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JR線の普通列車、快速列車が期間限定で1日乗り放題となる特別企画乗車券 ウィキペディアから
青春18きっぷ(せいしゅんじゅうはちきっぷ)は、旅客鉄道会社全線(JR線)の普通列車・快速列車が5回または5人分利用可能な[1]、販売および使用期間限定の特別企画乗車券である。本項では前身の青春18のびのびきっぷについても述べる。
日本国有鉄道(国鉄)旅客局が運賃増収策の一環として企画し、1982年(昭和57年)3月1日に「青春18のびのびきっぷ」として発売。1983年(昭和58年)春季発売分から現名称に改称した。
主に学生などの春季・夏季・冬季休暇期間を利用期間として発売され[2]、原則として特急(新幹線を含む)・急行を除く旅客鉄道会社全線の普通列車など、運賃のみで乗車できる列車に乗車することができる[3]。
2019年(令和元年)冬季以降の販売価格は、5回(人)分で12,050円[1](消費税率10%化にともなう改定)。第1回発売時は8,000円で、のち10,000円に変更。1986年(昭和61年)冬季に11,000円に値上げされた後、1989年(平成元年)4月1日に消費税が導入(3%)されて11,300円に値上げ、その後同税の税率引き上げによる値上げが1997年(平成9年)4月(5%)に行われて11,500円に値上げ、2014年(平成26年)4月(8%)に行われて11,850円に値上げ、そして2019年10月(10%)に値上げが行われて現行価格(12,050円)となっている。主として学生向けの商品として企画されたが、利用者の年齢制限はなく、小児運賃の設定もない。
JRホテルグループの予約センターに宿泊を申し込み、当日現地で青春18きっぷを提示すると、ホテル宿泊料金の割引等が受けられる[1]などの特典が一部に設けられている(関連商品参照)。
「青春18きっぷ」の名称の由来については、当時国鉄旅客局長だった須田寬により、青少年・学生をイメージした「青春」と、その象徴的な年齢で「末広がりの8」にも通じる「18」を組み合わせたと、後年に須田が説明している[4]。国鉄分割民営化後、JR各社を代表して東日本旅客鉄道(JR東日本)が1994年(平成6年)に商標登録(商標登録番号第3007644号)を行った。
利用期間は首都圏や西日本の学生がおおむね長期休暇(春休み・夏休み・冬休み)に入る期間で[2]、その開始約10日前から終了日の10日前まで発売される。通常、毎年2月に1年間の発売予定を発表する[注 1]が、2024年1月は例年とは異なり春季分のみ発表し[9]、6月18日に夏季分を発表した[10]。
秋季には設定されていないが、類似したシステムをもつ秋の乗り放題パス(2012年[11]から[12]。2011年までは鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ)が発売されている。
払い戻しは、利用期間内で5回とも未使用の場合に限り取扱箇所で行える(220円の払戻し手数料がかかる[1])。ただし利用期間が終了した後は未使用でも払い戻しは受けられない。また、いかなる理由でも一度使用開始した回(日)の取消はできず、払い戻しおよび利用期間の延長もできない。利用期間が終了したきっぷは5回使用していなくても無効となり、次の利用期間にまたがって使用することはできない。
1枚で、利用期間中の任意の日に5回まで利用できる[13]。5回分は一度に連続して使用しなくてもよく、利用期間内であれば別々の日に1回ずつ使うことができる[13]。1枚を複数人で同時に使うことも可能で[13]、その場合は同一日に人数分の回数を使用することになる。ただし複数人で使用する場合、全員が同一旅程を同時に移動する必要があり、入場時から出場時までは集団で行動することになる[3]。
自動改札機は利用できないため、改札通過の際は有人通路を利用する。
現行の様式となってからは、1枚の券面に5箇所ある乗車日記入欄への改札印の押印等による日付の記載により使用開始を示す方式を採用しており、各回とも最初に乗車する際に、有人駅の場合は有人改札の駅員が、無人駅においては乗車した列車の車掌(ワンマン運転の場合は、停車中に車掌業務を行う運転士)が乗車印と日付を記入する[13]。
