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鬼畜 (松本清張)

松本清張の短編小説、及びそれを原作とするテレビドラマ、劇場映画 ウィキペディアから

鬼畜 (松本清張)
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鬼畜』(きちく)は、松本清張短編小説。『別册文藝春秋1957年4月号に掲載され、1957年12月に短編集『詐者の舟板』収録の1作として、筑摩書房から刊行された。

概要 鬼畜, 作者 ...

1978年松竹映画化され、2002年日本テレビ系列・2017年にもテレビ朝日系列でテレビドラマ化された。

あらすじ

東京から急行列車で3時間を要するある地方で、32歳の竹中宗吉は、ようやく、印刷屋の主になるところまで漕ぎつけた。のようなをした妻・お梅との間に、子供はなかった。商売の順調な宗吉は、ある時、料理屋の女中菊代に惹かれる。何とか菊代を養えそうな気がした宗吉は、彼女と関係を持った。好きな女を囲う身分になれたという充足は出世感に近かった。菊代との間には、3人の子供ができた。しかしその後、近代的な印刷会社の進出や火事により、宗吉の商売は零落する。宗吉から生活費の貰えなくなった菊代が、3人の子を連れて、宗吉の家に乗り込んだため、お梅にも事態が露見する。お梅の仕打ちと女房の前に竦んだ宗吉の腑抜けぶりに、菊代は怒り、出て行ってしまう。

3人の子供が残されるが、女房の睨む中、弟は病死、妹は行方不明[1]になり、兄も命を狙われる。

概要

本作は実話に基づいたフィクションである。検事の河井信太郎から聞いた話がベースになっており、著者による話のメモが残されている。

実際の事件は、骨董屋の男が妾に3人の子を産ませていたが、商売不振で仕送りができず、妾が子を連れて男の家に来るところから始まる。その後、本妻に子を片付けろと責められ、殺害および殺害未遂を経て、松崎町で逮捕された。男は在獄中に発狂死し、本妻は在監中であったという[2]

映画

要約
視点
概要 鬼畜, 監督 ...

1978年10月7日公開。製作・配給は松竹。監督は野村芳太郎。主演は岩下志麻緒形拳。英語題名『The Demon』。DVD及びBDがリリースされている。同時上映はリバイバル公開の『砂の器』。

キャッチコピー

  • 弟は、きっと星になったんだ
  • 妹は、きっとお金持ちに拾われたんだ
  • でも僕だけは、父ちゃんから離れない
  • 父ちゃんはきっとぼくを殺せないよ
  • 抱きしめてやりたい!この感動
  • この悲しみに言葉はいらない!
  • 清張・野村が現代社会に追う父と子の愛の絆

ストーリー

舞台は埼玉県川越市。印刷屋を営む宗吉(緒形拳)は、妻・お梅(岩下志麻)に隠れ、料理屋の女中・菊代(小川真由美)を妾として囲い、7年の間に3人の子供を産ませていた。しかし宗吉の印刷屋は火事で設備の大半を失い、再建しようにも得意先の大半を大手の印刷会社に奪われ、融資の都合もつかず火の車。菊代に月々の生活費も渡せなくなっていた。生活に窮し業を煮やした菊代は3人の子を連れ、印刷屋に乗り込んできた。

愛人と隠し子の存在を知ったお梅は激怒し、子供たちの前で菊代と宗吉を攻め立てる。そして翌朝、菊代は印刷屋に子供たちを置き去りにして姿を消した。父として、なんとか子供たちを家に置いてやりたいと思う宗吉だったが、はなから「他人様の子供」など育てる気の無いお梅は、子供たちに鬼のようにつらく当たるのだった。まさに虐待そのものだったが、気弱な宗吉は子供たちに「おばちゃんの傍に行ったらだめだぞ」といい含めるのみだった。

ついに末子である次男・庄二が、お梅による育児放棄の末、衰弱死する。お梅は残りの子供も処分することを宗吉にせまり、宗吉は長女・良子東京タワーに連れて行き、置き去りにする。さらに長男・利一をも毒殺しようとするものの果たせず、2人で涙に暮れる。

それでもお梅は譲らず、宗吉は息子を連れ、東海道新幹線に乗った。それは利一の死に場所を探すための、あてのない旅だった。やがて能登半島にたどり着き、日本海を臨む岸壁で、宗吉は利一を海に落す。利一は、漁師に助けられ命をとり止めたが、刑事達に事情を聞かれても、黙秘を貫くのだった。しかし利一の持っていた、石版印刷に使う石材のかけら(利一はこれを石蹴り遊びに使っていた)から足が付き、川越の印刷所に能登の警察が来訪。宗吉は殺人未遂の容疑で警察に逮捕される。

