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光が死んだ夏
日本の漫画、メディアミックス作品 ウィキペディアから
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『光が死んだ夏』(ひかるがしんだなつ)は、モクモクれんによる日本の漫画作品。『ヤングエースUP』(KADOKAWA)にて、2021年8月31日より連載中[3][2]。作者のモクモクれんは本作が初の連載作品となる[2]。三重県の山間部の集落で生活する少年と、行方不明になり戻ってきた後の様子に違和感がある親友を描いた青春ホラー物語[4][5][6]。
2025年7月時点で累計発行部数は350万部を突破している[7]。
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あらすじ
要約
視点
日常編(第1巻 - 第3巻)
よしき(辻中佳紀)とヒカル(忌堂光)は閉塞感漂う田舎町で育った幼馴染の親友。高校生になった光は山で1週間失踪して戻ってくるという事件を起こす。事件後の夏のある日、よしきはヒカルに「お前やっぱ光ちゃうやろ」と問う。ヒカルは人ならざる正体を見せ、死んだ光に成り代わっていたことを明かし、よしきが好きだから誰にも言わないでくれと泣きつく。よしきは困惑しながらも偽のヒカルを受け入れる。しかし、二人の周囲で奇妙な事件が次々と起こり始める[1][9]。
ヒカルを見て「ノウヌキ様が下りてきとる」と叫んだ老婆・松浦が翌日変死する。よしきはスーパーで出会った主婦の暮林理恵からクビタチの山から嫌な感じが消えて、よしきと一緒にいる「ナニカ」のせいで町や村が狂い出している、一緒にいない方がいいと助言される。
変死事件を受け、村の武田・三笠・松島はひそかに霊能対策者である田中を「会社」から派遣させ調査させる。田中は山でヒカルの父親・晃平のバッグと人の頭をかたどった呪具を発見し、神社に張った結界が傷ついていたことから「山から降りてきている」と報告する。
ヒカルの家によしき、朝子、結希が集まりお泊まり会をする。その夜、朝子はヒカルに「あなたは一体誰ですか」と問う。正体がばれたと焦ったヒカルは朝子を手に掛けようとするが、偶然よしきに見つかり手を止める。よしきはヒカルが松浦を殺したと知ってショックを受ける。後日よしきはヒカルを包丁で刺すが、死なないとわかると絶望し、自分を殺してくれと懇願する。よしきの覚悟に衝撃を受けたヒカルは「自分の半分」を分けてよしきに渡し、自らを人が殺せないまでに弱体化させる。よしきはヒカルが何者なのかを調べようと決意する。
謎解き編(第4巻 - 第5巻)
よしきとヒカルは図書館で地元のことを調べ始める。松浦の娘である司書からは「ノウヌキ様」は元々村の守り神だったが、大飢饉を境に祟り神に変じたとの情報を得る。一方、田中は民俗学者を名乗ってよしきに接触し、「持っている」「混ざっている」と確信する。
学校で不審者が刃物で自分の首を切る事件が発生。朝子は悪いものに入られた人と脅える。よしきとヒカルがファミレスで対策を話していると、突然「ケガレ」に襲われるが、「穴を閉じる」能力を持つ理恵に救出される。理恵はヒカルによしきを「混じり物」にしてはいけないと忠告する。
よしきとヒカルは事情を知ると思われる武田のじいさんに会いに行く。武田のじいさんは忌堂のせいだと逆上し、日本刀を振り回す。そこへ田中が現れ、日本刀を取り上げると、ヒカルの首を斬り落とす。よしきはヒカルの首をくっつけたあと失神。事件は武田のじいさんが暴れて二人が巻き添えになっただけということになった。田中は依頼者の武田に会社と自分の目的を語り村を離れる。意識不明で入院中のヒカルを見舞った理恵は、昔達磨塚トンネルで大量の人骨が見つかったが頭の骨だけなかったという伝説をよしきに語る。ヒカルは二日で目を覚ます。
よしきとヒカルは忌堂家の庭のお堂を開ける。そこには大量の木彫りの首があった。ヒカルはウヌキ様に首を捧げたあと木彫りの首を作って堂で供養していたと子供のころ父親に教えられたことを思い出す。
