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1996年に公開された日本映画 ウィキペディアから
『八つ墓村』(やつはかむら)は、1996年10月26日に公開された日本映画。製作はフジテレビジョン、東宝、角川書店。制作プロダクションは東宝映画。配給は東宝。上映時間は127分。イーストマンカラー、ビスタサイズ。第9回東京国際映画祭特別招待作品。
1970年代に石坂浩二の金田一耕助シリーズを手掛けた市川崑による17年ぶりの金田一映画。物語は簡素化されているが、原作に比較的忠実に描かれている。特に、原作ではヒロイン的な扱いながら映像化の際は省略されることの多い典子の扱いが比較的重い点が特徴。
石坂浩二主演シリーズの常連出演者だった加藤武と小林昭二が本作にも出演している。また77年版にも出演した井川比佐志も本作では諏訪弁護士を演じる。
概ね原作に沿っているが、ストーリー展開を簡素化するためと思われる改変が多々なされている。特に、鍾乳洞内で屍蝋安置位置より遥かに深くまで行くことは無く、鍾乳洞の地図が入った辰弥の守り袋も登場せず、洞内探検や追跡劇あるいは洞内での情交などの場面は無い。また、財宝も発見されない。関連して、小梅は誘拐されるのではなく屍蝋の甲冑を頭上から落とされてその場で殺され、九野(原作の久野)の死体はその直後に簡単に発見される。終盤で美也子が村人たちを扇動する設定も無く、むしろ田治見家に押し寄せてきた村人たちを説得して解散させている。
鍾乳洞への抜け道になっている長持は辰弥の座敷の納戸ではなく庭を挟んだ向かいの納屋にあり、出入りのために辰弥に眠り薬を飲ませる設定は無い。春代が犯人の指を噛みちぎり辰弥に看取られて死ぬ経緯は原作に沿っているが、場所は鍾乳洞内ではなく納屋である。これは、小梅の遺骨を持って鍾乳洞へ行こうとした小竹が落下してきた駕籠で圧死し、そのときの悲鳴を聞いて春代が納屋に駆けつけたため、慌てた犯人が絞殺しようとした結果である。春代の心臓は、この顛末による負担に耐えられなかった。
金田一は森家の当主(原作の野村荘吉)ではなく諏訪弁護士の依頼で調査に入っており、逗留先も民宿を兼業している郵便局である。亀井陽一の写真が発見された時点では何者か判らず、金田一が郵便局に逗留している立場を利用して、26年前当時の郵便局長(つまり鶴子の上司)の息子が岡山市内で時計屋を営んでいたのを訪ねて明らかにする。亀井と辰弥の親子関係は鶴子が拉致される前に戦地の亀井に宛てた手紙で妊娠を報告していることから明らかになる。
亀井は辰弥誕生より前に戦病死していて、英泉として現れることはない。登場する僧侶は濃茶の尼の他には洪禅(蓮光寺ではなく麻呂尾寺)のみで殺害されることはなく、梅幸尼も登場しない。関連して、九野医師(原作の久野)の殺人計画書は存在せず、疎開医の新居も登場しない。双児杉が落雷で裂けた設定も無い。
その他、以下のような差異がある。
当時のハリウッド映画でリメイクブームが起き、国内ではミステリーブームが流行っていたことを受けて、東宝のプロデューサーだった高井英幸が映画化を企画した。当初は1970年代に金田一5部作に主演した石坂浩二を再起用する方向で話が進んでいたが、東宝側から「新しい金田一像を創って欲しい」という要望が急遽入り、同じく東宝が推した豊川悦司が、「若者に人気がある」という理由で主役抜擢された。監督を担当した市川崑は、「金田一というのは、そんなに心理的に綾を成して作り込む役ではない」という考えから、金田一に対して最低限守るべき演技事項を打ち合わせた後は、豊川に演技プランを自由に任せ、反対にヒロイン・美也子役の浅野ゆう子に対しては、細かい芝居要求を行うという、正反対の演技指導を行った。また大ヒットした松竹版との差別化を図るため、時代設定を原作順守の昭和20年代とし、金田一を早く登場させ、尚且つ原作よりも活躍させたいという監督の要望から、テンポを演出と編集で早めて金田一の登場が前倒しされ、さらに東宝側から上映時間を2時間強に収めるよう要請があったため、原作に存在した『殺人メモによる空想殺人』、『鍾乳洞の地図』、『落ち武者が隠した三千両』といった要素は全てカットされた。キャスティングに関しては、岸田今日子と白石加代子、吉田日出子の3人は監督がプロデューサーに働きかけて起用され、浅野ゆう子と岸部一徳、石倉三郎も脚本段階で概ね構想されていた人選から起用された[3]。
里村慎太郎役の宅麻伸は、エグゼクティブプロデューサーの橋本幸治からの推薦で起用された[4]。橋本は映画監督時代に『ゴジラ』(1984年版)でも宅麻を起用していたが、市川は宅麻を知らなかった[4]。
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