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クスノキ科

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クスノキ科
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クスノキ科(クスノキか、学名Lauraceae)とは、被子植物クスノキ目に分類される科の1つである。多くは常緑性であるが一部は落葉性高木から低木であるが(図1上)、例外的にスナヅル属寄生性のつる草である。はふつう互生し、単葉葉柄をもち、托葉を欠く。花はふつう小型で3数性、花被片2輪、雄しべ3輪と仮雄しべ1輪、雌しべ1個(図1下)。雄しべのは2または4室で弁によって開く。果実液果核果種子を1個のみ含む。約602,500–3,000ほどを含み、多くは熱帯から温帯南部に分布し、特にアジア南東部や南米に多い。日本ではクスノキタブノキハマビワクロモジなどが見られる。精油を含み、シナモンセイロンニッケイシナニッケイ)やローリエゲッケイジュ)などは香辛料として広く利用されている。また、アボカド果実は脂肪分に富み、食用として利用されている。

概要 クスノキ科, 分類 ...
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特徴

要約
視点

高木から低木であるが、例外的にスナヅル属半寄生性つる植物である[5][3][6][7](図2)。ふつう精油を含み、またアルカロイドフラボノールをもつ[5][3]アルミニウム蓄積能をもつ[5]。節は1葉隙2–3葉跡[5][8]一次維管束は管状[5]散孔材、まれに輪孔材[5]道管階段穿孔または単穿孔をもつ[5]篩管色素体はP型またはS型[5]

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2a. クスノキは常緑高木
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2b. シロモジは落葉低木
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2c. スナヅルは半寄生性のつる植物

ふつう常緑性、ときに落葉性であり、はふつう互生だがまれに対生または輪生する[5][6][7](図3)。ふつう明瞭な葉柄をもち、托葉を欠く[5][3][8][7]。スナヅル属では例外的に葉は非常に退化している[3][8]。葉は単葉葉身はふつう革質で全縁、ときに掌状に切れ込み、裏面はしばしば粉白を帯び、葉脈は基本的に羽状であるが、しばしば三行脈が目立つ[5][3](図3)。葉をちぎると芳香がすることが多い[3]気孔はふつう平行型、毛状突起はふつう単細胞性、ときに針晶などを含む結晶細胞をもつ[5][8]。葉の向軸側にしばしば下皮がある[5]

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3a. Litsea coriacea の葉は互生、羽状脈をもつ。
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3b. セイロンニッケイの葉は対生、三行脈をもつ。
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3c. シロモジの葉は先端が三裂、秋に黄葉する。

は両性(雌性先熟)または単性(雌雄同株または雌雄異株[5][3][7][9](図4)。ふつう集散花序を形成し、腋生(ときに偽頂生)し、総状、円錐状、散形になり、散形の場合は総苞片をもつ[5][3][6]。ふつう花は小型、放射相称、3数性(まれに2数性)、花要素は輪生し、しばしば杯状の花托が発達している[5][3][7](図4)。花被片は6枚ときに4枚、ふつう2輪、ふつう萼片花弁の分化を示さないがときに外花被片が小型、瓦重ね状または敷石状、緑色から白色、黄色など[5][3][6][7](図4)。花被片は花後に脱落または宿存する[6]雄蕊(雄しべ)はふつう9個、離生、3個ずつ3–4輪、最内輪の雄しべの花糸に1対の腺体(蜜腺)がある[5][3][7]は2または4室、ふつう上向きに開く弁で開口し、基本的に内向だが最内輪の葯はしばしば外向する[5][3][7](図4c)。小胞子形成は連続型、タペート組織はアメーバ型または分泌型[5]花粉は無口粒[5][7]。しばしば雄しべの内側に仮雄蕊(仮雄しべ)がある[5][3]雌蕊(雌しべ)は1個、見かけ上は単心皮性であるが、3心皮性とされることもある[5]子房は1室、基本的に子房上位であるが、ときに子房周囲、まれに子房下位[5][3][7]花柱をもち、先端に乾性の柱頭がある[5]胚珠は1個、頂生または縁辺胎座、倒生胚珠、珠皮は2枚、厚層珠心[5]胚嚢発生はタデ型[5]内胚乳発生は遊離核型[5]。胚発生は多様[5]

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4a. クスノキの花
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4c. Laurus azorica の雄花
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4d. シロモジの雌花

果実はふつう液果または核果、ときに果托に囲まれ、種子を1個含む[5][3][6][7](図5)。種子は無胚乳(栄養分は子葉中に蓄積)、はよく分化している[5][7]。基本染色体数は x = 12[5]

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5a. ゲッケイジュの果実
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5b. アメリカクロモジ(Lindera benzoin)の果実
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5c. Beilschmiedia miersii の果実
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分布・生態

世界中の熱帯域から亜熱帯域に多く、低地から山地まで熱帯林の重要な構成要素であるが、一部は温帯域に生育する[3][8][7]。世界中に分布し、特にアジア南東部や中南米に多いが、アフリカには少ない[3][8][10]