よしきは無口な父親から忌堂家の秘密を聞き出す。忌堂家の先祖は若くして亡くなった妻「ヒチ」の首を捧げる際、村人の首と引き換えに妻の蘇生を願ってしまったために村に不幸が起きてしまった。以来、忌堂家は5年に一度山に謝りに行く儀式を続けている。ヒカルの父親・晃平は儀式を終わりにしたいと揉めたあと事故死していた。
ヒカルはよしきの未来と応急措置的な問題解決のため、自ら山に戻り全てのケガレを引き受けることを考えるが、それは今の生活を諦め孤独に戻ることを意味していた。夏休み、よしきとヒカルは海に行く。ヒカルは山に戻るとよしきに打ち明けるが、田中が現れ「山に戻っても無駄。君はノウヌキ様じゃないから」という。
穴閉じ編(第6巻 - )
田中によれば、ヒカルはあの世から出現した「落とし子」であり、人の願いを現実をねじまげ叶えるこの世では異常な存在であると言う。過去に忌堂の願いに応えてノウヌキ様に成り代わった。弱体化したヒカルは山に戻ってもいずれ自滅すると説明。村人たちが首を捧げていたのはあの世からケガレを送る穴で、災厄を起こすため二人に閉じるのを手伝ってほしいと言い、呪具になったヒチの首を返す。迷う二人に理恵から「穴」が帯状になっていると連絡が入る。帯は穴からはケガレが移動した様子で、穴はクビタチ以外に希望ヶ山、ウデカリ、アシドリの合計4つあるという。ヒカルはケガレ避けになるとよしきにヒチの首を預ける。
左腕を骨折している巻が、部屋に足の幽霊が出るとよしきとヒカルに訴える。二人は理恵の車でアシドリの巻の家を訪問。ヒカルは巻の庭にあるカモシカを祀る祠を掃除するようアドバイスし、残っていたケガレを吸収して解決する。
ヒカルの正体とよしきの苦悩を知った朝子は悩んだあげく、オバケの声が聞こえる近所の空き家を調べようとするが、そこで田中と鉢合わせする。
アシドリでは「ほうこ祭り」が行われていた。よしきたちは、巻の兄から電話で祭りは昔「穴つづり」と呼ばれていた儀式と聞き、祭り会場で聞き込みをして、「穴」は向こう側からしか閉じられないと知る。理恵は人形「這子」が捧げられる「足塚洞」を偵察すると、急ぎ巻の家に戻る。よしきとヒカルも足塚洞で大量の足に囲まれた穴を発見。ヒカルは自分が向こう側に行って穴を閉じると言い出す。
クビタチで自殺が相次ぎ、武田は大量死の前触れと脅える。朝子は田中と空き家の穴閉じに協力する。巻はカモシカの力で眠らされていた。巻家に戻ったよしきとヒカルに、理恵は巻は先祖代々から穴のケガレと足が「つながり」引っ張られそうになっていると説明する。それを聞いたヒカルは自分が穴に入って穴を閉じたあと、よしきに「つながり」で引き上げてもらうことを提案する。
ウデカリとアシドリで同時に穴閉じ作戦が始まる。ウデカリの田中は朝子を通訳にしてケガレと穴を閉じる交渉を行う。ケガレは田中の体の一部を要求するが、「穴を閉じれば家主が帰ってくるかもしれない」と説得され穴閉じを了承する。ヒカルはホチキスを持って足塚洞の穴に入り真の穴を探す。
ヒカルがホチキスで穴を閉じ始めると穴の外の大量の足のケガレが暴れてよしきを襲う。巻も足の幽霊に囲まれ、理恵が守る。朝子たちも穴の腕のケガレに襲われ、田中は左腕を取り込まれる。穴と戦うよしきの前に「カモシカ様」が現れ、ケガレは消滅する。
朝子は田中を力ずくで穴から引き剥がし、空き家から脱出。田中は空き家を爆破してウデカリの穴閉じは終了する。一方よしきはヒカルを「つながり」で引き上げたが、戻ったのはヒカルの身体だけだった。
クビタチの武田の元に、田中に代わって会社から派遣された佐藤という女性が「ノウヌキ様を確保に来た」と挨拶し、田中からノウヌキ様は存在しないと聞かされていた武田は困惑する。佐藤はノウヌキ様が死亡した光に成り代わっていると言うが、三笠はヒカルが化け物だという証拠を見せるよう迫る。
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登場人物
要約
視点
声の項はテレビアニメ版の声優。
- よしき / 辻中 佳紀(つじなか よしき)
- 声 - 小林千晃[8]
