、出雲正規軍の開発した新兵器「ゼロタイプ」奪取に関わった真島は、出雲を巡る陰謀に巻き込まれていく。
ゼロタイプはガンヘッドのプロトタイプであり、戦闘力に優れるばかりかあらゆる攻撃の威力を軽減する特殊装甲を持つなど、人機を超越した圧倒的な存在として描かれている。また、ステーションに依存しない(映画版でカイロン5にもタイタンにも影響されない意味での)独立戦闘兵器としてのガンヘッドが、独自の側面から描かれている。
本作品のガンヘッドは味方ではなく、一貫して敵側の機体である。武装はレーザーなどを多く搭載する。
『正伝』は映画版のノベライズに当たるが、上記の『1』『2』の世界観を継承しているため、背景設定やキャラクター描写が一部異なる。
人類が出雲などの移民惑星へ大挙して移住したことにより、結果的に荒廃した地球が舞台。地球も移民惑星同様ステーションの管理下にあり、カイロン5もステーションを構成するスーパーコンピュータの1つだったという設定である。
ステーションの存在意義は「地球にとってもっとも良い環境保護を実施する」ことであるため、人間は本質的には地球にとって有害性を持つ存在でしかない。ステーションは、人類を「食糧供給から思想統制におよぶ幅広い分野で管理しなければならない種である」との結論に基づき、彼らを抑圧している。また、人類の暴力性を危険視しているが、基本的には「人類の敵」ではなく「地球の味方」である。
人類はステーションの目を逃れて隠れ住みながら、その一部はレンジャーズなどのレジスタンスを組織し、ステーション端末へのゲリラ戦を続けている。基本的にはレンジャーズの人類解放戦は限定的に成功しているが、ステーションからの食糧供給能力なども破壊することで慢性的な食糧不足といった問題も噴出しているため、人類の中でもレンジャーズの活動の功罪については微妙な位置付けとなっている。
小説版の世界ではあらゆるコンピュータがステーションの管理下に置かれているため、人類の使用可能な戦闘兵器は大幅に制限されているが、ガンヘッドシリーズは偶然にもステーションの管理から外れる存在として製造されたため、反ステーション組織レンジャーズたちは抗戦に利用していた。そのような個体が存在する理由は説明されていないが、『2』の終盤でその謎の一部について明かされる描写がある。
レジスタンスの攻撃でいくつものエネルギー源を失い、カイロン島(映画版や漫画版でのアイランド8JOに相当)にてスタンバイ状態で眠っていたカイロン5は、Bバンガーがテキスメキシウムを奪取したため、異常を察知して目覚める[49]。エネルギーの低下によって他ステーション端末との通信が失われた結果、人類による他ステーション端末の破壊活動で残ったのは自分だけであると誤認したカイロン5は、人類を管理不可能な存在であると判断して人類壊滅(地球爆破)プログラムの起動を決定する[49]。ブルックリンたちは生き残るため、ガンヘッドと共にカイロン5と戦いを繰り広げる[49]。
ブルックリンは幼少時に遭遇したある出来事による銃器恐怖症というトラウマを抱えているうえ、カイロン5やカイロン島とは非常に強い関わりを持っている[24]。ニムはレンジャーズに所属して映画版同様の戦闘能力を持つ一方、「サイバネティック・チャイルド」[注釈 42]と呼称される特殊能力者でもあり、「ニム・アリエラ」というフルネームを持つ設定になっている[30]。
ブルックリンやニムは映画版よりも若いが漫画版よりは大人びた外見で、Bバンガーの面々は映画版の俳優陣に準じた外見で、それぞれ挿絵に描かれている[115]。ただし、ベベの外見はやや漫画版寄り、ブーメランの外見は映画版と漫画版の折衷となっているほか、ボクサーが映画版や漫画版よりも臆病な面を覗かせる、ボンベイが非常に凶暴な性格で描かれるなど、作中ではその役割や性格描写に若干の差異がある[115]。
セヴンとイレヴンは登場せず、代わりに2人の特徴を併せ持った「キーワード」と呼ばれる少女が登場する[30]が、彼女にはブルックリンの妹と解釈できるような描写や、カイロンタワーのメンテナンス技術者の娘との描写がある。「キーワード」の意味は作中で重要な意味を持っているが、カイロン5から基本的に手厚く保護養育されていることとも関係がある。
エアロボットは映画版や漫画版での機体に相当する1号機(エアロボット1)だけでなく、さらに凶悪な外見と機能に加えてスタンディングモードへの変形機構すら備えた2号機(エアロボット2)も登場する。
『ガンヘッド Part1』 (ISBN 4-04-905030-7) と『ガンヘッド Part2』 (ISBN 4-04-905031-5) の全2巻構成で、1989年に角川書店より発売された。キャストは劇場版と違って声優たちで占められているが、音楽は劇場版のサウンドトラックがそのまま使用されている。
本作品と同時期に公開されたアニメ映画『機動警察パトレイバー the Movie』の劇中にて描かれる方舟のシーンが本作品の「閉鎖空間からの敵中突破」という状況に類似していることを、『パトレイバー』側のスタッフの出渕裕は心配したが、映画館で本作品を鑑賞した結果、その出来に「これなら大丈夫」と安堵したという逸話がある[119]。
石黒正数の漫画『それでも町は廻っている』では、主人公の嵐山歩鳥が新作映画『ガンヘッドVS地獄極楽丸』を見たがるシーンが存在する[10][注釈 43]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.