トップQs
タイムライン
チャット
視点

エライオソーム

ウィキペディアから

エライオソーム
Remove ads

エライオソーム (: elaiosome) は、脂質などに富んだ種子(または果実)の付属構造のこと。これに誘引されたアリはエライオソームをつけた種子をまで運び、エライオソームを食料とし種子本体を巣の付近に廃棄することで種子は散布される。エライオソームはその機能に基づいた名称であり、形態学的にはさまざまな由来の構造が含まれる。

Thumb
エライオソームをつけたさまざまな種子[注 1]

アリによって種子散布される植物は比較的多く、エライオソームは被子植物の約4.5%の種(約11,000種)から報告されている。日本で見られるエライオソームをもつ植物としては、カタクリスズメノヤリムラサキケマンアケビスミレホトケノザなどがある。

特徴

要約
視点
Thumb
エライオソームをつけたエニシダ属マメ科)の種子を運ぼうとするアリ

エライオソームは脂質アミノ酸などを含む、種子(または小型の果実)の付属構造であり、アリを誘引する[1][2][3][4][5]。実験的にエライオソームを除去した種子は、アリに収穫されない[1][6]。ふつうアリはエライオソームをつけた種子をへと持ち帰り、エライオソームの部分を切り取って食料にするとともに、種子本体を巣の中または巣の近くに廃棄する[1][2][3][7][8][9]。このような種子散布は、アリ散布(myrmecochory)とよばれる[3][2][8][10]

このようなアリによる種子散布は、アリと植物双方に利益がある相利関係である。植物にとっては、種子が食害から逃れ、競争を避ける遠距離へ散布され、栄養分に富む環境で発芽できるなどの利点があると考えられている[1][7]。一方でエライオソームはアリにとって重量な食料であり、アリの繁殖率や適応度を増加させることが報告されている[2]。またより多くのエライオソームを食べた幼虫は、女王になる傾向があることが報告されており、このことはエライオソームの栄養価が高いことを示唆している[2]

エライオソームの大きさや形、化学組成、種子を含む重量などは植物のによって異なり、運搬するアリの種類や運搬されやすさに関わることが示されている[1][2]。また少なくとも一部のエライオソームは、成分によって昆虫の死骸を模していることが示唆されている[2][11]

アリ散布を行う植物の中には、別の種子散布様式を併用している例(二重散布[4])もある。スミレ属の果実は蒴果であり、裂開・収縮して種子を弾き飛ばし(自動散布)、これがさらにアリ散布される[4][12][13][14]。スミレ属の中でアオイスミレの果実は射出能をもたず、代わりに他種に比べてエライオソームが非常に大きい[13]アケビアオモジの果実は液果であり、動物に食べられて排出されることで種子散布(被食散布)されるが、種子にはエライオソームがあり、排出された種子がさらにアリによって散布される[4]

形態学的には、エライオソームの由来は多様であり、下記の構造がエライオソームとして機能することがある[7][5]。下記のうち、カルンクルとストロフィオールはあわせて種枕(しゅちん、種阜)とよばれるが、カルンクルのみを狭義の種枕とすることもある[5]。また、下記のうち仮種皮と偽仮種皮を区別せずにともに仮種皮とよぶことも多い[5]

  • カルンクル(カルンクラ; caruncle)[5][7][15][16]: 珠孔付近の珠皮に由来する多肉質の付属物
  • ストロフィオール(strophiole)[5][7][16]: 珠柄付近(へそ)の珠皮に由来する多肉質の付属物
  • 珠柄(funicle, funiculus)[7]: 胚珠本体と胎座をつなぐ構造
  • 仮種皮(種衣; aril, arillus)[5][7][16]: 珠柄またはその付近の組織が発達し、種子全体を覆うようになった構造
  • 偽仮種皮(偽種衣; arilloid)[5][7]: 珠孔付近の組織が発達し、種子全体を覆うようになった構造
  • 種皮(seed coat, testa)[5][7]: 珠皮に由来する種子の外皮構造であり、多肉質のこともある(sarcotesta)

多くの場合、エライオソームは種子についているが、果実(種子を1個含む小型の果実)がエライオソームをつけてアリによって散布されるものもある。このような果実のエライオソームは、外果皮花托などに由来する[7]。果実がエライオソームをつけてアリ散布される例として、ホトケノザシソ科)やカナムグラアサ科)、アオスゲカヤツリグサ科)などがある[7][4]

Remove ads

進化

要約
視点

エライオソームは、少なくとも被子植物の77、334、約11,000から報告されており、種数としては被子植物の4.5%に達する[7](下表1)。これらの植物は系統的には多様であり、エライオソームによる種子のアリ散布は、被子植物の中で少なくとも101回独立に進化したと考えられている[7]。1つの科の中でアリ散布が複数回(2–12回)進化したと考えられる例もある[7]キク科トウダイグサ科マメ科など)。イヌサフラン科オオホザキアヤメ科ギロステモン科ビャクブ科ではほぼすべての属がアリ散布種を含む[7]。地理的には、全北区とオーストラリア、南アフリカに多い[7]

さらに見る 目, 科 ...
Remove ads

脚注

外部リンク

Loading related searches...

Wikiwand - on

Seamless Wikipedia browsing. On steroids.

Remove ads