1回分は乗車日当日限り有効で、乗車日内(0時から24時までの間)であれば何度でも乗降・途中下車ができる。日付をまたいで運転する列車については、0時を過ぎて最初に停車する駅まで有効(0時をまたいで停車している列車はその停車駅まで有効)である[14]。なおこれは「乗降可能な駅」のことであり、通過扱いとなる運転停車を行う駅はこれに該当しない[注 2]。ただし、東京および大阪近郊の電車特定区間では0時を過ぎても、終電まで有効である[14]。
なお、乗車日の24時(翌日0時)以降、終電までに電車特定区間の駅と区間外の駅との間を乗車する場合は、電車特定区間の境界の駅と区間外の降車駅との間で有効な乗車券などが必要となる[注 3]。
旅客鉄道会社(JR旅客6社)が運営する全ての在来線における普通列車の普通車自由席が利用できる。どの経路であっても、どの駅での乗降も可能。
普通列車であれば、別に料金を払うことで以下に示す座席種別を利用できる。
列車でないもののうち、以下のものに乗車・乗船可能である。
特例により普通乗車券のみで特急列車の普通車に乗車できる区間の対象席種は、2024年現在、いずれも青春18きっぷのみで利用できる。
接続していたJR線が新幹線の開業により並行在来線として経営分離・第三セクター化されたことでJR在来線との接続がなくなったJR線について、その路線の起点の駅につながる一部の第三セクター鉄道区間の普通列車を通過利用できる特例がある。あくまで「通過利用」であるため、いずれもJR線との接続駅以外の第三セクター鉄道区間内の駅では途中下車できない。途中下車した場合は、乗車した第三セクター鉄道全区間分の運賃を別途支払う必要がある。
なお利用規定には「JR線からの経由乗車で」[注 5]「JR線へ通過利用する場合」[注 6]、すなわち発駅、着駅がいずれもJRの在来線の駅である必要がある[注 7]と明記されており、特例区間のみ乗車して接続するJR線に乗車しない場合[注 8]や、特例区間外まで乗車する場合は乗車した第三セクター鉄道全区間分の運賃が必要となる[33]。
八戸駅 - 野辺地駅 - 青森駅間を通過利用できる。ただし八戸、野辺地、青森の各駅で途中下車できる。青森駅を経由する通過利用のほか、八戸線(八戸駅を除く)と大湊線(野辺地駅を除く)の駅間を移動する際に、八戸駅 - 野辺地駅間のみを通過利用することもできる[注 9]。
2010年12月4日に東北本線の青森駅 - 八戸駅間がJR東日本から青い森鉄道に経営分離された際、大湊線と八戸線は他のJR在来線との接続がなくなったため制定された。
富山駅 - 高岡駅間または富山駅 - 津幡駅間を通過利用できる。ただし富山、高岡、津幡の各駅で途中下車できる。また、ライナー券を別に購入すれば「あいの風ライナー」に乗車できる。ただし、氷見線または城端線(ともに高岡駅を除く)と七尾線(津幡駅を除く)の駅間を移動する際に、高岡駅 - 津幡駅間のみを通過利用することはできない[注 9]。
現行の特例は2024年3月16日に改められたもので、氷見線、城端線、七尾線の各路線が、高岡駅において氷見線と城端線が相互に接続する以外に他のJR在来線との接続が無いため制定されている[9]。
もともとは、2015年3月14日に北陸本線の市振駅 - 倶利伽羅駅間がJR西日本からあいの風とやま鉄道に、倶利伽羅駅 - 金沢駅間がIRいしかわ鉄道にそれぞれ経営分離された際に設定されたものである。この時点では、あいの風とやま鉄道線の富山駅 - 高岡駅間およびIRいしかわ鉄道線の津幡駅 - 金沢駅間を通過利用できる特例であった[5]。その後、2024年に北陸本線の金沢駅 - 大聖寺駅間もIRいしかわ鉄道に経営分離されたため、あいの風とやま鉄道線とIRいしかわ鉄道線の特例が統合され、津幡駅 - 金沢駅間は青春18きっぷでは利用できなくなった。
越前花堂駅 - 敦賀駅間を通過利用できる。ただし、越前花堂駅、敦賀駅で途中下車できる[34][9]。
2024年3月16日に北陸本線の大聖寺駅 - 敦賀駅間がJR西日本からハピラインふくいに経営分離された際、越美北線は他のJR在来線との接続がなくなったため制定された。
特別急行列車(新幹線を含む)・急行列車には、上記の特例区間を除いて一切乗車できない(乗車券としての効力をもたない)。利用する場合には、該当する区間の特急券または急行券と乗車券が必要となる。
発売開始以来、JR線以外の会社線(私鉄・公営鉄道・第三セクター等の路線)では原則として使用することができず、JR線と会社線とを直通運転する列車を利用する場合でも会社線内の乗車区間についてはその区間に有効な乗車券類が別に必要となる。なお、えちごトキめき鉄道および肥薩おれんじ鉄道では、有効な青春18きっぷを提示することを条件として発売する企画乗車券が設定されている(後述)。