- 本作の主人公。田舎の集落「クビタチ」で暮らす高校二年生の男子。ヒカルが人間ではない「ナニカ」だと気づくも、一緒にいることを選ぶ。
- 黒髪でカーテンのような長い前髪。本人にとっても長い前髪は邪魔だが、前髪で顔を隠さないと落ち着かない。顔にホクロがいくつもある。身長は175cm[10]。精神的に強く真面目。成績は悪くなく、在学する希望ヶ山高校まではヒカルと自転車通学している。自分の住む田舎を嫌っているが、とある理由から「自分の居場所ではない」という疎外感を持っている。
- 一時はヒカルの存在に悩み、死をも覚悟するが、ヒカルの半分を受け取ってから、ヒカルの正体の謎に向かっていく。
- ヒカル / 忌堂 光(いんどう ひかる)
- 声 - 梅田修一朗[8]
- 本作のもう一人の主人公。よしきの親友でクビタチ在住。山で行方不明になって以来、「人ではないナニカ」に入れ替わった。本人は山中で女体に似た木に気を取られて滑落し、既に死亡しているが、遺体は不明。
- 白髪で色白、灰青色と朱色の特徴的な瞳を持つ。身長165cm[10]。本体はペイズリー柄のような模様の流体で、光の遺体に入り込んで細胞までコントロール下においている[11]。胸の皮膚に裂け目を開けてよしきに体内を探らせても平気で、包丁で刺されてもダメージを受けない。「ケガレ」を吸収し消滅させる能力を持つ。
- ヒカルにとって光の記憶は分厚い辞書を突然頭に叩き込まれた感覚に近い。言動が子供っぽく、よしきから「寂しがり屋」と評された。
- 人間とは異なる視座を持ち、生死の差をあまりよく理解していない。ヒカルにとっては「エサとして飼育されているコオロギ」と「人間」が持つ命の価値の違いがわからない[12]。
- 人として生きる前は「居場所がない」という感覚を抱えながら孤独に彷徨っていた。たとえ代替品扱いだとしても自分に居場所をくれた佳紀に強く執着し、彼を守ろうとする。松浦のばあさんを殺し、朝子も手にかけようとしたが、よしきの命をかけた訴えに応え、中身の半分を体内から折り取った骨に分割してよしきに渡し、自らを弱体化させた。よしきと謎を探るなかで、自分の存在でよしきや皆が悲しむと感じ、また全てのケガレを引き受けるため、自ら身を引き山に戻ろうとする。
- 山岸 朝子(やまぎし あさこ)
- 声 - 花守ゆみり[13]
- よしきとヒカルのクラスメイト。ウデカリ在住[14]。大柄で腕相撲が得意。子供のころから霊感があり、ヒカルの異様さに気づいたが正体まではわかっていない。幽霊の音や声が聞こえる能力があるが、ヒカルに襲われてから右耳が聞こえにくくなった。
- 田所 結希(たどころ ゆうき)
- 声 - 若山詩音[15]
- よしきとヒカルのクラスメイト。希望ヶ山在住[14]。お下げ髪の女子。朝子とは幼馴染の親友。小柄でクールな性格。
- ゆうたから好意を寄せられており、クレーンゲームで取ったぬいぐるみをプレゼントされる(なお、これは佳紀が取ったものである)。
- 巻 ゆうた(まき ゆうた)
- 声 - 中島ヨシキ[15]
- よしきとヒカルのクラスメイト。坊主頭の男子。アシドリ在住。結希のことが好き。兄はオカルトマニアで、東京の大学で民俗学を学んでいる。自宅の庭には猟師だった曾祖父がニホンカモシカを祀った祠がある。ヒカルの見立てによれば、「動物のケガレ」だったカモシカが祀られて格が上がり、守り神になっているという。
- 暮林 理恵(くればやし りえ)
- 声 - 小若和郁那[13]
- スーパーでよしきに声をかけた中年女性。霊感があり、「『ナニカ』のせいで町や村が狂いだしている」と警告する。
- 現在は娘と夫の母と同居しており、息子はすでに独立している。亡夫が帰ってきた経験を持つが、息子が怪我を負わされ、「ダメだった」と語る。
- あの世とこの世の境の膜の穴から出てきた「ケガレ」を戻し、穴を閉じる能力を持っている。
- 田中(たなか)
- 声 - 小林親弘[13]
- 金髪・サングラス・無精髭、首筋に大きなアザがある怪しい風貌の男。相棒のハムスターを飼育ケースに入れて連れている。車の中ではアイドル歌謡[16]を聴いている。