花は虫媒花であり、花粉や、雄しべ・仮雄しべの基部についた腺体から分泌される蜜が報酬となる[9]。送粉者の選択性は低く、甲虫双翅類ハチ類によって花粉媒介される[9]

種子は、おもに果実食のによって被食散布される[8]。一般的に、果実は比較的大きく、果皮は薄いが、栄養価が高い[8]

クスノキ科はアゲハチョウ科の幼虫の重要な食樹であり、ウマノスズクサ科と共にアゲハチョウ科の多様化に関連していたと考えられている[8]

人間との関わり

クスノキ科の植物は精油を含んでおり、これが利用されることが多い[5][11]セイロンニッケイ内樹皮シナモンの原料とされ(図6a)、またニッケイ属の他のいくつかの種(シナニッケイインドグスタマラニッケイなど)の樹皮、ときに葉や花、果実も香辛料や生薬として利用される[11][12][13]。これらの用途のため、セイロンニッケイやシナニッケイなどは広く栽培されている[12][13]。日本原産のニッケイの根皮も江戸時代から利用され、八ツ橋ニッキ水に用いられていたが、21世紀現在では商業的利用はされていない[11][13]。ほかにも、Nectandra cinnamoidesAniba canelilla の樹皮、Ravensara aromaticaアオモジ、アメリカクロモジ(Lindera benzoin aromatica)の果実や種子は、香辛料などに利用される[11]

ゲッケイジュの葉も、古くから香辛料(ローリエ)として利用されている[14][15][16](図6b)。ゲッケイジュは古代ギリシア、ローマ文化と深く結びついており、アポロンのシンボルとされ、またゲッケイジュの枝葉で編んだ冠(月桂冠)は勝者や詩人などの讃えるために用いられた[14][17]

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6a. セイロンニッケイの内樹皮を巻いたもの(クイル)とその粉末、花
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6c. アボカドの果実とその断面

クスノキから抽出されるカンフル(樟脳)は、防虫剤や医薬品として利用されたが、現在では合成されたものが使われている[18][19]ローズウッド(パウローサ、ボアドローズ)から抽出される精油はリナロールを主成分とし、香水アロマテラピーに用いられる[11][20][21]アオモジなどから抽出された精油は、食品や化粧品の香料、アロマオイルビタミン原料などに利用されることがある[22][23]

アボカドの果実は脂肪分に富み、食用として広く流通しており、各地で栽培されている[5][24](図6c)。

クスノキ科の中には、木材として利用されている種も少なくない[3][25]厳島神社の大鳥居飛鳥時代の仏像には、クスノキが使われている[26][27]。また日本では、クロモジダンコウバイアオモジを高級楊枝の材料として利用している[11](図6d)。一部の種は、観賞用に栽培されたり、花材として利用されることがある[28]

系統と分類

要約
視点

クスノキ科は、古くから認識されていた植物群である。古典的な分類体系である新エングラー体系では、クスノキ科はモクレン目に分類されていた[29] 。その後一般的になったクロンキスト体系では、いくつかの科(ロウバイ科モニミア科ハスノハギリ科など)とともにクスノキ目に分類されるようになった[30]。20世紀末以降に標準となったAPG分類体系でも、クスノキ科はクスノキ目に分類されている[31]

クスノキ目の中では、クスノキ科はハスノハギリ科およびモニミア科に近縁であることが強く支持されているが、この3科の関係は必ずしも明らかではない[8]。形態形質からは、ハスノハギリ科との近縁性が示唆されるが、この関係は分子形質からは必ずしも支持されない[8][32]

クスノキ科は比較的大きな分類群であり、約60属2500–3000種が知られる[3][8]。半寄生性のつる植物であるスナヅル属のみをスナヅル亜科とし、他をクスノキ亜科としてまとめることもあったが[7]、この場合クスノキ亜科は単系統ではないため(図7)、2025年現在では亜科に分けずに全体を多数のに分けることが一般的である[8][10](図7, 表1)。ただし、このうち Mezilaureae、タブノキ連(Perseeae)、ゲッケイジュ連(Laureae)、クスノキ連(Cinnamomeae)をまとめて広義のクスノキ連(Laureae)とすることがある[33][32]。また、ハマビワ属Litsea)やクロモジ属Lindera)など分子系統学的研究から多系統であることが示されている属が少なくなく、再編成されると考えられている[3][33]

クスノキ科

ヒポダフニス連 Hypodaphnideae

アカハダクスノキ連 Cryptocaryeae

スナヅル連 Cassytheae

Neocinnamomeae

Caryodaphnopsideae

広義のクスノキ連

Mezilaureae

タブノキ連 Perseeae

ゲッケイジュ連 Laureae

クスノキ連 Cinnamomeae

7. クスノキ科内の系統仮説[10]

表1. クスノキ科の属までの分類体系の一例[10]

クスノキ科と考えられる化石記録は、後期白亜紀に非常に豊富である[8]

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脚注

外部リンク

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