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日本の小説、メディアミックス作品 ウィキペディアから
『亡国のイージス』(ぼうこくのイージス)は、1999年に講談社から刊行された福井晴敏の小説である。本作品を原作に、映画(2005年公開)や漫画などメディアミックス展開されている。
亡国のイージス | ||
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著者 | 福井晴敏 | |
発行日 | 1999年8月25日 | |
発行元 | 講談社 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 上製本 | |
ページ数 | 656 | |
コード | ISBN 978-4-06-209688-1 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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国防問題を題材にした作品[1]で、2000年に日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞、大藪春彦賞をトリプル受賞した。これを基にした映画が2005年公開され、『モーニング』誌でもこれを基にした漫画が連載されている。この物語の後日談としてコーエーがPlayStation 2用ゲームとして『亡国のイージス2035 〜ウォーシップガンナー〜』を発売している。
2006年現在、発行部数は110万部を越える。
前作『Twelve Y. O.』の続編にあたるが、短編集や漫画も含めれば、『6ステイン(920を待ちながら)』や『C-blossom case729』の続編でもある。
はたかぜ型ミサイル護衛艦「いそかぜ」とたちかぜ型ミサイル護衛艦「うらかぜ」から成る海上自衛隊第3護衛隊群第65護衛隊[注 1]は、訓練のため呉地方隊を出港し、太平洋の訓練海域へ向かっていた。「いそかぜ」は大規模改修が行われてミニ・イージスシステムが搭載され、TMD対応イージス艦の一番艦となったばかりだった上、幹部がほぼ全員交代しており、練度が低い状態だったが、海上訓練指導隊 (FTG) から受け入れ監査を受けなければならなかった。「いそかぜ」先任伍長の仙石は、イージスシステムの経験者として異動してきた如月一士や、独身者揃いの幹部たちの不自然な様子に気づく。如月も、自らの「目的」のためとは言え、同僚や仙石たちに接近する。特に仙石に対しては絵画を通じて心を開いていく。
そのころ、『辺野古ディストラクション』後に米軍から奪われた特殊兵器「GUSOH」(通称:ネスト、あれ)は、防衛庁情報局 (DAIS) の監視も虚しく7人の工作員の手で持ち出されてしまう。
予定通り、由良基地で溝口三佐以下FTG隊員を受け入れるが、彼らの不自然さに、「いそかぜ」の下士官たちも気が付いていく。そんな中、オセアニア航空202便(ボーイング747)の墜落事故が発生。「いそかぜ」は墜落現場に赴いて救助活動を行い、奇跡的に生存していた女性を救出するが、やがてその女性は死亡する。しかし、「いそかぜ」には不可解な事故が続発。女性も、生き返って艦内に潜入した噂まで出る始末だった。ついに、菊政二士が訓練中に事故死し、艦内に動揺が広がる中、演習続行が決断される。仙石はクルーを守るべく竹中副長ら幹部に食って掛かり、ついに宮津艦長と溝口三佐から「真相」を聞く。
DAISの人間である溝口三佐らは、FTGを装って「いそかぜ」に乗艦し、艦内に潜伏している北朝鮮工作員「ホ・ヨンファ」の影響下にある工作員:如月を捕える任務を帯びていた。艦内に隠れていた女性も溝口の部下だった。ヨンファは宮津艦長の息子:隆史に接近し、それをヨンファ捕縛の好機ととらえたDAISにより、隆史は死に追いやられたという。