- 老婆変死事件のあと、クビタチ集落の代表者たちから依頼を受け、調査のため「会社」から赴く。霊感や霊能力はないが、神社に結界を張った際には「臓器を1つ持ってかれている」と代償を使っており、自分の血液を使った鈴の呪具を作るなどの方法を用いている。
- 佐藤(さとう)
- 声 - Lynn
- 「会社」の構成員の一人。「ノウヌキ様」確保のため、クビタチに派遣された。
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用語
- ノウヌキ様
- 山に祀られていたという神様。忌堂家では「ウヌキ様」と呼ばれる。現在、山は禁足地となっている。昔は人の首を捧げると願いを叶えると信じられていた。だが寛延2年(1749年)、忌堂家の先祖が死んだ妻の首を捧げる際に村人の命と引き換えに死んだ妻の蘇生を願ったため、村の三分の一が怪死する事件が発生。妻も生首のまま生き返って1日で死んでしまう。以来、忌堂家の男は定期的に山でウヌキ様に謝る儀式を続けていた。
- 昔、クビタチの丹砂山で採掘される水銀を使用した堕胎薬「うろぬき薬」で間引きすることを「うぬきさんにお返しする」という隠語があり、これが名前の由来とよしきは推測している。
- 田中の調査により、そもそもノウヌキ様という神様は存在せず、村人が首を捧げていたのは「穴」。忌堂の願いを叶えて村に災厄をもたらしたのは偶然あの世から出現した「落とし子」。彼がノウヌキ様に成り代わり、さらに山で亡くなった忌堂光の「よしきを一人にしないでほしい」という願いに応えヒカルに成り代わったという。
- ケガレ
- 幽霊や気のようなもの。あの世から穴を通じてこの世に来て害をなす。全てのケガレが悪いわけでなく、祀られて人間の守り神になったケガレもいる。追い払うには穴に戻す方法があるが、包丁で刺す、爆破する、孫の手で叩くなど物理攻撃も有効である。
- 穴
- あの世とこの世を隔てる膜のようなものに開いた穴のこと。小さい穴はあちこちにあり、理恵が見つけては閉じて回っている。大きい穴は人の手に負えない。閉じるには誰かが内側から縫い閉じる必要があり、アシドリでは子供に閉じさせあの世に捨てた儀式が「ほうこ祭り」になったらしい。
- 希望ヶ山町
- 本作の舞台となる町。周囲を山に囲まれた田舎町。旧名は「首立村」。1700年代に分村して「達磨捨(だるますて)」となる。近年に合併して希望ヶ山町と改名したらしい。
- ノウヌキ様信仰があり、多くの人が犠牲になったが、大量死事件をきっかけに祟り神として怖れられるようになり、宣教師による布教で多くの村人が改宗し、あちこちに教会も建設された[17]。
- ほうこ祭り
- アシドリで行われる祭り。針と糸を持たせた人形「這子(ほうこ)」を作り、子供の厄除けを願って村外れにある足塚洞に捧げる。足塚洞は達磨塚トンネルと同じく大量の足の人骨が発掘されたことがある。元は「穴つづり」と呼ばれる儀式だったが、外から入った宗教の影響で祭り形式になった。悪いものが入ってくる穴を「ほうこさん」に針と糸で縫い閉じてもらうという伝承があり、よしきとヒカルは子供を生贄にして穴に入れたのではと推測した。
- 会社
- 田中と佐藤が所属する組織。天文学的な確率で出現する「落とし子」を見つけるため、各地に調査員を派遣している。田中もその一人だが、会社に落とし子を利用させたくない。暮林も会社の存在を認知しており、その業界では有名な組織らしい。
制作背景
要約
視点
連載の経緯
作者のモクモクれんは制作の動機について、いわゆる“成り代わり系”の物語では、多くの場合、人外が敵として描かれてしまうが、誰かに成り代わった人外自身の心情はどうなるのか、という疑問から着想を得たと述べている。また、成り代わられた人を取り巻く人々の感情を描くと同時に、成り代わった人外の心情に重点を置いているとしている[18]。
