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情報本部
防衛省の特別機関 ウィキペディアから
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情報本部(じょうほうほんぶ、英語: Defense Intelligence Headquarters、略称:DIH)は、防衛省の情報機関である。
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概要
戦後設立された防衛庁においては、外国の軍事情報を防衛局調査第1・2課、統合幕僚会議事務局第2幕僚室、陸上・海上・航空の各幕僚監部調査部および各自衛隊の専門部隊等のそれぞれにおいて収集・分析を行っていたため、庁全体としてみれば、情報の収集・分析が非効率的という構造的欠陥を抱えていた。
この問題を解決すべく、統合幕僚会議第17代議長の石井政雄を長としたプロジェクトが発足し、アメリカ国防情報局(DIA)を参考に1995年(平成7年)に策定された防衛計画大綱に基づいて、1997年(平成9年)1月20日に設置された(創設時は約1,700名)。なお、防衛庁内のすべての情報機関が統合されたわけではなく、既存の組織はそれぞれ一部改編・縮小されたものの、引き続き存続した。
2025年(令和7年)度現在、約2674人の要員を抱え、信号情報(シギント)を始めとする各種情報を扱う防衛省の情報機関である。なお非軍事信号やサイバー空間におけるデータ情報の収集は認められていない。[1]
2024年7月発表された防衛省AI活用推進基本方針において、「目的の探知・識別」「情報の収集・分析」の分野におけるAI活用の方針が示され[2]、2027年度までのAIを活用した公開情報の自動収集・分析機能等が整備される予定である。また、衛星画像のAIによる分析も行われる予定である。[3][4]
下表は2005年(平成17年)度からの情報本部職員数の推移である(出典:防衛省HP概算要求の概要)が、陸海空自衛隊の自衛官の定数が削減される一方で情報本部要員はほぼ毎年増員されていることから、情報分野の強化に努めていることが窺える。
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役割
・電波情報や画像情報など情報本部で独自に収集した情報や、防衛省内の各機関・関係省庁・友好国などからもたらされた情報を総合・分析し、総理官邸やNSC、各自衛隊部隊などの政策判断・部隊運用者に報告する事による政策判断・部隊運用の支援。[5]
・外国政府による偽情報等の拡散などの検知・無力化や、適切で戦略的な情報発信などの、情報戦への対応。[6]
沿革
以下の沿革以前にも防衛省には情報組織があり、例えば情報本部の前身組織の一つである陸上幕僚監部調査部第2課別室(調別)はシギントを行う非公然組織であり、実質的に内閣情報調査室の下部機関で、歴代トップは警察官僚が占めていたとされている[7]。
組織
要約
視点

情報本部長(指定職5号[注 1])には陸将、海将又は空将の自衛官が任命される。また、本部長は2009年(平成21年)6月3日に公布された「防衛省設置法の一部を改正する法律」に基づき新設された防衛会議の構成員となる。本部長は自衛官を退官後、内閣衛星情報センター所長(指定職6号、本省審議官級[注 2])に就任するケースが多い。副本部長には防衛省大臣官房審議官(旧:防衛庁長官官房審議官、官名は防衛書記官)を本務とする者がその職を兼補する形で任命される。
さらに、その下に情報専門スタッフとして4人の情報官が置かれる。内訳は、事務官が1人と自衛官が3人であり、事務官は各国の安全保障・国防政策に関する情報を統括し、自衛官は各々の担当地域の軍事情勢の統括を行う。また、情報官とは別に情報評価官と情報保全官がそれぞれ1人ずつ配置されている。情報評価官は情報本部が実施する情報の収集整理について、その効果的な実施を図る観点から行う評価に関する事務を司る。情報保全官は防衛省における情報保全の確保を図る見地から情報本部の所掌事務に関する重要事項に係るものを総括整理する役割を担う。
内部組織の詳細については公表されていないため、下記の組織図は現在までに公文書等で確認できるもののみを記述している。
- 情報本部長(陸将、海将又は空将)
- 副本部長(事務官)
- 情報官×4(事務官×1、自衛官×3(将補(二)1人と1佐(一)2人))
- 情報保全官(事務官)
- 情報評価官(事務官)
- 総務部(部長:1佐(一))
- 計画部(部長:1佐(一))
- 情報の収集整理に関する計画、情報についての関係部局との連絡調整、組織および定員、経費および収入の予算および決算、行政財産の取得、業務計画、情報の管理に関する企画や秘密の保全並びに渉外、さらには装備品の研究改善に関する業務を行う。
- 分析部(部長:事務官)