「真相」を知った仙石は、戦闘配置が命じられる中で如月を問い詰め、PlayStationに偽装された通信機を破壊するが、逆に気絶させられてしまう。その後の混乱の中で、先任海士長だった田所が殺害され、さらに如月は艦を爆破し始める。仙石は機関室に爆弾を仕掛けた如月を見つけると、激しく詰問するが、艦長らの「真相」とはまったく異なる説明を如月から聞くこととなる。溝口こそがホ・ヨンファであり、潜伏した女:ジョンヒも高練度の工作員で、28名の幹部全員がグルである。自分は「いそかぜ」反乱を阻止すべくDAISから送り込まれた工作員であると。
仙石は混乱するが、入れ替わるように機関室に乱入したヨンファの部下たちは如月を捕え、発煙筒を艦内にばら撒いていく。宮津艦長は「最後の命令」として総員離艦を命ずるが、仙石は土壇場で救命筏から海に飛び込み如月が爆破して生み出した破孔を通じ「いそかぜ」に戻る。宮津やヨンファたちが残る「いそかぜ」は「うらかぜ」をハープーンで撃沈し、「いそかぜ」撃沈命令を受け対艦攻撃を試みた航空自衛隊のF-15JをもSM-2ERを用いて撃墜すると、自衛艦隊宛に「自衛艦隊からの離脱を宣言する。本艦の全ミサイルは東京首都圏に設定されている。その弾頭、通常に非ず」と叛乱を宣言する。
東京を射程に収めた「いそかぜ」が東京湾方面へ航行する中、梶本首相率いる政府は『大戦中の米軍の機雷不発弾処理のため』として東京湾を封鎖する。一般市民に被害を出さない解決法は、「解毒剤」である特殊焼夷弾(Tプラス)で「いそかぜ」を破壊するか、艦内部から制圧するかの二つしかなかった。宮津の要求は、GUSOHやDAISの存在の公表、DAISが隆史を暗殺したことの公表などであった。
午前9時、政府首脳との2回目の通信で、梶本首相は宮津を懐柔しようとDAISの存在や暗殺を否定する。そこで宮津はCICに如月を呼び寄せるが、如月は組織のためではなく「生き甲斐を守るために戦う」と話す。政府首脳にも宮津にも衝撃が走り、ヨンファが如月を殺害しようとした瞬間、「いそかぜ」閉鎖区画に潜入していた仙石が爆発を起こし、工作員の一人からマシンガンを奪う。仙石は艦内放送で、幹部とは違う海曹としての「いそかぜ」への愛着を語ると、応急指揮所を介してCICの二酸化炭素消火装置作動警報を起動。CICが混乱に陥った隙をついて如月は脱走に成功し、二人は合流する。
一方、第1護衛隊群旗艦として僚艦と共に「いそかぜ」を監視するはるな型ヘリコプター搭載護衛艦「ひえい」は、「いそかぜ」の照明を使ったモールス信号を解読し、仙石と如月が潜入していることを発見する。梶本首相らはTプラスによる爆撃を計画するが、DAISの渥美は時間稼ぎをし、二人とDAIS対テロ特殊要撃部隊「920SOF」による「いそかぜ」制圧作戦を立案する。最終的に、渥美は首相を説得し「亡国の危機」解決のため作戦実行の許可を得ることに成功。3回目の通信で、首相は要求を全て飲む旨を宮津に伝える。そして渥美が宮津と話し、隆史の暗殺への関与を認めるが、その会話から15時に作戦が実施されることを仙石と如月は理解する。
しかし、ヨンファも同様に作戦実施を見抜き、制圧作戦は露見して失敗、逆に「いそかぜ」からの短魚雷攻撃により水中から突入を試みた920SOFは壊滅する。救助を求める政府と、受け入れを迷う宮津の双方をヨンファは嘲笑う。そしてヨンファがGUSOH発射を試みる中、突如海自のヘリが現れる。ヘリから「うらかぜ」元艦長の阿久津が発した「シーマンシップ」という言葉に宮津は激しく動揺する。葛藤の中、宮津は阿久津の乗るヘリを撃墜すべくCIWSの発射スイッチに手をかけるが、竹中に制止される。同じタイミングで、仙石と如月はCIWSを使用不能にする。
やがて工作員たちとの戦闘が始まる。「いそかぜ」はTプラス使用を防ぐため沿岸へ移動を開始する。ヨンファとジョンヒ、宮津と竹中の関係にもやがて亀裂が入る。如月はついにジョンヒを倒す。仙石と如月は、盗聴器から竹中とヨンファの口論を聞き、GUSOHがVLSの第7セルに収められたSM-2ERに装填されたことを知る。ヨンファは先回りしてGUSOHを回収し専用容器『ネスト』に格納するが、宮津と、次に如月と相撃ちになり、双方に重傷を負わせる。