作者は、もともと漫画家になりたいと考えていたわけではないため、絵を描くことや話を考えることが好きでも漫画を執筆したことはなかった[19]。コロナ禍で時間ができたため、昔から構想していた話と登場人物を漫画という形で制作し、2021年1月にTwitter上で公開したところ、大きく反響を得たことをきっかけとして複数の編集部から声がかかった[2][19][20]。モクモクれんによると、TikTokで流行した際には女性読者が多い印象であった[19]。『ヤングエースUP』を選んだ理由は、モクモクれん自身の知名度がなく、「それだったら無料で読めた方がいいだろう」と考えたからである[19]。同年4月から連載の描きためを開始したため、連載の準備期間はなかった[20]。本作は作品のために新しく構想が練られたのではなく、モクモクれんによると「いままで自分のなかに蓄積されてきた好きなものをミックスしてできあがった作品」である[20]。タイトルは連載開始直前まで案が浮かばず、担当編集者からの複数の案をもらうも、悩んでいた[21][22]。『光が死んだ』などボツを経て、最終的に内容がわかる感じでまとまりのよい『光が死んだ夏』に決定[22]。前述の作品をもとに、同年8月31日より『ヤングエースUP』にて本作の連載を開始[2]。作者のモクモクれんは本作で商業連載デビューを果たす[23]。
舞台
三重県の山間部の田舎を舞台としており[5]、作中には三重弁が登場している[20]。「登場人物に特徴的な方言を使わせたかった」と考えていたモクモクれんは、「関西弁とは違う絶妙なライン」を探し、「東海地方の山間の地域」を選んだのである[20]。また、モクモクれんは澤村伊智の『比嘉姉妹シリーズ』を好んでおり、第1作の『ぼぎわんが、来る』が三重県を舞台としていることも理由に挙げている[20]。モクモクれんは三重県に取材に行きたいと考えていたが、コロナ禍では困難であった[20]。
モデルは「山と海との境目のような立地の狭い集落で、家がみっちりと密集していた」場所に唯一存在した商店という、モクモクれんの祖母の家である[5]。古い磨りガラスや黒電話や勝手に出入りする近所の人など、両親と帰省した際に見た風景が本作の元になっている[5]。
ホラー
物心がついたころから映像作品をたくさん観ていたモクモクれんは、「気づいた時には、もう好きでした(笑)」と語るほど、ホラーが好きである[20][24]。テレビの心霊特集も欠かさずに鑑賞していたといい[21]、よく参考にしている作品として、『ほんとにあった怖い話』シリーズや『怪談新耳袋』シリーズを挙げている[24]。モクモクれんはJホラーや日本以外のホラー映画が好きであるが、POV(Point of View)ホラーも好んでおり、白石晃士が監督を務めるホラー映画作品はすべて鑑賞し、本作は「一人称視点の構図を効果的に行う」ようなPOV(Point of View)方式で描かれている[24]。
モクモクれんはホラー映画を「あまり怖いとは感じない」といい、「どちらかと言えば、楽しい気持ちのほうが勝っている」ため、ジェットコースターやお化け屋敷などのアトラクション感覚で映画を鑑賞する[5]。裏付けのないような「わけがわからないものが怖い」と話し、本作では「く」の化物を例に挙げている[5][21]。「ショッキングなシーンをドーンと見せる」より、「怖い感じが来る寸前」を好むため、本作では「ゾワゾワするような感覚を大事にしたくて、ショッキングさは、むしろ抑えめにしようと心がけて」制作されている[21]。ヒカルについては、「もともと人間側の気持ちよりは、入れ替わってしまった後の人外の気持ちを描きたい」と考えたことが先で、モクモクれんの考える人外とはこうだという要素が詰めこまれている[21]。親友が人外にという設定はよくあるような漫画では「親友の本来の姿を取り戻そうとするバトルもの」になりそうだが、本作は「よしきの心情を通してリアルに共感できる物語」にしたいと考えて描かれている[25]。
擬音