- 情報の総合的な分析、情報の収集整理および調査や研究改善、統合防衛計画および統合警備計画の作成に必要な情報に関する業務、統合運用に必要な情報に関する業務および自衛隊法により編成された特別の部隊の運用に係る情報に関する業務を行う。公開情報や情報本部の他の部門が収集した情報の他、関係省庁や友好国から得た交換情報などのあらゆる情報(オールソース)に基づく分析を行っているとされる。
- 統合情報部(部長:1佐(一))
- 緊急に処理を要する情報および外国軍隊の動向に関する情報の収集・整理並びに統合幕僚長、各自衛隊に対する直接的情報支援を行う。情報本部の組織でありながら、統合幕僚監部の情報部(J-2)として運用されている。緊急・動態部を主たる前身とするほか、分析部および各幕僚監部調査部のうち自衛隊の運用に関する情報を担当する部署を統合して設置された。
- 画像・地理部(部長:1佐(一))
- 画像情報および地理情報の収集・分析(イミント)を行う。情報源は地球観測衛星や内閣衛星情報センターが運用する情報収集衛星の撮影画像である。前身は1985年(昭和60年)から商用地球観測衛星の画像資料を用いて画像情報の収集・分析を行っていた陸上自衛隊と航空自衛隊の情報専門部隊の衛星画像担当部署であり、陸上自衛隊では中央地理隊(現地理情報隊)がそれにあたり、フランスのSPOTやアメリカ合衆国のランドサットなどの撮影画像を購入して分析していた[9][10][11]。また、1986年(昭和61年)に開設された東海大学宇宙情報センターとも分析手法の共同研究を行っていたとされる[10]。分解能1m級の高分解衛星画像も処理できる画像情報支援システム(IMSS)も2001年(平成13年)3月から運用している[12]。またスタンド・オフ防衛能力(反撃能力)の確保における目標情報収集能力強化の一環として衛星コンステレーションの構築が情報本部において行われる予定である。[13]
- 電波部(部長:事務官)
- 全国の通信所で収集された各種電波情報の調査・分析(シギント)を行う。前身は、旧陸軍中央特種情報部(特情部)出身の自衛官を中心に設置された陸上幕僚監部第2部別室(通称:二別)と、その後継機関として1978年(昭和53年)に二別を改編して発足した陸上幕僚監部調査部調査第2課別室(通称:調別)である。1969年の中ソ国境紛争や1979年のソ連のアフガニスタン侵攻の動向を捉えたり、1983年の大韓航空機撃墜事件におけるソ連の交信を捉える事に成功していたと言われている。二別から情報本部創設までは、警察庁と警察庁の事実上の関連機関である内閣情報調査室に直結しており、別室長は防衛庁(当時)より先に警察庁に情報を上げて、警察庁が警察の独自情報として総理官邸に電波情報を報告していた。このため情報本部が創設されてからも電波部長には代々警察官僚が出向して就任しており[注 3]、現在では内調ー電波部というルートは残っているものの[14]、電波情報が警察と内調のみに上げられるということは無くなり、防衛省で分析が行われた後、内調や総理官邸、NSCに報告されるようである[15]。また収集機材やソフトウェアの開発、最新技術の調査等も行っている。
- 通信所
- 国外から飛来する電波を収集、分類・整理するとともに内容を調査し、電波部に提供するなど、「日本の耳」としての役割を果たす。
- 東千歳通信所:(北海道千歳市)東千歳駐屯地内、稚内・根室・奥尻島に分遣班を分派。
- 小舟渡通信所:(新潟県新発田市)陸上自衛隊新発田駐屯地とは別立地
- 大井通信所:(埼玉県ふじみ野市)1953年(昭和28年)3月に開設。警戒厳重な施設で、陸・海・空の混成担当官と、三沢基地から派遣された、第6920電子保安群(6920ESG)所属のアメリカ軍人によって運用されている。全国の各通信所からの情報の集約・中継ポイントとしての役割や、通信所の要員の訓練施設としての役割を担っているとされる[16]。硫黄島に硫黄島係を配置。[17]
- 美保通信所:(鳥取県境港市)
- 太刀洗通信所:(福岡県筑前町)背振山・宮古島に分室、川内に通信支所を置く。旧陸軍太刀洗飛行場から取った名前であり、大刀洗町の所在ではない。
- 喜界島通信所:(鹿児島県喜界町)2001年の九州南西海域工作船事件の際に北朝鮮の不審船の無線通信を傍受していたと言われる。[20]
各通信所では従来型の高周波無線電波傍受用の施設を運用している。 また、東千歳、大井、太刀洗ではいくつかの軍事衛星通信傍受施設を運用している。情報本部の要員のうち、7割にあたる人数が電波部および各通信所の要員である。小舟渡通信所長は2佐、その他の通信所長は1佐が充てられる。
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主要幹部
歴代本部長
- 歴代統幕事務局2室長の前職・後職欄のうち、同事務局内からの異動については「統合幕僚会議事務局」を省略。
- 学校など正式名称に「○○自衛隊」が冠されるものの前職・後職欄における表記については、当該記載を省略(階級参照)。
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脚注
参考文献
関連項目
外部リンク
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