仙石は如月を治療するためVLS管制室に救急セットを取りに行くが、そこで宮津艦長と再会する。宮津は残存の隊員に対し先任伍長である仙石の指揮下に入ることを艦内放送で命じる。一切の対話を拒否して「いそかぜ」を晴海に向け、GUSOHを開放するつもりのヨンファは、部下に命じて舵や機関関連設備を破壊し「いそかぜ」を暴走させていた。仙石は残存の幹部たちに、退艦を命じる。仙石はヨンファとの直接対決に臨むが阻止できず、ヨンファは『ネスト』を頭上で開放する……が、何も起こらなかった[注 2]。
茫然となった二人は再び対決し、仙石も重傷を負うが、ヨンファは転落死する。Tプラスを搭載した航空自衛隊のF-15Jによる「いそかぜ」攻撃が迫る中、仙石は手旗信号で「グソー存在せず、艦暴走せり」とDAISの偵察衛星に観測されることを期待しつつ外部に伝え、攻撃は阻止された。退艦が進む中、なおも暴走する「いそかぜ」に残る宮津艦長は、最後の決断として如月に代わって機関室の爆弾を起爆し、艦を自沈させる。
事件後、事件は「事故[注 3]」として闇に葬られ、仙石は退職して兄が営むスーパーで働いていた。妻子とも関係が修復されつつあり、絵を仕事にし始めた仙石は、死亡したとされる如月の消息を訪ねる。再会した二人は、海に護衛艦を見つけると、新しい未来を信じて大きく手を振るのだった。
「演」は映画でのキャスト
いそかぜ | |
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画像は同型艦の「はたかぜ」 | |
基本情報 | |
運用者 | 海上自衛隊 |
艦種 | ミサイル護衛艦(DDG) |
級名 | はたかぜ型護衛艦 |
艦歴 | |
竣工 | 1988年[4] |
要目 | |
基準排水量 | 5000トン(FCS-3搭載後)[5] |
全長 | 150m |
幅 | 16.4m |
深さ | 9.8m |
吃水 | 4.8m |
機関 | COGAG方式 |
主機 |
TM3Bガスタービンエンジン 2基 SM1Aガスタービンエンジン 2基 |
出力 | 72000ps |
推進器 | 可変ピッチ・プロペラ 2軸 |
最大速力 | 30ノット |
乗員 | 200名[5][6] |
兵装 |
54口径127mm単装速射砲 2基 高性能20mm機関砲(CIWS) 2基 Mk.13 単装ミサイル発射機 1基 ・SM-1MR SAM Mk.41 VLS (16セル) 1基 ・RUM-139 VL-ASROC SUM ・SM-2ER SAM ハープーン SSM 4連装発射筒 2基 68式3連装短魚雷発射管 2基 ・Mk.46短魚雷 |
搭載機 | ヘリコプター甲板のみ |
FCS |
FCS-3(00式射撃指揮装置3型) 1基 FCS-2-21C(81式射撃指揮装置2型21C) 1基 Mk.74 ミサイル射撃指揮装置 1基 |
C4ISTAR | リンク17(架空) |
レーダー |
SPY-1D 多機能型 4基 OPS-28 対水上用 1基 |
ソナー | SQS-35(J) 可変深度ソナー |
電子戦・ 対抗手段 |
NOLQ-3 ESM/ECM Mk.137 6連装デコイ発射機 4基 |
「いそかぜ」(ローマ字:JS Isokaze, DDG-183[注 4])は、作中に登場する架空のミサイル護衛艦(DDG)である。現実では計画中止によって建造されなかったはたかぜ型護衛艦の3番艦という設定で、この名を受け継ぐ日本の軍艦としては大日本帝国海軍の磯風型駆逐艦「磯風」、陽炎型駆逐艦「磯風」に続き3代目。はたかぜ型2番艦の「しまかぜ」と同じ年に竣工した[4]。
はたかぜ型は、それまでの自衛艦と比べて多数のコンピューターを搭載した多機能水上戦闘艦艇であり、世界的に見ても最有力の防空戦力と認識されていたが、その座は直後に登場したイージス艦に奪われ、海上自衛隊へイージス艦導入が決定すると瞬く間に旧式艦扱いされることとなった(はたかぜ型護衛艦に関係する事情は現実と同一であり、現実ではイージス艦導入決定により、はたかぜ型3番艦の建造は中止されている)。