JRの子会社・関連会社・出資会社が運営する各路線(東京モノレール、東京臨海高速鉄道、東海交通事業、嵯峨野観光鉄道、JR九州高速船)、およびJRバス各線も利用できない。
岩手県北自動車の106急行バスは、先述した徳島バスや四万十交通と同様にJR線(山田線)との共通乗車制度をとっているが、青春18きっぷを含む企画乗車券では利用できない[35]。
2016年より、青春18きっぷとの同時購入または所持者に対する場合に限り発売する青春18きっぷ北海道新幹線オプション券が、青春18きっぷと同じ利用期間で設定されている。
2016年3月26日の北海道新幹線開業まで、蟹田駅 - 木古内駅間は特例により普通乗車券のみで特急列車の普通車に乗車できる区間として特急「白鳥」「スーパー白鳥」の普通車自由席に青春18きっぷのみで乗車できた[6]が、開業後は海峡線(在来線)の定期旅客列車が全廃され、江差線は道南いさりび鉄道へ移管されたことから、本券が設定された。
前述の通り、青春18きっぷは国鉄の増収策の一環として企画された。当時、国鉄内部では利用者層を青少年(学生)・中年(社会人・主婦)・老年と分けた場合、中年男性は出張などで長距離の利用が多いものの、それ以外の年齢層では比較的短距離の利用が多いと分析していた。
そこで、それらの層にも長距離の利用を勧めるためのトクトクきっぷを発売することとなった。老年向けには「フルムーン夫婦グリーンパス」を発売していた(中年女性向けには1983年から「ナイスミディパス」を発売)。
これらの成功を受けて、1982年から青春18きっぷの前身にあたる青春18のびのびきっぷの発売が開始された。「青春18」とある通り、青少年(学生)を主な発売対象としたきっぷであったが、開始当時から年齢制限はなかった。当時国鉄には、長距離区間を運転する普通列車が数多く存在し、民営化後のような合理化が進展しておらず、学校の長期休暇期間中、主要路線の普通列車はしばしば各地で長大編成の輸送力を持て余していた。そのような既存列車の輸送力を活用しながら、新たな需要を喚起することで、増収が狙われたのである。
発売当初は1日券3枚と2日券1枚(共に青い地紋)のセットで、価格は8,000円であった。また青少年の利用を意識して、バッグなどに貼付できるシール状の「青春18ワッペン」が付属していた。利用期間は3月1日から5月31日までで、ゴールデンウィークを含む(ただし、1982年当時5月4日は国民の休日・みどりの日のいずれでもないため飛石連休)。
夏季用は1日券4枚と2日券1枚のセットで10,000円となった。利用期間は7月20日から9月20日まで。冬季の設定なし。
1983年春季、青春18のびのびきっぷは青春18きっぷに改称された。利用期間は2月20日から4月10日までとなった。
1984年夏季用から1日券5枚となった。使用期間が1日短縮され、価格は10,000円のままであった。また、1984年から冬季用が発売された。冬季の利用期間は12月10日から翌年1月20日まで(2009年冬季用まで続く)。
1985年夏季用の利用期間は7月20日から9月10日までとなった(2015年夏季用継続中)。
1986年冬季に価格が11,000円に改定され、1989年夏季より消費税が導入されたことを受けて11,300円に改定された。1990年からマルス端末による発券が可能となった。
1993年春季用の利用期間は3月1日から4月10日までとなった(2015年春季用継続中)。
1996年春季より、現行のように、5回(人)分を1枚の券片にまとめた様式となった[36]。複数人数で同時に使用する場合、前述したように、集合・解散が煩雑になり、全員が同じ行程で移動しなければならないという条件付きになった。種村直樹は、以前より旅行会社が上乗せして1枚ずつバラ売りしていたと自著の「種村直樹の新汽車旅相談室 トクトクきっぷ篇」でのべている。
JRの旅客営業規則において、旅行開始後の乗車券を他人から譲り受けて使用すると乗車券は無効(不正乗車)になることが定められているが、青春18きっぷについては、5枚つづりであったことに鑑み、5枚のきっぷをJRの都合によって1枚にまとめただけで各回の効力は独立しており、1回目のみを使用しても2回目以降は旅行開始前であると、一部書籍では説明されている[37]。しかし、1回目の旅行開始できっぷ全体について旅行開始後となり、1回目の使用者とは別の人が譲り受けて2回目以降を使用するのは不正乗車とする意見もある[38]。「複数人数の場合は同一行程」の条件の解釈に差異があると言えるが、1枚になった理由についてJRから公式の発表はない。
