相互銀行(そうごぎんこう)とは、相互銀行法(昭和26年法律第199号[注釈 1])に基づく金融機関である。
相互銀行は主に中小企業などを顧客対象として業務を行い、また無尽から発展した相互掛金を主な商品として取り扱っていた。営業範囲はほぼ本店所在地である一都道府県内に限定されていた。
金融機関の合併及び転換に関する法律(昭和43年法律第86号、通称:合転法)に基づく認可により1989年(平成元年)、徳陽銀行と東邦相互銀行を除く全ての相互銀行が普通銀行(第二地方銀行)に転換[注釈 2]。残る徳陽相互銀行が翌1990年(平成2年)に徳陽シティ銀行へ転換、東邦相互銀行が1992年(平成4年)4月1日に地方銀行の伊予銀行へと吸収合併されたことで相互銀行は消滅。直後に相互銀行法も廃止され、法的にも消滅した企業形態となった。
相互銀行を転換した第二地方銀行は地方銀行よりも小規模なものがほとんどであったため、バブル崩壊後の平成不況により、合併や経営破綻して法人格が消滅したものも少なくない。
普通銀行転換前、普通銀行と違って民放のCM規制が無かったため、ラジオ番組を中心に番組スポンサーになっていた相互銀行[注釈 3]もあった。
相互銀行は成り立ちから下記の3つに分類する事が出来る。
- 相互銀行法の規定により免許を受け相互銀行となった無尽会社 - 株式会社中央相互銀行[注釈 4]ほか多数存在する。なお、無尽会社もまた戦前より営業していた「無尽会社」と、戦後勃興した看做無尽を営む「殖産会社」に分類される。
- 相互銀行として設立された株式会社 - 株式会社神奈川相互銀行[注釈 8]、株式会社三栄相互銀行[注釈 9]など
- これは中小零細金融の資金需要を喫緊に満たす必要にせまられ、当時の法制上普通銀行と比べ設立認可が容易であった簡易銀行である相互銀行形態を選択したものである。
- 金融機関の合併及び転換に関する法律に基づく認可により相互銀行に転換した他の金融機関 - 株式会社長野相互銀行[注釈 10]など
- 「1989年普銀転換」の後の記号は転換時期を示す。
- 無印……02月1日(52行。第1次一斉転換)
- ◎……04月1日(10行。第2次一斉転換)
- △……08月1日(03行。第3次一斉転換)
- □……10月1日(01行)
- ×……現在は法人格が消滅したもの
- ▲……法人格は存続しているものの、第二地方銀行ではなくなったもの
無尽会社から転換
北海道・東北地区
- 北洋相互銀行(北海道無尽→北洋無尽、1989年普銀転換。現在の北洋銀行、北海道)
- 北海道相互銀行×(北海道無尽、1989年普銀転換。札幌銀行を経て2008年北洋銀行に吸収合併、北海道)
- 弘前相互銀行×(弘前無尽、1976年に青和銀行に吸収合併。現在はみちのく銀行、青森県)
- 秋田相互銀行(秋田無尽、1989年普銀転換◎。秋田あけぼの銀行を経て羽後銀行に吸収合併、現在は北都銀行、秋田県)
- 山形相互銀行×(両羽無尽、1989年普銀転換。山形しあわせ銀行を経て殖産銀行に吸収合併され解散。現在のきらやか銀行、山形県)
- 殖産相互銀行(山形殖産→山形殖産無尽、1989年普銀転換。殖産銀行を経て山形しあわせ銀行を吸収合併し、現在はきらやか銀行、山形県)
- 北日本相互銀行(興産無尽、1966年に興産相互銀行から商号変更し、1989年普銀転換。現在の北日本銀行、岩手県)
- 德陽相互銀行×(三徳無尽、1990年普銀転換。德陽シティ銀行を経て1997年経営破綻。宮城県)
- 振興相互銀行(振興無尽、1989年普銀転換。現在の仙台銀行、宮城県)