しかし、北朝鮮の弾道ミサイル発射実験で国防に関する国民の意識が高まり世論が形成されたことから、TMD構想の日米共同開発が開始され、その構想を視野に入れた全護衛艦のイージス艦化計画が実施されることが決定。その計画の1番艦として「いそかぜ」が選ばれ[7]、大規模な FRAM改修が行われた結果、本来のはたかぜ型と比べて大幅に装備が変更されている(現実には「全艦イージス化」計画はないものの、本作刊行後にあたご型護衛艦・まや型護衛艦各2隻が建造されて海上自衛隊イージス艦は8隻に増勢され、それによってはたかぜ型は淘汰されて練習艦に転用された)。
「いそかぜ」をはじめ、作中の護衛艦が使用している戦術データ・リンクは「リンク17」とされている。しかし、これは実在しないものである。
対空戦闘システムとしては、開発されたばかりである国産のFCS-3をFRAM改修により新たに搭載している。これは、4面のSPY-1D多機能レーダーを中核としたシステムで、SPY-1Dによって360度の空を数百kmにわたって常時監視し、それが探知・捕捉・追尾する目標のうち、12目標を同時に攻撃することが可能である。このことから、イージス艦と同等の性能だが区別をつけるために、作中では「ミニ・イージス艦」と呼ばれている。4面のSPY-1Dの設置場所は、艦橋構造物の既設マスト部とされ、そこにSPY-1Dを取り付けた構造物を建て、その上にマストを移設している[8]。そのため、かなりトップヘビーな外見となってしまっており、見た目に関する乗組員たちからの評判は決して良くない[9]。
対空兵器としては、従来のSM-1MRに加えて新たにSM-2ERが搭載された。SM-2ERは、最大射程が100km以上ある艦隊防空用の艦対空ミサイルで、FCS-3の装備によって運用能力を獲得した。これを搭載するため、前甲板に搭載されていた74式アスロックランチャーは撤去され、それによって空いたスペースにMk.41 VLSが16セル設置されている。SM-2ERの搭載数は、VLSがアスロック発射器も兼務しているため、アスロックの搭載数によって変化する。SM-1MRは、SM-2ERより1世代前の艦隊防空用ミサイルであるが、FRAM改修前から装備されているMk.13 ミサイル発射機が撤去費用の問題によって改修後も残されることになったため、引き続き搭載されている。だが、SM-2ERと比べて旧式であるため完全にお荷物扱いとなっており、「あまつかぜ」時代からこれを扱ってきた仙石は複雑な想いを抱くことになっている。しかし、この2つのミサイルランチャーの存在によって、特殊部隊による無力化を狙う日本政府は、化学兵器「GUSOH」を弾頭部に搭載したミサイルが、どちらに装填されているのか分からず対応に苦慮することとなる。
はたかぜ型は本来、マスト部に3次元レーダーとしてSPS-52を装備しているが、FRAM改修後の「いそかぜ」におけるSPG-52の状況は資料によって異なる。小説版と企画書では完全に撤去されているが、漫画版では新たなマスト部に移設されており、公式大綱では撤去されているが、その代わりにOPS-24が新たなマスト部に装備されている。その他、SM-1MRの誘導に必要な2基のSPG-51も、小説版と企画書では完全に撤去されているが、漫画版と公式大綱では残されている。
なお、実際のFCS-3に使用されているレーダーはパッシブ式のSPY-1Dではなくアクティブ式のフェーズドアレイレーダーであるなど、作中のFCS-3は実物と異なるものになっている。
「いそかぜ」の対潜ソナーについては、資料によって設定が異なっている。原作の小説版では種類について特に明記されていないが、艦首バウ・ソナーは、公式大綱ではOQS-101、企画書ではOQS-3としている。しかし、実際のOQS-101はしらね型護衛艦以外では重量の問題で装備されておらず、OQS-3は、はたかぜ型が本来装備するOQS-4より旧式である。はたかぜ型は可変深度ソナーを本来装備していないが、小説版には使用している場面があり[10]、このソナーの形式は特に明記されていなかったが、企画書ではSQS-35(J)としている[11]。