1997年夏季から消費税の税率変更に伴い、価格が11,500円に改定された。
2004年冬季から、普通・快速列車のグリーン車自由席に限り、グリーン券を別に購入することで利用できるようになった。同年10月のダイヤ改正に伴って実施されたJR東日本におけるグリーン車の制度変更によるものである。
2007年にはJR各社が発足20周年を迎えたのを記念し、春季のみJR発足20周年・青春18きっぷが発売開始時の価格と同じ8,000円(乗車できる列車・回数などは通常のものと同じ)で発売された[39]。
当乗車券の発売・利用期間は1993年から2009年まで固定されていたが、2010年冬季から発売期間が12月1日 - 31日、利用期間が12月10日 - 翌年1月10日と最終日が共に10日間前倒しされて短縮となり、また東北本線の八戸駅 - 青森駅間の青い森鉄道への移管を受けて、通過特例(#第三セクター鉄道の列車を利用できる特例)が初めて設けられた。
2014年夏季から消費税の税率変更に伴い、価格が11,850円に改定された。
2019年冬季から消費税の税率変更に伴い、価格が12,050円に改定された。
2024年夏季は発売が従来の7月1日開始から7月10日開始に9日間後ろ倒しされた。利用期間は変更がない[10]。
青春18きっぷは1日単位(24時間)で有効の形式を取っているため[40]、夜間の長距離移動については、当きっぷ発売以前から運行されていた夜行普通列車に加え、1980年代後半以降に全国各地で「ムーンライト」など、当きっぷでも利用可能な夜行列車が運行されてきた。しかし、2000年10月に紀勢本線で廃止されたのを最後に、夜行普通列車は消滅した。2005年以降は「ムーンライト」についても次第に運行されなくなる列車が増え、2009年春のダイヤ改正で「ムーンライトえちご」および「ムーンライトながら」が臨時化されたことにより、定期運行が無くなった。両列車は臨時列車として運行が続けられたが「ムーンライトえちご」は2014年春季を最後に設定されておらず、「ムーンライトながら」も2020年春期を最後に運行されないまま2021年に運行終了が発表された。
2000年代における販売枚数は、JR東日本によると、前半から中盤は毎年25万枚から30万枚で、2007年は35万枚以上の販売実績があった[41]。朝日新聞コラムの引用によると、JR全体では2013年度67万枚となっている。その後も発売枚数は伸びており、JR全体では2015年度は71万枚で、70万枚を超えたのは2009年度以来となった[42][信頼性要検証]。
かつて、一部駅の窓口では、赤い地紋の用紙に印刷された常備券での販売が行われ、鉄道ファンの間でナマ券・赤券と呼ばれた。常備券とマルス端末発行の券で効力は同等であるが、希少性、あるいは風情やノスタルジアがあるとしてファンの間で人気があり、遠方から常備券を扱う駅まで購入のために訪れる者や、現金書留を用いて購入する者もいた。
本券はみどりの窓口が設置されていない駅で発売された事例が多いが、高松駅(JR四国)などの例外もあった。
最後まで発売していたJR西日本・JR四国が2016年(平成28年)冬季をもって取り扱いを終了し、廃止された[43]。
JR各社のみどりの窓口や一部のきっぷうりば、旅行会社などで発売されている[2]。また、JR各社の指定席券売機(一部の設置駅を除く)でも発売されている。
JR各社が自社の管轄内限定で在来線の普通列車普通車自由席(種類によっては特急普通車自由席も)が乗り放題となる類似のフリーきっぷを発売している。
青春18きっぷ発売時期にあわせて、以下の事業者では企画乗車券の発売や割引サービスなどを実施している。
上記のほか、ジェイアール四国バスが運行する高速バスなんごくエクスプレスでは青春18きっぷの呈示により1回乗車あたり1000円でのバス利用が可能。なお割引の適用は「1回目の利用開始後の当日から5回目の利用日、5回利用していなければ購入期の最終利用可能日」の間で、この条件を満たせば当日の改札印がなくても利用できる[46]。
過去には北近畿タンゴ鉄道が、2007年春から2009年1月までの間、青春18きっぷを呈示すると全線の乗降が自由となる「KTR青春フリーきっぷ」を500円で発売していた。また関釜フェリー[47]では、青春18きっぷを呈示すると割引となる。
青春18きっぷを活用する方法などを記した書籍は多数出版されている。多くはルールの解説や便利な列車の紹介、モデルコースの案内などで構成されている[41]。
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