本作では擬音が描き文字ではなく、活字のフォントで印字されている[21]。「映像と違いマンガには音声がない」ため、「文字を歪ませたり動きを出したりして、変化」をつける際に、「読んでもらいたい」というモクモクれんの意図によりフォントを使用している[21]。モクモクれんは「手描き文字だと絵になじんでしまい、目が滑って、なかなか読んでもらえないような気がする」と考え、読者の目に入れたいところではフォント、意識しなくてもよいところを手描き、と使い分けを行っている[21]。ふきだしのセリフの写植は担当編集者が作業を行っているが、擬音はモクモクれんが自ら打っている[21]。
制作
本作は「ミスマッチさ」を大事にして描かれている[22]。季節が夏であるのは、モクモクれんが半そでが描きたかったからという理由もあるが、内容が暗いため、「季節のなかではいちばん元気な感じがする夏がいいだろう」と考え、いちばんミスマッチな気がするという夏が選ばれている[22]。単行本のカバーの色や、PVのBGMや、ビジュアルはミスマッチを狙うために意図的に明るくしている[22]。
モクモクれんが執筆していて楽しいのは、「ここは盛り上がるだろうな」という場面を描いている時と、考察をする読者の予想を裏切るような展開を描けた時である[22][26]。行動や表情やセリフなどは登場キャラクターに「なるべく自然な反応をするように演技をさせている」といい、ネームの時点で「うつむく角度や相手から目を逸らす度合い」など、細かく動きを考えて制作している[25]。登場人物の心情を読者に自由に受けとってもらうため、「ここは泣くところです」のようなわかりやすい描写をしないよう、意識して描かれている[25][27]。
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PV
2022年3月に単行本第1巻が発売された際には、PVを公開[4]。ヒカル役は根岸耀太朗、よしき役は大野智敬が担当している[28]。同年10月には単行本第2巻の発売を記念して、4週連続でPVを公開[28][29]。4本は異なる声優が担当しており、10月3日公開の第1弾は第1巻発売時のPVと同じ根岸と大野が[28]、10月10日公開の第2弾はヒカル役を下野紘、よしき役を松岡禎丞が、10月17日公開の第3弾はヒカル役をKENN、よしき役を前野智昭が[30]、10月24日公開の第4弾はヒカル役を榎木淳弥、よしき役を内山昂輝が務めている[29]。第4弾はテレビコマーシャルとしても放送された[29]。10月3日から10月9日まで東京都の池袋にて大型交通広告を掲示し、西武鉄道池袋線池袋駅の地上改札内1番ホーム壁面にて描きおろしのイラストを、地下改札前ではデジタルサイネージを表示した[4]。10月17日から10月23日までは大阪府の阪急⼤阪梅⽥駅でも展開され[30]、10月24日から10月30日まで東京都の渋谷駅でも本作の大型広告が提示された[29]。
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評価
ライターのちゃんめいは、本作には恐怖を感じる要素がばらばらと存在するが、「“ナニカ”になってしまったヒカル」とその傍にい続けるよしきとの間に存在する「複雑な感情」が強くはっきりと描かれていると評する[1]。 また、『ダ・ヴィンチ』編集長の川戸崇央は、「見事な擬音」やネガティブとポジティブを瞬く間に切り替える「表情の演出」など本作は読みどころが多いとする[9]。
受賞
2022年8月、「次にくるマンガ大賞2022」のWebマンガ部門で11位と、「海外ファンの熱量が高かった作品に贈られる」特別賞であるGlobal特別賞の繁体字版を受賞[31][32]。同年12月には「このマンガがすごい!2023」オトコ編で1位に選出[33][34]。2023年2月に全国書店員が選んだおすすめコミック2023の5位[35][36]、同年3月に「マンガ大賞2023」の11位[37][38]、同年9月に「第7回みんなが選ぶTSUTAYAコミック大賞」で7位に選ばれている[39]。
書誌情報
漫画
- モクモクれん 『光が死んだ夏』 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉、既刊7巻(2025年7月4日現在)
- 2022年3月4日初版発行(同日発売[40])、ISBN 978-4-04-112273-0
