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二歩

将棋の禁じ手の一つ ウィキペディアから

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二歩(にふ)とは、自分の歩兵が配置されている筋に、持ち駒の歩兵を打つ手のこと。将棋の禁じ手の一つである。

第64回NHK杯準決勝第2局
第92手 橋本崇載八段の二歩
橋本崇載八段 △持ち駒:なし
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概要

既に歩兵が配置されている筋に、持ち駒から歩兵を打つこと、つまり縦の列(筋)に2枚の歩兵を配置することを禁じるルールである。ただし成った歩兵、すなわちと金のある筋に歩兵を打つことは、その筋に別の歩兵がなければ認められており禁じ手ではない。これは盤上のと金が、金将と同じ駒として扱われるためである。同様に、歩兵のある筋にと金を動かすことも認められている。

この二歩のルールによって合法な局面である限り、歩兵は先手・後手のそれぞれのプレイヤーについて同じ筋の中に1枚以下しか存在できない事になる。

初めて成文化したのは二代大橋宗古とされる。二歩が禁止になった理由としては、飛車先の歩の前に別の歩が打てると優劣がはっきりしすぎるために面白くなくなる事が指摘されている[1]。他にも千日手が容易になる、と金攻めの破壊力が落ちる[注釈 1]など、その問題点は掘り起こそうと思えば限りを知らない。

従来は禁じ手(二歩に限らず)を指しても、投了による勝敗が優先となっていた。しかし2019年10月1日に日本将棋連盟の対局規定が改定され[2]、既に終局していた場合であっても、同じ棋戦の次の対局が始まる前に二歩などの反則が判明すれば、遡って反則を犯した側の負けとなることとなった[3][2]ただし一部の大会等では、未だに投了優先のままな場合もある。[要出典]

初歩的な禁じ手だが、将棋の反則の中では最も起こりやすいものの一つでもあり、プロ高段者の対局においてさえしばしば発生する[注釈 2]。自陣で追いつめられ前の方の歩に気付かずに合駒してしまう、敵陣で相手を攻めるのに夢中になり暫く前に打っていた自陣深くの歩を見落とす、敵陣に打ち込んで不成のまま放置していた歩に気付かない、などの状況でうっかり打ってしまうことが多い。また、盤上の歩を見落とすだけではなく、駒台の他の駒と歩を持ち間違えて二歩を打つこともある。特に持ち時間の少ない早指し戦などでは、十分に注意する必要がある。森内俊之の説によれば、二歩の半数以上に底歩(自陣の最下段の歩)が関係しており、既に底歩を打っておいた筋に別の歩を打ってしまうか、別の歩がある筋に底歩を打ってしまうケースであると述べている[4]

アマチュアの対局であっても、公式な大会では二歩を打った時点で即時負けとされることが多い。一方で将棋ソフトやネット将棋などでは、禁じ手であることを指摘されるだけで指せないようになっている。

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二歩の例

要約
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詰将棋における二歩

要約
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詰将棋では二歩を主題とする問題がある。禁じ手であるため手順中に二歩が現れることはないが、将来の二歩を予防するために歩を捨てる、相手方に二歩の制約を与えるために取れる歩をわざと取らない、などが解答の鍵となっている問題である。

いわゆる「フェアリー」(通常や一般のルールセットとは異なるルールによる問題)としては、「禁じられているのは二歩を『打つ』ことであって、二歩が『存在する』ことは禁じられていない」という論理のもと、問題図が二歩の作品もある[19]

例題

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図1-Aは▲1四香、△2四玉、▲2五歩、△1五玉、▲2六金、△同飛、▲1六歩(図1-B)、△同飛、▲2七桂までの9手詰。1手目で▲1四歩とすると7手目の▲1六歩が二歩になるため、▲1四香の不利先打で解決する。

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図2-Aは▲3五角、△2六桂、▲同角、△同玉、▲1八桂(図2-B)、△2五玉、▲2七龍、△1四玉、▲3二角、△1三玉、▲2三龍(角成)までの11手詰。2手目の合駒が歩ならば取られても詰まないが、その場合▲3九角(図2-C)とすれば2八に歩で合駒ができず(桂も行き所のない駒であるため合駒に使えず、金銀香のどれかを打つことになる)、△2八香▲同角△1八玉▲1九香で早く詰む。逆に2手目の合駒が歩でない場合に▲3九角と打つと△2八歩(図2-D)と合駒され、▲2八同角△1八玉で詰まない(▲1九歩は打ち歩詰め)。

歴史

二歩を主題とする詰将棋を初めて作ったのも二代大橋宗古であり、「象戯図式」(1636年 俗称「将棋智実」)第1番が1号局である。

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図3-Aから進めて図3-Bのとき、▲2六歩、△2四玉、▲2五歩、△同玉として2七の歩を取り除き、将来の二歩を予防する。以下▲1七桂、△2四玉、▲1五馬、△同歩、▲2五歩(図3-C)となり、歩を取り除いた効果が現れる。

(図3-Aは▲2一金、△1三玉、▲2二銀、△2四玉、▲2五金、△同玉(図3-B)、▲2六歩、△2四玉、▲2五歩、△同玉、▲1七桂、△2四玉、▲1五馬、△同歩、▲2五歩(図3-C)、△1四玉、▲2六桂まで17手詰)

なお、二歩禁の規則自体はこれ以前の詰将棋にも適用されており、例えば初代大橋宗桂の「象戯造物」(1602年 伝慶長版)の第45番は、玉方が二歩の合駒をすれば詰まない。

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類似のゲームにおける事例

  • チェスでは将棋の歩兵に相当するポーンが、敵の駒を取るときのみ正面ではなく斜め前方に進むため、必然的に二歩のような形になる場合がある(ダブルポーン)。ルール上は問題ないが、縦に並んでいると正面のポーンが守りにくくなるので通常は不利な形とされている。
  • マークルックのビアもポーンと同じく駒を取るときに斜め前方へ進むため、縦に二つ並んだ形になる場合がある。こちらもルール上は問題ない。
  • どうぶつしょうぎでは、将棋の歩兵に相当する「ひよこ」を同じ縦の列に打つこと(二ひよこ)が許されている。ただし二ひよこが好手になる場面は少なく、主に敗勢時の手数稼ぎに用いられる。
  • 中将棋大将棋などの多くの古将棋は持ち駒のない取り捨てルールのため、二歩の状態は発生し得ず規定もない。禽将棋は持駒ルールだが、歩に当たる燕の駒は初形から縦に2つ並んでおり、同じ縦筋の燕は2つまでは可で3つは禁止という、いわば「三歩」のルールになっている。現代に考案された鯨将棋も歩に相当するイルカについて同様の「三歩」ルールを採用している。
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脚注

関連項目

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