- 福島相互銀行(湯本信用無尽→福島無尽金庫、1989年普銀転換。現在の福島銀行、福島県)
- 大東相互銀行(大東無尽、1989年普銀転換。現在の大東銀行、福島県)
中部・北陸地区
- 静岡相互銀行(大洋無尽、1957年に大洋相互銀行が静神相互銀行を合併して商号変更、1989年普銀転換△。現在の静岡中央銀行、静岡県)
- 静神相互銀行×(駿河無尽、1957年に大洋相互銀行に合併。現在の静岡中央銀行、静岡県)
- 中部相互銀行×(西遠無尽、1989年普銀転換。中部銀行を経て2002年経営破綻。静岡県)
- 岐阜相互銀行×(岐阜無尽、1989年普銀転換、岐阜銀行となるも、経営悪化のため2012年に十六銀行に吸収合併され消滅。岐阜県)
- 名古屋相互銀行(名古屋殖産無尽、1989年普銀転換。現在の名古屋銀行、愛知県)
- 中央相互銀行(中央無尽、1989年普銀転換。現在の愛知銀行、愛知県)
- 中京相互銀行(太道無尽、1969年に太道相互銀行が名古屋信用金庫を合併して商号変更、1989年普銀転換。現在の中京銀行、設立は三重県、現在は愛知県)
- 第三相互銀行▲(三重無尽、1989年普銀転換。第三銀行を経て2021年に三重銀行を吸収合併し(第一)地方銀行に転換。現在の三十三銀行、三重県)
- 新潟相互銀行×(新潟無尽、1989年普銀転換。新潟中央銀行を経て1999年経営破綻。新潟県)
- 大光相互銀行(大光無尽、1989年普銀転換△。現在の大光銀行、新潟県)
- 富山相互銀行(富山合同無尽、1989年普銀転換。現在の富山第一銀行、富山県)
- 加州相互銀行×(北陸無尽、1989年普銀転換。石川銀行を経て2001年経営破綻。石川県)
- 福井相互銀行(福井無尽、1989年普銀転換◎。現在の福邦銀行、福井県)
新規設立・その他
米国統治下の沖縄において、現在の沖縄銀行及び沖縄海邦銀行の前身にあたる以下の相互銀行が存在した。本土と同名の銀行もあるが無関係である。
- 三和相互銀行(三和無尽、1955年相互銀行に転換。1963年沖縄銀行が買収)
- 東洋相互銀行(1960年、みやこ無尽の営業を引き継ぎ設立。1964年沖縄銀行に合併)
- 南陽相互銀行(南陽無尽、1954年相互銀行に転換。1964年、共栄・八重山両相銀を合併。1971年沖縄銀行に合併)
- 共栄相互銀行(宮古共栄無尽、1954年相互銀行に転換。1964年南陽相互銀行に合併)
- 八重山相互銀行(八重山無尽、1957年相互銀行に転換。1964年南陽相互銀行に合併)
- (旧)沖縄相互銀行(沖縄無尽、1953年相互銀行に転換。1964年第一相互銀行と合併し中央相互銀行を設立)
- 第一相互銀行(那覇無尽、1953年相互銀行に転換。1964年沖縄相互銀行と合併し中央相互銀行を設立)
- 中央相互銀行(1964年、沖縄相互銀行・第一相互銀行が合併して設立。1972年沖縄相互銀行に商号変更)
注釈
1951年に施行。金融制度及び証券取引制度の改革のための関係法律の整備等に関する法律(平成4年法律第87号)の施行により廃止。
ただし、それ以前に他の相互銀行を合併して普通銀行(地方銀行)に転換した例や、既存の普通銀行へ合併されたことで消滅した相互銀行も存在する。 中央無尽株式会社が免許を受け商号変更。現在の株式会社愛知銀行。 後に株式会社住友銀行に吸収合併。現在の株式会社三井住友銀行。 当初は、山形殖産という殖産会社として発足しているが、一旦、山形殖産無尽として無尽会社となってからの相互銀行転換だった。第二地銀転換で殖産銀行を経て、現在はきらやか銀行。 長野県商工信用組合より転換。現在の株式会社長野銀行。