刑事に付き添われ、宗吉は北陸の警察を訪れる。自身を崖から突き落とした父を目のあたりにして、利一は涙を堪えながら「父ちゃんなんかじゃないやい!」「知らないおじさんだよ!」と否定する。そんな利一にすがりつき、宗吉は後悔と罪悪感で号泣するのだった。

出演

スタッフ

受賞歴

エピソード

  • 監督の野村芳太郎が当初主演に考えたのは渥美清だった。野村によると「平凡で気が弱く、優しくてお人好し。そういう人間が追い込まれて、最後は鬼畜になると言うのがこの作品の主眼。そう考えたときに最初に頭に浮かんだのは渥美清だった」と語っている。しかし、このオファーは寅さんのイメージとの兼ね合いも有り、結局、通らなかったという(映画会社の意向か渥美自身が断ったのかは不明)[4]
  • 当時、岩下志麻にも幼い娘がおり、可愛い盛りの子供を殺す役に躊躇を覚えていた。しかし、野村監督から「今こういう激しい役をやっておくと節目になる」と説得され、夫役として緒形拳と交渉中であることを知らされて、「緒形さんとなら」と出演を決心した[5]
  • 舞台を活動の主体としたかった緒形拳は、宗吉役を何か月もの間、断り続けていた。ところが痺れを切らした岩下志麻が、二度にわたって督促の電話を緒形宅にかけた(岩下が俳優の自宅に電話を掛けたのは生まれて初めてだったという)[5]。さらに、緒形と仲の良かった車掌役の三谷昇がシナリオを読み、「こんないい役をやらない役者はないだろう」と言ったことで、決心をつけたという[6]
  • 野村監督は、映画のリアリティを出すため、妻役の岩下志麻には「たとえオフ(撮影していない時)でも絶対に子役と仲良くしないこと」と厳命した。岩下も、子役たちが挨拶に来ても返事もせず、イライラをぶつけるように怒鳴り散らしたりした。子どもたちは岩下を目にすると怯えるようになり、芝居で岩下から口にご飯を詰め込まれた一歳半の子役は、岩下を見ると悲鳴を上げるようになり、撮影が中断する事態にもなった。撮影終了まで律義にそれを守り通したため、「私は子役たちにきっと嫌われているだろう、もしかしたらトラウマになってしまっているかもしれない」と後悔の念にかられたという。しかし、のちに成人した子役たちとバラエティ番組で共演する機会に恵まれた際に疑念を解くことができ、ほっとしたという。一番いじめられた下の子は、撮影時の記憶が全くなかった[7]
  • 映画のラストで、利一が宗吉を「父ちゃんなんかじゃないやい!」と否定するシーンは、観客によって解釈が分かれることが多い。「父親をかばった」とする意見と、「父親を拒絶した」という意見である。脚本の井手雅人の意図は明確である。幼少時に尺八奏者である父・菊次が芸妓と出奔、伯父夫婦に引き取られた経験がある井手は、利一に過去の自分を重ねて、自分を捨てた父親への恨みと拒絶を表したものとしてこの台詞を書いたのだった。ところがそれではあまりに救いがないと判断した野村は、利一が父親をかばっているのだと解釈する刑事たちの台詞を加えて、どちらとも取れる演出を施した。この脚本からの改変について、井手は終生「違うんだなあ」と愚痴をこぼしていたという[8]
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テレビドラマ

要約
視点

2002年版

概要 松本清張スペシャル 鬼畜, ジャンル ...

松本清張スペシャル・鬼畜』。2002年10月15日21:03 - 23:24に日本テレビ系列の「火曜サスペンス劇場」枠で放送された。舞台は埼玉県川口市に設定。火曜サスペンス劇場1000回突破記念作品。平成14年度文化庁芸術祭参加作品。

のち2004年3月24日21:00 - 23:24に『松本清張ドラマスペシャル・鬼畜』のタイトルで、日本テレビ開局50周年記念番組として再放送された。現在はDVD化されている。

キャスト

スタッフ

2017年版

概要 ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜, ジャンル ...

ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜』のタイトルで2017年12月24日21:00 - 23:18にテレビ朝日系列で放送された[9]。主演は玉木宏[10]

キャスト

スタッフ

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脚注

外部リンク

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