対潜兵器としては、アスロックと68式3連装短魚雷発射管の2つが搭載されている。アスロックは、FRAM改修以前に装備されていた74式アスロックランチャーから発射するタイプではなく、SM-2ERを運用するために前甲板のアスロックランチャーがFRAM改修時に撤去され、空いたスペースにMk.41 VLSが16セル設置されたため、VLSからの発射に対応したRUM-139 VLAが搭載されている。VLAの搭載数は、VLSがSM-2ER発射器も兼務しているため、SM-2ERの搭載数によって変化する。
68式3連装短魚雷発射管は、小説版ではCICからの遠隔操作が可能なタイプであったが[12]、映画版では手動式としている。発射されるのは、Mk.46短魚雷である。
対水上打撃力としては、FRAM改修後も従来通りハープーン艦対艦ミサイルの4連装発射筒を2基搭載している。これは、小説版・漫画版・映画版・企画書ともに共通しているが、公式大綱だけは、ハープーンではなく90式艦対艦誘導弾の4連装発射筒を2基搭載としている[13]。
主砲は、FRAM改修によって従来搭載されていた73式54口径5インチ単装速射砲2門が、ともに54口径127mm単装速射砲2門に換装されている。73式54口径5インチ単装速射砲は、砲塔内にも人員が配置されていたが、この砲に換装されたことで砲塔内の完全無人化が実現した。
CIWSは、従来と同じく高性能20mm機関砲を2基搭載しており、公式大綱と漫画版では、Block1B型以前のタイプとしている[13]。
電子戦装置は、原作の小説版では特に明記されていなかったが、公式大綱によると、FRAM改修によりNOLQ-1からNOLQ-3に換装されている[13]。これは、はたかぜ型に本来装備されているNOLQ-1より1世代新しいものである。
防衛庁・海上自衛隊・航空自衛隊協力の下、2005年7月30日に公開。興行収入は21億円。日本での公開の後、台湾でも2005年11月26日から「亡國神盾艦」の名で劇場公開された。
護衛艦「いそかぜ」の先任伍長である仙石恒史は、酒に酔ってナイフでケンカ騒ぎを起こした若年海士たちのために警官の前で土下座をするなど、信頼が厚い男だった。訓練海域へ向かう航海の途上「いそかぜ」に訓練指導と称し14人が乗り込み、倉庫の前に見張りが立つなど不穏な雰囲気が生み出されていき、仙石が気に掛けていた如月一士も、徐々に不審な動きを見せていく。
そんな中、如月の異状に気付いた菊政二士は、訓練中に事故死。それでも、「いそかぜ」は帰港せず予定通り東京湾への航海を続けることに。仙石は菊政の遺体を肉や魚と共に冷蔵室に保管しておくのかと、抗議するため艦長室を訪れる。由良基地から乗艦している海上訓練指導隊(FTG)の溝口三佐や、いそかぜ副長の宮津二佐の説明によれば「某国の工作員ホ・ヨンファの影響下にある如月が米軍から猛毒の化学兵器GUSOHを奪い、潜入している。溝口は如月の行動を阻止するために送り込まれた防衛庁情報局(DAIS)の人間であり、FTGの面々も彼の部下である」とのことだった。そして、すでに艦長は殺害されていた。
その直後、如月が密かに持ち込んだ爆弾を使って艦腹に破孔を開け、機関室にさらなる爆弾を仕掛けて立てこもる。説得のため仙石は一人で如月の下に赴き、彼の拳銃を奪って無線機を破壊する。しかし、彼の説明によれば「自分こそDAISの人間である」「溝口こそホ・ヨンファ本人であり、FTGを装った工作員たちを指揮し、宮津ら幹部たちも彼に通じている」とのことだった。仙石が機関室の扉を開けると、突入してきたFTGの隊員に如月は拘束される。
溝口は浸水が激しいとの名目で総員離艦を命じ、仙石は抗議しようとするが、本性を現し始めた宮津とヨンファたちに制止される。曹士隊員が離艦命令に従う一方、FTG隊員と幹部たちは如月を拘束したまま護衛艦に立てこもる。救命ボートからその様子を見た仙石は「いそかぜ」を守るため単身海へ飛び込み、破孔から艦内へ戻るが、閉鎖された水密扉に行く手を阻まれる。叛乱を起こしたことを日本政府へ宣言した「いそかぜ」は東京湾方面へ進み、制止を試みた護衛艦「うらかぜ」と戦闘の末ハープーンミサイルで撃沈する。