- 2022年10月4日初版発行(同日発売[41])、ISBN 978-4-04-112960-9
- 2023年6月2日初版発行(同日発売[42])、ISBN 978-4-04-113700-0
- 2023年12月4日初版発行(同日発売[43])、ISBN 978-4-04-114339-1
- 2024年6月4日初版発行(同日発売[44])、ISBN 978-4-04-114997-3
- 2024年12月4日初版発行(同日発売[45])、ISBN 978-4-04-115608-7
- 2025年7月4日初版発行(同日発売[46][47])、ISBN 978-4-04-115682-7 / ISBN 978-4-04-115683-4(限定版)
小説
- モクモクれん(原作・イラスト)、額賀澪(著) 『光が死んだ夏』 KADOKAWA〈角川コミックス・エース〉、既刊2巻(2025年7月4日現在)
- 2023年12月4日発売[48][49]、ISBN 978-4-04-075085-9 / ISBN 978-4-04-075092-7(特装版)
- 2025年7月4日発売[50][51]、ISBN 978-4-04-075086-6 / ISBN 978-4-04-075991-3(特装版)
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テレビアニメ
要約
視点
2024年5月24日にテレビアニメ化が発表された[6]。2025年7月より日本テレビ系列にて放送中[8][13]。
スタッフ
- 原作 - モクモクれん[8]
- 監督・シリーズ構成 - 竹下良平[8]
- キャラクターデザイン - 高橋裕一[8]
- サブキャラクターデザイン - 渡辺舞、西願宏子、長澤翔子
- ドロドロアニメーター - 平岡政展[8]
- プロップデザイン - 應地隆之介[13]
- 美術設定 - 多田周平、高橋武之、曽野由大[13]
- 美術監督 - 本田こうへい[13]
- 色彩設計 - 中野尚美[13]
- 3D監督 - 中野祥典[13]
- 撮影監督 - 前田智大[13]
- 2Dデザイン - 永良雄亮、津江優里[13]
- 編集 - 木村佳史子[13]
- 音響演出 - 笠松広司[13]
- 音響制作 - dugout[13]
- 音楽 - 梅林太郎[13]
- 音楽プロデューサー - 水鳥智栄子
- 音楽制作 - KADOKAWA
- プロデューサー - 藤原利紀、倉兼千晶、椛嶋麻菜美、宮城雄大、宮原慶太
- アニメーションプロデューサー - 上内健太
- アニメーション制作 - CygamesPictures[8]
- 共同製作幹事 - KADOKAWA、サイバーエージェント
- 製作 - 「光が死んだ夏」製作委員会(KADOKAWA、サイバーエージェント、日本テレビ、CygamesPictures)
主題歌
- 「再会」[52][53]
- Vaundyによるオープニングテーマ。作詞・作曲・編曲はVaundy。
- 「あなたはかいぶつ」[53]
- TOOBOEによるエンディングテーマ。作詞・作曲・編曲はTOOBOE。
- 「日々の影」
- 神奈川県立湘南高等学校合唱部による劇中歌。作詞はLeo Imai、作曲は梅林太郎、編曲は森田花央里。第7話エンディングでは辻中佳紀とヒカルによる歌唱が使用された。
- 「Rêve de ballon」
- 東海大学付属高輪台高等学校吹奏楽部の演奏による第1話の劇中歌。作曲は梅林太郎、編曲は田村修平。
- 「ぼくはたい焼き」
- 朝倉さやによる第1話の劇中歌。作詞は森田花央里、作曲は梅林太郎、編曲はハヤシベトモノリ。
各話リスト
放送局
BD / DVD
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脚注
参考文献
外部リンク
Wikiwand - on
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