GUSOHの照準は東京都心、水深が浅い東京湾では潜水艦の活動は不可能、残留した幹部全員が宮津のシンパであった。内閣総理大臣以下、最高幹部らと宮津は直接会話する。宮津の要求は、GUSOHの存在の公表・宮津の息子である防大生がDAISの策謀により死亡したことの公表等であった。しかし、最高幹部はDAISの存在を認めず、如月を見殺しにする。如月が殺害されようとした瞬間、仙石が主砲弾を炸裂させて水密扉を破り、艦内を混乱させた隙に如月は艦内へ身を隠す。
合流した仙石と如月は徐々に心を通わせつつ、航空自衛隊のF-2による特殊焼夷弾による対艦攻撃が迫る中、阻止限界線までにGUSOH発射を阻止すべく奮闘することとなる。
「護衛艦の副長が幹部自衛官達を従えて日本政府に対し叛乱を起す」というアクション・エンターテインメント的な内容ではあるが、一方で「国家としてのありようを見失った日本に、はたして守るに値する価値があるのか?」と、問いかける作品となっている。当作品に限らず福井晴敏の映画化作品は愛国的・反米的な描写が目立つが、決して戦争を賛美するものではなく(むしろ、戦争批判のメッセージさえ込められている)、前述の通り日本という国家のあり方を問いかける主題のものが多い。
映画版が公開された2005年は戦後60年の節目の年でもあり、日本の防衛庁が本作品を含め『ローレライ』『戦国自衛隊1549』『男たちの大和/YAMATO』など、日本の軍備を描いた作品への協力を積極的に行った。そのこともあってか、韓国国内では映画版に出演したチェ・ミンソに対して「日本の軍拡に繋がる右翼映画に出演する女優」と非難・批判が噴出した。
実写化にあたっては上映時間などの制約上、原作の内容をすべて盛り込めず、前述の問いかけに対する原作終盤の仙石の返答と行動は全て無くなっている。原作のハリウッド調のシーンが削除され娯楽色が薄められているほか、その他の重要なエピソードについても一部が原作者自身の判断により削除されている。
本作品は当初2000年に映画化する予定だったが、企画を持っていった1999年当時の防衛庁(現・防衛省)側は「現職の海上自衛隊護衛艦艦長が叛乱を起し、最新鋭護衛艦を乗っ取り、日本政府に対して脅迫をするなどという内容の映画には、一切協力はできない」と強く拒否した経緯がある(その後の映画版でも、叛乱の首謀者である宮津の役職が艦長から副長へ変更されている)。
2度目の協力要請の時、同庁広報は再度拒否するつもりだったが、同作品の読者であった石破茂長官(当時)が再考を促し[注 5]、原作者や映画制作関係者が艦艇部隊や江田島(幹部候補生学校などが所在)などをくり返し見学し、映画の内容修正を行ったこともあって、防衛庁側の協力が実現した[15]。
キャスト
2000年 - エニックスの漫画雑誌「コミックバウンド」で中村嘉宏作画によるコミカライズが連載されていた(雑誌廃刊のため打ち切り)。
2004年 - 講談社モーニングにて横山仁作画によるコミカライズ版が連載された。現在は物語中盤で連載が休止されており、発売されているコミックス上では「第1部完」と表示されている。
2005年 - 講談社別冊フレンドにて霜月かよ子作画による本作品の前日談『C-blossom case729』が連載された。この作品において、如月行が二等陸曹に昇進する顛末が描かれており、エピローグにおいて『いそかぜ』に配属された彼の姿を確認できる。
2005年7月21日 - コーエー PlayStation 2 『亡国のイージス2035 ~ウォーシップガンナー~』発売
2007年12月27日 - コーエー PlayStation 2 コーエー定番シリーズ 『亡国のイージス 2035発売』(上記の廉価版)
『亡国のイージス』の文庫版の表紙には、背景として海上に浮かぶ 「いそかぜ」の姿が小さく描かれているが、上巻では通常のはたかぜ型護衛艦の状態、下巻では改造されミニ・イージスシステムを搭載した後の姿になっている。週刊モーニング掲載のコミックの絵やピットロードが商品化した模型はこのデザインが元になっている。
解説本『映画「亡国のイージス」公式大綱』(角川書店)にも「いそかぜ」の描きおろしイラストが掲載されたが、主砲が背負い式になっていないなど、上記のものとはデザインがやや異なっている。
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